2021年6月号
特集
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新たな市場セグメントの競争軸と勢力図
コロナ禍で前年比27%増の急成長
英調査会社のトランスポートインテリジェンス(Ti)によると、EC物流の世界市場規模はコロナ禍の2020年に前年比27・3%増と急伸した。
今後も市場は年平均(CAGR)8・6%のペースで成長を続けて25年には5570億ユーロ(約72兆円)に達する見込みという。
日本の物販系のBtoC市場も19年に10兆円を突破し、20年にはさらに大幅に拡大したことが明らかだ。
通販事業の売上高物流費比率は12%以上とされている。
既に年間1兆5千億円程度のEC物流需要が発生していることになる。
2000年代に3PLが台頭して以来となる物流業界の新たな市場セグメントの誕生だ。
その中心にいるのがアマゾンだ。
アマゾンの日本市場における20年の売上高は前年比27・8%増の204億6100万ドル(約2兆2千億円)だった。
昨年10月に開催した年に一度の大セール「プライムデー」2日間の販売個数は約800万個に達したという。
その半数前後は既存の宅配便ではなく、デリバリープロバイダなどの自社便で配達されたとみられる。
国土交通省の調査によると国内の年間宅配便取扱個数は19年度が前期比約1%増の約43億個だった。
ただし、そこには地域宅配会社やEC事業者の専用便の荷物は含まれていない。
さらに20年度はヤマト運輸が3億個弱、日本郵便と佐川急便がそれぞれ約1億個を19年度から積み上げている。
20年度の宅配便個数はEC事業者の自社配送分を含めると50億個程度に達したものと推測される。
そのうち半分以上をECの荷物が占めている。
10年前には宅配便の荷物の8割はBtoBで、ヤマト運輸と佐川急便の2社で市場の8割のシェアを握るほど上位集中が進んでいた。
新規参入は事実上不可能で、“2強”の寡占化が崩れることはないと見なされていた。
しかし、EC荷物の急増で、勢力図は大きく塗り変わった(図)。
軽量の荷物に強い日本郵便がシェアを伸ばし、配達密度の高い都市部ではデリバリープロバイダの丸和運輸機関、SBSグループ、札幌通運などが取扱個数を増やしている。
アスクルや「Amazon Flex」「楽天エクスプレス」「ヨドバシエクストリーム」などEC事業者の自社配送も広がっている。
一度は宅配便から手を引いた特積みも市場環境の変化に反応して再び参入を開始した。
西濃運輸、センコー、日本梱包運輸倉庫などの大手が新たなネットワークの構築に乗り出している。
置き配の解禁やシェアリングの普及で宅配市場の参入障壁はさらに下がる。
今後も後に続くプレーヤーが出てくるのは必至だ。
EC物流拡大の影響はラストワンマイルだけでなく、サプライチェーンの上流にも波及している。
そこでもアマゾンが巨額の投資を継続して他のプレーヤーを圧倒している。
自前の物流ロボットを大量導入した大規模フルフィルメントセンター(FC)を全国に展開、マーケットプレイスに出品するEC事業者のフルフィルメントを代行する物流企業としての顔を鮮明にしている。
米国では貨物航空会社のアマゾンエアが21年3月現在、77機を運用して全米50の空港で定期便を運航して国際線にも手を広げている。
同社は従来、航空機をリース契約で調達していたが、今年1月にはコロナ禍の航空機市場の低迷をチャンスと見て、航空会社から中古の旅客機を購入して貨物機に改修して運用することを発表している。
アマゾン、楽天、ZHDの三つ巴 拡大を続けるアマゾン経済圏とどう向き合うのか。
各社は対応を迫られている。
物流機能の整備で立ち後れていたZホールディングス(ZHD)は昨年3月、ヤマト運輸をパートナーに「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」に出店するEC事業者向けのフルフィルメントサービスを本格的に開始した。
楽天は日本郵政と手を組んだ。
昨年12月、業務提携に向けた合意書を締結、今年3月には日本郵政が楽天に約1500億円を出資することを発表した。
両社の共同出資で新たに「JP楽天ロジスティクス」を設立、「楽天スーパーロジスティクス」をはじめとする楽天の物流事業を新会社に移管して日本郵便のネットワークと統合する。
当面、日本のEC物流市場は、アマゾンとデリバリープロバイダ、ZHDとヤマト運輸、楽天と日本郵便という三つの勢力を軸に展開する(表)。
ECモールと宅配会社のデータがプラットフォームに集められて、新たなサービスの開発やオペレーションの効率化が進められていく。
ECの拡大は物流市場に新たな需要をもたらす。
消費者が店舗に出向いて棚から商品を取り出し、自分で持ち帰っていた買い物が、物流サービスに置き換えられる。
その爆発的な物流需要に引き寄せられて、大手ECや宅配会社、物流ベンチャーだけでなく、ICT企業やテクノロジースタートアップ、物流不動産企業、総合商社など多様なプレーヤーが市場への参入をうかがっている。
3PLや倉庫・運送の既存の物流事業者も無縁ではいられない。
ECはメーカーや店舗流通業にも広がっている。
