2021年11月号
特集
特集
商用車EV化が物流産業の構造を変える
トラックの脱炭素規制:各国の動き
2050年までに世界で排出するCO2をゼロにする、いわゆる脱炭素は世界の約束だ。
産業、生活、経済、教育、娯楽、あらゆる分野でCO2をゼロにしなければならない。
もちろん運輸部門も例外ではない。
その理由は言うまでもなく、CO2が地球温暖化とその結果である気候変動の原因物質だからである。
地球の平均気温は産業革命前に比べてプラス1・5度Cに向かって上昇中である。
平均気温がプラス2度Cを超えると、例えばシベリアでは凍土が解けて、土の中のCO2や、CO2の20倍もの温室効果のあるメタンが排出される。
ますます地球温暖化が進み、ますます凍土が融ける。
温暖化が温暖化を呼び、元に戻れなくなる。
世界中の気象学者がそう警告している。
そして残念ながら実際にシベリアの凍土は融け始めて、世界各地で気候変動が起きている。
米カリフォルニア州の森林火災は、一度起きると東京都の面積以上の森林が燃え尽きてしまうほどの規模となっている。
日本で大きな災害を引き起こす集中豪雨の根本的な原因もまた、地球温暖化による気候変動である。
これを少しでも食い止めるには50年を待つのではなく、可能な限り早くCO2をゼロに近づけなければならない。
そのために国連をはじめ各国政府、民間団体が企業のCO2排出量に網をかけている。
中でも国連が提唱した「SDGs(持続可能な開発目標)」と、これを金融面からサポートする「ESG(環境・社会・企業統治)」は大きな力を発揮し始めている。
ESGはSDGsを可能にする経済的手法=金融システムである。
具体的にはCO2を排出する事業、企業には融資しないという取り決めである。
既に融資している資金を引き上げることもある。
さらに炭素税=カーボンプライシングが追い打ちをかける。
CO2排出量に値段をつけ、排出量が多い企業に費用負担を課すシステムだ。
26年にはEUで国境炭素税もスタートする見通しだ。
輸出国のCO2排出量に応じた関税が課せられる。
CO2 排出量の多い国から輸入した製品は関税が高くなり、価格競争力が弱まる。
ESGに逆らえばもはや企業は存続できない。
代表的な例が石炭火力発電である。
新たな石炭火力発電所の建設はもうできない。
運輸部門ではCO2排出量の多い車両の購入が不可能になる。
ゼロエミッション車両(ZEV)への早急な転換が求められる。
ところでトラックはどれほどのCO2を排出しているのだろうか。
トラックの燃料となる軽油は1リットル燃えると2・62キログラムのCO2を排出する。
燃料タンクが200リットルの大型トラックでガス欠になるまで走れば524キログラム、400リットルなら1トンを超える。
年間10万㎞走る大型トラックは、燃費をリッター3㎞で計算して3万3333リットルの軽油を燃やす。
年間のCO2排出量はおよそ8万7千キログラム。
このトラックを10台保有する運送事業者は年間90万トン近いCO2を排出していることになる。
国交省の発表によると19年度の運輸部門のCO2 排出量は2億600万トンであった。
日本全体では11億800万トンだから、18・6%を占めたことになる。
うち貨物自動車は運輸部門の36・8%を占めている。
その削減を目的に日本だけでなく、世界中の政府や自治体がトラックのCO2排出量に規制をかけている。
規制値は国や地域によって異なる。
EUは30年までに大型トラック・バスのCO2排出量を19年比で30%削減することで合意している。
米国で最も環境問題への関心が高いカリフォルニア州では、連邦政府とは別に独自の環境規制を設けている。
45年までに全てのトラックをEV、あるいはFCEV(燃料電池車)にしなければならない。
そのため現在、ロサンゼルス港を中心にEV大型トラック(テスラ)やFCEV大型トラック(トヨタ)の実証試験が行われている。
日本はどうか。
8トン以下の車両は40年までに電動車にしなければならない。
この場合、電動車とはHEV(ハイブリッド車)も含む。
カリフォルニア州やEUに比べれば緩い規制である。
また、日本では2015年基準を既に全ての商用車メーカーが達成して、新たな燃費基準すなわちCO2削減基準を設けている。
25年度までにトラックは約13・4%(7・63㎞/L)、バスは約14・3%(6・52㎞/L)のCO2削減を目指す。
対象となるのは、車両総重量3・55トン超のトラック・バスなどである。
世界のEVトラック・バス開発の動向 環境規制の強化に対応して世界中のトラックメーカーが動き出している。
とりわけダイムラーの動向は注目に値する。
「ダイムラー・ベンツが動けば全て動き出す」という、これまで135年にわたって続いた自動車産業の発展とその変遷の図式はEV化の流れの中でも変わらないようだ。
ちなみに現在に続くガソリン自動車の発明は1886年で、ゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツの手によるものである。
大型車のEV化でもダイムラーは世界をリードする存在であり、わが国のメーカーはその動きから目を離すことはできない。
また、後述する中国のBYDは既にフルラインで電気トラック・バスをそろえており、バスは日本にも導入されている。
