2021年11月号
特集
特集
ドローン物流の運用シナリオと現在地
実証実験で見えてきたこと
ドローン(無人飛行機)物流の機運が高まっている。
小売事業者や物流事業者、スタートアップ、地方自治体が全国各地で相次いで実証実験を行うなど、取り組みが広がっている。
●楽天グループと日本郵便の合弁会社JP楽天ロジスティクスは今年8〜9月、ドローンを活用した物資配送の実証実験を行った。
長野県白馬村の白馬岳登山口の宿舎から山頂の宿舎2カ所まで高低差約1600メートル、往復約10キロメートルを飛行し、生鮮食品や飲料、医療物資など最大7キログラムの荷物を運んだ。
同社はヘリコプターの代替とすることを念頭に置いている。
●ANAホールディングスは2016年にドローン事業化プロジェクトを開始。
今年3月には長崎県五島市の福江島~久賀島間で医薬品や血液検体を配送することに成功した。
ドイツのスタートアップ企業ウィングコプターと業務提携を結び、同社が開発している長距離・高速飛行が可能な固定翼型VTOL(垂直離着陸機)ドローンで医薬品や日用品などを配送することを目指している。
●長野県伊那市はKDDIなどとタッグを組み、20年に自治体としては国内初となるドローンを使った宅配サービス「ゆうあいマーケット」の運用を開始した。
住民がケーブルテレビを通じて注文した商品をドローンで住宅の近くまで届けている。
政府も規制緩和によってドローンの利用を促している。
22年度には人口が多い都市部でもドローンの目視外飛行が可能な「レベル4」を解禁する見込みだ。
ドローン物流は省人化やコスト削減に加え、バッテリーで飛ぶドローンがトラックを代替することで温室効果ガスの排出量を削減する効果も見込まれている。
国土交通省や環境省も、物流分野のCO2 削減対策促進としてドローン物流の確立を目指す事業者に補助するなど、脱炭素効果に期待を寄せる。
三菱総合研究所が19年に公表した環境省委託事業の調査報告書によると、国内5カ所でドローン物流と既存の物流網のCO2排出量を試算、比較した結果、年間で福島県南相馬市は軽貨物車の輸送時より84キログラム、長野県白馬村はヘリコプターの輸送時より約1トン減少するなどと推計している。
ただ、5カ所それぞれで異なる機体のドローンを使用するなど、輸送の条件が同一ではない上に、ドローンの操縦者や補助者の移動に伴って発生するCO2の分を加味すると既存物流網より排出量が多くなっている場合もあり、報告書の内容だけでドローン物流の脱炭素効果が確認されたとは言いがたい。
各地の実証実験の成果を踏まえ、より精緻な温室効果ガス削減効果の計算が待たれている。
長時間飛行が可能なバッテリーの開発や一度に搬送できる重量のアップなど、技術的課題もまだ残っている。
ドローン物流の実用化に携わる関係者らの間では「実際に都市部でドローン配送が実現するのは早くても数年後ではないか」といった慎重な見方が多い。
まずは離島や山間地などでドローン物流が先行して行われそうだ。
現在、国内で最もドローン物流の商用化に近いところにいるとみられるプレーヤーの1つが、スタートアップ企業のエアロネクストだ。
セイノーホールディングス(HD)と業務提携し、先進技術で地方エリアの生活を持続可能にする物流ネットワークの構築に取り組む。
現在は山梨県小菅村と北海道上士幌町の2カ所で、物流ネットワークの柱となる「SkyHub(スカイハブ)」の試験運用を続けている。
小菅村は人口約700人。
村内には個人商店があるものの大型スーパーはなく、住民は近隣の大月市などへ車で買い物に行く必要がある。
そこでセイノーHDとエアロネクストが連携して今年4月にスカイハブの試験運用を開始した。
村内に設置した日用品や食品の配送・在庫拠点「ドローンデポ」で注文を受けると、ドローンが各集落に設置した専用の着陸場所まで数百メートルを飛行して届ける。
1日に数回、定期的に飛行しており、順調に実績を重ねて飛行回数は既に100を大きく超えた。
住民の間でも「小さい子どもがいるのでドローンが家の近くまで運んできてくれるのは便利」などと歓迎する声が広がっている。
