2021年6月号
特集
特集
米アマゾンの流通網と物流デジタル化の歩み
《解説編》 6種類の物流施設で構成する3階層の構造
ECが物流に及ぼす四つの影響
ECの登場とともに物流の需要構造、施設の立地、輸送モードおよびターミナル、そして配送の最終段階であるラストマイルなどは、その様相を一変することになった。
それまでは小売店舗網のサポート役にすぎなかった物流施設が一躍主役に躍り出る一方、実店舗は時代遅れと見なされ、ショールームや単なる商品の受渡場所という位置づけに甘んじるケースも珍しくない。
アマゾンの流通ネットワークに関する、ある優れた研究では、フルフィルメントセンターの発展における「密度の経済」の重要性が強調されている。
物流施設のネットワークの拡充は、輸送コストの削減と利益率の向上をもたらすのである。
ECではさらに、都市部のロジスティクス戦略の一環としてラストマイルが脚光を浴びている。
飲食店の注文や食品を迅速に配達する需要も、その重要な要素の一つである。
消費者の購買行動がオンラインへと移行することによる最も顕著な影響は、各家庭への配送が増えることである。
ECをバーチャルな小売業として捉えることはもちろん可能だが、それよりも物流という側面から見た方がはるかに理解しやすい。
EC取引の成否と顧客にとっての価値は、注文の品が決められた時間に届くところにある。
つまりECの本質とは個別配送なのである。
ECが物流に及ぼす影響は主に次の四つの分野に整理して考えることができる。
①流通パターン 従来の小売りにおける消費パターンは、消費者自身が店舗まで足を運び、そこで購入した商品を自分で持ち帰るというものである。
一方ECでは、購入した商品は配送サービスによって各家庭にまで個別に届けられる(B2C配送)。
宅配の役割が増大したこと、そして決められた時間通りに荷物を届けるという使命が課されるようになったことで、ラストマイルロジスティクスの存在感は大きくなった。
②スペース(Real Estate Footprint) オンラインへの移行とともに実店舗での販売需要が減り、店舗面積縮小という圧力がかかるようになった。
大手小売りチェーンの多くはやむを得ず店舗を閉鎖するか、場合によっては経営破綻に陥ることで、実質的に売場面積が減るという事態に追い込まれている。
ところが宅配の場合は配送をベースとすることから、倉庫面積に関してはECが成長するにしたがって逆に増加している。
③物流施設 ECでは従来とは異なるタイプの物流施設が必要になる。
その主役であるe-フルフィルメントセンターは、莫大な数の多種多様な注文を貨物として出荷する施設である。
取扱量が極端に多く、他のどのようなタイプの物流施設にも増して自動化を必要とする。
また立地に関しても、市場アクセスが容易でリードタイムもできるだけ短くなるような場所が選ばれる。
④垂直統合 ECの主役たちの貨物取扱量は、ロジスティクスおよび輸送サービスの主力ユーザーたるにふさわしいレベルに達しつつある。
こうした企業の多くは、物流セクターの企業を吸収合併していくという垂直統合戦略を進めながら、自らの3PLや4PLとしてのケイパビリティに磨きをかけている。
アマゾンの巨大ECプラットフォームが、トラックによる宅配や物流施設および倉庫における物流サービスにまで及んでいることは、その代表的な例である。
こうしたサービスは既存の3PL企業と直接競合する可能性をはらんでいる。
また、都市部にロジスティクス施設や宅配便ロッカーを設置することも垂直統合の一環といえる。
本稿では2010年に始まるアマゾンの流通ネットワーク構築を、その地理的広がり、市場のカバー領域、機能分担という視点から分析することでその全体を概観していく。
6種類のEC物流施設 小売りのデジタル化を最も明瞭に体現しているのは、機能別の物流施設が登場してきたことである。
“大箱”のチェーンストアが、大量の物量を処理してクロスドッキングが可能な施設を必要とするのと同様に、ECの物流施設はEC特有の物的および運用上の必要性からその機能が設計されている。
立地にもそれぞれの特徴がある。
機能別施設 物流ネットワークの在り方は、機能分担の原則に基づいて決まる。
その役割と機能分担は次の六つに分けられる(図表1)。
①調達クロスドッキングセンター 「調達(インバウンド)クロスドッキングセンター」は、輸入コンテナが運ばれてくる港や鉄道の貨物ターミナルなど、主要なインターモーダルターミナルに近接していることが望ましい。
国内サプライヤーからの貨物もそこで受け入れる。
それは1990年代以降、大手量販チェーンが海外生産品の増加に対応して設置した輸入用拠点と同様の役割を果たす。
調達クロスドッキングセンターは建物の両側にトラックバースを備える。
機能面では通常のクロスドッキングセンターと変わらないが、e-フルフィルメントセンター向け専用である点が異なる。
建物の一方の側でインバウンド貨物(主にコンテナ)を荷受けし、必要となるまで在庫として保管することで、広大なECサプライチェーンの在庫調整弁としての役割も果たす。
建物の反対側では、需要に応じて荷物を満載にした車両を仕立て、各地のe-フルフィルメントセンターに向けて出荷する。
②e-フルフィルメントセンター(FC) e-フルフィルメントセンター(FC)は、個々のオンライン注文を集約する広大な施設(およそ50〜100万平方フィート≒1万4千〜2万8千坪)である。
在庫品目の多さから、そのほとんどが高層ラックを備える。
高さは通常24フィート(7メートル32センチ)だが、現在は36フィートを標準とすることが検討されており、中には40フィートを超えるものもある。
近年では、一部もしくは完全な自動倉庫も散見されるようになってきた。
