{literal} {/literal}

2022年1月号
特集

《海外論文》アマゾンとウォルマートのオムニ戦争

アマゾン vs ウォルマート  米国における小売業の総売上の90%は依然としてオフライン(実店舗)小売販売が占めている。
ウォルマートはその王者である。
一方、オンラインの通販業者としてスタートしたアマゾンも、斯界の巨人として揺るぎない地位を占めている。
 両社はこれまでお互いを脅威と見なしつつも、長い間にわたって“分を弁えて”共存してきた。
ところがオムニチャネルの需要が高まるにつれ、両社はそれぞれ相手側のチャネルにも触手を伸ばし始めた。
アマゾンはオフラインでのプレゼンスを高める対策を打ち出し、ウォルマートはオンラインの強化に乗りだした。
 両社は共に、新しいチャネルと既存のそれとの融合を目指している。
アマゾンはオフラインロケーションをオンライン注文のピックアップと返品の場として活用し、ウォルマートはオンラインチャネルの注文に巨大な実店舗網で対応しようとしている。
アマゾン ネットから実店舗へ  書籍の通販業者として1994年に創業して以来、アマゾンは数々の商品やサービスへと手を広げ、いまやオンラインショップの代名詞ともいえるブランドに成長した。
米国のオンラインショッピング利用者におけるその知名度は、あらゆるオフライン小売りの10倍以上であり、他に類を見ない豊富な品揃えの商品を低価格で提供している。
しかしながらオフライン小売りとの競合ということになると、食品雑貨類など特定の商品カテゴリーで配送日数がかかるという弱点がある。
 最近の調査によれば、「アマゾンプライム」会員の80%は、アマゾンで買い物をする理由を、その早さと無料配送に見出している。
プライム会員に対しては原則翌日配送を実現すべく、アマゾンはそこに集中的に資本を投下してきた。
フルフィルメントセンターや配送センター間のリンクを強化するため、70機に上るレンタルの小型貨物機に小型ジェット機を追加したり、大都市近隣にその地域向けの仕分け・集荷センターを開設したり、あるいは配送トラックを自前で運営して、場合によっては社員に荷物を届けさせたりしている。
 2015年の時点で、アマゾンがフルフィルメント拠点から20マイル以内にカバーしている人口は、米国民の5%にすぎなかった。
それが現在は約半数にまで拡大している。
さらに21年にはサプライチェーンのスピードアップのため、オハイオ州シンシナティ近郊にハブ空港を開設した。
カリフォルニア州南部やフロリダ州中央部などの人口集積地に地方空港ハブを設置することも予定している。
また、ラストマイルデリバリーのコストと手間を削減するため、自動運転のスタートアップ企業ズークス(Zoox)を買収した。
 こうしたリードタイム短縮への取り組みとは別に、消費者が食品雑貨類や日用品などについては実店舗で買うことを好む傾向は今後も変わらないと見て、そこにも力を入れている。
17年には135億ドルを投じて老舗高級食品スーパーのホールフーズ(Whole Foods)を買収した。
 同社の一部店舗では「グローサリー・ピックアップ(あらかじめオンラインで注文した商品を駐車場で受け取ることができるサービス)」と1時間以内での配達を実施している。
こうしたサービスを今後全477店舗のほぼ全てに導入していく予定である。
2時間以内に配達できる範囲の顧客数を増やすため、郊外やその他の地域にホールフーズの店舗を増やしていくことも併せて計画している。
 コンビニエンスストアの「アマゾンゴー(Amazon Go)」はわずか50坪ほどの店舗面積であるが、各種飲料・調理済み食品・食品雑貨類などを販売している。
このコンセプトはカメラ技術の進歩を追い風として、20年初頭には300坪以上ある都市部の食品雑貨店にまで拡大している。
 より広い地域を網羅するために、地場の小規模食品スーパーチェーンの買収をすることも検討中である。
18年にオープンした「アマゾン4スター(Amazon 4-star)」と名付けた店舗では、自社サイトのカスタマーレビュー評価で最低星4つ以上を獲得したアマゾンデバイス・電気製品・玩具・書籍などを販売している。
 また、全米のホールフーズ、各種コンビニ、集合住宅や学生寮などに、数千にも及ぶセルフロッカーを設置している。
