2021年7月号
特集
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物流技術管理士 日本のロジスティクス知識の共通基盤を形成
荷主から事業者まで幅広い層が受講
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)では現在、ロジスティクス人材の階層別教育プログラムとして「物流技術管理士資格認定講座」、「ロジスティクス経営士資格認定講座」、「物流技術管理士補資格認定コース」、「ロジスティクス基礎講座」を運営している。
また、テーマ別育成講座として「国際物流管理士資格認定講座」、「物流現場改善士資格認定講座」、「ストラテジックSCMコース」も設置している。
このうち物流技術管理士資格認定講座が階層別教育コースの中核を成している。
ロジスティクスの基礎を理解している中堅層を対象とするもので、資格取得後は専門知識と管理技術を保有するロジスティクスのプロフェッショナルとして認定される。
前身となる資格講座は1971年から開講されており、92年のJILS発足とともに現行の形および名称となった。
これまでに1万1671人(2020年10月時点)が取得している。
一般社員を主な対象とする物流技術管理士補の取得者は約2600人。
物流技術管理士の上位資格でCLO(最高ロジスティクス責任者)の養成を目的とするロジスティクス経営士の取得者は約440人となっている。
物流技術管理士の受講者の役職構成は、課長・センター長、係長・主任などが全体の70%近くを占める。
受講者が所属する企業は荷主企業が約20%、物流子会社が約30%、物流事業者が約40%、情報システムが約5%、その他が約5%という構成だ。
受講企業の業種別比率には近年、変化の兆しが見られる。
物流アウトソーシングの広がりと呼応して、荷主企業における物流技術管理士の受講企業は物流事業者の比率が長期的に高まる傾向にあった。
しかし、ここ数年は荷主企業の受講者が増えてきているという。
物流クライシスの影響だ。
物流が荷主企業の経営課題として浮上したが、物流管理のノウハウがアウトソーシングに伴い失われてしまったために、あらためて物流人材を育てる必要が生じている。
JILSの五関信之事務局長総務部長は「さらに今後は荷主企業でも小売りや卸などの着荷主の増加を期待したい。
いくら発荷主や物流事業者が改革を進めようとしても着側の協力が得られないと、できることは限られる。
サプライチェーンに関与する幅広い層が共通のロジスティクスの知識を学び、人的なネットワークを構築することで、日本全体のサプライチェーン最適化が進む。
その実現に物流技術管理士資格認定講座を役立てたい」と語る。
物流技術管理士資格認定講座の21年度プログラムはプレミーティング、全13単元の講義、講義レポート、筆記試験、論文試験、面接試験で構成されている。
初回のプレミーティングは2日間、各単元の大半は午前中から夕方までの1日単位の授業となる。
約半年間に18日間を受講することになる。
21年度の5月開始コース(第144期)は全ての単元をオンラインで行っている。
7月開始(第145期)と9月開始(第146期)は、各単元の座学はオンライン、グループ演習は集合形式で実施する。
受講料はJILS会員が49万5千円、JILS会員外が60万5千円。
物流技術管理士資格認定講座の講師陣は実務家、学識経験者、コンサルタントなどから構成されており、理論と実務に即した実践的な内容を組み合わせている。
座学ではテーマ別の講義の他に個人演習も行う。
グループ演習で切磋琢磨 物流技術管理士資格認定講座の特徴の一つがグループ演習だ。
1班8人程度。
初回のプレミーティングを含め5回程度実施する。
グループのメンバーはグループ演習ごとに毎回入れ替えている。
五関事務局長は「グループ演習の班分けをする際には荷主企業、物流企業、システム会社といった異なる業種の受講者がバランス良く一つの班に入るようにしている」と説明する。
プレミーティングで行う最初のグループ演習のテーマは問題発見と解決だ。