日本のメーカーにとって黒船となる恐れがある。
これも要注意だ。
ダイムラー──EV化でも世界をリード ダイムラーは、世界で最も先駆的にトラック・バスのゼロCO2に取り組んでいる自動車メーカーだ。
18年から電気路線バスの量産を開始している。
ちなみに日本の三菱ふそうトラック・バス(FUSO)はダイムラー傘下であり、日本国内において既にEVトラックを販売している。
ダイムラーの中長期戦略は、39年までに欧州、日本、北米の主要地域で全ての新型車をCO2ニュートラルにするというもの。
また20年代の終わりまでに水素燃料電池トラック(FCV)の航続距離伸長を目指す。
その一環でFUSOは19年の「東京モーターショー」で小型FCEV「Vision F-CELL」を公開し、FCEVの開発を推進することを世界的にアピールした。
ちなみにVision F-CELLは、総重量が7・5トン、モーター出力が135kW(184馬力)、航続距離は300㎞である。
ダイムラーが新たに開発した大型EVトラック「eカスケディア」は、既に北米で受注が始まっている。
生産は22年後半から始まる。
モーター出力は730馬力、電池の電気容量は550kWhとリーフクラスのEVの10倍である。
航続距離は400㎞だ。
もう1車種の大型EVトラック「eM2」はモーター出力が480馬力、電池の電気容量は325kWh、航続距離は370㎞である。
これもまた22年に生産を開始する。
一方、EVバスも開発しており、18年末から「メルセデス─ベンツ eCitaro」の生産を開始している。
都市内の近距離を移動する電気バスを想定したもので、25kWhのリチウムイオン電池を10モジュール、計250kWhを車載可能である。
また、改良型の電池の電気容量は1モジュール当たり33kWh、計330kWhを予定している。
さらに計400kWhの全固体電池の搭載や、燃料電池バージョンの計画もあるというから、ダイムラーの電気バスプロジェクトの本気度が分かる。
eCitaroの構造的な特徴は後輪のホイールの中にモーターを収めたインホイールモーター、ハブモーター方式である点だ。
この方式の利点は、駆動部分が床上にはみ出さず、快適性を損なわずに多くの乗客を乗せられるところにある。
2個のインホイールモーターの合計出力は250kW(340馬力)である。
ボルボ──30年にはEV専業に ボルボは30年にEV専業メーカーになる。
トラック・バスもこの戦略の下に開発が進んでいる。
トラック・バスともまだ実証試験段階だが、ダイムラーと合弁で燃料電池会社「セルセントリック」を設立するなど、ZEV化に向けた動きは急である。
発表された計画としては、例えば自動運転EVトラックの「Vera」やフルサイズの電気バス、既に顧客に引き渡された総重量6トンのEVトラックの「FL Electric」、EVバスの「7900 Electric」などがある。
VW──日本勢では日野と手を組む VWは、CO2削減の流れの中、傘下の商用車メーカーを再編し、VWトラック&バス社を設立、社名を「トレイトン」とした。
ここには、ドイツのMAN、スウェーデンのSCANIAなどが所属する。
また、トレイトンは日野自動車と戦略的提携について合意している。
日独の商用車をめぐる新しい動きが始まる。
トレイトンは「今後15年以内に新車の3分の1をEVなどに代替する」と発表している(2019年)。
この新車には共通の電動モジュールである「パワートレインツールキット」が使われる予定で、その開発に着手した。
これを使う最初のモデルはSCANIAとMANが生産する量産バスになるとのことである。
テスラ──大型「セミトラック」を量産へ テスラは乗用EVで成功をおさめ、米国をはじめ、欧州、中国、日本で成功しつつある世界的にも珍しいEV専業メーカーである。
乗用EVに加えてEVトラックのマーケットも狙っている。
テスラが用意しているのは大型の荷台を牽引する「Tesla Semi」である。
運転席と駆動系を一体にした「セミトラック」だ。
総重量15トンという最も大型のトラックの荷台さえ牽引する。
大型トレーラーで一度に数万キロも走る米国のトラック輸送の実態に準拠させたものと考えられる。
セミトラックは荷台を牽引するキャビンの4本の後輪に、各々乗用EVで開発されたモーターが1台ずつ付く。
しかも、四つのモーターは独立してトラクション(牽引力)がコントロールされるので、泥濘地や路面の悪い舗装路でも確実に牽引が可能だ。
電池は乗用EVで開発された筒形のものである。
ただし、初期のテスラのものよりも直径が数段大きく長さも長い。
加速性能は牽引する荷台がなくSemi単体だと、ゼロ100㎞がおよそ5秒というから、やたらのスポーカー顔負けである。
EVは、まず電池の充放電の管理、次にモーターの制御がカギである。
この重要な点においてEV先駆者のテスラは経験豊富で技術も抜きん出ている。
後発のトラック・バスのメーカーは、心しなければならない。
特にEV化で世界に後れを取った日本のメーカーは早急に決断を下して日々開発に精進する必要があるだろう。
テスラの「Semi」は航続距離が480㎞と800㎞の2種類あり、価格は前車が日本円にして約1600万円、後車が2千万円である。