FCは取扱品目別に設置されており、大きく2種類に分けることができる。
一つは主にアパレル・電化製品・宝飾類・食品雑貨・生鮮品などを扱うセンターである。
もうひとつはサイズによって、小箱に収まる10キログラム以下の「スモールソータブル」、大箱に収まる25キログラム以下の「ラージソータブル」、大箱にも収まらない家具やテレビ、プリンターなどの「ラージノンソータブル」に分かれる。
こうした区分をする理由は、サイズが異なると違う種類のマテハン機器が必要になるためである。
スモールソータブル向けの倉庫ならコンベヤベルトによる自動化は容易だが、パレットに積まれたラージノンソータブルの取り扱いはそう簡単にはいかない。
空港ハブは、地域のFCおよび仕分けセンター向けに航空貨物を積み替える施設であり、空港隣接かあるいは空港内に設けられる。
通常は大都市圏を結ぶハブ・アンド・スポーク・ネットワークにおける中継ハブとしての位置づけである。
フェデックス、UPS、DHLなど大手ロジスティクスプロバイダーも、ルイビルやメンフィスの巨大ハブ・仕分けセンターにおいてこうした航空貨物サービスを提供している。
16年に操業を開始した貨物航空会社アマゾン・エアは、ECの取扱量が、専用の航空貨物サービスを保有しても採算が取れる量にまで拡大したのに伴い、空のネットワーク整備に取り組んでいる。
③仕分けセンター(パーセルハブ) 地方・地域への配送準備を担うのが「パーセルハブ・仕分けセンター」(Parcel hubs and sortation centers)であり、規模は比較的大規模なものが多い(50万平方フィート程度)。
ここでは目的地を絞り込むため、貨物を郵便番号レベル程度にまで仕分けをする。
仕分けされた荷物は、センターから地域の郵便局や配送ステーション、あるいは下請けの配送業者の元へと運ばれる。
莫大な量を仕分けすることから、建物の一方で荷受けした荷物が、反対側の出口から出荷されるというクロスドッキングモデルを採用している。
また、特に需要の多い特定の品目に限り、FCとしても活用される。
④配送ステーション 配送ステーション(Parcel delivery stations)は中規模のクロスドッキング施設であり、その地域の特定の配送ルート向の仕分けを主たる任務とする。
立地は大都市圏の周縁部に位置するのが通常である。
主な配送先が都市部であるため、荷物は配送用のバンだけでなく、都市部に特化した車両(電動バンや自転車の場合も)にも積み込まれる。
また、立地は必ずしも大都市圏の周縁部とは限らず、都市部向けの専用車両で配送する場合には中心部に位置することもある。
⑤ピックアップ場所・地域貨物拠点 最終目的地まで直接届けることができない場合には、ピックアップ場所もしくは地域貨物拠点(local freight stations)を介することになる。
こうした小規模施設は人口密度の高い場所にある。
店舗のような外観をもつところが多く、顧客がコード(クレジットカード、QRコード等)を使って自分でピックアップできる専用ロッカーを備えることが、近ごろのトレンドのようだ。
⑥ファスト・デリバリー・ハブ ファスト・デリバリー・ハブ(即配ハブ)は、需要の多い品目の速やかな配送を望む声が高まってきたことに対応する施設であり、48時間以内の配送を基本とする。
この小〜中規模施設はそれを実現するために大都市圏に設けられ、需要の多い品を一定量在庫する。
需要を見越して事前にある程度の在庫を確保しておき、いざ注文が入れば即時に出荷する。
中心部に条件の良い場所は限られるので、古い建物を転用したところが多い。
保管と回収の効率は良くないが、品目の絞り込みと目的地の近さがそれを補っている。
3階層の流通チャネル アマゾンのECサプライチェーンは、3階層の流通チャネルから構成される(図表2)。
その第1ステージが調達であり、FCに在庫を供給することが主な役割である。
従来型の大規模小売りチェーンは、海外メーカーから仕入れる低コストの輸入品に過去数十年間にわたって頼ってきたわけだが、アマゾンの調達戦略もそれと大きな違いはない。
ただし、アマゾンの場合、傘下の自社ブランドを含め、いっそう多くの商品を取り扱っているため、サプライヤー、産地、使用する輸送モードもそれだけ多様である。
そのFC向け在庫(調達クロスドッキングセンター)の配置を見ると、アマゾンは地域特有の需要パターンを把握して、需要地の近くに在庫を置くことで、配送時間を短くすることを第一に考えているようだ。
第2ステージでは、注文が入った荷物を最終配送施設へと移送する。
最適なチャネルを選択して各種の制約を満たす配送方法を組み立てる。
ここで大事なことはフルフィルメントをどの場所で行うか、どういうルートで配送するかの2点である。
ラストマイルとして知られる最後の第3ステージでは、専用施設からさまざまなルートを経て目的地に荷物を運ぶ。
渋滞・駐車スペース不足・デリバリーの細分化など、都市部特有の制約に対処するため、「都市ロジスティクス戦略」ともいうべきものを確立することがここでの課題である。
アマゾンの流通チャネルを複雑にしているのは、パーセルハブ・仕分けセンターの存在である。
アマゾンの流通システムを流れていく荷物の中には、FCから米郵便公社(USPS)の「セクショナル・センター・ファシリティ(SCF)」へと送られる分がある。
SCFはUSPSの配送・処理センターであり、一つの施設で一つあるいは複数の郵便番号の区域を受け持つ。
地域の郵便局とネットワーク・ディストリビューション・センター(NDC)の間を中継する、小荷物配送ネットワークの根幹となる施設である。
