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2022年1月号
特集

カスミ 物流企業が主役の「TC型SCM」を推進

納品企業向けの配送ネットワーク  カスミは茨城県を中心に埼玉県、千葉県、栃木県、群馬県、東京都などに187店舗を展開する食品スーパーマーケットだ。
2021年2月期の営業収益は2880億円。
1961年に設立して茨城県を地盤に成長を遂げ、2015年にマルエツ、マックスバリュ関東との経営統合で設立された共同持株会社のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングスの傘下に入っている。
 物流センターは「カスミ中央流通センター(CDC)」(茨城県かすみがうら市)、「カスミ岩瀬流通センター(IDC)」(茨城県桜川市)、「カスミ佐倉流通センター(SDC)」(千葉県佐倉市)の3カ所を配置している。
いずれも通過型センター(TC)でカスミが施設を所有し、センターの運営や配送業務は協力物流会社に委託している。
ドライの在庫センターや精肉や惣菜のプロセスセンターなども配置している。
 カスミは同社が「TC型SCM」と呼ぶ独自の物流体制を敷いている。
在庫の効かない生鮮やチルド日配品は、センターへの納入時間などを細かく調整して波動を吸収する必要がある。
しかし、小ロット化とドライバー不足の進展によって、規模の小さいメーカーや卸などのベンダーはカスミのセンターに納品するための物流会社を探すことが困難になった。
 16年のSDCの開設時にその問題が特に大きな課題となった。
茨城県の既存拠点CDCとIDCからは距離のある千葉県に新設するセンターであったため、ベンダーは新たな配送ルートを準備しなくてはならない。
納品トラックの確保に悩むベンダーが多く出た。
 これを解決するため、カスミは物流会社を主役とする調達領域の「協力配送ネットワーク」とそれに対応したセンター運営の仕組みを整備した。
協力配送ネットワークはCDCとIDC間のシャトル便がその原型となっている。
04年にカスミが二つ目の物流センターとしてIDCを立ち上げた時点で既に、生鮮やチルドの中小ベンダーは、2カ所に分散したセンターの納品指定時間への対応に苦慮していた。
そこでIDCの運営と配送を委託されていた三共貨物自動車が中心となって、ベンダーの納品トラックで運ばれてきた商品を、シャトル便で横持ち輸送する仕組みを整備した。
 これをさらに発展させ三共貨物自動車は複数の物流会社と連携して、複数ベンダーの納品商品を混載してカスミのセンターに運ぶ配送ネットワークを構築した。
ネットワークを構成する物流会社がカスミのセンターへの納品を代行する形式であるため、「納品代行」と呼んでいる。
 この協力配送ネットワークの仕組みをSDCでさらに発展させた。
三共貨物自動車が物流会社約80社と連携してネットワークの規模を拡大。
400社以上のベンダーが協力配送ネットワークのトラック便を利用するようになった。
入出荷コントロールの推進によってカスミのセンターにおける1日当たり納品車両数の期間平均値は07年の194台から19年には100台を切るまで抑制された。
 センターへの入荷工程と、センターから店舗への出荷工程でドライバーが交代することによって1台のトラックを24時間2回転させている。
TCでは昼以降に入荷した商品を店舗別に仕分けた後、夜間から店舗配送のトラックが出発する。
そこで協力運送会社は夜間の店舗配送ドライバーに加え、日中のドライバーを新たに雇用。
センターへの納品と、センターから店舗への配送に同じトラックを使用することで車両の稼働率を高めている。
調達共配に対応する センターを設計  協力配送ネットワークの活用によって、TC側では入荷時の形態が従来とは変化した。
協力配送ネットワークの納品トラックにはカテゴリーが異なる複数ベンダーの商品が混載されている。
効率的な入出荷を行うために、混載トラックに適した庫内レイアウトと運用を工夫した。
 SDCではTC型SCMの運用を前提にセンター構造を横長にすることでバースを多く配置した。
仕分けエリアは複数カテゴリーの同時仕分けができるフリーロケーション設計を採用した。
最大12カ所での同時仕分けが可能となる。
特売などで特定カテゴリーの仕分け量が多い場合は仕分けエリアの区画を調整するといった弾力的な運用も行える。
 WMSには入荷車両と商品を紐付ける機能を持たせた。
「車両マスタ型WMS」と呼んでいる。
車両の登録番号で検索すると、トラックに積載された商品が全てリストアップされる。
それを基に効率的な入荷処理が行える適切なバースに車両を案内する。
車両積載情報の可視化によって入荷検収業務が誰でも行えるようになった。
 SDCとIDCでは協力配送ネットワーク便専用の庫内スタッフも配置している。
納品ドライバーは仕分けや検品を専属庫内スタッフに任せ、すぐに次の配送業務に向かうことができる。
ドライバーが待たされることもない。
 齋藤雅之商品開発本部物流担当マネジャーは「物流で発生している問題には必ず何かしらの原因がある。
それを紐解いていくと多くは前工程や後工程をつなぐ部分で問題が起きている。
その場合には部分最適では問題を解決できない。
前後工程を結びつけて活動の輪を広げることでブレークスルーが生まれる」という。
 協力配送ネットワークは商品開発にも影響を与えている。
以前はどんなルートを通って自社の物流センターに商品が入ってくるかについてバイヤーはあまり関心を持っていなかった。
しかし、今では物流を強く意識するようになった。
その結果、『センターに運ぶ手段をこちらで用意するので値段を安くしてください』といった交渉も可能になってくる。
 「現状では茨城県のつくば市で生産された白菜が東京の大田市場に行ってから、かすみがうら市に来て、もう一度、東京の錦糸町に行くといったような物流が発生する。
小売りが物流を知り、物流会社と連携することで無駄な物流は減らせる。
限りある物流リソースを有効活用できる。
それをわれわれは目指していきたい」と齋藤雅之マネジャーは今後を展望した。

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