量産は当初19年といわれていたが、半導体や電池の納期が遅れるなどでどうやら22年まで遅れそうである。
量産の遅れや、価格、航続距離、充電インフラなど、多くの課題は残っているが、そうしたことをテスラは乗用EVの開発でさんざん経験済みである。
次はきっとバス部門にEVを投入してくるに違いない。
迎え撃つ日本のメーカーには覚悟が必要だ。
日野──BYDのOEMから自社生産へ ボルボはいすゞ自動車と戦略提携を正式に締結した。
その結果、UDトラックスはいすゞの傘下に入ることになった。
さらに、トヨタの仲介で日野といすゞは「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ」(CJP)を設立、ここにダイハツとスズキも加わって、次世代のEV商用車を開発するという。
日野といすゞにトヨタを加えると日本の商用車のシェアは8割に達する。
CJPが今後の商用車EV化のイニシアチブを握ることは確かだろう。
しかし、後述する中国のEVトラック・バス動向を見れば、日本勢の動きは遅きに失した感を否めないことがお分かりいただけると思う。
日野には「ポンチョEV」と呼ばれる小型のEVバスがある。
中国のEVトラック・バスの代表的なメーカーであるBYDのOEM(相手先ブランドによる生産)である。
主要諸元によると、日野ポンチョEVは30人乗りの小型バスで、総重量は8トン、105kWhのリチウムイオン電池を搭載し、モーター出力は161kWである。
BYDのOEMということは、おそらく電池はBYDのリン酸鉄リチウムイオン電池であろう。
そこから類推すると、航続距離は200㎞程度と考えられる。
ちなみに200㎞の航続距離や電池の電力量105kWhは、まさに現在、日本のEVバス市場を席巻しつつあるBYDのEVバス「J6」そのものである。
日野とBYDは戦略的提携を既に結んでおり、21年には商用EV開発の新会社を設立するといわれている。
それを思えば、日野ポンチョZEVがBYDのJ6であることは容易にうなずける。
ただし、日野が自社開発のEVバスを市場に投入するのは、時間の問題だと考えられることも付け加えておこう。
自社製の「日野ポンチョZEV」を22年に発売予定である。
また、22年夏には自社開発のEV小型トラック「デュトロZEV」も発売する予定である。
ただし、搭載予定のリチウムイオン電池の電気容量は40kWhといわれるから、航続距離は100㎞未満ではないだろうか。
いすゞ──22年度に小型EVトラックを量産 いすゞは小型のEVトラックの量産・販売を22年度に開始する。
既に19年からEV小型トラックを使った配送などの実証試験を開始して、利便性や経済性を検証している。
また、本田技研工業とFCEV(燃料電池)トラックの共同研究も開始している。
これも22年度にモニターを開始する予定である。
FUSO──日本勢で最も積極的 国内で最もトラック・バスのEV化に積極的なのがFUSOである。
ドイツ、ダイムラーとの提携前から独自でトラック・バスのEV化を進めていた。
むしろ、その実績をダイムラーが手に入れたということだろう。
事実、FUSOは17年に世界初となる量産型小型EVトラックを投入している。
「eキャンター」である。
同年には「E-FUSO」ブランドを設立、その大型EVトラックとして「Vision ONE」を発表している。
UDトラックス──30年までに完全EV化 UDトラックスは、中型のEVトラックを15年の東京モーターショーに参考出品している。
現在は親会社のボルボと共にEVトラックの開発を進めている。
UDトラックスの「風神雷神」ビションによれば、30年までにトラックの完全EV化を図るということだ。
佐川急便のEVトラック生産計画 国内メーカーのEV小型トラックは残念ながら現状では、選択肢が限られている。
三菱自動車のEV軽トラック「ミニキャブ・ミーブトラック」、FUSOのEV小型トラック「eキャンター」が用意されているだけである。
また、価格は高く、採算ベースには乗りにくい。
そうした国内EVトラックの貧弱な品揃え、高価格に業を煮やしたのか、物流の雄、佐川急便が独自にEVトラックの調達に動き出した。
自前EV小型トラックの生産計画を発表した。
中国の広西汽車集団製の専用軽EVを7200台導入するという。
納車は22年9月である。
価格は1台130~150万円といわれる国内の軽商用車(エンジン車)と同程度というから、軽商用車を販売するダイハツ、スズキ、三菱も腰を落ち着けてはいられないはずだ。
佐川急便のEV化は自社の環境対応のアピールと今後の炭素税、ESGを見据えた対応と考えられる。
消費者の近くを走る宅配車のEV化は宣伝効果が相当に大きいはずだ。
EV化にはドライバーの大幅な疲労軽減も期待できる。
この点は、実際にEVトラックを使ってみないと分からないが、筆者の経験から言えばEV車はとにかく運転が楽であり、結果として疲労は半分程度になるであろう。
筆者は以前に自作のEV「ミラ」で、東京から大阪まで無充電で14時間ほどかけて一人で走ったことがある。
エンジン車で随伴した3台の取材クルーのドライバーはいずれも疲労困憊だった。