主要荷主のニーズに応えられなければ事業の足元を脅かされる。
新たな市場をどう読み解いて、自社の存在価値と役割をいかに位置付けるのか、物流業経営層の意思決定が問われている。
今後も市場は年平均(CAGR)8・6%のペースで成長を続けて25年には5570億ユーロ(約72兆円)に達する見込みという。
日本の物販系のBtoC市場も19年に10兆円を突破し、20年にはさらに大幅に拡大したことが明らかだ。
通販事業の売上高物流費比率は12%以上とされている。
既に年間1兆5千億円程度のEC物流需要が発生していることになる。
2000年代に3PLが台頭して以来となる物流業界の新たな市場セグメントの誕生だ。
その中心にいるのがアマゾンだ。
アマゾンの日本市場における20年の売上高は前年比27・8%増の204億6100万ドル(約2兆2千億円)だった。
昨年10月に開催した年に一度の大セール「プライムデー」2日間の販売個数は約800万個に達したという。
その半数前後は既存の宅配便ではなく、デリバリープロバイダなどの自社便で配達されたとみられる。
国土交通省の調査によると国内の年間宅配便取扱個数は19年度が前期比約1%増の約43億個だった。
ただし、そこには地域宅配会社やEC事業者の専用便の荷物は含まれていない。
さらに20年度はヤマト運輸が3億個弱、日本郵便と佐川急便がそれぞれ約1億個を19年度から積み上げている。
20年度の宅配便個数はEC事業者の自社配送分を含めると50億個程度に達したものと推測される。
そのうち半分以上をECの荷物が占めている。
10年前には宅配便の荷物の8割はBtoBで、ヤマト運輸と佐川急便の2社で市場の8割のシェアを握るほど上位集中が進んでいた。
新規参入は事実上不可能で、“2強”の寡占化が崩れることはないと見なされていた。
しかし、EC荷物の急増で、勢力図は大きく塗り変わった(図)。
軽量の荷物に強い日本郵便がシェアを伸ばし、配達密度の高い都市部ではデリバリープロバイダの丸和運輸機関、SBSグループ、札幌通運などが取扱個数を増やしている。
アスクルや「Amazon Flex」「楽天エクスプレス」「ヨドバシエクストリーム」などEC事業者の自社配送も広がっている。
一度は宅配便から手を引いた特積みも市場環境の変化に反応して再び参入を開始した。
西濃運輸、センコー、日本梱包運輸倉庫などの大手が新たなネットワークの構築に乗り出している。
置き配の解禁やシェアリングの普及で宅配市場の参入障壁はさらに下がる。
今後も後に続くプレーヤーが出てくるのは必至だ。
EC物流拡大の影響はラストワンマイルだけでなく、サプライチェーンの上流にも波及している。
そこでもアマゾンが巨額の投資を継続して他のプレーヤーを圧倒している。
自前の物流ロボットを大量導入した大規模フルフィルメントセンター(FC)を全国に展開、マーケットプレイスに出品するEC事業者のフルフィルメントを代行する物流企業としての顔を鮮明にしている。
米国では貨物航空会社のアマゾンエアが21年3月現在、77機を運用して全米50の空港で定期便を運航して国際線にも手を広げている。
同社は従来、航空機をリース契約で調達していたが、今年1月にはコロナ禍の航空機市場の低迷をチャンスと見て、航空会社から中古の旅客機を購入して貨物機に改修して運用することを発表している。
アマゾン、楽天、ZHDの三つ巴 拡大を続けるアマゾン経済圏とどう向き合うのか。
各社は対応を迫られている。
物流機能の整備で立ち後れていたZホールディングス(ZHD)は昨年3月、ヤマト運輸をパートナーに「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」に出店するEC事業者向けのフルフィルメントサービスを本格的に開始した。
楽天は日本郵政と手を組んだ。
昨年12月、業務提携に向けた合意書を締結、今年3月には日本郵政が楽天に約1500億円を出資することを発表した。
両社の共同出資で新たに「JP楽天ロジスティクス」を設立、「楽天スーパーロジスティクス」をはじめとする楽天の物流事業を新会社に移管して日本郵便のネットワークと統合する。
当面、日本のEC物流市場は、アマゾンとデリバリープロバイダ、ZHDとヤマト運輸、楽天と日本郵便という三つの勢力を軸に展開する(表)。
ECモールと宅配会社のデータがプラットフォームに集められて、新たなサービスの開発やオペレーションの効率化が進められていく。
ECの拡大は物流市場に新たな需要をもたらす。
消費者が店舗に出向いて棚から商品を取り出し、自分で持ち帰っていた買い物が、物流サービスに置き換えられる。
その爆発的な物流需要に引き寄せられて、大手ECや宅配会社、物流ベンチャーだけでなく、ICT企業やテクノロジースタートアップ、物流不動産企業、総合商社など多様なプレーヤーが市場への参入をうかがっている。
3PLや倉庫・運送の既存の物流事業者も無縁ではいられない。
ECはメーカーや店舗流通業にも広がっている。
主要荷主のニーズに応えられなければ事業の足元を脅かされる。
新たな市場をどう読み解いて、自社の存在価値と役割をいかに位置付けるのか、物流業経営層の意思決定が問われている。
