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2021年6月号
特集

アマゾンの世界的労働組合潰しに反旗

米アマゾンの内部資料が流出 概況説明:東京管理職ユニオン 鈴木 剛 執行委員長および代理人弁護士 ●現在、世界中でアマゾンによる組合潰しが行われている。
米アラバマ州ではアマゾン倉庫従業員による労組結成投票が2021年4月9日に否決された。
しかし、この投票期間中に会社側から露骨な妨害工作があったことは現地メディアでも広く取り上げられた。
欧州ではイタリアの倉庫で数千人規模のストライキが発生した。
アマゾン労組結成の動きは世界中で広がりを見せている。
 日本においても、東京管理職ユニオン(MU)には13年からアマゾンジャパンの従業員からの労働相談が寄せられてきた。
そこで15年にアマゾンジャパン労働組合(東京管理職ユニオンAmazon支部)を結成した。
その後、19年から「コーチングプラン」や「PIP(Performance Improvement Program/Plan:業務改善プログラム)」と呼ばれるシステムを利用した退職勧奨についての相談が相次ぐようになった。
 また、アマゾンジャパンの従業員代表選挙で、労組は推薦候補を擁立したが、会社側は民主的投票を行わず、人事が主導して従業員代表を選ぶというあからさまな介入を行った。
さらに今回、労組幹部を狙い撃ちした①解雇(支部長A氏)、②パワハラによる労災(副支部長B氏)が発生した。
●米アマゾン社員の内部告発で発覚した、アマゾンの社内評価マニュアル(2018年Q1)を入手した。
編集部注:同資料によるとアマゾンの管理職は、部下の中から一定の人数のローパフォーマーを見つけてPIPや「Pivot(方向転換という意味、PIPの一つと考えられる)」などを通して退職させるように指示を受けている。
18Q1時点で上司は部下の5%に「最も効率化が低い(Least Effective:LE)」と評価するように指示されている。
12カ月でLEの比率は10%に達することが期待されている。
倉庫従業員やカスタマーセンター、本社部門など所属を問わずこれが世界中で運用されている。
●支部長のA氏(40代男性)は19年にコーチングプログラムの対象になり、その目標を達成したにもかかわらず、ジョブレベルを満たしていないという評価を受けた。
度重なる嫌がらせでA氏は適応障害に陥った。
個人の活動に限界を感じた原告は東京管理職ユニオンに加入、その後、Amazon支部長に就任した。
 同10月、A氏はいわれのない理由で懲戒降格処分を受けた。
しかし、会社側は労組との団体交渉でも不誠実な対応に終始したことから、A氏は20年3月に処分の無効を求める労働裁判を申し立て、これに勝訴した。
しかし、アマゾンジャパンは異議を唱え本訴に移行した。
係争中もA氏に対する業務上の嫌がらせは続き、21年2月には退職勧奨を行い、3月10日付けで解雇した。
A氏はこれを組合活動や労働審判・裁判に対する報復措置であるとして同社を提訴、解雇の無効を訴えている。
●副支部長B氏(40代女性)は品川労基署に労災を申請した。
B氏は15年8月にマーケティングマネージャーとしてアマゾンジャパンに入社。
入社初年度から2度の表彰を受けるほど高い評価を得ていた。
社内異動を経て、19年1月に上司から2・5人分の業務を割り振られた。
さらに同3月に発生した大規模なシステム障害への対応や複数のプロジェクトが追加された。
 上司XはB氏に指示していない業務をB氏がやらなかったという虚偽報告や社内異動の妨害、理不尽な叱責を行った。
B氏はコーチングプランに入れられて退職強要を受けた結果、同7月に鬱病と診断されるに至った。
発症後、B氏は組合に加入。
業務負荷の軽減を新上司のYに願い出た。
しかし、逆にさらに重い業務負荷をかけられて、20年5月には達成不可能な課題を与えた上で目標未達だったとして退職を促した。
 20年6月〜8月、会社はB氏に対して懲戒処分手前の「指導書」を2度発令した。
B氏が過去の不当評価とX氏のパワハラについてY氏に相談したことなどが理由だった。
同9月にはB氏は休職に追い込まれ21年4月現在、復職に至っていない。
●支部長A氏コメント 私がアマゾン労組に加入したきっかけはコーチングプランだった。
今も労組には社員、アルバイト、契約社員などさまざまな立ち場の人が相談に来ているが、その相談内容の9割がコーチングプランやPIPに関するものだ。
 私はアマゾンという会社を好きだし、しっかりと働いていきたい。
そのためにアマゾンの労働環境を少しでも良くしたい。
突然、退職を勧告されるような環境は非常に恐ろしい。
社員のモチベーションを下げるものであり、成果が上がるとはとても思えない。
●副支部長B氏コメント 元々アマゾンが大好きで、業務過多になっても上司を信じて一生懸命仕事をしてきた。
しかし、結果的には自分が起こしたわけでもないシステム障害の責任を取らされたり、指示も受けていない業務をやらなかったと非難されてコーチングプランを課せられたり、理不尽なことがあまりにも多く労組に加入した。
 コーチングプラン、PIPはシステム自体ひどいものだが、そこに送り込む人の選別が著しく不当であり、虚偽も横行している。
私が鬱病を発症しながら諦めずにやっているのは他にも苦しんでいる従業員がたくさんいるから。
アマゾンを少しでも安心して働ける職場にしたい。
質疑応答 ──問題の原因はアマゾンの組織的カルチャーという理解でいいか。
MU・鈴木 アマゾンジャパンは一般的な日本の会社とは違う面がかなりある。
直属の上司が強い権限を持ち、人事も複数の組織に分かれている。
そのため団交を行っても先方の担当者によって対応が違ってくる。
団交を押し入れたとたんに解決してしまうケースもかなりある。
ただし、今回は交渉にも社内法務部や代理人弁護士を配置してきている。
全社的な対応と受け止めている。
──A氏とB氏は問題が決着したらアマゾンに戻るつもりはあるのか。
A氏 懲戒降格などの不当な処分を撤回してもらい、普通に働ける状態で復職して会社に貢献したい。
B氏 不当な評価に対する事実関係を確認して撤回してもらった上で復職したい。
──PIPの仕組みをもう少し詳しく。
MU・鈴木 会社は猫の目のように制度を変えてきている。
当初は懲戒処分の一つと位置付けられていた。
通常は一番軽い懲戒処分がけん責で、いわゆる始末書を取るわけだが、その下にPIPがあった。
しかし、業務改善が懲罰というのはおかしいと労組が指摘したら、それは撤回された。
その後も労組が矛盾点を追及する度に制度を見直している。
運用にもばらつきがあり、本人には「コーチングプラン」だと知らされないこともある。
はっきりとしていない。
──上司は気に入らない部下をPIPに送り込めるのならやりたい放題ではないか。
MU・鈴木 まったくその通りだ。
実際、言いがかりに近いような理由でPIPに入れられている。
上司の地位を脅かすほど優秀な部下をPIPに入れる場合もある。
労組としては世界中からPIPのシステムを一掃したいと考えている。

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