ところがUSPSが運ぶ荷物の一部は、まずアマゾンの流通チャネルを通って仕分けセンターまでたどり着き、そこから地域の郵便局に送られるという経路をとるのである。
ECサプライチェーンにおけるFCは、EC事業者自身が運用するケースが一般的であり、荷物はそこで各3PLプロバイダーに振り分けられる。
複数の商圏をカバーするハブ・仕分けセンター、配送ステーションなどを実際に運営するのは彼ら3PLである。
しかしながらこのところ、大規模EC事業者が自社運営の仕分けセンターをオープンする動きが見られるようになってきており、垂直統合の気運が高まりつつある。
さらに本来は輸送セグメントに属する都市部の配送トラック、あるいはFCと仕分けセンター間のトラック輸送にまで手を伸ばすEC事業者も現れている。
アマゾンがコントロールする新しい流通システムが登場してきた背景には、物流に対する要求水準の上昇という事情がある。
ネットワークの進化と巨大化 アマゾンの物流施設には、自社所有とリースの両方の形態がある。
とはいえ一般にEC事業者は賃貸を好むため、アマゾン自身の所有する割合は面積換算で5%にも満たない。
リースを選ぶ主な理由はフレキシビリティの確保であり、同じ面積を運営するにしてもより少ない投資で済むからである。
この戦略によってアマゾンは規模の急拡大と、地域的な需要の変化に素早く対応することが可能になった。
しかし、ECの発展に伴って今後は自社所有の割合を増やしていくものと予想される。
19年時点で、北米にあるアマゾンの物流施設の総面積は1億7110万平方フィート(約15・9平方キロメートル、481万坪相当)に及ぶ。
その大半を占めるのが、ECを支える施設の要である187カ所のFC(面積比で71・4%)である(図表3)。
その次に重要な250カ所の配送ステーション(同13・9%)は、EC物流の最終段階(ラストマイル)を担う。
施設の標準的な規模はタイプによって明確に異なり、規模の経済・商圏・土地の利用密度・リードタイム・土地代といった諸条件のバランスで決まる。
施設の共用も積極的に行われており、68カ所(11・7%)の施設は複数の用途に利用されている。
アマゾンの流通ネットワークは、その構成要素と構造の変遷によって時期を四つに分けることができる(図表4)。
第1段階はニッチな通販企業として登場してきたところから始まっており、当時の取扱品目は書籍・映画・コンピューターゲーム・音楽などであった(第1期)。
こうした商品は箱に入った物理的な存在として流通していたが、現在ではそのほとんどがデジタル配信に置き換わっている。
FCは西海岸と東海岸に点在するのみであった。
2000年代半ば以降、当初の取扱品がデジタルに転換し始めると、軸足を家電・玩具・化粧品・ファッションなどへと移し、既存の小売業界と直接競合するようになった(第2期)。
06年を境としてFCの拡大が加速し、アマゾン自身によるフルフィルメントが開始される。
このプログラムの一環として、他の小売業者が在庫を保管・梱包・出荷するのに、FCを有料で利用できるようにし始めた。
アマゾンの施設へあらゆる在庫が集中するようになり、それが結果的に幅広いECの発展を支えることにつながった。
それは見方によっては、自社と直接競合する商売敵に対して塩を送るような行為とも言えるものであった。
一般消費財への軌道修正によって、海外からコンテナで運ばれてくる輸入品の割合が徐々に増加し、07年には最初の調達クロスドッキングセンターが設置された。
10年代を迎えてビジネスモデルが確立すると、FCを全米に次々と開設して積極的な水平統合へと乗り出す(第3期)。
デジタル機器の普及とデータ網の整備が進んだことで、ECはニッチから消費市場の主流へと成長を遂げた。
取扱量が増大したこともあって13年にはUSPSの協力を得ながら日曜配達が開始され、同時に最初のハブ・仕分けセンターが設立された。
しかし、14年に入る頃にはその配送網は青息吐息の状態となっていた。
UPSやフェデックスなどの大手の配送業者にしてみれば、アマゾンは数ある顧客の中の一社にすぎない。
ホリデーシーズン(11月、12月)などの需要急増に対応が追いつかず、遅配が生じたのである。
そのような需要増と運営上の必要から、陸上輸送サービスを拡充して垂直統合にも取り組むことになった(第4期)。
20年時点で、アマゾンは全米に2万台以上のトレーラートラックを走らせていると推測されている。
アマゾンの流通ネットワーク 調達とフルフィルメント ECの中で一際目立つのはFC(図表6)であるが、その調達においては、調達クロスドッキングセンター(図表5)のネットワークも無くてはならない存在である。
同センターはロサンゼルスのロングビーチやニューヨークなど、港と主要輸送ルートへのアクセスが良い立地に10カ所設けられている。
その主たる機能は、FCに向けて輸入コンテナをトラックに積み替えることである。
内陸部の施設については国内調達分もあることから、製造業の集積地にあるインターモーダルターミナルと人口稠密地域の近くが選ばれている。
他の用途との兼用例がないことは、その機能が特異なものであることを示唆する。
在庫はそこからトラックで187カ所のFCへと運び込まれる。
国内調達分であれば、調達クロスドッキングセンターを経由せずに直接運び込むこともある。
パレタイズ済みのFC向けの貨物の場合、全てのフルトラックロード(FTL)もしくはLTL(日本の特積みに相当)の配送便に対し、トラックバースとその係員を確実に割り当てるための事前予約システムが用意されている。
調達クロスドッキングセンターの立地にはマーケット指向が顕著に現れており、敷地面積の中央値も85万5千平方フィートと比較的ばらつきが少ない。
アマゾンはその程度の規模が最適だと判断しているものと考えられる。
