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2021年7月号
特集

CPSM(Certified Professional in Supply Management) 米ISMが認定する購買・調達スペシャリスト

 米サプライマネジメント協会(Institute for Supply Management : ISM)は、1915年に設立した世界最古のNPOで、米国で最も権威のある専門職団体の一つとされる。
同協会が毎月公表している「ISM製造業景況感指数」および「ISM非製造業景況感指数」は、米国景気の先行指標として広く知られている。
 ISMは1975年に購買・調達マネジャーの専門資格として「C.P.M.(Certified Purchasing Manager)」をスタートした。
さらに2008年に同資格を刷新、「CPSM(Certified Professional in Supply Management)」と名称を変更した。
現在までに世界75カ国以上の延べ5万人以上が同資格を取得している。
 日本ではISMの日本支部、日本サプライマネジメント協会(ISMジャパン)がCPSMの取得を支援している。
ISMジャパンは購買・調達の実務家や研究者たちがボランティアで運営するNPO。
その代表理事を務める久原勇作氏と、主席委員の渡辺信樹氏(日立製作所)に話を聞いた。
(大矢昌浩) 米CPSMと英CIPSが双璧 ──購買・調達の資格としては、日本では日本能率協会が運営する「CPP(購買・調達プロフェッショナルスキル資格)」が知られています。
ISMジャパン 久原勇作 代表理事「CPPも良い資格だと思いますが、国際的には米ISMの『CPSM』と、英国の『CIPS(Chartered Institute Of Procurement & Supply)』の二つがスタンダードです。
CPSMはアメリカの資格ですが、カナダはもちろん、中国、韓国、東南アジア、インドなど世界中に展開しています。
一方、英国のCIPSは欧州を中心に普及しています。
CPSMとCIPSは提携を結び、お互いの資格を認めています。
海外のグローバル企業や公的機関の多くが、購買・調達部門の管理職にどちらかの資格の取得を推奨するか、もしくは義務付けています」 ──購買・調達は学校では教えていないのでしょうか。
久原「残念ながら日本には調達を体系的に教えている教育機関はありません。
アメリカだとアリゾナ州立大をはじめ調達の専門学部を置いている大学もあるのですが、日本では学問として確立されていない。
そのため社会人になってから学ぶことになるわけですが、日本で資格を取得するとすれば『CPP』か『CPSM』のどちらかを選ぶのが現実的だと思います。
CPSMの取得には3年以上の実務経験が必要ですが、CIPSはさらにハードルが高く、教育期間も長いと聞いています。
日本人でCIPSを受験したという人にはまだお会いしたことがありません」 ──CPSMの認知度は日本では高くありません。
資格取得者も相当に少ないという印象です。
久原「残念ながらその通りです。
英語の教科書で勉強して試験も英語で受けなければならないので、やはり普通の日本人にはハードルが高い。
過去には日本語でCPSMの試験を受けられた時期があって、日本人取得者も多い時で100人くらいいたのですが、今はわれわれが把握しているだけだと50人くらい。
それに対して中国や韓国、インドなどの国にはそれぞれ数千人規模の資格取得者がいます」 ──日本以外のアジアの実務家たちが資格を取得している理由は? 久原「アジアでもサムスン電子のようなグローバル企業だと、ISMの会員になってCPSMを取得していないと、そもそも調達部門のスタッフとして認めてもらえないんです。
他のグローバル企業も調達部門のマネジャークラス以上となると、かなりの割合で資格を取得しています」 渡辺信樹 主席委員「日本以外のアジアでCPSMの取得者が多いのは、それだけ人材市場の競争が激しいということの表れでもあると思います。
世界共通用語を使い、国際的なスタンダードに沿って仕事ができて、結果を出せる、ということを証明するには、資格を取るのが手っ取り早い。
そのため会社から強制されなくても、個人で進んでリカレント教育を受けて、人材市場で他の人と差を付けようとする」 久原「確かに、日本人は社会人になってから教育にかけるお金と時間が著しく少ない。
特に日本の大手企業に入社すると終身雇用制が残っているので社内競争ばかりに目が向いてしまう」 渡辺「日本は調達部門の社内的な地位も低い。
転職サイトで同じクラスの調達マネジャーの待遇を比較すると、日本企業と外資系で20〜30%は違います。
海外ではそれだけ調達職が大事にされている。
調達部門を経てトップまで上り詰めていく人も多い。
日本ではまれです。
ロジスティクスについても同じことが言えるかもしれません」 ──渡辺さんご自身がCPSMを取得した理由と、これまでのキャリアを教えてもらえますか。
渡辺「調達のスペシャリストとして国際的に活躍したいと考えてCPSMを取得しました。
実際、昨年現職に就くまでは調達の専門職として外資系メーカーをわたり歩いてきました。
現在は日立製作所の調達部門に当たるバリューインテグレーション統括本部で、ロジスティクス&FTAというチームに所属しています。
グローバルロジスティクスの最適化がミッションで、私自身はインドを担当しています」 必要な学習時間の目安は600時間 ──CPSMの難易度はどのレベルと考えればよいでしょうか。
久原「合格率は60%と発表されていますが、途中で断念した人はカウントされていないので、実際にはそれよりも低いはずです。
周囲を見る限り50%くらいだろうと思います。
一般的に簿記の2級に合格するには200時間、1級だと800時間くらいの勉強が必要と言われていますが、CPSMの場合は3教科それぞれ200時間、計600時間が目安と説明しています。