ラストマイルデリバリーの選択肢の一つとして、オフライン小売りの既存インフラも活用している。
例えばドラッグストアチェーンのライト・エイド(RITE AID)の専用カウンターでは、ネットで注文した商品を受け取ることができる。
ウォルマート 実店舗からネットへ  オフライン小売りの巨人ウォルマートは、19年度の国内売上高が3320億ドルに達している(米国外および会員制スーパーであるサムズ・クラブの売り上げは含まない)。
同社は店舗から10マイル以内に米国民の90%をカバーしている。
 同社は、1988年の「スーパーセンター」の開設を機に食品セクターへと参入した。
そして現在は同社の米国全体の売り上げの半分以上を食品類が占めるようになり、米国の食品市場で23%のシェアを持つ国内最大の食品小売業者となった。
同社の売上高は同業であるクローガーの2倍以上、アマゾンの食品セクターの5倍以上となっている。
 オンライン注文が徐々に増加する中、食品の売り上げを維持していくための対策をいくつか打っている。
例えばオンラインで注文した商品を、「カーブサイド・ピックアップ(店員が駐車した車まで商品を運ぶ)」や駐車場で商品を受け取る「クリック&コレクト」モデルを強力に推進してきている。
 これを宅配と比べると、配送費用がかからない分だけ利益率が高く、小売業者にとっては都合の良いモデルといえる。
客は自宅にいながら買い物をして、それを配達やレジ精算を待つことなく手にすることができる。
従来どおりの買物とオンライン注文による宅配、その両方のいいとこ取りというわけである。
 これまでの4年間で全4600店余りのうち2千を超える店舗で食品のピックアップを導入した。
また過去2年で700店舗に食品以外の商品でも同様の対応を開始した。
ピックアップサービスと即日配送をより多くの店舗で展開することを優先するあまり、新規出店を抑制するほどの力の入れようである。
 関連の動きとしては、ピックアップの注文品を自動でカートに詰める技術を持つスタートアップ企業との提携、購買行動の変化に対応した従業員の役割の見直しなどが挙げられる。
 従来、ウォルマートはクリック&コレクトを優先し、コストのかかる宅配モデルに対しては腰が重かった。
しかし現在は迅速な宅配にも多額の投資をしている。
2015年にはオンライン専用のフルフィルメントセンターを開設、オンライン注文にいっそう迅速に対応できるよう厚い在庫を保管している。
 そうした専用センターに加えて多くの小規模センターでも、店舗向けだけでなく宅配にも対応している。
これにより、98%の人口をリードタイム2日でカバーする陸上輸送のネットワークを構築した。
 また800の店舗では、フードデリバリーのドアダッシュ(DoorDash)や食料品の即日配送サービスを提供するインスタカート(Instacart)など、ドライバーをクラウドソーシングで集める企業の手を借りて配送を実施しており、21年度中にその数を倍増させる予定でいる。
 いくつかのロケーションでは、デリバリー要員を自社で雇用する試みも行っている。
米国の上位50都市圏のうち40以上の地域では、およそ20万品目の商品を35ドル以上の注文で無料翌日配送するサービスを提供している。
こうした戦略はそもそもアマゾンの成長を支える中核であり、ネット通販における速配のスタンダードとなった観のあるアマゾンプライムに追随するため、ウォルマートがやむをえず導入したという事情がある。
 顧客の冷蔵庫に直接食品を届けるなど、将来を見据えた配送サービスのテストも行っている。
数時間以内に戸口まで商品(ホールフーズの生鮮食品を含む)を届けるアマゾンの「プライムナウ(Prime Now)」サービスと、生鮮食品をドアの内側・ガレージの中・車のトランクなどに置き配する「キー・バイ・アマゾン(Key by Amazon)」に対応するのがこの動きである。
 アマゾンと商品を顧客の手元により早く届ける競争をしている小売業者は、もちろんウォルマートだけではない。
例えば大手チェーンストアのターゲット(Target)は、ネット専用の配送センターを拡充するのではなく、地域の既存店舗を配送ハブとして活用している。
同社は17年に買い物代行サービスのシプト(Shipt)を買収して子会社化したことで、ネット注文の90%以上を翌日配送することが可能になった。