これまでは配送料が無料だったが、今後は有償サービスとして本格的に展開する予定。
一方、上士幌町は人口が約5千人。
今年10月に、廃校となった旧小学校の建物に地元スーパーの荷物を一時在庫した上で、注文のあった商品を購入者の自宅敷地内にドローンで直接配送した。
利用者の自宅まで直接、ドローンが物を運んだ実験は国内で初めてという。
今後は牛の検体をドローンで運ぶなど、多様な輸送にチャレンジする。
牧場で観光客らにステーキを届けるなど、ドローンを観光商品として使うことも目指している。
他の輸送モードと役割を補完 スカイハブの特徴は、必ずしもドローンありきではないことだ。
小菅村では、ドローン以外にセイノーHDグループで宅配を担うココネットが商品を届けている。
他にも村内を走るバスに荷物を積む「貨客混載」を実施したり、村民の自家用車の空スペースに荷物を積んで一緒に運んでもらったりすることも準備している。
さまざまな輸送モードと役割を補完し合い、その時々で住民のニーズに合った配送手段を取ることを前提としている。
エアロネクストの田路圭輔代表取締役CEO(最高経営責任者)は「ドローン物流はラストワンマイルの脱炭素化の流れにかなっている」と力説する。
幹線輸送から末端に至る部分にドローンを取り込むことで、トラックの台数や輸送距離を減らせると見込む。
スカイハブの仕組みを使えば住民のニーズを満たす形で地方エリアのラストワンマイル物流最適化を図ることができると指摘する。
田路CEOは「上士幌町でドローン物流の実験に臨んでみて実感したが、北海道では本州以上にドローン物流が求められている。
長距離を運ばなければいけない北海道は、まさにドローンがトラックに代わることで温室効果ガス排出削減の効果が非常に期待できる」と意義を強調する。
スカイハブは今後、パッケージにして他の地方自治体に広く展開していくことを念頭に置いている。
実現すれば地方で持続可能かつ環境負荷を抑えた物流網を構築できる。
田路CEOは「ドローン物流がカーボンニュートラルの意識を物流領域で一気に広げていく契機になる」と展望。
今後3年程度でスカイハブの全国展開にめどを付けたい考えだ。
小売事業者や物流事業者、スタートアップ、地方自治体が全国各地で相次いで実証実験を行うなど、取り組みが広がっている。
●楽天グループと日本郵便の合弁会社JP楽天ロジスティクスは今年8〜9月、ドローンを活用した物資配送の実証実験を行った。
長野県白馬村の白馬岳登山口の宿舎から山頂の宿舎2カ所まで高低差約1600メートル、往復約10キロメートルを飛行し、生鮮食品や飲料、医療物資など最大7キログラムの荷物を運んだ。
同社はヘリコプターの代替とすることを念頭に置いている。
●ANAホールディングスは2016年にドローン事業化プロジェクトを開始。
今年3月には長崎県五島市の福江島~久賀島間で医薬品や血液検体を配送することに成功した。
ドイツのスタートアップ企業ウィングコプターと業務提携を結び、同社が開発している長距離・高速飛行が可能な固定翼型VTOL(垂直離着陸機)ドローンで医薬品や日用品などを配送することを目指している。
●長野県伊那市はKDDIなどとタッグを組み、20年に自治体としては国内初となるドローンを使った宅配サービス「ゆうあいマーケット」の運用を開始した。
住民がケーブルテレビを通じて注文した商品をドローンで住宅の近くまで届けている。
政府も規制緩和によってドローンの利用を促している。
22年度には人口が多い都市部でもドローンの目視外飛行が可能な「レベル4」を解禁する見込みだ。
ドローン物流は省人化やコスト削減に加え、バッテリーで飛ぶドローンがトラックを代替することで温室効果ガスの排出量を削減する効果も見込まれている。
国土交通省や環境省も、物流分野のCO2 削減対策促進としてドローン物流の確立を目指す事業者に補助するなど、脱炭素効果に期待を寄せる。
三菱総合研究所が19年に公表した環境省委託事業の調査報告書によると、国内5カ所でドローン物流と既存の物流網のCO2排出量を試算、比較した結果、年間で福島県南相馬市は軽貨物車の輸送時より84キログラム、長野県白馬村はヘリコプターの輸送時より約1トン減少するなどと推計している。
