2022年1月号
特集
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ヤオコー 「個店経営」支える物流投資にアクセル
新センターを2年前倒しで立ち上げ
ヤオコーは埼玉を地盤とする老舗の食品スーパーだ。
2021年3月期まで32期連続(単体決算)で増収増益を続けている。
店舗ごとに地域に密着したサービスを提供する「個店経営」や、パート従業員などが主体的に業務に参画する「全員参加」、インストア調理のデリカ(惣菜・寿司)などを強みとしている。
1890年に埼玉県北部の小川町で食料品店「八百幸商店」として創業した。
1958年にセルフサービス方式の販売形態をとるスーパーマーケットに業態を転換。
72年に「小川ショッピングセンター」をオープンしてチェーン展開を開始。
79年に社名を現在のヤオコーに変更した。
都心から20~40キロメートルの「ドーナツエリア」を主な商圏に設定し、なかでも国道16号沿いを重点エリアとして出店してきた。
2021年11月末現在、177店を展開している。
出店余地が限られてきた近年は、都心から20キロ圏内に都市型小型店の「八百幸成城店」(店名はあえて漢字表記)を出店したり、府中駅近くの商業施設内に都市型大型店「ヤオコー府中フォーリス店」を出店するなど新たな店舗形態も模索している。
同社が最新型の旗艦店と位置づけているのが21年10月にオープンした「和光丸山台店」だ。
2728平方メートルの店内にはバラエティに富む生鮮品や惣菜、スイーツ、冷凍食品などが並ぶ。
ワインや調味料などの直輸入品も多い。
ガラス張りの調理場では多くの従業員が惣菜作りや食材加工に励む。
人気商品のおはぎやサンドイッチなどを豊富に並べた売り場は素人目にも魅力的で、買い物を楽しむファミリー層で賑わっている。
ヤオコーの店舗には全国から同業者が視察に訪れる。
しかし、もっぱらデリカなどNB商品以外で差別化しているため簡単には真似できない。
各店舗がエリア特性に応じて惣菜の販売単位を柔軟に設定するといった手間のかかる運営は、改善活動などを通じて従業員のモチベーションを高く保てているからこそ実践できる。
本部主導で標準化を徹底する経営とは対照的な戦略で成長している。
コロナ禍で想定以上に販売量が伸びていることから、同社は25年を予定していた新物流センターの稼働計画を23年春に2年前倒しすることを決めた。
埼玉県南東部の草加市に確保した物件にグロサリーとチルドの両方を扱うセンターを設置する。
以下、本稿では「草加」と呼ぶことにする。
現在の同社の物流ネットワークは6カ所・9拠点で構成されている。
02年に「狭山物流センター」を稼働して、それまで分散していた拠点を集約。
グロサリー(在庫型・通過型併用)とチルド(通過型)を同じ敷地内に統合した。
同様の複合型センターとして07年に「千葉物流センター」(千葉県船橋市)、17年には「熊谷物流センター」(埼玉県熊谷市)を稼働している。
リードタイムの短いチルドについては、3PLの施設を活用するかたちで他に3カ所(伊勢崎・松戸・横浜)のセンターを構えている。
チルド商品の店舗への納品リードタイムは90分以内、常温のグロサリー商品は3時間以内に設定している。
「草加」は既存の物流ネットワークの空白域を埋めるかたちになる。
これによって配送距離を短縮し、精度の高い定時定配を実現して店舗の作業効率を向上、同時に配送コストを低減する。
詳細は未公表ながらセンター運営を委託するパートナーも決定済みで、庫内オペレーションや管理システムについて検討している模様だ。
ヤオコーのロジスティクス推進部は総勢約40人(正社員は3割)。
うち半数が「物流センター」の所属だが、現場運営までは手が回らない。
センター管理は外部に委託してきた。
チルドセンター6カ所の運営は全てアサヒロジスティクスに委託。
グロサリーセンター3カ所でも各センターの委託先のアンダーに同社が入って現場運営や配送業務を担っている。
アサヒロジスティクスはヤオコーにとって約35年前から取引を続ける物流パートナーで、改善活動にも一緒に取り組んでいる。
一方、グロサリーのセンター運営は、「狭山」が伊藤忠食品、「千葉」が日本アクセス、「熊谷」は国分関信越に委託している。
センター内の在庫はベンダーの預託在庫が中心で、管理システムも含めて運営を食品卸に依存してきた。
しかし、「草加」ではその運営体制を見直すことになりそうだ。
