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2021年6月号
特集

ヤマト運輸 EC向け配送商品「EAZY」で宅配便をDX

ECの宅配貨物に独自の定義  ヤマトホールディングスは2021年4月1日、グループを再編した。
中核会社のヤマト運輸がヤマトロジスティクス、ヤマトグローバルロジスティクスジャパンを含む事業会社6社を吸収合併、四つの事業本部(リテール事業・法人事業・グローバルSCM事業・EC事業)と四つの機能本部(輸送機能・デジタル機能・プラットフォーム機能・プロフェッショナルサービス機能)およびコーポレート部門に再編した。
 このうちEC事業本部は、事業戦略部、営業戦略部、ネットワーク戦略部の3部門で構成される。
事業戦略部はEC事業全体の戦略策定とEC向け配送商品「EAZY(イージー)」をはじめとする商品開発を担当。
営業戦略部は大手EC事業者のアカウント営業とEC向けサービス商品の販売。
ネットワーク戦略部は、イージーの配送を委託するパートナーの組織化とサポートに当たる。
 ヤマトHDは昨年11月に発表した3カ年の中期経営計画「Oneヤマト2023」で、「全産業のEC化」に対応した「ECエコシステムの最適解の創出」を重要施策に掲げている。
その核となる戦略商品がイージーだ。
 イージーのリードタイムやサイズ区分は従来の「宅急便」と変わらない。
ただし、配達はセールスドライバー(SD)ではなく、「EAZY CREW(イージークルー)」と呼ぶ業務委託先のドライバーが担当する。
個建て、もしくは1日貸切契約で、イージーおよび宅急便の「toC」の配達に特化して「置き配」にも対応する。
 昨年6月にZホールディンググループの「Yahoo!ショッピング」「PayPayモール」「ZOZOTOWN」およびその出店者向けにサービスを開始。
これまでに「メルカリ」、アスクルの個人向けネット通販「LOHACO」、ニッセンのネット通販、再春館製薬所などが導入した。
 発売初年度となった21年3月期のイージーの取扱実績は1億7883万個。
今期は4億個を見込む。
ヤマトHDは今期の宅配便全体の取扱個数を前期比約10%増の23億個と予想している。
イージーの増加分がデリバリー事業全体の成長を支える計算だ。
 これまでヤマトは置き配に消極的だった。
現在も宅急便では限定的な対応にとどまっている。
イージーではそれを全面的に解禁した。
さらにイージーの料金は荷主それぞれの輸送原価に基づく相対交渉で決まるため、大手荷主に有利に働く。
宅急便の大口向けで値上げが続いた後だけに、世間はこれをヤマトの方針転換と受けとめた。
 しかし、ヤマト運輸の齊藤泰裕EC事業本部ゼネラルマネージャー(GM)はそうした見方を否定する。
「宅急便を対面サービスのフルスペック商品だとすれば、イージーはデジタルのフルスペック商品だ。
お客さまとのやりとりがデジタル化されたことで荷物が届く直前まで柔軟に受け取り方法を変更することが可能になった。
置き配もお客さまの利便性向上が狙い。
再配達の削減や効率化など事業者目線で考えてはいない」という。
 宅急便は個人間で贈り物を運ぶCtoCから始まった。
BtoBやBtoCに利用されるようになっても発荷主と受取人は別だった。
それに対してネット通販は、通常ではBtoCに区分されるが、実際にはBから出荷する前に本人の発注がある。
つまり自分で頼んで自分で受け取る荷物だ。
 その特性に基づいてヤマトは、ユーザーとのデジタルなコミュニケーションを通して、よりパーソナライズされたサービスを提供するというコンセプトでイージーを開発した。
置き配はその出発点にすぎない。
実際、イージーは従来の配送商品と違って発売後も細かなアップデートを繰り返している。
今後も試行錯誤を重ねてサービスを作り込むというアプローチで進化させていく。
 そのオペレーションは持続可能性を前提に設計されている。
齊藤GMは「宅配便にはEC事業者とエンドユーザー、そして配り手という三つのステークホルダーがいる。
そのバランスが崩れてしまうと市場は成長できない。
それを“三方よし”の考え方で、持続可能なものにしていくことが、ECエコシステムのコンセプト」という。
 イージークルーには現在、約1万6千人が登録している。
いずれも中小の運送会社に所属するプロドライバーだ。
宅急便はお中元とお歳暮時期に物量が跳ね上がる。
そのため従来からヤマトは全国の協力運送会社に繁忙期の配達業務を委託してきた。
「その方々に忙しい時だけではなく、年間を通じて安定的に働いてもらうためのパートナー戦略を1年前から進めてきた」と齊藤GM。
 宅急便と比較してECの荷物は季節波動が小さい。
ECの裾野が生活必需品に広がっていくことで物量はさらに安定する。
しかも、イージーは特定荷主の専用便ではなく、多様な荷主が利用する。
荷主ごとの繁閑差の違いがピークを抑制する。
その配達を継続的に委託することに加え、車両の調達や点検・整備、保険など、ヤマトグループのリソースやアセットを提供することで配送パートナーの経営をサポートしている。
東西にフルフィルメント施設  一方、EC向けの倉庫サービスはZホールディングス(ZHD)と連携して開発している。
昨年3月24日、ヤマトとZHDは業務提携に向けた基本合意を締結、同6月からZHD傘下の「Yahoo!ショッピング」と「PayPay(ペイペイ)モール」の店舗向けに「フルフィルメント」と「ピック&デリバリー」と名付けた新サービスを開始すると発表した。
 「フルフィルメント」はアマゾンのFBAに相当する。
ヤマトがEC事業者の在庫を預かり受注から配送まで全ての業務を代行する。
一方、ピック&デリバリーは、セール時などに受注量がEC事業者の既存施設の出荷能力を超える場合、溢れる分の総量をヤマトが引き受け、ピッキングから配達まで代行する。
新サービスの受付を開始して1日だけで1千件を超える商談の申し込みがあったという。
 ZHDは昨年6月30日から同12月末まで期間限定で実質送料無料キャンペーンを実施した。
新サービスを導入した店舗から商品を購入したユーザーに、送料相当額の電子マネーを付与するというもの。
さらに今年4月1日にはサービスをリニューアルしてサイズ別の全国一律料金を適用。
イージー・宅急便とも60サイズの配送料を資材費と作業費込みで420円に設定した。
競争力のある料金を打ち出すことで店舗に導入を促している。
 旧ヤマトロジスティクスでは従来から、EC向けの即日配達サービス「トゥデイ・シッピング・サービス(TSS)」の拠点を全国の消費地に設置して、宅急便のロールボックスパレットを利用した独自のピッキングシステム「FRAPS」を横展開するなど、ECのフルフィルメントサービスには継続的に取り組んできた。
 しかし、ヤマト運輸の中西優EC事業本部営業戦略部シニアマネージャーは「これまでは比較的規模の大きなEC事業者を対象に、個別の要望に合わせてサービスをカスタマイズして対応してきた。
一方でヤフーのモールには数万社にも上る中小ストアが出店している。
その層に対する取り組みは遅れていた」という。
 そこで今回、ヤフーと共にあらためて中小EC事業者のニーズを調査して要件を定義、東西の消費地の配送ネットワーク上に専用スペースを確保して、FRAPSや仕分け機などの自動化設備を導入したフルフィルメント施設を複数カ所立ち上げた。
今後、拠点数を増やしていく計画だ。

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