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2021年8月号
特集

アッカ・インターナショナル 人手作業を凌駕するロボット運用法を確立

今年末には総導入台数が700台に  アッカ・インターナショナル(アッカ)はアパレル分野に特化したフルフィルメントサービス企業だ。
同社は自社運営の物流センター「ECファクトリー川崎」「ECファクトリー千葉印西」「ECファクトリー千葉市川」で中国・ギークプラス社のAI自動棚搬送ロボット「EVEシリーズ」を導入している。
専用棚をロボットが作業ステーションに搬送して、庫内スタッフが棚入れとピッキングを行うGTP(Goods to person)タイプのロボットソリューションだ。
 2017年8月にECファクトリー千葉印西でロボット30台と専用棚800基を導入して本格的な運用を開始した。
その後、ECファクトリー川崎、ECファクトリー千葉市川でも導入を開始、総運用台数は18年末に176台に達し、19年には500台を突破、21年末までに約700台まで増える見通しだ。
 EVEシリーズは、中国のアリババグループなどで運用実績はあったが、日本ではアッカがファーストユーザーだった。
そのため導入の過程では本格的なローカライゼーションを実施している。
 中国語から日本語への翻訳といった基本的な部分に加え、作業ステーションのモニター上のOKボタンの配置や出し方、色合いなど、ユーザーインターフェースを全面的に日本仕様へと変更した。
ロボット制御システムとWMSを連携させる仕組みも日本のアパレル通販物流に合わせて改修した。
 アッカの提案で追加機能が実装されて、EVEシリーズの標準機能として水平展開されていったものはいくつもある。
容積ロジックの採用もその一つだ。
一般に中国の物流センターは、専用棚の充填率をあまり考慮せずに、必要に応じて棚の数を増やすという運用が行われている。
 しかし、倉庫の坪単価が高い日本で同様の運用はできない。
そこでアッカは、商品の入荷時に容積情報に基づいて充填率の低い棚をステーションに優先的に呼び出し、一度に多くの商品を棚入れして在庫の保管効率を高めるという制御方法をギークプラスに要望して、実装された。
このロジックは現在、ギークプラスの自動棚搬送ロボットの制御システムに標準搭載されている。
 作業ステーションでのピッキング時に商品画像をモニターに表示する仕組みもアッカの提案によるものだ。
中国では1ロケーションに1SKUの運用が主流だが、日本では保管効率を高めるため1ロケーションに複数SKUの運用となる。
そこで、作業ステーションで庫内スタッフがピッキングする際に間違いなくピッキングできるようステーションのモニターに商品画像を表示する機能を追加した。
これも現在はEVEシリーズ標準機能となっている。
 アッカはギークプラスの自動棚搬送ロボットの運用法の改善やシステムと機器の改良に深く関与してきた。
ギークプラス日本法人のテクニカルセンターは、アッカが初めてEVEシリーズを導入したECファクトリー千葉印西と同じ施設内にある。
現在もアッカの現場にギークプラスのコンサルティングチームが入り、新たな機能の追加提案や運用法の開発が継続的に行われている。
長期間にわたる改良によって自動棚搬送ロボットの生産性は導入当初の2倍近くまで向上しているという。
 アッカの加藤大和社長は「自動棚搬送ロボットを使った現場で生産性を高める際に重要になるのは入庫作業と出庫作業の両方を考慮した運用の仕方にある」という。
 ロボットの棚搬送時の挙動はその内容によって大きく2種類に分かれる。
一つは「ミニマムタスク」。
最も作業ステーションに近い専用棚を動かして、最速で出荷するための動かし方で、出荷作業の比率が多い場合に有効だ。
 もうひとつは「クリアロケーション」。
こちらは作業ステーションに最も近い棚を呼ぶのではなく、棚のスペースを大きく空けることを優先する。
商品Aを5個出荷するのであれば、作業ステーションの近くにある商品Aが一つずつ入った五つの棚ではなく、少し遠くの場所にある商品Aが五つまとめて入っている棚を作業ステーションに寄せる。
棚のスペースが一気に空くため、入庫時の生産性が高まる。
 この「ミニマムタスク」と「クリアロケーション」のどちらにどれだけ寄せた設定が最適なのかは、入荷や出荷の動向とバランスによって異なってくる。
AIロボットは稼働時間が積み上がり、機械学習が進むことで自動的に生産性が上がっていく。
しかし、それだけでなく使用者がシステムと機器の仕様を理解し、独自の調整を加えることで生産性をさらに高めることができる。
GTP型ロボがECセンターの標準に  アッカでは現在、新規業務の獲得や既存業務の拡大に伴い新たに現場を開設する場合には、専用棚に入らない大きな荷物や極端に小さい荷物を除き、基本的にロボットを利用するようにしている。
従来は人手によるマニュアルオペレーションが優位と考えられていた業務においても、今やロボットの方が生産性が高いと分かったからだ。
 アッカがロボットと非ロボットで比較したのは1日に5万点入荷し、その日の夜には全て出荷されるような特殊な荷動きをする商品のオペレーション。
シューズやアパレルの限定商品、福袋などでみられるタイプの入出庫の動きだ。
こうした商品の場合、入荷商品を一時的に配置するスペースを臨時で設け、人手で出荷した方がロボットで保管区に在庫するよりも効率がいいと考え、実際に試したところ、大量入荷即時出荷商品の現場単体でみれば入出荷効率はその方が高かった。
 しかし、センター全体の生産性は逆に下がってしまった。
仮置き用の作業スペースを必要に応じてその都度設定する必要がある上、売れ残りが出たら、その分だけあらためてロボット区画で在庫することになるからだ。
1ピース当たりの工数とコストを人手による作業とロボットで比較したところ結局、ロボットの方が生産性は上だった。
 ロボットを利用することで、マニュアルオペレーションでは難しい規模の現場運営も可能になる。
アッカが運営する、あるセンターのロボット区画では平常時にも1日約2万件の出荷がある。
人手で処理したら約200人の作業員が必要だ。
それをアッカはロボット202台と専用棚6千基を用いて、40人程度で回している。
 ロボットはコスト面でも優位性があるという。
ロボットの導入費および運用に必要な人件費などの総額と、全て人手で運用した場合の人件費を同等規模の現場で比較すると、累積のトータルコストは約3年間で逆転する。
つまり、ロボット投資は約3年で回収できる。
 アッカが17年にロボットの運用を開始してから既に4年が経過している。
初期に導入した機種と最新型を混在させて運用している現場もある。
最新機種を中心に構築した現場でも、必要に応じて旧世代の機種を追加投入できるように制御システムで対応している。
そのためセンター間でロボットを機動的に融通したり、レンタルで追加するという柔軟性の高い運用ができている。
ロボット自体も性能が高まった上で、量産効果によって価格は17年当初の旧世代型と比べて3割程度安くなった。
 加藤社長は「通販の物流現場は今後3年から5年でGTP型の自動棚搬送ロボットがほぼ全ての現場に導入されていく可能性が高いと見ている。
庫内スタッフが以前のようには確保できなくなってきている状況では、少ない人数で現場を回せるという利点は非常に大きい。
使いこなし方も分かってきた。
ハードウエアの差はほとんどない。
鍵を握るのはシステム。
システムを理解した上でオペレーションを組み立てることが最も重要になる。
われわれは今後もギークプラスと連携して日本の物流現場の人手不足問題の解決に寄与する取り組みを進めていきたい」という。

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