2021年8月号
特集
特集
ライフコーポレーション 需要予測×AIチューニングで発注を自動化
年間40万時間の発注作業を半減
食品スーパーのライフコーポレーションは今年2月、AIを活用した需要予測自動発注システム「AI-Order Foresight」(以下、AOF)を、全278店舗に導入した。
これまで同社では全店舗合計で年間40万人時を発注作業にかけていた。
それを25万人時程度まで削減した。
さらに半減以下を目指す。
同社はAOFの導入前から自動発注システムを運用してきた。
しかし、売れた分だけ発注する"Sell one Buy one"(セル・ワン・バイ・ワン)方式であるため、賞味期限の長い加工食品や雑貨類など、一時的に在庫が過剰になっても次回の発注で調整できる商品にしか適用できなかった。
そうしたグロサリー商品と違って、牛乳や納豆、豆腐などの日配品は、商品が売れてから発注していたのでは間に合わない。
しかも、スーパーにとって日配品は売り上げ構成比の高い主力商材だ。
欠品することなく、売れ残りも出ないように、アイテムごとに販売数量を予測する必要がある。
そのため同社ではこれまで日配部門の発注作業に1店舗当たり1日3〜4人時を割いていた。
AOFの導入を機に日配品の自動発注に踏み切った。
発注は小売業の生命線とも言われている。
しかし、AIの予測値は容易にはその根拠を説明できない“ブラックボックス”だ。
社内には大事な判断をAIに依存することを不安視したり、システム開発に反対する者もいた。
それでも、システム導入を担当した同社の岸本裕之コーポレート統括担当課長は「クルマを運転する時に、エンジンの構造が分からなくても運転ができるのと一緒」と腹をくくった。
最大の理由は人手不足だ。
従業員の作業負担を軽減しなければ、いずれサービスレベルを維持できなくなる。
いつまでも発注業務を聖域にしておくわけにはいかないと判断した。
システム開発のパートナーには日本ユニシスを選んだ。
日本ユニシスは過去にライフの基幹システムの開発を経験しており、ライフのビジネスを熟知している。
しかも日本ユニシスは需要予測エンジンをAIで自動チューニングする技術を持っていた。
その特徴は主に以下の四つ。
● 説明変数の自動選択 売価、プロモーション、天候など、売れ行きに影響を与える可能性のあるたくさんの要素のうち、何がどれだけ影響しているのか、SKU単位の実績データを分析し、予測に使用する説明変数とその最適ウエイトを自動選択する。
予測モデルの信頼性を確保することができる。
● 複数学習パターンの自動適用 機械学習の学習パターンのうち、最適なものを自動で選んで適用する。
細かい傾向を考慮したモデルを作成することができる。
● 最適モデルの自動作成 最適な販売数の予測モデルを自動で作成する。
専門家がチューニングすることなく、精度の高い予測モデルを利用できるようになる。
● 発注数の自動調整 販売機会の損失と廃棄ロスのどちらに重点を置くか、その企業の運営方針を反映して発注数を自動で調整する。
発注担当者による細かい設定が不要になる。
他の自動発注システムも検討した。
しかし通常の需要予測エンジンは、アイテムごとに計算ロジックやパラメータなどを運用担当者が調整する必要がある。
そうした専門スキルを備えた人材を各店舗に配置するのは現実的ではなかった。
日本ユニシスのソリューションには期待が持てた。
2018年10月、関東2店舗・関西2店舗の計4店舗で、約2千アイテムを対象に実証実験を開始した。
まずはリスクを回避するために既存の自動発注システムと並行して運用した。
需要予測エンジンが算出したアイテム別の推奨発注量をExcelに出力、その精度を検証した。
発注担当者はタブレット型の小売業向け店舗発注端末「EOB」(Electric Order Book)に手動で発注数量を入力するかたちで発注業務を行っている。
EOBにはその日に発注が必要な商品が表示されるほか、商品別にいつどの程度の数量の発注が行われたかを発注欄から確認できる。
実証実験では発注担当者はAOFの推奨値を確認した上で、そこに自分の判断を加えてEOBで発注した。
開発プロジェクトチームは、AOFの推奨値と実際の発注量、その結果として生じた過剰在庫や見切り・廃棄品を記録していった。
AOFの予測精度は実験当初から7割を超えていた。
ライフの人力発注の精度には及ばなかったが、運用体制を整備すれば十分に克服できるレベルだった。