多くの場合、受講者が実務で担当している物流現場を俎上に置いて、誤出荷や誤ピッキングなどといった課題をあぶりだし、あるべき姿についてグループのメンバーが議論し、解決策の立案と実行手順を計画する。
「いきなり座学から入るより、どのようなメンバーが参加しているのか分かるように、グループ演習を最初にもってきている。
テーマとしても、異なる背景を持つ受講者が共通して取り組めるように、問題発見から改善策を探るという汎用性の高いものを選んでいる」と五関事務局長。
次のグループ演習では、「稼動分析」や「ワークサンプリング」、「R-f分析」といった現場改善技法、分析手法の使い方を経験する。
その次のグループ演習はケーススタディー。
プレミーティングとは違って受講者の現場ではなく、講師が用意した架空企業のデータを用いて、輸配送ネットワークの構築、在庫管理、荷役作業の問題点を整理して、レイアウト改善や動線分析をグループで実施する。
最後のグループ演習は一連の講座の集大成となる。
近年は、EC物流への対応を想定して架空の通販事業者の物流センターの改善をテーマにしている。
赤字に陥っている通販センターを立て直すために、短期、中期、長期の改革案をそれぞれ立案する。
グループ演習は受講者や講師とのやり取りを通じて構築される人的なネットワークの形成も大きな要素の一つ。
実際、半年間の講義を終えた後も、同期や講師とは、実務家同士の付き合いが長く続くことが多いという。
オンラインの講義には3大都市圏以外の遠方からでも参加できるメリットがある。
そのためJILSでは、オンラインの講義とグループ演習を組み合わせたプログラムを今後さらに検討していく考えだ。
座学では「物流コスト管理」「物流拠点管理」「輸配送管理」「包装技術」「物流現場改善」「在庫管理とSCM」「物流アウトソーシングと3PL」などといったテーマで講義が行われる。
JILS総合研究所の川村和也プログラムプランナーは「ある受講者は包装技術の講座で1ミリ、2ミリの改善が倉庫スペースの有効活用につながることを知り、自分の現場でシミュレーションして実行に移し、保管効率の向上を実現した」と語る。
出席・レポート・試験の三つで判定 資格の認定には三つの要件がある。
一つは出席。
全講義日数18日のうち、14日以上の出席が必要だ。
二つ目はレポート。
前期・後期にそれぞれ受講レポートを提出する。
各単元で学んだ内容を実務にどう生かすか、単元ごとに整理させる狙いだ。
三つ目が試験だ。
試験は3種類ある。
客観試験は講座で学んだ内容の習熟度を図る筆記試験で前期・後期の2回に分けて実施される。
正誤問題、選択問題、穴埋め問題、計算問題などの形式で出題される。
テキストや作成したノートなどを持ち込める。
論文試験は講座で学んだ内容を活用して、5千から6千字の論文を作成する。
論文テーマは主に自身の業務や企業における改善や改革に関する内容となる。
面接試験は作成した論文の内容について、実務家や学識経験者、コンサルタントで構成される物流技術管理士専門委員会の委員2名を相手に面接を受ける。
作成した論文を的確に説明し、質問に回答するプレゼンテーション能力が問われる。
2020年度の合格率は90%台だった。
中山剛速JILS総合研究所副所長は「高い合格率に思えるかもしれないが、18日間の各講義は基本的にはどれも丸一日かかる。
約半年の講義期間中に全て出席するのはかなり大変。
それに加えて筆記試験と論文試験、面接試験もある。
学習意欲の高い受講者がしっかりと勉強した結果が9割以上の資格取得につながっている」と話す。
JILSでは階層別・職種別資格認定講座のほかにも、各種セミナーを定期的に開催している。
最近は「S&OPセミナー」「需給予測の基本セミナー」「物流コスト&KPI管理入門セミナー」などに人気が集まっている。
こうしたセミナーを新たな教育コースとして発展させることも検討しているという。
ロジスティクス教育の裾野を広げることも課題の一つだ。
五関事務局長は「コンパクトに4日間でロジスティクスの基礎を学べるのが『ロジスティクス基礎講座』だが、それでもまだ物流部門の人以外が受講するのはハードルが高い。