一方、増加分は同程度の規模の施設をリースすることでカバーしている。
調達センター同様、典型的な立地は人口集中地域の隣接地である。
需要の多い地域に近いことから、配送ステーションとの共用も目立つ。
オンラインで入ってくる大量の注文に対応するFCは、ソータブル(箱に入れられて仕分けが可能な品目)をランダムに在庫する新世代のオートメーション倉庫となっている。
オンライン注文の確率論的な性質と膨大な品目数に対応するには、そのやり方が適している。
入荷した商品は各ロケーションの自動ラックにランダムに保管される。
同じ商品を一つのセンター内の複数のロケーションに散在させることで取り出しにかかる平均時間が短縮される。
オンライン注文では品物を一つずつ個別に配送することが標準的であるため、その数量と頻度の条件にはランダム保管がうってつけなのである。
在庫が専用スペースに保管されるわけではないので、倉庫全体の面積も少なく済む。
保管場所が品目ごとに決まっている場合と比べ、キャパシティの利用率は向上する。
また、重量物などのノンソータブルは別途保管する。
FCでは、その取扱品目数のあまりの膨大さから、品目タイプ別ではなく、仕分けが可能か否かによって施設を分けているケースが多い。
施設数として最も多いのはかさばって仕分けができないノンソータブルを扱うセンター(全体の38%)であり、体積の大きい重量物を配送しなければならない関係上、なるべく市場に近い立地が求められる。
次に多いのがスモールソータブル専門のセンター(全体の34%)だ。
こちらの立地条件はノンソータブルほど厳密ではない。
アパレル、靴、宝飾類、高額な電化製品などに特化したセンターは全体の12%である。
また返品専用の施設も2カ所設けられており、返品されてきた商品はそこでもう一度保管されるか、あるいはリサイクルや廃棄処分などに回される。
中間流通ネットワーク 中間流通を担うネットワークは、空港ハブ(図表7)と仕分けセンター(図表8)の2種類に大別される。
15年に発足したアマゾン・エアは、20年初頭時点でボーイング767を中心とする計42機をリースしている。
その目的はアマゾンのデジタルプラットフォームをサポートすることであることから、他の航空便各社とは異なり、ハブ・アンド・スポークという枠組はそれほど重視されていない。
一方で、いまだにフェデックスとUPSの航空ネットワークに大きく依存せざるを得ない状況にあるため、自前のネットワーク構築には力を入れている。
20年半ば現在で29の空港をカバーし、六つの空港ハブを自社で運営している。
立地に関しては、ハブ・仕分けセンターに近い場所が選ばれているところに特徴があり、主要大都市圏からは少し離れた小さめの空港が多い。
こうした空港から地域の仕分けセンターや配送ステーションへと荷物が運ばれていく。
アマゾン・エアの就航している空港から10キロメートル圏内に、32のFC(17%)と八つの仕分けセンター(17%)があることからも、空輸網とフルフィルメントとの強い結びつきを垣間見ることができる。
仕分けセンターはその地域における配送の足がかりであり、都市ロジスティクスの第1段階である。
ある地域の配送量が一定のボリュームに達すると、アマゾンは特定の郵便番号向けの仕分けセンターを開設する。
荷物はここから配送ステーションもしくは郵便局へと送られる。
20年現在、47のハブ・仕分けセンター(中央値32万1400平方フィート)が大都市圏をカバーしている。
ラストマイル 大都市圏にはECのラストマイルを担う2種類の配送ネットワークがある。
その一つである即配ハブは、需要の多い品や生鮮食料品を地域に供給するための施設である。
ここには「アマゾンプライム」(図表10)「アマゾンフレッシュ」「アマゾンパントリー」(図表11)も含まれる。
いまひとつが配送ステーション(図表9)であり、荷物はここで配送バンに載せられて各家庭もしくは受け渡し場所にまで届けられる。
大都市圏に53あるアマゾンプライム用のハブ「プライムハブ」は、たいていは地域の交通システムへのアクセスが便利な場所にある。
中央値が3万9500平方フィートと比較的小ぶりな施設が大半で、需要の多い品目を48時間以内に届けることを目的とする。
ここでは市場へのアクセスの容易さおよび短納期と、高額な賃料のトレードオフが問題となる。
距離が100マイル(約161キロメートル)短縮されるごとに配送費用は0・5%〜1%ほど減るという試算もある。
その削減効果は回転率の高い品目に絞り込むことでさらに大きくなる。
プライムハブは、短納期と中心地に近いという共通点のある配送ステーション、アマゾンフレッシュ、アマゾンパントリーと施設を共有することが多い。
アマゾンフレッシュとアマゾンパントリーは、限られた大都市圏で提供される特定分野の配送サービスである。
前者が扱うのは生鮮品を含む食料雑貨類であり、独自の配送システムが整備されている。
後者は日用品・清掃用品で、こちらは通常の荷物と同じ扱いで配送される。
この二つの立地パターンは、住民の可処分所得が多い地域(西海岸やニューヨークなど)か、あるいは年齢層の高い地域(フロリダなど)である。
アマゾンが水平統合によってラストマイルサービスの充実を目指していることは、13年以降、配送ステーションを急速に拡充してきていることからも明らかである。
中央値で9万1200平方フィートほどと小規模なこの施設は数としては最も多く、アクセスが良い場所にある。
重量物やかさばる荷物など、ラストマイルデリバリーに特別なやり方が求められる品目に特化しているステーションも、20年現在で全体の17%ほど存在する。
これはアマゾンが、テレビや家電など大型の消費財にまで手を伸ばし始めていることを示唆するものである。