需要予測に利用するデータを体系的に整理して問題を一つ一つ潰していった。
例えば、発注はケース単位でもバラで店頭に陳列して販売していると、バラとケースでは商品コードが違うためPOSデータから実在庫が見えなくなってしまう。
バラとケースのデータをひも付ける改修が必要だった。
また、店舗への納品は開店前だけでなく一部、夕方以降にもある。
朝一番で仕入れる分と当日の残り時間が短い夕方納品分では売れ方が違う。
納品時間帯を意識して発注数を決める必要があることが分かった。
懸念は予測精度だけではなかった。
発注の自動化は売場レベルを下げないことが大前提だった。
そのため経営層が時間帯を変えて何度も対象店舗を訪れて、売場の状態を確認した。
実証実験は20年2月まで1年半近くにわたり続いた。
予測精度は発注担当者が行うのと同程度まで上昇した。
しかも、発注漏れや発注の入力ミスがなくなった。
1日3〜4時間かかっていた発注業務は2時間程度に短縮された。
発注担当者の教育期間も大幅に短くなった。
その分、店舗スタッフは本来の売場作りに時間を割けるようになった。
経営層は全店舗への導入にOKを出した。
生鮮三品も自動発注の対象に 今後は対象商品を拡大していく。
現状ではセル・ワン・バイ・ワン方式で発注している他のグロサリー商品の発注方法を需要予測に切り替えていくほか、肉・野菜・魚の生鮮三品にも対象を拡大する計画だ。
AOFの見える化機能を利用して廃棄ロス対策も強化する。
従来、廃棄ロスはトータルの在庫金額で把握しているだけだった。
AOFの在庫データを使えばSKU別の廃棄在庫量をカウントできる。
「物流のオペレーションの見直しを行っていく必要もある」と岸本課長は言う。
例えばメーカー倉庫から物流センターに商品が入荷される段階で伝票処理の遅れがあると、仕入れ確定が遅れて、理論在庫と実在庫に差異が生じる。
正しい予測ができなくなる。
仕入先の卸やメーカーも巻き込んで改善する必要がある。
その一方でAOFのデータを物流部門が共有することで現場のオペレーションを効率化できる。
従来は店舗から午前中に発注した商品が半日後に入荷されるため、準備のための時間的な余裕がなかった。
ライフではAOFに4日後までの需要予測をさせている。
そのデータを配車計画や庫内作業計画、人員計画に反映させる。
AOFが店舗の人手不足のみならず、物流現場の負担軽減にも一役買うことになる。
これまで同社では全店舗合計で年間40万人時を発注作業にかけていた。
それを25万人時程度まで削減した。
さらに半減以下を目指す。
同社はAOFの導入前から自動発注システムを運用してきた。
しかし、売れた分だけ発注する"Sell one Buy one"(セル・ワン・バイ・ワン)方式であるため、賞味期限の長い加工食品や雑貨類など、一時的に在庫が過剰になっても次回の発注で調整できる商品にしか適用できなかった。
そうしたグロサリー商品と違って、牛乳や納豆、豆腐などの日配品は、商品が売れてから発注していたのでは間に合わない。
しかも、スーパーにとって日配品は売り上げ構成比の高い主力商材だ。
欠品することなく、売れ残りも出ないように、アイテムごとに販売数量を予測する必要がある。
そのため同社ではこれまで日配部門の発注作業に1店舗当たり1日3〜4人時を割いていた。
AOFの導入を機に日配品の自動発注に踏み切った。
発注は小売業の生命線とも言われている。
しかし、AIの予測値は容易にはその根拠を説明できない“ブラックボックス”だ。
社内には大事な判断をAIに依存することを不安視したり、システム開発に反対する者もいた。
それでも、システム導入を担当した同社の岸本裕之コーポレート統括担当課長は「クルマを運転する時に、エンジンの構造が分からなくても運転ができるのと一緒」と腹をくくった。
最大の理由は人手不足だ。
従業員の作業負担を軽減しなければ、いずれサービスレベルを維持できなくなる。
いつまでも発注業務を聖域にしておくわけにはいかないと判断した。
システム開発のパートナーには日本ユニシスを選んだ。
日本ユニシスは過去にライフの基幹システムの開発を経験しており、ライフのビジネスを熟知している。
しかも日本ユニシスは需要予測エンジンをAIで自動チューニングする技術を持っていた。
その特徴は主に以下の四つ。
● 説明変数の自動選択 売価、プロモーション、天候など、売れ行きに影響を与える可能性のあるたくさんの要素のうち、何がどれだけ影響しているのか、SKU単位の実績データを分析し、予測に使用する説明変数とその最適ウエイトを自動選択する。