物流の高度化に自ら大型投資 17年に稼働した「熊谷物流センター」で、ヤオコーは総額約70億円を投じて初めて土地・建物を自ら購入している。
敷地面積は約8・9万平方メートル。
うち4分の1を物流センターに使い、残りの敷地には生鮮3品の加工などを手掛ける「デリカ・生鮮センター」、資材リサイクルのための「エコセンター」を設置している。
アサヒロジスティクスが運営する庫内作業者向け保育園もある。
それ以前に稼働した「狭山」や他のチルドセンターでは、土地・建物や庫内設備への投資を全て業務委託先に任せてきた。
このやり方を改めて「熊谷」では自ら物流アセットを所有した理由について、ヤオコーの神戸達也ロジスティクス推進部長は次のように説明する。
「すべての業務を外部の企業にフィーで委託していると、どうしても物流の原価が分からなくなってしまう。
配送費やピッキングコスト、委託先のセンター長の人件費、マテハンシステムのコストなどが見えなければ細かい交渉はできない。
物流センターの運営にかかっているコストを分解する第一段階として、熊谷では土地と建物に自ら資金を投じるという判断をした」 自社施設であれば自分たちのやりたい施策を実現しやすいという狙いもあった。
「熊谷」の稼働時には、庫内作業の自動化やIT活用によって「納品カテゴリーの充実による店舗における陳列工数の低減」という目的を掲げていた。
これによって店舗をサポートするロジ部門の役割を前進させようという意図だ。
ところが、この目標は部分的にしか実現できなかった。
前掲した通り「熊谷」はグロサリー、チルドとも庫内管理を国分関信越が担い、作業実務と配送はアサヒロジスティクスが担当している。
当初、ヤオコーは先進的な自動化機器の導入などを希望していた。
しかし、庫内運営と設備投資を担う食品卸は、費用対効果を期待できないと判断して首を縦に振らなかった。
結局、ソーターと搬送コンベヤの他には自動化設備はほとんど導入しておらず、カテゴリー納品の高度化には限界があった。
「草加」で改めて同じテーマにチャレンジする。
ヤオコーの神戸部長は、「従来から実施してきたカテゴリー納品をレーン単位にするために新センターでどうすべきかの議論を重ねている」という。
「個店経営」を強みとする同社が店舗レイアウトを統一するのは現実的ではない。
そのため現状では大括りのカテゴリー仕分けしかできないでいる。
これをレーン別にするにはデジタル化した仕組みが必要だ。
自動化設備やシステムへの投資が避けられない。
「草加」の施設は賃借だが、ハードやWMSにはヤオコー自身が資金を投じる計画で、業務委託先との役割分担も見直す可能性が高い。
ロジスティクス推進部の本城宗尚物流センター担当部長は、「投資額が大きくなるため、黒字になる保証がない限り卸さんはどこも手を上げてくれない。
もはや自社で投資するしかないと判断した。
自ら投資することで、われわれがやりたいことをスピーディに実現できる」と強調する。
「熊谷」では物流センターの建屋を自社保有している。
「草加」で新たな運営手法を確立できたら、既存拠点にフィードバックすることも念頭にある。
自らアセットに資金を投じることで、物流業務を自分たちのコントロール下に置こうとしている。
デジタル化と全体最適で物流を見直す ヤオコーは20年から順次、既存センターに「バース予約受付管理システム」を導入してきた。
従来はセンターへの納品車両の待機時間が長いため苦情が出ることもあった。
問題点を把握しようと課題の整理に乗り出し、行政やシンクタンクとも意見交換を重ねた。
その取り組みを通してシステム活用の重要性を再認識したという。
バース予約システムは、複数のシステムベンダーからプレゼンを受け、Hacobu社の「MOVO」に決めた。
本城担当部長は「何よりも使い勝手がよかった。
予約は早い者勝ちではなく、当社がコントロールして空いている時間帯に誘導できる。
システムを柔軟にカスタマイズできるのにコストオンにならない点も評価した」という。
20年8月に「熊谷」に導入。
それを皮切りに21年2月に「狭山」、同年4月に「千葉」に横展開して、グロサリーセンター全3カ所への配備を終えた。
導入直後から80%超の予約率を確保し、納品トラックの待機時間を激減させることに成功した。
この取り組みは経済産業省が事務局を務める製・配・販連携協議会の「サプライチェーン・イノベーション大賞2021」で優秀賞に選ばれた。