(翻訳構成 大矢英樹) 《資料編》 北米拠点ネットワーク(分布・規模・拠点数) 資料編の内容はPDFデータをご覧ください。
それまでは小売店舗網のサポート役にすぎなかった物流施設が一躍主役に躍り出る一方、実店舗は時代遅れと見なされ、ショールームや単なる商品の受渡場所という位置づけに甘んじるケースも珍しくない。
アマゾンの流通ネットワークに関する、ある優れた研究では、フルフィルメントセンターの発展における「密度の経済」の重要性が強調されている。
物流施設のネットワークの拡充は、輸送コストの削減と利益率の向上をもたらすのである。
ECではさらに、都市部のロジスティクス戦略の一環としてラストマイルが脚光を浴びている。
飲食店の注文や食品を迅速に配達する需要も、その重要な要素の一つである。
消費者の購買行動がオンラインへと移行することによる最も顕著な影響は、各家庭への配送が増えることである。
ECをバーチャルな小売業として捉えることはもちろん可能だが、それよりも物流という側面から見た方がはるかに理解しやすい。
EC取引の成否と顧客にとっての価値は、注文の品が決められた時間に届くところにある。
つまりECの本質とは個別配送なのである。
ECが物流に及ぼす影響は主に次の四つの分野に整理して考えることができる。
①流通パターン 従来の小売りにおける消費パターンは、消費者自身が店舗まで足を運び、そこで購入した商品を自分で持ち帰るというものである。
一方ECでは、購入した商品は配送サービスによって各家庭にまで個別に届けられる(B2C配送)。
宅配の役割が増大したこと、そして決められた時間通りに荷物を届けるという使命が課されるようになったことで、ラストマイルロジスティクスの存在感は大きくなった。
②スペース(Real Estate Footprint) オンラインへの移行とともに実店舗での販売需要が減り、店舗面積縮小という圧力がかかるようになった。
大手小売りチェーンの多くはやむを得ず店舗を閉鎖するか、場合によっては経営破綻に陥ることで、実質的に売場面積が減るという事態に追い込まれている。
ところが宅配の場合は配送をベースとすることから、倉庫面積に関してはECが成長するにしたがって逆に増加している。
③物流施設 ECでは従来とは異なるタイプの物流施設が必要になる。
その主役であるe-フルフィルメントセンターは、莫大な数の多種多様な注文を貨物として出荷する施設である。
取扱量が極端に多く、他のどのようなタイプの物流施設にも増して自動化を必要とする。
また立地に関しても、市場アクセスが容易でリードタイムもできるだけ短くなるような場所が選ばれる。
④垂直統合 ECの主役たちの貨物取扱量は、ロジスティクスおよび輸送サービスの主力ユーザーたるにふさわしいレベルに達しつつある。
こうした企業の多くは、物流セクターの企業を吸収合併していくという垂直統合戦略を進めながら、自らの3PLや4PLとしてのケイパビリティに磨きをかけている。
アマゾンの巨大ECプラットフォームが、トラックによる宅配や物流施設および倉庫における物流サービスにまで及んでいることは、その代表的な例である。
こうしたサービスは既存の3PL企業と直接競合する可能性をはらんでいる。
また、都市部にロジスティクス施設や宅配便ロッカーを設置することも垂直統合の一環といえる。
本稿では2010年に始まるアマゾンの流通ネットワーク構築を、その地理的広がり、市場のカバー領域、機能分担という視点から分析することでその全体を概観していく。
6種類のEC物流施設 小売りのデジタル化を最も明瞭に体現しているのは、機能別の物流施設が登場してきたことである。
“大箱”のチェーンストアが、大量の物量を処理してクロスドッキングが可能な施設を必要とするのと同様に、ECの物流施設はEC特有の物的および運用上の必要性からその機能が設計されている。
立地にもそれぞれの特徴がある。
機能別施設 物流ネットワークの在り方は、機能分担の原則に基づいて決まる。
その役割と機能分担は次の六つに分けられる(図表1)。
①調達クロスドッキングセンター 「調達(インバウンド)クロスドッキングセンター」は、輸入コンテナが運ばれてくる港や鉄道の貨物ターミナルなど、主要なインターモーダルターミナルに近接していることが望ましい。
国内サプライヤーからの貨物もそこで受け入れる。
それは1990年代以降、大手量販チェーンが海外生産品の増加に対応して設置した輸入用拠点と同様の役割を果たす。
調達クロスドッキングセンターは建物の両側にトラックバースを備える。
機能面では通常のクロスドッキングセンターと変わらないが、e-フルフィルメントセンター向け専用である点が異なる。
建物の一方の側でインバウンド貨物(主にコンテナ)を荷受けし、必要となるまで在庫として保管することで、広大なECサプライチェーンの在庫調整弁としての役割も果たす。
建物の反対側では、需要に応じて荷物を満載にした車両を仕立て、各地のe-フルフィルメントセンターに向けて出荷する。
②e-フルフィルメントセンター(FC) e-フルフィルメントセンター(FC)は、個々のオンライン注文を集約する広大な施設(およそ50〜100万平方フィート≒1万4千〜2万8千坪)である。
在庫品目の多さから、そのほとんどが高層ラックを備える。
高さは通常24フィート(7メートル32センチ)だが、現在は36フィートを標準とすることが検討されており、中には40フィートを超えるものもある。
近年では、一部もしくは完全な自動倉庫も散見されるようになってきた。
FCは取扱品目別に設置されており、大きく2種類に分けることができる。
一つは主にアパレル・電化製品・宝飾類・食品雑貨・生鮮品などを扱うセンターである。
