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2021年8月号
特集

サントリーロジスティクス フォークのドラレコ映像から危険運転を検知

視聴時間を半分に短縮  サントリーロジスティクスは1999年、物流現場の安全向上策を統括する社長直轄の専任部署「安全推進部」を開設した。
サントリーグループ全体の物流業務で安全や品質の向上を司る「サントリー安全推進委員会」の事務局の一員として、サントリーMONOZUKURIエキスパートと連携しながら全国の拠点で安全意識の徹底を図っている。
 その一環として2018年、サントリーロジスティクスの現場で稼働中のフォークリフトにドライブレコーダーを導入した。
運転席から360度周辺を撮影し、スピードの出し過ぎといった危険な操作がないかどうかを精緻にチェックできる。
現在は約200台のフォークリフト全てに設置している。
 19年からは春と秋の年2回、安全推進部の担当者が“総点検”と銘打ち、全てのフォークリフトの運転内容をドライブレコーダーの映像から分析・確認し、オペレーター全員分の安全性を評価。
問題点を改善するよう指導している。
現在は評価のポイントを23項目設定しており、運転内容の評価はSからDまで5段階で行っている。
 サントリーロジスティクスの武藤多賀志社長は「ドライブレコーダーは事故の状況を映像で確認する狙いを持った機器だが、当社ではその前段として、そもそも事故を未然に防ぐために活用しようと考えて導入した。
当初は従業員から常に見られているような気がするといったネガティブな意見も聞かれたが、ドライブレコーダーの映像を見ながら研修することを続け、徐々に受け入れられてきた。
われわれが何を求めているのか、オペレーターの皆さんに理解してもらえるようになり、拠点内の雰囲気も変わってきた」と振り返る。
 総点検の開始当初はC、Dランクのオペレーターが相当数存在していたが、20年以降は全体に占めるS、Aクラスのオペレーターの割合が飛躍的に増え、21年春にはC、Dランクのオペレーターがゼロになった。
取り組みの成果が着実に挙がっている。
 ただし、総点検を続ける中で課題も浮き彫りになった。
安全推進部の担当者は毎回、約200人分のドライブレコーダー映像に全て目を通し、一時停止すべき場所で周辺に人や他のフォークリフトがいないかを十分に確認していないといった、問題のある運転の有無を克明にチェックしている。
確認作業を終えるのにオペレーター1人当たり数十分を要していた。
全員となると延べ約500時間にも達する。
負荷が非常に大きかった。
 人の目でチェックしているため、長時間作業を続けていると疲れが蓄積してどうしても集中力が低下する。
危険な運転を見落とすリスクがあった。
担当者間で安全評価にばらつきが出ないようにする工夫も必要だった。
 そこで富士通の協力を得て、安全運転の評価業務効率化に乗り出した。
富士通グループで企業向けにAIソリューションの開発などを手掛けている富士通クラウドテクノロジーズも参加し、AIがドライブレコーダーの映像を解析、危険運転の有無を自動判定するシステムの開発に着手、約1年で実用化に至った。
 新システムはAIがドライブレコーダーの映像を基に、「①フォークリフトの走行状態(走行中、旋回中、停止中)」「②オペレーターの乗車状態(乗車中、下車中)」「③爪の昇降位置の状態(操作中、停止中)」──の三つの状態を把握する。
 それぞれの組み合わせから、危険なシーンとして①走行と同時に荷物を乗せた爪を上下させるなどの「ながら操作」②爪に乗せる前に荷物の揺れが収まっているかを十分確認していない「静止確認不足」③停止線などで一時停止し死角部分の安全を確認することが不十分な「一時停止確認不足」──をAIが自動的に検知して警告。
ユーザーに注視させている。
 AIが解析した後の映像を再生すると、ながら操作などが起きる数秒前に、画面上に危険運転の種類を表示し、見ている人に注意を促す。
また、安全運転している部分は早く、危険運転とみなされる部分はゆっくりと再生スピードを自動的に変え、より効率的に確認できるよう配慮している。
 さらに、画面上部には、オペレーターが運転している総時間のうち、安全運転している時間の割合を示す「安全係数」を表示。
それぞれのオペレーターがどの程度安全運転できているかを視覚的にすぐ理解できるよう工夫している。
 今年4月以降、技術検証を進めた結果、フォークリフトの安全運転評価に要する時間を約50%短縮できる見通しとなった。
各オペレーターの最終的な評価は引き続き安全推進部の担当者が映像から判断しており、AIはその補助的な位置付けだ。
 サントリーロジスティクスの小玉光志安全推進部長は「人が判断している部分は同じだが、例えば動画が20分の長さだとしたら、20分ずっと凝視する必要がなくなり、担当者の精神的、身体的な負荷がいずれもかなり軽減される。
オペレーターの皆さんに対しても、AIによる第三者的評価を活用して指導できるので、より説得力があるのではないか」と効果に大きな期待を表明。
今年秋の総点検からの本格活用に向け、準備を進めている。
リアルタイムで警告機能追加も視野  AIが23項目全てチェックする完全自動判断が理想のように思えるが、現時点ではまず3項目に絞ってのスタートとなる。
武藤社長は「なるべく早くシステムを導入したかったので、23項目の中でも特にチェックしたいものに絞り込んだ。
運用状況を見ながら、他の項目にも対応するかどうかを考えていきたい」と語る。
 新システムはクラウドベースで運用し、解析したい動画をアップロードすると、元の動画の約4倍の時間で解析が完了する。
将来はその時間を2倍程度までさらに短縮できるよう、富士通側とも引き続きシステムの機能向上で連携する方針だ。
 今後はドライブレコーダーの映像を基に、フォークリフトを運転している際、リアルタイムで危険運転を検知するとアラームでオペレーターに通知する機能の追加なども視野に入れている。
 サントリーMONOZUKURIエキスパートSCM本部の中村繁物流部長は「協力事業者の方々からもシステムに関して問い合わせを頂戴している。
ぜひお使いいただき、安全性をさらに高めていけるようにしたい」と意欲を示す。
武藤社長も「いずれは総点検の時にとどまらず、各拠点でシステムを日ごろから安全指導に活用できるレベルまで持っていきたい」と強調している。

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