このときヤオコーは「食品ロス削減特別賞」も同時授賞している。
食品業界で長年、問題視されてきた「3分の1ルール」(製造日から賞味期限の3分の1が経過する前にベンダーは小売店に商品を納めなければいけないという商習慣)を見直して、「2分の1ルール」に変更したことが評価された。
大手小売業が先行した取り組みではあるが、ヤオコーは食品スーパーとして同業他社に先駆けて実施に踏み切った。
同社の物流センターにある商品在庫はベンダーの預託在庫のため、従来から店舗に商品を移動させて以降の返品はメーカーの自主回収などを除けばほとんど発生していなかった。
それでも「2分の1ルール」の導入は物流センターにも好影響を与えた。
鮮度基準に伴う物流業務には、主に「鮮度撤去作業」(出庫期限切れの商品を撤去する作業)と「イレギュラー入庫依頼」(ルール上は入庫期限が切れている商品をあえて入庫依頼する作業)の二つがある。
3分の1ルールを運用していた18年度には年間5千件ほどあった鮮度撤去作業が、2分の1ルールの導入後は1千件を切るレベルまで減った。
イレギュラー入庫依頼も4分の1程度になった。
物流センターの作業軽減につながった一方で、懸念されていた小売業の負担による廃棄ロスはほとんど増えなかった。
これまで実施に二の足を踏んできた理由は何だったのかと思えるほどの結果だった。
ロジスティクス推進部には、ヤオコーが経営方針として強化を打ち出しているEDLP(エブリデー・ロープライス)への対応も求められている。
同社は価格よりも品質と商品力を重視し、ディスカウント業態は子会社を通じて別に運営している。
それでも「ヤオコー」の店舗でも定番商品については約10年前からEDLPを意識している。
ここ数年は消費者の価格に対する感度が一段と高まっていることから、全社レベルで対応を強化している。
物流と調達に責任を持つロジスティクス推進部にも、より一層のコスト削減が求められている。
神戸部長は「お店のコストも含めて一つずつ紐解いて部分最適をなくしていく。
サプライチェーンの全体最適を実現することでコストをどう下げるのかを考えることが重要。
2分の1ルールへの変更や、バース予約システムの導入も結局はそういうことなのだと思う」と今後の課題を見据えている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之)
2021年3月期まで32期連続(単体決算)で増収増益を続けている。
店舗ごとに地域に密着したサービスを提供する「個店経営」や、パート従業員などが主体的に業務に参画する「全員参加」、インストア調理のデリカ(惣菜・寿司)などを強みとしている。
1890年に埼玉県北部の小川町で食料品店「八百幸商店」として創業した。
1958年にセルフサービス方式の販売形態をとるスーパーマーケットに業態を転換。
72年に「小川ショッピングセンター」をオープンしてチェーン展開を開始。
79年に社名を現在のヤオコーに変更した。
都心から20~40キロメートルの「ドーナツエリア」を主な商圏に設定し、なかでも国道16号沿いを重点エリアとして出店してきた。
2021年11月末現在、177店を展開している。
出店余地が限られてきた近年は、都心から20キロ圏内に都市型小型店の「八百幸成城店」(店名はあえて漢字表記)を出店したり、府中駅近くの商業施設内に都市型大型店「ヤオコー府中フォーリス店」を出店するなど新たな店舗形態も模索している。
同社が最新型の旗艦店と位置づけているのが21年10月にオープンした「和光丸山台店」だ。
2728平方メートルの店内にはバラエティに富む生鮮品や惣菜、スイーツ、冷凍食品などが並ぶ。
ワインや調味料などの直輸入品も多い。
ガラス張りの調理場では多くの従業員が惣菜作りや食材加工に励む。
人気商品のおはぎやサンドイッチなどを豊富に並べた売り場は素人目にも魅力的で、買い物を楽しむファミリー層で賑わっている。
ヤオコーの店舗には全国から同業者が視察に訪れる。
しかし、もっぱらデリカなどNB商品以外で差別化しているため簡単には真似できない。
各店舗がエリア特性に応じて惣菜の販売単位を柔軟に設定するといった手間のかかる運営は、改善活動などを通じて従業員のモチベーションを高く保てているからこそ実践できる。
本部主導で標準化を徹底する経営とは対照的な戦略で成長している。