予測モデルの信頼性を確保することができる。
● 複数学習パターンの自動適用 機械学習の学習パターンのうち、最適なものを自動で選んで適用する。
細かい傾向を考慮したモデルを作成することができる。
● 最適モデルの自動作成 最適な販売数の予測モデルを自動で作成する。
専門家がチューニングすることなく、精度の高い予測モデルを利用できるようになる。
● 発注数の自動調整 販売機会の損失と廃棄ロスのどちらに重点を置くか、その企業の運営方針を反映して発注数を自動で調整する。
発注担当者による細かい設定が不要になる。
他の自動発注システムも検討した。
しかし通常の需要予測エンジンは、アイテムごとに計算ロジックやパラメータなどを運用担当者が調整する必要がある。
そうした専門スキルを備えた人材を各店舗に配置するのは現実的ではなかった。
日本ユニシスのソリューションには期待が持てた。
2018年10月、関東2店舗・関西2店舗の計4店舗で、約2千アイテムを対象に実証実験を開始した。
まずはリスクを回避するために既存の自動発注システムと並行して運用した。
需要予測エンジンが算出したアイテム別の推奨発注量をExcelに出力、その精度を検証した。
発注担当者はタブレット型の小売業向け店舗発注端末「EOB」(Electric Order Book)に手動で発注数量を入力するかたちで発注業務を行っている。
EOBにはその日に発注が必要な商品が表示されるほか、商品別にいつどの程度の数量の発注が行われたかを発注欄から確認できる。
実証実験では発注担当者はAOFの推奨値を確認した上で、そこに自分の判断を加えてEOBで発注した。
開発プロジェクトチームは、AOFの推奨値と実際の発注量、その結果として生じた過剰在庫や見切り・廃棄品を記録していった。
AOFの予測精度は実験当初から7割を超えていた。
ライフの人力発注の精度には及ばなかったが、運用体制を整備すれば十分に克服できるレベルだった。
需要予測に利用するデータを体系的に整理して問題を一つ一つ潰していった。
例えば、発注はケース単位でもバラで店頭に陳列して販売していると、バラとケースでは商品コードが違うためPOSデータから実在庫が見えなくなってしまう。
バラとケースのデータをひも付ける改修が必要だった。
また、店舗への納品は開店前だけでなく一部、夕方以降にもある。
朝一番で仕入れる分と当日の残り時間が短い夕方納品分では売れ方が違う。
納品時間帯を意識して発注数を決める必要があることが分かった。
懸念は予測精度だけではなかった。
発注の自動化は売場レベルを下げないことが大前提だった。
そのため経営層が時間帯を変えて何度も対象店舗を訪れて、売場の状態を確認した。
実証実験は20年2月まで1年半近くにわたり続いた。
予測精度は発注担当者が行うのと同程度まで上昇した。
しかも、発注漏れや発注の入力ミスがなくなった。
1日3〜4時間かかっていた発注業務は2時間程度に短縮された。
発注担当者の教育期間も大幅に短くなった。
その分、店舗スタッフは本来の売場作りに時間を割けるようになった。
経営層は全店舗への導入にOKを出した。
生鮮三品も自動発注の対象に 今後は対象商品を拡大していく。
現状ではセル・ワン・バイ・ワン方式で発注している他のグロサリー商品の発注方法を需要予測に切り替えていくほか、肉・野菜・魚の生鮮三品にも対象を拡大する計画だ。
AOFの見える化機能を利用して廃棄ロス対策も強化する。
従来、廃棄ロスはトータルの在庫金額で把握しているだけだった。
AOFの在庫データを使えばSKU別の廃棄在庫量をカウントできる。
「物流のオペレーションの見直しを行っていく必要もある」と岸本課長は言う。
例えばメーカー倉庫から物流センターに商品が入荷される段階で伝票処理の遅れがあると、仕入れ確定が遅れて、理論在庫と実在庫に差異が生じる。
正しい予測ができなくなる。
仕入先の卸やメーカーも巻き込んで改善する必要がある。
その一方でAOFのデータを物流部門が共有することで現場のオペレーションを効率化できる。
従来は店舗から午前中に発注した商品が半日後に入荷されるため、準備のための時間的な余裕がなかった。
ライフではAOFに4日後までの需要予測をさせている。
そのデータを配車計画や庫内作業計画、人員計画に反映させる。
AOFが店舗の人手不足のみならず、物流現場の負担軽減にも一役買うことになる。
