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2021年8月号
特集

GreyOrange 複数種類の物流ロボットを統合管理

グローバルで70社以上が導入  GreyOrange(グレイオレンジ)は2011年設立の物流センターでの運用に特化したロボット開発・製造企業だ。
インドで創業し、19年に本社を米国のアトランタに移転した。
現在は米国、インド、日本、英国、ドイツの5カ国に拠点を設置している。
全従業員約600人のうち半数以上が研究開発に従事する。
 グレイオレンジのロボットソリューションは16の国と地域で70社以上の企業が導入している。
主な導入企業の業種は郵便や宅配便、3PLを含む物流企業に加え、アパレル、小売り、電気、精密機器、医薬品、自動車などだ。
韓国の通販大手であるクーパンの物流センターなどでも導入されており、日本ではトラスコ中山の複数拠点や日本梱包運輸倉庫などでの導入実績がある。
日本展開にあたっては三菱商事とGROUNDの2社をパートナーとしている。
 現在、グレイオレンジは展開する各種ロボットハードウエアの名称を「Ranger(レンジャー)」シリーズに統一している。
社名である「GreyOrange」の後半部「range」から採用した。
この自社開発ロボット群とパートナー企業が開発したロボットを組み合わせたラインナップを構築している。
 自社ロボットとしては、商品が入った専用棚を所定の保管場所から作業者がいる作業ステーションまで棚ごと搬送する棚流動型GTPロボットである「レンジャーGTP」、小口仕分け搬送ロボットの「レンジャームーブスマート」、パレット搬送ロボットの「レンジャーIL」、無人フォークリフトタイプの「レンジャーIL-F(フォークリフト)」などを取りそろえる。
このうち、棚流動型ロボットの「レンジャーGTP」はブランド名統一前には「Butler(バトラー)」と呼称していた機器となる。
これら搬送タイプのロボットを「Ranger Robots(レンジャーロボット)」シリーズとして展開している。
 ピッキングロボットは主にパートナー企業と組んでソリューションに組み込んでいる。
こちらは「Ranger Pick(レンジャーピック)」シリーズとして展開しており、個品をピッキングする「レンジャーアイテムピック」、ケースピッキング用の「レンジャーケースピック」などがある。
 これら複数種類の物流ロボットを統合運用することで、物流センターへの入庫から在庫、ピッキング、仕分け、出庫までの一連の業務を省人化するニーズにも対応できる。
国内ではセンター内のほぼ全工程でグレイオレンジのソリューションを一括導入した事例はまだないが、海外では大手アパレルのH&Mの物流センターやチリの大手ホームセンターチェーンであるSodimac(ソディマック)の倉庫などでフルラインでの導入実績がある。
 グレイオレンジの代表的な機種であるレンジャーGTPは機械学習をベースとしたアルゴリズムを応用することで、在庫変動のパターンを解析。
入庫時の棚入れと出庫時のピッキングを行うのに最も適切な位置にある専用棚を棚流動型ロボットが作業ステーションへと搬送するようシステムが指示を出す。
 保管区における専用棚の配置では独自の高密度収納方式「N-Deep」を採用している。
固まって置かれた複数の専用棚のうち、外側に配置されている棚をロボットがいったん動かしてから、内側にある棚を他のロボットが出すといった複数回の棚移動を伴う動作を可能とすることで専用棚を密集して配置できる。
ソフトを軸にソリューション構築  物流ロボットを運用する際の管理ソフトウエアが「GreyMatter(グレイマター)」だ。
ダッシュボード機能も実装されており、ユーザーは生産性や収益率、コストなどをリアルタイムで把握ができる。
また、ある商品の在庫数を10日分に設定していた場合、その数値に近づいた時点で通知を受け取るといったこともできる。
 「ユーザーが意識せずとも効率的な入出庫が可能になるようロボットを制御している。
特定商品の同時出庫が多い場合はこれら商品を同じ専用棚の異なる間口に入れるようシステムが自動的に指示を出すし、1種類の商品をいくつの棚で保管するのが最も入出庫効率がいいのかもAIが割り出してくれる。
よく出る商品は基本的には作業ステーションに近い場所に配置される専用棚に棚入れされ、商品を入れる間口も作業者が取りやすい中段に設定される」とグレイオレンジ日本法人のステファン・ムーア・ジェックス代表取締役は語る。
 一度稼動を開始したら、機械学習によって使えば使うほどその生産性が自動的に向上していくため、使用者側が何かを行う必要は基本的にはないという。
ただし、導入時にはユーザーサイドとの緊密な連携が重要になる。
ユーザー関与が特に重要となるのがマスターデータの整備だ。
ユーザー側がロボット導入に必要となる各種物流データを持っていない場合はグレイオレンジのコンサルタントによる聞き取りや回答式のデータシートなどを活用することによってマスターデータを構築する。
 マスターデータの整備と並んで導入時に重要になるもうひとつの要素が目標値の設定だ。
「1時間当たりの生産性をどの程度にしたいかといった数値を明確にした方がより完成度の高い現場を構築できる。
棚流動型のロボットは数台単位で入れて生産性が上がる種類の設備ではない。
どれくらいの生産性を目指していて、目標値に対してどれくらいの規模の現場を作り込むかをシミュレーションする際には、ユーザーとグレイオレンジがゴールを共有した方がパフォーマンスは確実に上がる」と前田まりこ営業統括責任者は話す。
 グレイオレンジは棚流動型ロボットのレンジャーGTP(旧バトラー)から始まり、そのハードウエアラインナップを拡充していった。
拡充の背景は大きく二つある。
一つは棚流動型ロボット以外の顧客ニーズへの対応。
もうひとつは複数の異なる機能を持つ物流ロボットを効率的に統合運用する制御システムの開発だ。
 「グレイオレンジのロボットソリューションはソフトウエア中心で考えている。
重要なのはハードではなくソフト。
物流ロボット自体はそのうちコモディティ化する。
他社製も含めたあらゆる物流ロボットを管理できるソフトウエアを全世界で展開していくことを目指している」とステファン・ムーア・ジェックス代表取締役。
 グレイオレンジ以外のロボットも対象とする統合制御システムの開発は既に一定程度進んでいる。
海外では他社製のロボットアームをグレイオレンジのシステムで制御する取り組みを実際の物流センターで行っているという。
 「幅広いロボットメーカーとコラボレーションすることで、日本市場のニーズにあった物流ロボットソリューションを提供していきたい。
パートナー企業と連携して既存ユーザーのビジネスを拡大するとともに、新規顧客の開拓にも注力する。
その際には協業に加えて、近年スタッフを拡充したグレイオレンジ日本法人自身による営業にも力を入れることで展開を加速していきたい」とステファン・ムーア・ジェックス代表取締役は意欲を見せた。

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