もうひとつはサイズによって、小箱に収まる10キログラム以下の「スモールソータブル」、大箱に収まる25キログラム以下の「ラージソータブル」、大箱にも収まらない家具やテレビ、プリンターなどの「ラージノンソータブル」に分かれる。
こうした区分をする理由は、サイズが異なると違う種類のマテハン機器が必要になるためである。
スモールソータブル向けの倉庫ならコンベヤベルトによる自動化は容易だが、パレットに積まれたラージノンソータブルの取り扱いはそう簡単にはいかない。
空港ハブは、地域のFCおよび仕分けセンター向けに航空貨物を積み替える施設であり、空港隣接かあるいは空港内に設けられる。
通常は大都市圏を結ぶハブ・アンド・スポーク・ネットワークにおける中継ハブとしての位置づけである。
フェデックス、UPS、DHLなど大手ロジスティクスプロバイダーも、ルイビルやメンフィスの巨大ハブ・仕分けセンターにおいてこうした航空貨物サービスを提供している。
16年に操業を開始した貨物航空会社アマゾン・エアは、ECの取扱量が、専用の航空貨物サービスを保有しても採算が取れる量にまで拡大したのに伴い、空のネットワーク整備に取り組んでいる。
③仕分けセンター(パーセルハブ) 地方・地域への配送準備を担うのが「パーセルハブ・仕分けセンター」(Parcel hubs and sortation centers)であり、規模は比較的大規模なものが多い(50万平方フィート程度)。
ここでは目的地を絞り込むため、貨物を郵便番号レベル程度にまで仕分けをする。
仕分けされた荷物は、センターから地域の郵便局や配送ステーション、あるいは下請けの配送業者の元へと運ばれる。
莫大な量を仕分けすることから、建物の一方で荷受けした荷物が、反対側の出口から出荷されるというクロスドッキングモデルを採用している。
また、特に需要の多い特定の品目に限り、FCとしても活用される。
④配送ステーション 配送ステーション(Parcel delivery stations)は中規模のクロスドッキング施設であり、その地域の特定の配送ルート向の仕分けを主たる任務とする。
立地は大都市圏の周縁部に位置するのが通常である。
主な配送先が都市部であるため、荷物は配送用のバンだけでなく、都市部に特化した車両(電動バンや自転車の場合も)にも積み込まれる。
また、立地は必ずしも大都市圏の周縁部とは限らず、都市部向けの専用車両で配送する場合には中心部に位置することもある。
⑤ピックアップ場所・地域貨物拠点 最終目的地まで直接届けることができない場合には、ピックアップ場所もしくは地域貨物拠点(local freight stations)を介することになる。
こうした小規模施設は人口密度の高い場所にある。
店舗のような外観をもつところが多く、顧客がコード(クレジットカード、QRコード等)を使って自分でピックアップできる専用ロッカーを備えることが、近ごろのトレンドのようだ。
⑥ファスト・デリバリー・ハブ ファスト・デリバリー・ハブ(即配ハブ)は、需要の多い品目の速やかな配送を望む声が高まってきたことに対応する施設であり、48時間以内の配送を基本とする。
この小〜中規模施設はそれを実現するために大都市圏に設けられ、需要の多い品を一定量在庫する。
需要を見越して事前にある程度の在庫を確保しておき、いざ注文が入れば即時に出荷する。
中心部に条件の良い場所は限られるので、古い建物を転用したところが多い。
保管と回収の効率は良くないが、品目の絞り込みと目的地の近さがそれを補っている。
3階層の流通チャネル アマゾンのECサプライチェーンは、3階層の流通チャネルから構成される(図表2)。
その第1ステージが調達であり、FCに在庫を供給することが主な役割である。
従来型の大規模小売りチェーンは、海外メーカーから仕入れる低コストの輸入品に過去数十年間にわたって頼ってきたわけだが、アマゾンの調達戦略もそれと大きな違いはない。
ただし、アマゾンの場合、傘下の自社ブランドを含め、いっそう多くの商品を取り扱っているため、サプライヤー、産地、使用する輸送モードもそれだけ多様である。
そのFC向け在庫(調達クロスドッキングセンター)の配置を見ると、アマゾンは地域特有の需要パターンを把握して、需要地の近くに在庫を置くことで、配送時間を短くすることを第一に考えているようだ。
第2ステージでは、注文が入った荷物を最終配送施設へと移送する。
最適なチャネルを選択して各種の制約を満たす配送方法を組み立てる。
ここで大事なことはフルフィルメントをどの場所で行うか、どういうルートで配送するかの2点である。
ラストマイルとして知られる最後の第3ステージでは、専用施設からさまざまなルートを経て目的地に荷物を運ぶ。
渋滞・駐車スペース不足・デリバリーの細分化など、都市部特有の制約に対処するため、「都市ロジスティクス戦略」ともいうべきものを確立することがここでの課題である。
アマゾンの流通チャネルを複雑にしているのは、パーセルハブ・仕分けセンターの存在である。
アマゾンの流通システムを流れていく荷物の中には、FCから米郵便公社(USPS)の「セクショナル・センター・ファシリティ(SCF)」へと送られる分がある。
SCFはUSPSの配送・処理センターであり、一つの施設で一つあるいは複数の郵便番号の区域を受け持つ。
地域の郵便局とネットワーク・ディストリビューション・センター(NDC)の間を中継する、小荷物配送ネットワークの根幹となる施設である。
ところがUSPSが運ぶ荷物の一部は、まずアマゾンの流通チャネルを通って仕分けセンターまでたどり着き、そこから地域の郵便局に送られるという経路をとるのである。