しかし、筆者はその日の夜半まで続いたメディアの取材を元気にこなすことができた。
とりわけ停止、発進の多い街中の運転は、圧倒的にEVトラックが楽である。
トラック・バスのEV化が進めば、EVに慣れたドライバーはエンジンのトラックやバスに戻ることはないだろう。
物流業界のドライバー不足が今後も続くとすればこの点は要注意である。
物流業者はSDGsとESGの荒波の中、CO2 削減に果敢に挑まなければならない。
国内メーカーのEVトラックの発売を待っていたのでは他社に出し抜かれる可能性が大だ。
EV化は自動車の生産の水平分業化を推進するといわれるが、佐川急便のように自前でEVを用意するユーザー企業がこれからさらに増えることもあり得る。
その場合には経験豊富で価格が安く、生産台数も多い中国のEVメーカーとのタイアップが大いに考えられる。
BYD──フルラインのEV車両を開発 ここで中国で最も強力にEVトラック・バスを展開するBYDについて触れたい。
BYDはもともとは車載用電池メーカーである。
ただし、その電池は日本、欧州が標準とする三元系のリチウムイオン電池ではなく、リン酸鉄系のリチウムイオン電池だ。
三元系に比べると重くて大きい。
しかし、価格は安く、熱に強く、急速充電が可能で、安全性に優れている。
最近の例では中国で生産されるテスラのモデル3に、リン酸鉄リチウムイオン電池が採用された。
それによってモデル3は車両価格が400万円近くに安くなり、販売台数を大幅に増やしている。
日本で政府系と自治体系の補助金を付けて販売すれば購入価格は300万円を切るともいわれている。
ちなみに世界最大の車載リチウムイオン電池メーカーである中国のCATLもリン酸鉄型のリチウムイオン電池を生産している。
BYDは03年に経営破綻した自動車メーカーを傘下に収めてEV車の開発・販売に乗り出した。
現在ではEVトラック・バスを小型から大型までフルラインで生産している。
その小型EVバス「J6」は日本にも既に50台が導入されて、京都市や福島県などで路線バスとして実際に使用されている。
静かで振動も少なく、発進・停止がスムーズなので、乗客の評判は大変良いという。
またBYDは26年をめどに大型EVバス「K8」の価格を現行の4千万円から40%引き下げるという。
ほぼディーゼルバスと同程度の価格となり、乗り心地と経費(燃料代)で優位に立つK8にシフトするバス業者が多く出てくるだろう。
BYDは30年までに2千台を日本に上陸させる計画だ。
日本の路線バス業界は一気にBYDにスイッチするかもしれない。
バスを生産している国内メーカーは戦々恐々に違いない。
東風小康──SBSグループに約1万台 中国の大手、東風汽車集団系の東風小康汽車が日本の物流大手のSBSホールディングス(SBSHD)に1トン積みのEV小型トラックを供給することになった。
設計はEVスタートアップのフォロフライ(京都市)、生産は東風小康という水平分業である。
航続距離は300㎞だから主に宅配用である。
SBSHDは、30年までに別の中国メーカーに発注する1・5トン車と合わせて、計1万台のEVの供給を受ける計画である。
輸入は22年1月から始まる。
1トン車の価格は補助金なしで380万円というからディーゼル車とほぼ同程度である。
国からの補助金も貰えるとなれば、価格競争力はさらに高まる。
このEV小型トラックを日本国内で生産すれば、おそらく1千万円は下らないだろう。
そこに中国製EVの強みがある。
では、品質や性能に心配はないのだろうか。
その点でも、そもそもEV車はエンジン車に比べて部品点数が少ないため、品質では差がつきにくい。
その特性上、排ガスはなく、騒音も少ないので環境品質も高い。
電池さえ要求性能を発揮できれば、性能上の問題はない。
加速は良好でトラックの苦手な上り坂も強力なモータートルクで乗り越える。
EVに関しては日本も欧州も中国も同じなのである。
肝心の電池もまた、中国製の評判はかなり高くなっている。
さらに、先述のCATLは、新しい電池を発表している。
ナトリウムイオン電池である。
まだ大きくて重いが、急速充電、低温性能に優れているという。
エンジン車に対する圧倒的な優位性 ところでEVトラック・バスの充電代は、ディーゼルエンジン車の燃料代と比べてどうか。
大型トラックで簡単な計算をしてみた。
年間の走行距離を18万㎞、燃費をリッター3㎞とすると、消費量は6万リットル。
軽油価格をリッター124円として年間の燃料代は744万円。
10台を所有する運送業者の年間燃料代は7440万円である。
EVの充電代はおよそその3分の1である。
1台当たり744万円の燃料費が248万円になる。
10台で2480万円。
差額は4960万円だ。
ちなみに太陽が燦燦と輝るUAEの太陽光発電の電気代は、日本の8分の1のkWh当たり3円である。
この電気で上記の大型EVトラックを充電すると年間の充電代は50万円ほど。
大型トラックが年間18万㎞走って燃料代(電気代)が50万円そこそこと聞いて、運送業経営者はどう思うだろう。
それに加えて、EVは回生ブレーキが利くのでクラッチ板の摩耗が少ない。
いや、そもそも大方のEVには変速機がない。
従ってクラッチはないので減ることもない。
オイル交換も必要ない。