ただ、5カ所それぞれで異なる機体のドローンを使用するなど、輸送の条件が同一ではない上に、ドローンの操縦者や補助者の移動に伴って発生するCO2の分を加味すると既存物流網より排出量が多くなっている場合もあり、報告書の内容だけでドローン物流の脱炭素効果が確認されたとは言いがたい。
各地の実証実験の成果を踏まえ、より精緻な温室効果ガス削減効果の計算が待たれている。
長時間飛行が可能なバッテリーの開発や一度に搬送できる重量のアップなど、技術的課題もまだ残っている。
ドローン物流の実用化に携わる関係者らの間では「実際に都市部でドローン配送が実現するのは早くても数年後ではないか」といった慎重な見方が多い。
まずは離島や山間地などでドローン物流が先行して行われそうだ。
現在、国内で最もドローン物流の商用化に近いところにいるとみられるプレーヤーの1つが、スタートアップ企業のエアロネクストだ。
セイノーホールディングス(HD)と業務提携し、先進技術で地方エリアの生活を持続可能にする物流ネットワークの構築に取り組む。
現在は山梨県小菅村と北海道上士幌町の2カ所で、物流ネットワークの柱となる「SkyHub(スカイハブ)」の試験運用を続けている。
小菅村は人口約700人。
村内には個人商店があるものの大型スーパーはなく、住民は近隣の大月市などへ車で買い物に行く必要がある。
そこでセイノーHDとエアロネクストが連携して今年4月にスカイハブの試験運用を開始した。
村内に設置した日用品や食品の配送・在庫拠点「ドローンデポ」で注文を受けると、ドローンが各集落に設置した専用の着陸場所まで数百メートルを飛行して届ける。
1日に数回、定期的に飛行しており、順調に実績を重ねて飛行回数は既に100を大きく超えた。
住民の間でも「小さい子どもがいるのでドローンが家の近くまで運んできてくれるのは便利」などと歓迎する声が広がっている。
これまでは配送料が無料だったが、今後は有償サービスとして本格的に展開する予定。
一方、上士幌町は人口が約5千人。
今年10月に、廃校となった旧小学校の建物に地元スーパーの荷物を一時在庫した上で、注文のあった商品を購入者の自宅敷地内にドローンで直接配送した。
利用者の自宅まで直接、ドローンが物を運んだ実験は国内で初めてという。
今後は牛の検体をドローンで運ぶなど、多様な輸送にチャレンジする。
牧場で観光客らにステーキを届けるなど、ドローンを観光商品として使うことも目指している。
他の輸送モードと役割を補完 スカイハブの特徴は、必ずしもドローンありきではないことだ。
小菅村では、ドローン以外にセイノーHDグループで宅配を担うココネットが商品を届けている。
他にも村内を走るバスに荷物を積む「貨客混載」を実施したり、村民の自家用車の空スペースに荷物を積んで一緒に運んでもらったりすることも準備している。
さまざまな輸送モードと役割を補完し合い、その時々で住民のニーズに合った配送手段を取ることを前提としている。
エアロネクストの田路圭輔代表取締役CEO(最高経営責任者)は「ドローン物流はラストワンマイルの脱炭素化の流れにかなっている」と力説する。
幹線輸送から末端に至る部分にドローンを取り込むことで、トラックの台数や輸送距離を減らせると見込む。
スカイハブの仕組みを使えば住民のニーズを満たす形で地方エリアのラストワンマイル物流最適化を図ることができると指摘する。
田路CEOは「上士幌町でドローン物流の実験に臨んでみて実感したが、北海道では本州以上にドローン物流が求められている。
長距離を運ばなければいけない北海道は、まさにドローンがトラックに代わることで温室効果ガス排出削減の効果が非常に期待できる」と意義を強調する。
スカイハブは今後、パッケージにして他の地方自治体に広く展開していくことを念頭に置いている。
実現すれば地方で持続可能かつ環境負荷を抑えた物流網を構築できる。
田路CEOは「ドローン物流がカーボンニュートラルの意識を物流領域で一気に広げていく契機になる」と展望。
今後3年程度でスカイハブの全国展開にめどを付けたい考えだ。