コロナ禍で想定以上に販売量が伸びていることから、同社は25年を予定していた新物流センターの稼働計画を23年春に2年前倒しすることを決めた。
埼玉県南東部の草加市に確保した物件にグロサリーとチルドの両方を扱うセンターを設置する。
以下、本稿では「草加」と呼ぶことにする。
現在の同社の物流ネットワークは6カ所・9拠点で構成されている。
02年に「狭山物流センター」を稼働して、それまで分散していた拠点を集約。
グロサリー(在庫型・通過型併用)とチルド(通過型)を同じ敷地内に統合した。
同様の複合型センターとして07年に「千葉物流センター」(千葉県船橋市)、17年には「熊谷物流センター」(埼玉県熊谷市)を稼働している。
リードタイムの短いチルドについては、3PLの施設を活用するかたちで他に3カ所(伊勢崎・松戸・横浜)のセンターを構えている。
チルド商品の店舗への納品リードタイムは90分以内、常温のグロサリー商品は3時間以内に設定している。
「草加」は既存の物流ネットワークの空白域を埋めるかたちになる。
これによって配送距離を短縮し、精度の高い定時定配を実現して店舗の作業効率を向上、同時に配送コストを低減する。
詳細は未公表ながらセンター運営を委託するパートナーも決定済みで、庫内オペレーションや管理システムについて検討している模様だ。
ヤオコーのロジスティクス推進部は総勢約40人(正社員は3割)。
うち半数が「物流センター」の所属だが、現場運営までは手が回らない。
センター管理は外部に委託してきた。
チルドセンター6カ所の運営は全てアサヒロジスティクスに委託。
グロサリーセンター3カ所でも各センターの委託先のアンダーに同社が入って現場運営や配送業務を担っている。
アサヒロジスティクスはヤオコーにとって約35年前から取引を続ける物流パートナーで、改善活動にも一緒に取り組んでいる。
一方、グロサリーのセンター運営は、「狭山」が伊藤忠食品、「千葉」が日本アクセス、「熊谷」は国分関信越に委託している。
センター内の在庫はベンダーの預託在庫が中心で、管理システムも含めて運営を食品卸に依存してきた。
しかし、「草加」ではその運営体制を見直すことになりそうだ。
物流の高度化に自ら大型投資 17年に稼働した「熊谷物流センター」で、ヤオコーは総額約70億円を投じて初めて土地・建物を自ら購入している。
敷地面積は約8・9万平方メートル。
うち4分の1を物流センターに使い、残りの敷地には生鮮3品の加工などを手掛ける「デリカ・生鮮センター」、資材リサイクルのための「エコセンター」を設置している。
アサヒロジスティクスが運営する庫内作業者向け保育園もある。
それ以前に稼働した「狭山」や他のチルドセンターでは、土地・建物や庫内設備への投資を全て業務委託先に任せてきた。
このやり方を改めて「熊谷」では自ら物流アセットを所有した理由について、ヤオコーの神戸達也ロジスティクス推進部長は次のように説明する。
「すべての業務を外部の企業にフィーで委託していると、どうしても物流の原価が分からなくなってしまう。
配送費やピッキングコスト、委託先のセンター長の人件費、マテハンシステムのコストなどが見えなければ細かい交渉はできない。
物流センターの運営にかかっているコストを分解する第一段階として、熊谷では土地と建物に自ら資金を投じるという判断をした」 自社施設であれば自分たちのやりたい施策を実現しやすいという狙いもあった。
「熊谷」の稼働時には、庫内作業の自動化やIT活用によって「納品カテゴリーの充実による店舗における陳列工数の低減」という目的を掲げていた。
これによって店舗をサポートするロジ部門の役割を前進させようという意図だ。
ところが、この目標は部分的にしか実現できなかった。
前掲した通り「熊谷」はグロサリー、チルドとも庫内管理を国分関信越が担い、作業実務と配送はアサヒロジスティクスが担当している。
当初、ヤオコーは先進的な自動化機器の導入などを希望していた。
しかし、庫内運営と設備投資を担う食品卸は、費用対効果を期待できないと判断して首を縦に振らなかった。
結局、ソーターと搬送コンベヤの他には自動化設備はほとんど導入しておらず、カテゴリー納品の高度化には限界があった。
「草加」で改めて同じテーマにチャレンジする。
ヤオコーの神戸部長は、「従来から実施してきたカテゴリー納品をレーン単位にするために新センターでどうすべきかの議論を重ねている」という。
「個店経営」を強みとする同社が店舗レイアウトを統一するのは現実的ではない。