 一方、食品スーパー最大手のクローガー(Kroger)は、オンライン注文向けの自動倉庫ネットワークを構築中である。
英国のオンライン食品スーパーチェーンのオカド(Ocado)と提携、オンライン注文の商品をピックアップするロボットを活用して、宅配とオンライン注文のピックアップを90%以上の店舗で実施している。
チャネル選択の決定要因  顧客による店やチャネルの選択に何が影響するかについては、これまでの研究でいくつかの要因が指摘されている。
それらは商品関連(商品の品質)、店舗関連(品揃え・価格・便利さ・購買体験・オーダーフルフィルメントに要する時間・店舗の雰囲気・サービスの質・接客・店のイメージなど)、顧客の人口統計学的属性(主な年齢層・収入・性別)に大別することができる。
 ストア・パトロネージ(ある特定店舗への愛顧)に関する研究では、顧客の好悪を左右する重要な要因の認識がその行動を決定する、という合理的行為理論(TRA)が広く採用されている。
そのためそうした主たる要因がそのまま各チャネルの価値提案の魅力となり、消費者のチャネル選択に影響を与えるのである。
 チャネル選択に影響を与える最も重要な要因の一つは、品揃えである。
通常それは幅の広さ(商品カテゴリーの数)、深さ(カテゴリーごとのSKUの数)、ブランド選択(ブランドの数)によって評価される。
また、品揃えが充実していると、選んだ商品をより肯定的に評価する傾向が見られる。
つまり消費者を混乱させない限りにおいて、豊富な品揃えは望ましいと言えるのである。
選択の余地が増え、探索コストが減り、自分が選んだという気持ちを顧客に抱かせるというわけである。
 特定チャネルへのストア・パトロネージと顧客満足においては、価格も重要な要因である。
商品の価格や値引きとは別に、ここには店舗への移動や宅配など消費者が負担する取引コストをも含む。
消費者は店選びに際して価格差を比較検討し、最も安い価格で提供しているチャネルで買い物をする強い傾向がある。
 オーダーフルフィルメントに要する時間という側面は、買い物や配達のモードによってそれぞれ事情が異なる。
オフラインでの買い物は、店舗までの移動時間とトランザクションタイム、すなわち商品を探すこと、および精算に時間をとられる。
 オンライン注文の宅配では、注文そのものにかかる時間と到着を待つ時間、つまり商品の配送に時間がかかる。
あらかじめオンラインで注文をしてからピックアップをする場合は、注文と移動に加えて店舗内外の定められたエリアでピックアップをする時間がかかる。
消費者はできるだけ全体としての所要時間が短いチャネルを好む。
 購入体験とは、探して吟味して買うという一連の購入プロセスにかかる時間と労力に対する認識のことをいう。
従ってそこには店の雰囲気、サービスの質、店員の応対、返品のしやすさなども含まれる。
購入体験とサービスの評価は、オフラインでもオンラインでも顧客満足を左右する決定的な要因なのである。
 ストア・パトロネージや買い物の頻度を決める要因としては、商品や店舗関連の要因の他にも、消費者の人口統計学的属性がある。
インターネットでの買い物に慣れている若年層、中でも特に高学歴層は、BOPIS(buy-online-pick-up-in-store)のような新しいチャネルを選ぶケースが多い。
ポスト「クロスチャネル競争」  また、宅配を利用するかどうかは、所得水準も無関係ではない。
宅配に別料金がかかったり、無料配送に最低料金が設定されていたりするからである。
ピックアップサービスの選好には、就労人数など家庭の特徴が影響している可能性もある。
 店舗・商品・顧客の各要因は、従来オンラインとオフラインでそれぞれ別々に研究がなされてきた。
選択行動(サービスの質など)の中には、同じチャネル同士の比較が一番適しているものもある(ある小売りのオフラインにおけるサービスの質と、別の小売のオフラインのそれを比較するなど)。
 しかしながら他の要因(品揃えや価格など)に関しては、同チャネル内やクロスチャネル(オフラインとオンライン)の競合だけでなく、さまざまな小売業者の異なるチャネル間で比較が可能である。
 アマゾンとウォルマートでは顧客に対する価値提案の中身が異なるため、これまで両社はほとんどの要因について正反対のアプローチをとってきた。