ECサプライチェーンにおけるFCは、EC事業者自身が運用するケースが一般的であり、荷物はそこで各3PLプロバイダーに振り分けられる。
複数の商圏をカバーするハブ・仕分けセンター、配送ステーションなどを実際に運営するのは彼ら3PLである。
しかしながらこのところ、大規模EC事業者が自社運営の仕分けセンターをオープンする動きが見られるようになってきており、垂直統合の気運が高まりつつある。
さらに本来は輸送セグメントに属する都市部の配送トラック、あるいはFCと仕分けセンター間のトラック輸送にまで手を伸ばすEC事業者も現れている。
アマゾンがコントロールする新しい流通システムが登場してきた背景には、物流に対する要求水準の上昇という事情がある。
ネットワークの進化と巨大化 アマゾンの物流施設には、自社所有とリースの両方の形態がある。
とはいえ一般にEC事業者は賃貸を好むため、アマゾン自身の所有する割合は面積換算で5%にも満たない。
リースを選ぶ主な理由はフレキシビリティの確保であり、同じ面積を運営するにしてもより少ない投資で済むからである。
この戦略によってアマゾンは規模の急拡大と、地域的な需要の変化に素早く対応することが可能になった。
しかし、ECの発展に伴って今後は自社所有の割合を増やしていくものと予想される。
19年時点で、北米にあるアマゾンの物流施設の総面積は1億7110万平方フィート(約15・9平方キロメートル、481万坪相当)に及ぶ。
その大半を占めるのが、ECを支える施設の要である187カ所のFC(面積比で71・4%)である(図表3)。
その次に重要な250カ所の配送ステーション(同13・9%)は、EC物流の最終段階(ラストマイル)を担う。
施設の標準的な規模はタイプによって明確に異なり、規模の経済・商圏・土地の利用密度・リードタイム・土地代といった諸条件のバランスで決まる。
施設の共用も積極的に行われており、68カ所(11・7%)の施設は複数の用途に利用されている。
アマゾンの流通ネットワークは、その構成要素と構造の変遷によって時期を四つに分けることができる(図表4)。
第1段階はニッチな通販企業として登場してきたところから始まっており、当時の取扱品目は書籍・映画・コンピューターゲーム・音楽などであった(第1期)。
こうした商品は箱に入った物理的な存在として流通していたが、現在ではそのほとんどがデジタル配信に置き換わっている。
FCは西海岸と東海岸に点在するのみであった。
2000年代半ば以降、当初の取扱品がデジタルに転換し始めると、軸足を家電・玩具・化粧品・ファッションなどへと移し、既存の小売業界と直接競合するようになった(第2期)。
06年を境としてFCの拡大が加速し、アマゾン自身によるフルフィルメントが開始される。
このプログラムの一環として、他の小売業者が在庫を保管・梱包・出荷するのに、FCを有料で利用できるようにし始めた。
アマゾンの施設へあらゆる在庫が集中するようになり、それが結果的に幅広いECの発展を支えることにつながった。
それは見方によっては、自社と直接競合する商売敵に対して塩を送るような行為とも言えるものであった。
一般消費財への軌道修正によって、海外からコンテナで運ばれてくる輸入品の割合が徐々に増加し、07年には最初の調達クロスドッキングセンターが設置された。
10年代を迎えてビジネスモデルが確立すると、FCを全米に次々と開設して積極的な水平統合へと乗り出す(第3期)。
デジタル機器の普及とデータ網の整備が進んだことで、ECはニッチから消費市場の主流へと成長を遂げた。
取扱量が増大したこともあって13年にはUSPSの協力を得ながら日曜配達が開始され、同時に最初のハブ・仕分けセンターが設立された。
しかし、14年に入る頃にはその配送網は青息吐息の状態となっていた。
UPSやフェデックスなどの大手の配送業者にしてみれば、アマゾンは数ある顧客の中の一社にすぎない。
ホリデーシーズン(11月、12月)などの需要急増に対応が追いつかず、遅配が生じたのである。
そのような需要増と運営上の必要から、陸上輸送サービスを拡充して垂直統合にも取り組むことになった(第4期)。
20年時点で、アマゾンは全米に2万台以上のトレーラートラックを走らせていると推測されている。
アマゾンの流通ネットワーク 調達とフルフィルメント ECの中で一際目立つのはFC(図表6)であるが、その調達においては、調達クロスドッキングセンター(図表5)のネットワークも無くてはならない存在である。
同センターはロサンゼルスのロングビーチやニューヨークなど、港と主要輸送ルートへのアクセスが良い立地に10カ所設けられている。
その主たる機能は、FCに向けて輸入コンテナをトラックに積み替えることである。
内陸部の施設については国内調達分もあることから、製造業の集積地にあるインターモーダルターミナルと人口稠密地域の近くが選ばれている。
他の用途との兼用例がないことは、その機能が特異なものであることを示唆する。
在庫はそこからトラックで187カ所のFCへと運び込まれる。
国内調達分であれば、調達クロスドッキングセンターを経由せずに直接運び込むこともある。
パレタイズ済みのFC向けの貨物の場合、全てのフルトラックロード(FTL)もしくはLTL(日本の特積みに相当)の配送便に対し、トラックバースとその係員を確実に割り当てるための事前予約システムが用意されている。
調達クロスドッキングセンターの立地にはマーケット指向が顕著に現れており、敷地面積の中央値も85万5千平方フィートと比較的ばらつきが少ない。
アマゾンはその程度の規模が最適だと判断しているものと考えられる。
一方、増加分は同程度の規模の施設をリースすることでカバーしている。
調達センター同様、典型的な立地は人口集中地域の隣接地である。