そのため現状では大括りのカテゴリー仕分けしかできないでいる。
これをレーン別にするにはデジタル化した仕組みが必要だ。
自動化設備やシステムへの投資が避けられない。
「草加」の施設は賃借だが、ハードやWMSにはヤオコー自身が資金を投じる計画で、業務委託先との役割分担も見直す可能性が高い。
ロジスティクス推進部の本城宗尚物流センター担当部長は、「投資額が大きくなるため、黒字になる保証がない限り卸さんはどこも手を上げてくれない。
もはや自社で投資するしかないと判断した。
自ら投資することで、われわれがやりたいことをスピーディに実現できる」と強調する。
「熊谷」では物流センターの建屋を自社保有している。
「草加」で新たな運営手法を確立できたら、既存拠点にフィードバックすることも念頭にある。
自らアセットに資金を投じることで、物流業務を自分たちのコントロール下に置こうとしている。
デジタル化と全体最適で物流を見直す ヤオコーは20年から順次、既存センターに「バース予約受付管理システム」を導入してきた。
従来はセンターへの納品車両の待機時間が長いため苦情が出ることもあった。
問題点を把握しようと課題の整理に乗り出し、行政やシンクタンクとも意見交換を重ねた。
その取り組みを通してシステム活用の重要性を再認識したという。
バース予約システムは、複数のシステムベンダーからプレゼンを受け、Hacobu社の「MOVO」に決めた。
本城担当部長は「何よりも使い勝手がよかった。
予約は早い者勝ちではなく、当社がコントロールして空いている時間帯に誘導できる。
システムを柔軟にカスタマイズできるのにコストオンにならない点も評価した」という。
20年8月に「熊谷」に導入。
それを皮切りに21年2月に「狭山」、同年4月に「千葉」に横展開して、グロサリーセンター全3カ所への配備を終えた。
導入直後から80%超の予約率を確保し、納品トラックの待機時間を激減させることに成功した。
この取り組みは経済産業省が事務局を務める製・配・販連携協議会の「サプライチェーン・イノベーション大賞2021」で優秀賞に選ばれた。
このときヤオコーは「食品ロス削減特別賞」も同時授賞している。
食品業界で長年、問題視されてきた「3分の1ルール」(製造日から賞味期限の3分の1が経過する前にベンダーは小売店に商品を納めなければいけないという商習慣)を見直して、「2分の1ルール」に変更したことが評価された。
大手小売業が先行した取り組みではあるが、ヤオコーは食品スーパーとして同業他社に先駆けて実施に踏み切った。
同社の物流センターにある商品在庫はベンダーの預託在庫のため、従来から店舗に商品を移動させて以降の返品はメーカーの自主回収などを除けばほとんど発生していなかった。
それでも「2分の1ルール」の導入は物流センターにも好影響を与えた。
鮮度基準に伴う物流業務には、主に「鮮度撤去作業」(出庫期限切れの商品を撤去する作業)と「イレギュラー入庫依頼」(ルール上は入庫期限が切れている商品をあえて入庫依頼する作業)の二つがある。
3分の1ルールを運用していた18年度には年間5千件ほどあった鮮度撤去作業が、2分の1ルールの導入後は1千件を切るレベルまで減った。
イレギュラー入庫依頼も4分の1程度になった。
物流センターの作業軽減につながった一方で、懸念されていた小売業の負担による廃棄ロスはほとんど増えなかった。
これまで実施に二の足を踏んできた理由は何だったのかと思えるほどの結果だった。
ロジスティクス推進部には、ヤオコーが経営方針として強化を打ち出しているEDLP(エブリデー・ロープライス)への対応も求められている。
同社は価格よりも品質と商品力を重視し、ディスカウント業態は子会社を通じて別に運営している。
それでも「ヤオコー」の店舗でも定番商品については約10年前からEDLPを意識している。
ここ数年は消費者の価格に対する感度が一段と高まっていることから、全社レベルで対応を強化している。
物流と調達に責任を持つロジスティクス推進部にも、より一層のコスト削減が求められている。
神戸部長は「お店のコストも含めて一つずつ紐解いて部分最適をなくしていく。
サプライチェーンの全体最適を実現することでコストをどう下げるのかを考えることが重要。
2分の1ルールへの変更や、バース予約システムの導入も結局はそういうことなのだと思う」と今後の課題を見据えている。
(フリージャーナリスト・岡山宏之)