トラックがエンジンからモーターに代わることで自動車業界に地穀変動が起きるだけでなく、物流に大革命が起こるのである。
産業、生活、経済、教育、娯楽、あらゆる分野でCO2をゼロにしなければならない。
もちろん運輸部門も例外ではない。
その理由は言うまでもなく、CO2が地球温暖化とその結果である気候変動の原因物質だからである。
地球の平均気温は産業革命前に比べてプラス1・5度Cに向かって上昇中である。
平均気温がプラス2度Cを超えると、例えばシベリアでは凍土が解けて、土の中のCO2や、CO2の20倍もの温室効果のあるメタンが排出される。
ますます地球温暖化が進み、ますます凍土が融ける。
温暖化が温暖化を呼び、元に戻れなくなる。
世界中の気象学者がそう警告している。
そして残念ながら実際にシベリアの凍土は融け始めて、世界各地で気候変動が起きている。
米カリフォルニア州の森林火災は、一度起きると東京都の面積以上の森林が燃え尽きてしまうほどの規模となっている。
日本で大きな災害を引き起こす集中豪雨の根本的な原因もまた、地球温暖化による気候変動である。
これを少しでも食い止めるには50年を待つのではなく、可能な限り早くCO2をゼロに近づけなければならない。
そのために国連をはじめ各国政府、民間団体が企業のCO2排出量に網をかけている。
中でも国連が提唱した「SDGs(持続可能な開発目標)」と、これを金融面からサポートする「ESG(環境・社会・企業統治)」は大きな力を発揮し始めている。
ESGはSDGsを可能にする経済的手法=金融システムである。
具体的にはCO2を排出する事業、企業には融資しないという取り決めである。
既に融資している資金を引き上げることもある。
さらに炭素税=カーボンプライシングが追い打ちをかける。
CO2排出量に値段をつけ、排出量が多い企業に費用負担を課すシステムだ。
26年にはEUで国境炭素税もスタートする見通しだ。
輸出国のCO2排出量に応じた関税が課せられる。
CO2 排出量の多い国から輸入した製品は関税が高くなり、価格競争力が弱まる。
ESGに逆らえばもはや企業は存続できない。
代表的な例が石炭火力発電である。
新たな石炭火力発電所の建設はもうできない。
運輸部門ではCO2排出量の多い車両の購入が不可能になる。
ゼロエミッション車両(ZEV)への早急な転換が求められる。
ところでトラックはどれほどのCO2を排出しているのだろうか。
トラックの燃料となる軽油は1リットル燃えると2・62キログラムのCO2を排出する。
燃料タンクが200リットルの大型トラックでガス欠になるまで走れば524キログラム、400リットルなら1トンを超える。
年間10万㎞走る大型トラックは、燃費をリッター3㎞で計算して3万3333リットルの軽油を燃やす。
年間のCO2排出量はおよそ8万7千キログラム。
このトラックを10台保有する運送事業者は年間90万トン近いCO2を排出していることになる。
国交省の発表によると19年度の運輸部門のCO2 排出量は2億600万トンであった。
日本全体では11億800万トンだから、18・6%を占めたことになる。
うち貨物自動車は運輸部門の36・8%を占めている。
その削減を目的に日本だけでなく、世界中の政府や自治体がトラックのCO2排出量に規制をかけている。
規制値は国や地域によって異なる。
EUは30年までに大型トラック・バスのCO2排出量を19年比で30%削減することで合意している。
米国で最も環境問題への関心が高いカリフォルニア州では、連邦政府とは別に独自の環境規制を設けている。
45年までに全てのトラックをEV、あるいはFCEV(燃料電池車)にしなければならない。
そのため現在、ロサンゼルス港を中心にEV大型トラック(テスラ)やFCEV大型トラック(トヨタ)の実証試験が行われている。
日本はどうか。
8トン以下の車両は40年までに電動車にしなければならない。
この場合、電動車とはHEV(ハイブリッド車)も含む。
カリフォルニア州やEUに比べれば緩い規制である。
また、日本では2015年基準を既に全ての商用車メーカーが達成して、新たな燃費基準すなわちCO2削減基準を設けている。
25年度までにトラックは約13・4%(7・63㎞/L)、バスは約14・3%(6・52㎞/L)のCO2削減を目指す。
対象となるのは、車両総重量3・55トン超のトラック・バスなどである。
世界のEVトラック・バス開発の動向 環境規制の強化に対応して世界中のトラックメーカーが動き出している。
とりわけダイムラーの動向は注目に値する。
「ダイムラー・ベンツが動けば全て動き出す」という、これまで135年にわたって続いた自動車産業の発展とその変遷の図式はEV化の流れの中でも変わらないようだ。
ちなみに現在に続くガソリン自動車の発明は1886年で、ゴットリープ・ダイムラーとカール・ベンツの手によるものである。
大型車のEV化でもダイムラーは世界をリードする存在であり、わが国のメーカーはその動きから目を離すことはできない。
また、後述する中国のBYDは既にフルラインで電気トラック・バスをそろえており、バスは日本にも導入されている。
日本のメーカーにとって黒船となる恐れがある。
これも要注意だ。