需要の多い地域に近いことから、配送ステーションとの共用も目立つ。
オンラインで入ってくる大量の注文に対応するFCは、ソータブル(箱に入れられて仕分けが可能な品目)をランダムに在庫する新世代のオートメーション倉庫となっている。
オンライン注文の確率論的な性質と膨大な品目数に対応するには、そのやり方が適している。
入荷した商品は各ロケーションの自動ラックにランダムに保管される。
同じ商品を一つのセンター内の複数のロケーションに散在させることで取り出しにかかる平均時間が短縮される。
オンライン注文では品物を一つずつ個別に配送することが標準的であるため、その数量と頻度の条件にはランダム保管がうってつけなのである。
在庫が専用スペースに保管されるわけではないので、倉庫全体の面積も少なく済む。
保管場所が品目ごとに決まっている場合と比べ、キャパシティの利用率は向上する。
また、重量物などのノンソータブルは別途保管する。
FCでは、その取扱品目数のあまりの膨大さから、品目タイプ別ではなく、仕分けが可能か否かによって施設を分けているケースが多い。
施設数として最も多いのはかさばって仕分けができないノンソータブルを扱うセンター(全体の38%)であり、体積の大きい重量物を配送しなければならない関係上、なるべく市場に近い立地が求められる。
次に多いのがスモールソータブル専門のセンター(全体の34%)だ。
こちらの立地条件はノンソータブルほど厳密ではない。
アパレル、靴、宝飾類、高額な電化製品などに特化したセンターは全体の12%である。
また返品専用の施設も2カ所設けられており、返品されてきた商品はそこでもう一度保管されるか、あるいはリサイクルや廃棄処分などに回される。
中間流通ネットワーク 中間流通を担うネットワークは、空港ハブ(図表7)と仕分けセンター(図表8)の2種類に大別される。
15年に発足したアマゾン・エアは、20年初頭時点でボーイング767を中心とする計42機をリースしている。
その目的はアマゾンのデジタルプラットフォームをサポートすることであることから、他の航空便各社とは異なり、ハブ・アンド・スポークという枠組はそれほど重視されていない。
一方で、いまだにフェデックスとUPSの航空ネットワークに大きく依存せざるを得ない状況にあるため、自前のネットワーク構築には力を入れている。
20年半ば現在で29の空港をカバーし、六つの空港ハブを自社で運営している。
立地に関しては、ハブ・仕分けセンターに近い場所が選ばれているところに特徴があり、主要大都市圏からは少し離れた小さめの空港が多い。
こうした空港から地域の仕分けセンターや配送ステーションへと荷物が運ばれていく。
アマゾン・エアの就航している空港から10キロメートル圏内に、32のFC(17%)と八つの仕分けセンター(17%)があることからも、空輸網とフルフィルメントとの強い結びつきを垣間見ることができる。
仕分けセンターはその地域における配送の足がかりであり、都市ロジスティクスの第1段階である。
ある地域の配送量が一定のボリュームに達すると、アマゾンは特定の郵便番号向けの仕分けセンターを開設する。
荷物はここから配送ステーションもしくは郵便局へと送られる。
20年現在、47のハブ・仕分けセンター(中央値32万1400平方フィート)が大都市圏をカバーしている。
ラストマイル 大都市圏にはECのラストマイルを担う2種類の配送ネットワークがある。
その一つである即配ハブは、需要の多い品や生鮮食料品を地域に供給するための施設である。
ここには「アマゾンプライム」(図表10)「アマゾンフレッシュ」「アマゾンパントリー」(図表11)も含まれる。
いまひとつが配送ステーション(図表9)であり、荷物はここで配送バンに載せられて各家庭もしくは受け渡し場所にまで届けられる。
大都市圏に53あるアマゾンプライム用のハブ「プライムハブ」は、たいていは地域の交通システムへのアクセスが便利な場所にある。
中央値が3万9500平方フィートと比較的小ぶりな施設が大半で、需要の多い品目を48時間以内に届けることを目的とする。
ここでは市場へのアクセスの容易さおよび短納期と、高額な賃料のトレードオフが問題となる。
距離が100マイル(約161キロメートル)短縮されるごとに配送費用は0・5%〜1%ほど減るという試算もある。
その削減効果は回転率の高い品目に絞り込むことでさらに大きくなる。
プライムハブは、短納期と中心地に近いという共通点のある配送ステーション、アマゾンフレッシュ、アマゾンパントリーと施設を共有することが多い。
アマゾンフレッシュとアマゾンパントリーは、限られた大都市圏で提供される特定分野の配送サービスである。
前者が扱うのは生鮮品を含む食料雑貨類であり、独自の配送システムが整備されている。
後者は日用品・清掃用品で、こちらは通常の荷物と同じ扱いで配送される。
この二つの立地パターンは、住民の可処分所得が多い地域(西海岸やニューヨークなど)か、あるいは年齢層の高い地域(フロリダなど)である。
アマゾンが水平統合によってラストマイルサービスの充実を目指していることは、13年以降、配送ステーションを急速に拡充してきていることからも明らかである。
中央値で9万1200平方フィートほどと小規模なこの施設は数としては最も多く、アクセスが良い場所にある。
重量物やかさばる荷物など、ラストマイルデリバリーに特別なやり方が求められる品目に特化しているステーションも、20年現在で全体の17%ほど存在する。
これはアマゾンが、テレビや家電など大型の消費財にまで手を伸ばし始めていることを示唆するものである。
(翻訳構成 大矢英樹) 《資料編》 北米拠点ネットワーク(分布・規模・拠点数) 資料編の内容はPDFデータをご覧ください。