他でもないそのチャネルを選択するにあたって、消費者は個々人の好みに従ってその利害得失を考慮する。
このような好みは人口統計学的属性でマッピングできることもある。
 クロスチャネル競争のこのシナリオでは、さまざまな点で両社の強みがまったく異なるため、消費者がそのどちらかを選ぶ理由に疑問を差し挟む余地はない。
しかしどちらの顧客にも訴求する魅力的なオムニチャネル構築へと主戦場が移ってきたことで、これまでのクロスチャネル競争から、同チャネル内およびクロスチャネルの二正面作戦が同時進行する状況へと変化したのである。
それぞれのチャネルの愛顧を決定する要因の方向性についてはある程度予測できるとしても、各チャネル・各小売業者の相対的な強みということになれば、実証研究の扱う領域になる。
 チャネル選択を決める要因の研究は、ここ数年来ますます盛んに行われるようになってきている。
例えばEmrich, Paul, Rudolph(2015)は、取扱商品のカテゴリー自体は少ないが、特定のカテゴリーに関しては数多くの商品を取りそろえている小売業者(広く浅い品揃えの小売と比較して)は、オフラインでもオンラインでも同じ品揃えをした方が良いとする。
 一方で広く浅い品揃えの小売りは、オンラインチャネルの品揃えを厚くするべきだという。
食品小売についてMelisら(2015)は、消費者が当初オンラインで選ぶのは、普段の買い物でひいきにしている実店舗のオンラインチャネルであるが、時が経つとともにオンラインの品揃えが充実している方へ移行していくとしている。
 この分野の研究の多くは、オフライン(またはオンライン)の小売業者がオンライン(またはオフライン)を開設した場合の効果に焦点を当てており、どちらも全体の売り上げにプラスの効果があると結論づけている。
複数のチャネルを統合して顧客にオムニチャネル体験を提供することにも、全体的にプラスの効果があるという報告がある。
 デリバリーに絞った擬似的な実験データで検証を行ったFisher, Gallino, and Xu(2019)によれば、あるアパレル小売りでオンライン注文の配送日数を短縮したところ、オンライン・オフライン共に売り上げが増加した。
日数が1営業日短縮されるごとに、売り上げがオンラインで1・45%、オフラインで0・61%増えたのである。
 ただし、各州の平均的な短縮日数は、基準となる配送日数の7営業日から約半日ほどにとどまる。
それに対してアマゾンとウォルマートは、大半のオンライン注文よりはるかに短い納期で対応している。
またアパレルと食品雑貨類の購入では、食品の鮮度や品質への意識、あるいは購入した食品の返品の可能性などといった点で消費者行動が異なる。
配送強化戦略の落とし穴  アマゾンと対抗しようしているオフラインの小売業者は、あるいは戦い方を間違えているのかもしれない。
目下彼らのお金と労力は、オンラインの注文をいかに素早く配送するかということに向けられている。
デリバリーとピックアップのネットワークとして既に幾千もの実店舗を抱えていることからすれば、なるほどこの戦略にも一理はあるように思える。
しかしながら、できることがせいぜいアマゾンのデリバリー水準に追いつくことくらいだとすれば、顧客はわざわざ彼らのオンラインストアを選ぶのだろうか。
そのことを自問する必要があるだろう。
 オフライン小売りは、オンライン注文の配送においてネット専業者と同等の地位を得ようと躍起になっている──だがしかしオンライン上の品揃えや価格、そして顧客が商品を購入する際の利便性に関してはどうなのか? ほとんどのオフライン小売りの品揃えはアマゾンのそれに遠く及ばない。
 例えば16年時点でのアマゾンのSKUが5億3600万であったのに対し、ウォルマートは3800万SKUにすぎなかった。
ウォルマートを含む小売業者の中には、オンライン価格を実店舗よりも高く設定しようとしているところさえある。
オンライン小売りとの熾烈な競合を繰り広げている状況下で、それが果たして魅力的な提案といえるだろうか?  この見当違いの戦略の背景には、自分たちの産業がオンライン小売りの技術とイノベーションに浸食されている、というオフライン小売側の思い込みがあるとTeixeira(2019)は主張する。