ダイムラー──EV化でも世界をリード ダイムラーは、世界で最も先駆的にトラック・バスのゼロCO2に取り組んでいる自動車メーカーだ。
18年から電気路線バスの量産を開始している。
ちなみに日本の三菱ふそうトラック・バス(FUSO)はダイムラー傘下であり、日本国内において既にEVトラックを販売している。
ダイムラーの中長期戦略は、39年までに欧州、日本、北米の主要地域で全ての新型車をCO2ニュートラルにするというもの。
また20年代の終わりまでに水素燃料電池トラック(FCV)の航続距離伸長を目指す。
その一環でFUSOは19年の「東京モーターショー」で小型FCEV「Vision F-CELL」を公開し、FCEVの開発を推進することを世界的にアピールした。
ちなみにVision F-CELLは、総重量が7・5トン、モーター出力が135kW(184馬力)、航続距離は300㎞である。
ダイムラーが新たに開発した大型EVトラック「eカスケディア」は、既に北米で受注が始まっている。
生産は22年後半から始まる。
モーター出力は730馬力、電池の電気容量は550kWhとリーフクラスのEVの10倍である。
航続距離は400㎞だ。
もう1車種の大型EVトラック「eM2」はモーター出力が480馬力、電池の電気容量は325kWh、航続距離は370㎞である。
これもまた22年に生産を開始する。
一方、EVバスも開発しており、18年末から「メルセデス─ベンツ eCitaro」の生産を開始している。
都市内の近距離を移動する電気バスを想定したもので、25kWhのリチウムイオン電池を10モジュール、計250kWhを車載可能である。
また、改良型の電池の電気容量は1モジュール当たり33kWh、計330kWhを予定している。
さらに計400kWhの全固体電池の搭載や、燃料電池バージョンの計画もあるというから、ダイムラーの電気バスプロジェクトの本気度が分かる。
eCitaroの構造的な特徴は後輪のホイールの中にモーターを収めたインホイールモーター、ハブモーター方式である点だ。
この方式の利点は、駆動部分が床上にはみ出さず、快適性を損なわずに多くの乗客を乗せられるところにある。
2個のインホイールモーターの合計出力は250kW(340馬力)である。
ボルボ──30年にはEV専業に ボルボは30年にEV専業メーカーになる。
トラック・バスもこの戦略の下に開発が進んでいる。
トラック・バスともまだ実証試験段階だが、ダイムラーと合弁で燃料電池会社「セルセントリック」を設立するなど、ZEV化に向けた動きは急である。
発表された計画としては、例えば自動運転EVトラックの「Vera」やフルサイズの電気バス、既に顧客に引き渡された総重量6トンのEVトラックの「FL Electric」、EVバスの「7900 Electric」などがある。
VW──日本勢では日野と手を組む VWは、CO2削減の流れの中、傘下の商用車メーカーを再編し、VWトラック&バス社を設立、社名を「トレイトン」とした。
ここには、ドイツのMAN、スウェーデンのSCANIAなどが所属する。
また、トレイトンは日野自動車と戦略的提携について合意している。
日独の商用車をめぐる新しい動きが始まる。
トレイトンは「今後15年以内に新車の3分の1をEVなどに代替する」と発表している(2019年)。
この新車には共通の電動モジュールである「パワートレインツールキット」が使われる予定で、その開発に着手した。
これを使う最初のモデルはSCANIAとMANが生産する量産バスになるとのことである。
テスラ──大型「セミトラック」を量産へ テスラは乗用EVで成功をおさめ、米国をはじめ、欧州、中国、日本で成功しつつある世界的にも珍しいEV専業メーカーである。
乗用EVに加えてEVトラックのマーケットも狙っている。
テスラが用意しているのは大型の荷台を牽引する「Tesla Semi」である。
運転席と駆動系を一体にした「セミトラック」だ。
総重量15トンという最も大型のトラックの荷台さえ牽引する。
大型トレーラーで一度に数万キロも走る米国のトラック輸送の実態に準拠させたものと考えられる。
セミトラックは荷台を牽引するキャビンの4本の後輪に、各々乗用EVで開発されたモーターが1台ずつ付く。
しかも、四つのモーターは独立してトラクション(牽引力)がコントロールされるので、泥濘地や路面の悪い舗装路でも確実に牽引が可能だ。
電池は乗用EVで開発された筒形のものである。
ただし、初期のテスラのものよりも直径が数段大きく長さも長い。
加速性能は牽引する荷台がなくSemi単体だと、ゼロ100㎞がおよそ5秒というから、やたらのスポーカー顔負けである。
EVは、まず電池の充放電の管理、次にモーターの制御がカギである。
この重要な点においてEV先駆者のテスラは経験豊富で技術も抜きん出ている。
後発のトラック・バスのメーカーは、心しなければならない。
特にEV化で世界に後れを取った日本のメーカーは早急に決断を下して日々開発に精進する必要があるだろう。
テスラの「Semi」は航続距離が480㎞と800㎞の2種類あり、価格は前車が日本円にして約1600万円、後車が2千万円である。
量産は当初19年といわれていたが、半導体や電池の納期が遅れるなどでどうやら22年まで遅れそうである。
量産の遅れや、価格、航続距離、充電インフラなど、多くの課題は残っているが、そうしたことをテスラは乗用EVの開発でさんざん経験済みである。
次はきっとバス部門にEVを投入してくるに違いない。
迎え撃つ日本のメーカーには覚悟が必要だ。
日野──BYDのOEMから自社生産へ ボルボはいすゞ自動車と戦略提携を正式に締結した。
その結果、UDトラックスはいすゞの傘下に入ることになった。
さらに、トヨタの仲介で日野といすゞは「コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ」(CJP)を設立、ここにダイハツとスズキも加わって、次世代のEV商用車を開発するという。
日野といすゞにトヨタを加えると日本の商用車のシェアは8割に達する。
CJPが今後の商用車EV化のイニシアチブを握ることは確かだろう。
しかし、後述する中国のEVトラック・バス動向を見れば、日本勢の動きは遅きに失した感を否めないことがお分かりいただけると思う。
日野には「ポンチョEV」と呼ばれる小型のEVバスがある。
中国のEVトラック・バスの代表的なメーカーであるBYDのOEM(相手先ブランドによる生産)である。
主要諸元によると、日野ポンチョEVは30人乗りの小型バスで、総重量は8トン、105kWhのリチウムイオン電池を搭載し、モーター出力は161kWである。
BYDのOEMということは、おそらく電池はBYDのリン酸鉄リチウムイオン電池であろう。
そこから類推すると、航続距離は200㎞程度と考えられる。
ちなみに200㎞の航続距離や電池の電力量105kWhは、まさに現在、日本のEVバス市場を席巻しつつあるBYDのEVバス「J6」そのものである。
日野とBYDは戦略的提携を既に結んでおり、21年には商用EV開発の新会社を設立するといわれている。
それを思えば、日野ポンチョZEVがBYDのJ6であることは容易にうなずける。
ただし、日野が自社開発のEVバスを市場に投入するのは、時間の問題だと考えられることも付け加えておこう。
自社製の「日野ポンチョZEV」を22年に発売予定である。
また、22年夏には自社開発のEV小型トラック「デュトロZEV」も発売する予定である。
ただし、搭載予定のリチウムイオン電池の電気容量は40kWhといわれるから、航続距離は100㎞未満ではないだろうか。
いすゞ──22年度に小型EVトラックを量産 いすゞは小型のEVトラックの量産・販売を22年度に開始する。
既に19年からEV小型トラックを使った配送などの実証試験を開始して、利便性や経済性を検証している。
また、本田技研工業とFCEV(燃料電池)トラックの共同研究も開始している。
これも22年度にモニターを開始する予定である。
FUSO──日本勢で最も積極的 国内で最もトラック・バスのEV化に積極的なのがFUSOである。
ドイツ、ダイムラーとの提携前から独自でトラック・バスのEV化を進めていた。
むしろ、その実績をダイムラーが手に入れたということだろう。
事実、FUSOは17年に世界初となる量産型小型EVトラックを投入している。
「eキャンター」である。
同年には「E-FUSO」ブランドを設立、その大型EVトラックとして「Vision ONE」を発表している。
UDトラックス──30年までに完全EV化 UDトラックスは、中型のEVトラックを15年の東京モーターショーに参考出品している。
現在は親会社のボルボと共にEVトラックの開発を進めている。
UDトラックスの「風神雷神」ビションによれば、30年までにトラックの完全EV化を図るということだ。
佐川急便のEVトラック生産計画 国内メーカーのEV小型トラックは残念ながら現状では、選択肢が限られている。
三菱自動車のEV軽トラック「ミニキャブ・ミーブトラック」、FUSOのEV小型トラック「eキャンター」が用意されているだけである。
また、価格は高く、採算ベースには乗りにくい。
そうした国内EVトラックの貧弱な品揃え、高価格に業を煮やしたのか、物流の雄、佐川急便が独自にEVトラックの調達に動き出した。
自前EV小型トラックの生産計画を発表した。
中国の広西汽車集団製の専用軽EVを7200台導入するという。
納車は22年9月である。
価格は1台130~150万円といわれる国内の軽商用車(エンジン車)と同程度というから、軽商用車を販売するダイハツ、スズキ、三菱も腰を落ち着けてはいられないはずだ。
佐川急便のEV化は自社の環境対応のアピールと今後の炭素税、ESGを見据えた対応と考えられる。
消費者の近くを走る宅配車のEV化は宣伝効果が相当に大きいはずだ。
EV化にはドライバーの大幅な疲労軽減も期待できる。
この点は、実際にEVトラックを使ってみないと分からないが、筆者の経験から言えばEV車はとにかく運転が楽であり、結果として疲労は半分程度になるであろう。
筆者は以前に自作のEV「ミラ」で、東京から大阪まで無充電で14時間ほどかけて一人で走ったことがある。
エンジン車で随伴した3台の取材クルーのドライバーはいずれも疲労困憊だった。
しかし、筆者はその日の夜半まで続いたメディアの取材を元気にこなすことができた。
とりわけ停止、発進の多い街中の運転は、圧倒的にEVトラックが楽である。
