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2021年11月号
特集

ベイシア 帰り便でダンボールを回収しCO2を9割削減

店舗の空ダンボールをセンターに集約  ベイシアは群馬県前橋市に本部を置くスーパーマーケットチェーンだ。
2021年2月期の売上高は3059億円で東日本を中心とする1都14県に139店舗を展開している。
 同社では従来、店舗で発生する廃棄ダンボールの回収に課題を持っていた。
店舗で品出しした後に発生した空のダンボール箱をバックヤードに集めて一時保管し、委託先のゴミ収集車(パッカー車)が各店舗から回収していた。
しかし、ドライバー不足などの影響で車両の手配が年々難しくなり、運行コストも上昇していた。
そこで、店舗物流に使用しているカゴ車に廃棄ダンボールを詰めて、センターからの納品車両の帰り便で物流センターに持ち帰り、センターからパッカー車がダンボールを回収する新たなスキームを構築した。
 ベイシアの店舗納品物流はドライ商品と要冷蔵商品の2系統に分かれている。
ドライセンターは前橋や千葉など6カ所、要冷蔵センター(要冷センター)は太田(群馬)、高崎(群馬)、長野、千葉、東海(愛知)の5カ所に配置している。
 廃棄ダンボールの回収には要冷センターを活用している。
要冷蔵商品物流は原則的に毎日配送便があるからだ。
しかも、要冷蔵商品用のカゴ車は専用保冷シッパーを装着している。
開口部のファスナーを閉めれば荷崩れの心配がない。
 17年6月から「長野要冷センター」とその担当店舗を対象に回収をスタート。
順次対象店舗を拡大して、18年2月には全ての要冷センターに展開した。
これによってパッカー車による約140店舗からの回収を、要冷センター5カ所に集約することができた。
 しかし、新たな問題が持ち上がった。
同社は18年4月ごろから、店舗内作業の生産性向上を目的にカゴ車から6輪カートへの入れ替えを開始していた。
従来のカゴ車を使った店内オペレーションには一部、非効率な点があった。
品出しの際に、一度店舗の適切な場所にカゴ車を配置してからカット台車などに載せ替える必要があるほか、店舗内での取り回しにも難点があった。
 新たに導入した6輪カートは高さ約155センチ、幅約43センチ、長さ約128センチ。
取り回しが容易で、おおよそのカテゴリー別に仕分けて商品を積載するため、陳列場所まで運んでそのまま品出しができる。
カゴ車運用時に行っていたカット台車への載せ替えなどが不要になり、運搬の動線も短くなる。
 しかし、カゴ車から6輪カートへの転換が進んでいくのに伴い、ダンボール回収に使用するためのカゴ車の数が足りなくなってきた。
カゴ車を使ったダンボールの片付け作業自体にも、いくつか問題点があった。
カゴ車を使った片付けフローは大きく2種類ある。
一つは品出しする場所の近くまでカゴ車を持ち込み、その中にダンボールを入れてバックヤードまで戻すというやり方だ。
開店前の時間帯にダンボールを積んだカゴ車をバックヤードへ片付けなくてはならない。
事故を誘発する恐れもある。
もうひとつのやり方は売り場で発生した廃棄ダンボールをカット台車などに乗せてバックヤードに持ち帰るパターンだ。
このやり方だとバックヤードでカット台車からカゴ車に積み替える二重作業が発生する。
売り場から都度バックヤードに運搬するのは効率も良くない。
 ベイシアの木曽和久商の工業化推進本部ロジスティクスソリューション部長は「ダンボールをセンターで集約した後に回収するスキームを確立し、既に店舗での運用も始まっていた。
そのため、回収自体をやめるわけにはいかなかった。
しかし、回収を続けるにはカゴ車ではなく、6輪カートを使った新しい方法を考える必要があった」という。
 当初はカゴ車をそのまま6輪カートに置き換えようと試みた。
だが、うまくいかなかった。
カゴ車は3辺が囲われていて、残り1辺もカゴ車用保冷シッパーで閉じられる。
しかし、6輪カートは正面と背面が空いている。
ダンボールを積んで搬送すると崩れ落ちてしまう。
積載手順を工夫してもカゴ車と同じようには積み込むことができなかった。
6輪カート用「ムササビシート」を開発  この問題を解決するために6輪カート自体の改良や追加機材の使用を試みた。
まず6輪カート2台を連結して、ダンボールを積み込む底面の面積を広げてみた。
しかし、それでは6輪カートの取り回しに問題が出てしまった。
6輪カートにダンボールを積んだ後、ゴムバンドで固定する方法も試した。
ところがこれもゴムバンドを止める作業に手間がかかり、バンドの隙間からダンボールがこぼれ落ちてしまう。
ダンボール回収を担う古紙リサイクル事業者の河村商事の河村篤前社長と村山貴宏執行役員も「試行錯誤の連続だった」と口をそろえる。
 度重なる実験を経て、6輪カート用のダンボール回収補助機材を新たに開発した。
それが6輪カートの正面と背面の空間を覆う一枚の大きなシート「ムササビシート」だ。
6輪カートの底面にシートを通して、正面から見て左右にあるハンドル部分の壁面にカラナビで固定することで、6輪カートの中を「箱状」に近い形にできる(写真)。
そこにダンボールを納めれば、荷崩れを起こさず運搬できる。
 18年11月、6輪カートとムササビシートによるダンボールの回収を新店舗の「ベイシアふかや花園店」で開始、続いて同じく新店舗の「ベイシア新座店」にも導入した。
ベイシアの塚越正秀オペレーション本部販売事業部業務グループマネジャーは「カゴ車による回収に慣れた既存店より、店舗スタッフが一から作業を覚える新店の方が新しい仕組みの導入には都合が良かった。
先入観がないので、スムーズに運用できた」と話す。
 ムササビシートを着用した6輪カートに積み込めるダンボールはカゴ車よりも多い約50キロ。
しかも誰が作業をしても同程度を積み込むことができた。
新店舗での導入が順調に進んだことから、19年2月から既存店への横展開を開始、20年春ごろには全店舗での導入を済ませた。
 一連の取り組みによってCO2排出量は理論値で約92%削減された。
さらにベイシアと河村商事など7社はこの取り組みで今年、日本物流団体連合会の「第22回物流環境大賞」を受賞した。
 ベイシアは6輪カートとムササビシートを使った梱包材の運搬で18年12月に特許を出願、20年9月に特許登録されている。
しかし、ベイシア専用とするのではなく業界全体で活用できるような仕組みを検討していくという。
 ベイシアはダンボールに続いて現在、アルミ缶やスチール缶についても店舗納品車両の帰り便を活用した回収スキームを検証している。
一部の店舗とセンターでは試験運用も開始している。
 その先では生鮮トレイや食品トレイ、ペットボトルなどを対象とした新たな回収スキームの構築を目指していくという。
ベイシアの木曽部長は「トレイやペットボトルについては構想の段階で、まさに今アイデア出しを行っている最中だ」と語り、今後も環境関連の取り組みを進めていく方針だ。

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