基本的な英語力は必要ですが、勉強時間さえ確保できれば試験をパスすることはできると思います」  「CPSMが、これはCIPSもそうなのですが、日本の職業資格と比べて特徴的なのは、将来の調達執行役員、管理職を育てることを目指した資格であるため、細かなテクニックよりもマネジメントに重点が置かれていることです。
リーダーシップ、倫理などもきちんと抑えている。
試験内容も教科書の丸暗記は通用しません。
ケーススタディなどの応用型の問題がいくつも含まれていて、決められた時間内にそれに答えなければならない」 渡辺「私は周囲には、CPSMは簡易的なMBAだと説明しています。
日本人の場合は語学のハードルもあり、軽い気持ちで受験して合格できるほどたやすくはありません。
それでも資格を取得すれば世界中のどんな経営層とも、いきなり話ができるようになります。
グローバルに通用するビジネスパーソンを育てるという点では有益な資格だと思います」 ──資格取得後も3年ごとに更新しないと失効してしまうというのは負担に感じます。
久原「海外のしっかりした職業資格の多くは更新制です。
日本のように、取ったきりというのはあまりない。
私はCPSMの他にイギリスの『MBCI(Member of the Business Continuity Institute)』というBCP(事業継続計画)の資格を持っているのですが、それもやはり定期的な更新が求められます」  「CPSMは資格取得者に3年間で60時間のリカレント教育を義務付けています。
そのためにISMジャパンでは毎月末の土曜日に2時間の講習会を開催しています。
それに出席することで教育時間を証明できるわけですが、それだけでなく、同じ調達の仕事に就いているいろいろな会社の人たちとそこで意見交換ができます。
同じ志を持つ仲間を作れます。
またCPSMを転職のステップアップに利用したいという会員のために、ISMジャパンとリクルートが提携を結び、任意のキャリア支援も行っています」 囲み記事 CPSMの概要(Certified Professional in Supply Management) ●資格取得要件 ①以下の3種の試験に合格すること。
試験は英語・中国語・韓国語に対応。
日本語では受験できない。
コンピューター試験で問題を読んで回答を選択する方式。
問題数・試験時間は以下の通り。
各試験は600点換算されて400点以上が合格。
Exam1: Supply Management Core(180問、3時間) Exam2: Supply Management Integration(165問、2.75時間) Exam3: Leadership and Transformation in Supply Management(165問、2.75時間) ②4年制大卒以上の場合は3年以上、それ以外は5年以上の購買実務経験を持つこと(助手・補助業務を除く) ●資格の更新  資格の有効期間は3年間。
資格取得から3年以内に60CEH(Continuing Education Hours:継続学習時間)を取得して申請することで資格を更新できる。
ISMジャパンや米ISM主催の各種会議、セミナー、講演会、研究会などに参加することで、内容に応じたCEHが付与される。
ISMの運営に参加するなどの手段でもCEHを獲得できる。
●学習時間の目安  各Examそれぞれ150時間~200時間、計450時間~600時間。
必要な学習時間は以下によって変動する。
・英語の読解能力。
ネイティブレベルの英語能力や英会話能力は不要だが、英語による書面上の業務が十分できる程度は必要。
・各課目の基礎知識を有しているかどうか。
英語能力以上に重要。
例えば品質管理上の統計分析手法やファイナンスなどのビジネス一般の基礎知識が備わっているかどうかで学習時間が異なってくる。
●効果的な勉強方法 ・ある程度の英語能力およびビジネス知識を有している人  ISMの公式テキストで独習しつつ、補強すべき課目についてはその課目を選択してISMジャパンのCPSMセミナーでその科目を受講する。
同協会の講師陣はCPSMに加え大学教授、大手企業の役員・部長レベル、博士号、MBA、中小企業診断士などかつ当協会が認定する者で構成されている。
・ある程度の英語能力はあるがビジネス知識に自信がない人  まずは同協会のCPSMセミナーを受講してからISMの公式テキストを購入、録画されたセミナーを必要に応じて繰り返し視聴して学習する。
・ビジネス知識は有しているが英語に自信がない人  同協会(support@ismjapan.org)に問い合わせて、本試験で必要になる英語能力の補強について相談する。
・英語能力およびビジネス知識に自信のある人  ISMの公式テキストによる独習だけでも問題ない。
●諸費用 ・ISM年会費150USドル ・ISMテキストセット(Study Guide3冊+Professional Guide3冊+試験問題集1冊) ①印刷テキスト 1113.75USドル(非会員は1631.25 USドル)+送料 ②デジタル版(有効期限1年。
専用アプリでの閲覧。
ダウンロードなどはできない)1113.75USドル(非会員は1631.25 USドル) ・受験費用 Exam1、Exam2、Exam3とも、それぞれ229USドル(非会員は379USドル) ・資格証明書発行費用 : 89USドル+送料 ・継続学習コスト  ISM会員はCEHが付与される世界中のWebinarを無償もしくは有償で利用できる。
またISMジャパンでは、CEHが付与される毎月2時間の「インサイドサプライ講習会」を有償で開催している。
・資格更新費用 資格証明書の再発行費用89USドル+送料 *詳しくはISMジャパンの公式ウェブサイト (https://ismjapan.org/)を参照

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