トラック・バスのEV化が進めば、EVに慣れたドライバーはエンジンのトラックやバスに戻ることはないだろう。
物流業界のドライバー不足が今後も続くとすればこの点は要注意である。
物流業者はSDGsとESGの荒波の中、CO2 削減に果敢に挑まなければならない。
国内メーカーのEVトラックの発売を待っていたのでは他社に出し抜かれる可能性が大だ。
EV化は自動車の生産の水平分業化を推進するといわれるが、佐川急便のように自前でEVを用意するユーザー企業がこれからさらに増えることもあり得る。
その場合には経験豊富で価格が安く、生産台数も多い中国のEVメーカーとのタイアップが大いに考えられる。
BYD──フルラインのEV車両を開発 ここで中国で最も強力にEVトラック・バスを展開するBYDについて触れたい。
BYDはもともとは車載用電池メーカーである。
ただし、その電池は日本、欧州が標準とする三元系のリチウムイオン電池ではなく、リン酸鉄系のリチウムイオン電池だ。
三元系に比べると重くて大きい。
しかし、価格は安く、熱に強く、急速充電が可能で、安全性に優れている。
最近の例では中国で生産されるテスラのモデル3に、リン酸鉄リチウムイオン電池が採用された。
それによってモデル3は車両価格が400万円近くに安くなり、販売台数を大幅に増やしている。
日本で政府系と自治体系の補助金を付けて販売すれば購入価格は300万円を切るともいわれている。
ちなみに世界最大の車載リチウムイオン電池メーカーである中国のCATLもリン酸鉄型のリチウムイオン電池を生産している。
BYDは03年に経営破綻した自動車メーカーを傘下に収めてEV車の開発・販売に乗り出した。
現在ではEVトラック・バスを小型から大型までフルラインで生産している。
その小型EVバス「J6」は日本にも既に50台が導入されて、京都市や福島県などで路線バスとして実際に使用されている。
静かで振動も少なく、発進・停止がスムーズなので、乗客の評判は大変良いという。
またBYDは26年をめどに大型EVバス「K8」の価格を現行の4千万円から40%引き下げるという。
ほぼディーゼルバスと同程度の価格となり、乗り心地と経費(燃料代)で優位に立つK8にシフトするバス業者が多く出てくるだろう。
BYDは30年までに2千台を日本に上陸させる計画だ。
日本の路線バス業界は一気にBYDにスイッチするかもしれない。
バスを生産している国内メーカーは戦々恐々に違いない。
東風小康──SBSグループに約1万台 中国の大手、東風汽車集団系の東風小康汽車が日本の物流大手のSBSホールディングス(SBSHD)に1トン積みのEV小型トラックを供給することになった。
設計はEVスタートアップのフォロフライ(京都市)、生産は東風小康という水平分業である。
航続距離は300㎞だから主に宅配用である。
SBSHDは、30年までに別の中国メーカーに発注する1・5トン車と合わせて、計1万台のEVの供給を受ける計画である。
輸入は22年1月から始まる。
1トン車の価格は補助金なしで380万円というからディーゼル車とほぼ同程度である。
国からの補助金も貰えるとなれば、価格競争力はさらに高まる。
このEV小型トラックを日本国内で生産すれば、おそらく1千万円は下らないだろう。
そこに中国製EVの強みがある。
では、品質や性能に心配はないのだろうか。
その点でも、そもそもEV車はエンジン車に比べて部品点数が少ないため、品質では差がつきにくい。
その特性上、排ガスはなく、騒音も少ないので環境品質も高い。
電池さえ要求性能を発揮できれば、性能上の問題はない。
加速は良好でトラックの苦手な上り坂も強力なモータートルクで乗り越える。
EVに関しては日本も欧州も中国も同じなのである。
肝心の電池もまた、中国製の評判はかなり高くなっている。
さらに、先述のCATLは、新しい電池を発表している。
ナトリウムイオン電池である。
まだ大きくて重いが、急速充電、低温性能に優れているという。
エンジン車に対する圧倒的な優位性 ところでEVトラック・バスの充電代は、ディーゼルエンジン車の燃料代と比べてどうか。
大型トラックで簡単な計算をしてみた。
年間の走行距離を18万㎞、燃費をリッター3㎞とすると、消費量は6万リットル。
軽油価格をリッター124円として年間の燃料代は744万円。
10台を所有する運送業者の年間燃料代は7440万円である。
EVの充電代はおよそその3分の1である。
1台当たり744万円の燃料費が248万円になる。
10台で2480万円。
差額は4960万円だ。
ちなみに太陽が燦燦と輝るUAEの太陽光発電の電気代は、日本の8分の1のkWh当たり3円である。
この電気で上記の大型EVトラックを充電すると年間の充電代は50万円ほど。
大型トラックが年間18万㎞走って燃料代(電気代)が50万円そこそこと聞いて、運送業経営者はどう思うだろう。
それに加えて、EVは回生ブレーキが利くのでクラッチ板の摩耗が少ない。
いや、そもそも大方のEVには変速機がない。
従ってクラッチはないので減ることもない。
オイル交換も必要ない。
トラックがエンジンからモーターに代わることで自動車業界に地穀変動が起きるだけでなく、物流に大革命が起こるのである。