もっとコンパクトにロジスティクスの重要性や魅力を伝えたい。
そのトリガーとなるパンフレットやパワポ資料などをツールとして提供することを検討していきたい」と、さらなる普及に向けた取り組みを進める方針だ。
また、テーマ別育成講座として「国際物流管理士資格認定講座」、「物流現場改善士資格認定講座」、「ストラテジックSCMコース」も設置している。
このうち物流技術管理士資格認定講座が階層別教育コースの中核を成している。
ロジスティクスの基礎を理解している中堅層を対象とするもので、資格取得後は専門知識と管理技術を保有するロジスティクスのプロフェッショナルとして認定される。
前身となる資格講座は1971年から開講されており、92年のJILS発足とともに現行の形および名称となった。
これまでに1万1671人(2020年10月時点)が取得している。
一般社員を主な対象とする物流技術管理士補の取得者は約2600人。
物流技術管理士の上位資格でCLO(最高ロジスティクス責任者)の養成を目的とするロジスティクス経営士の取得者は約440人となっている。
物流技術管理士の受講者の役職構成は、課長・センター長、係長・主任などが全体の70%近くを占める。
受講者が所属する企業は荷主企業が約20%、物流子会社が約30%、物流事業者が約40%、情報システムが約5%、その他が約5%という構成だ。
受講企業の業種別比率には近年、変化の兆しが見られる。
物流アウトソーシングの広がりと呼応して、荷主企業における物流技術管理士の受講企業は物流事業者の比率が長期的に高まる傾向にあった。
しかし、ここ数年は荷主企業の受講者が増えてきているという。
物流クライシスの影響だ。
物流が荷主企業の経営課題として浮上したが、物流管理のノウハウがアウトソーシングに伴い失われてしまったために、あらためて物流人材を育てる必要が生じている。
JILSの五関信之事務局長総務部長は「さらに今後は荷主企業でも小売りや卸などの着荷主の増加を期待したい。
いくら発荷主や物流事業者が改革を進めようとしても着側の協力が得られないと、できることは限られる。
サプライチェーンに関与する幅広い層が共通のロジスティクスの知識を学び、人的なネットワークを構築することで、日本全体のサプライチェーン最適化が進む。
その実現に物流技術管理士資格認定講座を役立てたい」と語る。
物流技術管理士資格認定講座の21年度プログラムはプレミーティング、全13単元の講義、講義レポート、筆記試験、論文試験、面接試験で構成されている。
初回のプレミーティングは2日間、各単元の大半は午前中から夕方までの1日単位の授業となる。
約半年間に18日間を受講することになる。
21年度の5月開始コース(第144期)は全ての単元をオンラインで行っている。
7月開始(第145期)と9月開始(第146期)は、各単元の座学はオンライン、グループ演習は集合形式で実施する。
受講料はJILS会員が49万5千円、JILS会員外が60万5千円。
物流技術管理士資格認定講座の講師陣は実務家、学識経験者、コンサルタントなどから構成されており、理論と実務に即した実践的な内容を組み合わせている。
座学ではテーマ別の講義の他に個人演習も行う。
グループ演習で切磋琢磨 物流技術管理士資格認定講座の特徴の一つがグループ演習だ。
1班8人程度。
初回のプレミーティングを含め5回程度実施する。
グループのメンバーはグループ演習ごとに毎回入れ替えている。
五関事務局長は「グループ演習の班分けをする際には荷主企業、物流企業、システム会社といった異なる業種の受講者がバランス良く一つの班に入るようにしている」と説明する。
プレミーティングで行う最初のグループ演習のテーマは問題発見と解決だ。
多くの場合、受講者が実務で担当している物流現場を俎上に置いて、誤出荷や誤ピッキングなどといった課題をあぶりだし、あるべき姿についてグループのメンバーが議論し、解決策の立案と実行手順を計画する。
「いきなり座学から入るより、どのようなメンバーが参加しているのか分かるように、グループ演習を最初にもってきている。
テーマとしても、異なる背景を持つ受講者が共通して取り組めるように、問題発見から改善策を探るという汎用性の高いものを選んでいる」と五関事務局長。
次のグループ演習では、「稼動分析」や「ワークサンプリング」、「R-f分析」といった現場改善技法、分析手法の使い方を経験する。
その次のグループ演習はケーススタディー。
プレミーティングとは違って受講者の現場ではなく、講師が用意した架空企業のデータを用いて、輸配送ネットワークの構築、在庫管理、荷役作業の問題点を整理して、レイアウト改善や動線分析をグループで実施する。
最後のグループ演習は一連の講座の集大成となる。
近年は、EC物流への対応を想定して架空の通販事業者の物流センターの改善をテーマにしている。
赤字に陥っている通販センターを立て直すために、短期、中期、長期の改革案をそれぞれ立案する。
グループ演習は受講者や講師とのやり取りを通じて構築される人的なネットワークの形成も大きな要素の一つ。
実際、半年間の講義を終えた後も、同期や講師とは、実務家同士の付き合いが長く続くことが多いという。
オンラインの講義には3大都市圏以外の遠方からでも参加できるメリットがある。
そのためJILSでは、オンラインの講義とグループ演習を組み合わせたプログラムを今後さらに検討していく考えだ。
座学では「物流コスト管理」「物流拠点管理」「輸配送管理」「包装技術」「物流現場改善」「在庫管理とSCM」「物流アウトソーシングと3PL」などといったテーマで講義が行われる。
JILS総合研究所の川村和也プログラムプランナーは「ある受講者は包装技術の講座で1ミリ、2ミリの改善が倉庫スペースの有効活用につながることを知り、自分の現場でシミュレーションして実行に移し、保管効率の向上を実現した」と語る。
出席・レポート・試験の三つで判定 資格の認定には三つの要件がある。
一つは出席。
全講義日数18日のうち、14日以上の出席が必要だ。
二つ目はレポート。
前期・後期にそれぞれ受講レポートを提出する。
各単元で学んだ内容を実務にどう生かすか、単元ごとに整理させる狙いだ。
三つ目が試験だ。
試験は3種類ある。
客観試験は講座で学んだ内容の習熟度を図る筆記試験で前期・後期の2回に分けて実施される。
正誤問題、選択問題、穴埋め問題、計算問題などの形式で出題される。
テキストや作成したノートなどを持ち込める。
論文試験は講座で学んだ内容を活用して、5千から6千字の論文を作成する。
論文テーマは主に自身の業務や企業における改善や改革に関する内容となる。
面接試験は作成した論文の内容について、実務家や学識経験者、コンサルタントで構成される物流技術管理士専門委員会の委員2名を相手に面接を受ける。
作成した論文を的確に説明し、質問に回答するプレゼンテーション能力が問われる。
2020年度の合格率は90%台だった。
中山剛速JILS総合研究所副所長は「高い合格率に思えるかもしれないが、18日間の各講義は基本的にはどれも丸一日かかる。
約半年の講義期間中に全て出席するのはかなり大変。
それに加えて筆記試験と論文試験、面接試験もある。
学習意欲の高い受講者がしっかりと勉強した結果が9割以上の資格取得につながっている」と話す。
JILSでは階層別・職種別資格認定講座のほかにも、各種セミナーを定期的に開催している。
最近は「S&OPセミナー」「需給予測の基本セミナー」「物流コスト&KPI管理入門セミナー」などに人気が集まっている。
こうしたセミナーを新たな教育コースとして発展させることも検討しているという。
ロジスティクス教育の裾野を広げることも課題の一つだ。
五関事務局長は「コンパクトに4日間でロジスティクスの基礎を学べるのが『ロジスティクス基礎講座』だが、それでもまだ物流部門の人以外が受講するのはハードルが高い。
もっとコンパクトにロジスティクスの重要性や魅力を伝えたい。
そのトリガーとなるパンフレットやパワポ資料などをツールとして提供することを検討していきたい」と、さらなる普及に向けた取り組みを進める方針だ。