 08年のリーマン・ショックにより、消費者にとって価格および価値の重要性がさらに大きくなったにもかかわらず、従来型の食品販売業者は、前代未聞のレベルに価格をつり上げて粗利の確保に走った。
これは彼らの知覚価値を著しく毀損した。
オンライン通販の品揃えと低価格に、消費者はこれまで以上に価値を見いだすようになったのである。
 より幅の広い品揃えと成長が低コストと低価格を実現するこの現象を、アマゾンは“フライホイール(はずみ車)”効果と呼ぶ。
オフライン小売りはこのことをしっかりと肝に銘じる必要がある。
さもなければ、迅速なデリバリーのための投資が、結局はさらなるコスト増にしかならない可能性がある。
 こうしたコストを価格に上乗せするというかたちで転嫁しようものなら、せっかくの投資がもたらすものは知覚価値の劣化だけとなろう。
ある調査では、消費者の店選びで最も大事なことは商品の価格であり、配送日数の短さという回答は10%にも満たなかった。
 オフライン小売りには、自らの比較優位を見極めた上でそれを生かすことが求められる。
彼らの資金は、サプライチェーンをリアルタイムで追跡し、いつ・どこに・何が・どれだけあるかを把握することに投じられるべきである。
 迅速なデリバリーは、予定の期日どおりに届く“確実”なデリバリーほど重要ではないことを示唆するデータもある。
アウトドア用品販売のREIは自社のオンライン販売を分析して、「もしわれわれが4日以内のサービスを保証できれば、顧客をつなぎとめて財布内シェア(ウォレットシェア)を維持できる」としている。
 19年の「プライムデー」でアマゾンは、翌日配送を約束しているプライム会員の一部に対して納期を守ることができず、「できないことは、最初から約束すべきではない」と批判を受けた。
同社はこれを「人びとはスピードではなくお得感に惹かれる」として、価格政策による注文の集中によるものであると説明した。
これは消費行動において価格がいかに重要であるかを示している。
在庫をリアルタイムで把握できるようになれば、オフライン小売りは約束の納期を守れるようになるだろう。
 食品小売りの大半はリアムタイム追跡能力を欠く──米国のオンラインサービスのリストに並んでいる商品のうち、15%はいざ注文をしても品切れである。
 前出のインスタカートでは、顧客が抱く不満の第一は価格が割高であることであり、それに次ぐのが注文充足率の低さである。
代替品の取り扱いを誤ると返品や返金が発生し、そのことがオンライン販売の収益性の低下を招く。
 結論的に言えば、ウォルマートが持つ物流と小売りのネットワークはおそらく世界一であろう。
顧客に自分たちとは異なる種類の価値提案をしているアマゾンの尻馬に乗るのではなく、ウォルマートはこの競争優位をさらに強化すべきである。
 同社は「EDLP(エブリデー・ロープライス)」という小売りとしてのブランドアイデンティティを見失っている。
オフライン・オンラインを問わずコアコンピタンスに投資を集中してその価値を最大化させ、消費者が買い物をしやすい環境を整えることが、ウォルマートには求められるのである。
 基本的にアマゾンとウォルマートの競合に基づくものであるとはいえ、本稿の知見はオムニチャネル戦略を見据える全ての小売りにとって価値があると思われる。
オンライン小売の最大の弱点は、消費者が購入時に鮮度や品質を直接確認できないことである。
しかしそれは、ネットで注文した商品を消費者が近所でピックアップすることによって解決する。
ピックアップという選択肢は、特に高額所得層に好評を博しているようである。
 オフライン小売りが心してかからなければならないことは、自分たちのオンラインの品揃えと価格が主だったオンライン小売りに引けを取らないこと、そして消費者に都合の良い購入体験を与えることである。
これらは消費者、わけても若年層をオンラインチャネルに惹き寄せる要因である。
迅速な配送への法外な投資は、過大評価に基づくものである可能性がある。
“約束の期日”どおりにデリバリーすることは、迅速なデリバリーに勝るとも劣らないというエビデンスがあることを、ここでもう一度強調しておきたい。
(翻訳構成 大矢英樹)

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから