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2021年5月号
特集

食品物流プラットフォーム構築を目指して

納品伝票の電子化をスタート  われわれは現在、持続可能な加工食品物流プラットフォームの構築を目指す物流共同化の取り組みを進めている。
「競争は商品で、物流は共同で」というスローガンを掲げて、カゴメ、ハウス、日清オイリオ、日清フーズ、ミツカン、味の素の6社による「F-LINEプロジェクト」を2015年にスタートした。
 伝票統一と庭先条件の統一、標準化KPI(「荷主側べからず」項目)などに基づいた共同配送を16年から北海道で、19年からは九州で開始している。
北関東から北海道への共同輸送も実施している。
また19年には戦略の具現化を目的とする全国規模の物流会社、F-LINE社を加工食品メーカー5社の出資で発足させた。
 製配販の課題解決を主な目的とする「SBM会議(食品物流未来推進会議)」も16年に活動を開始している。
F-LINEプロジェクトの6社に加え、キユーピーとキッコーマンが参加している。
こちらは「ソフトのプラットフォーム」と位置づけ、外箱表示統一化、賞味期限年月表示化、フォークリフト作業の安全確保、リードタイム延長、附帯作業、長時間待機などといった課題に取り組んできた。
 ただし、製配販にまたがる課題はメーカーだけでは解決できない。
そこで18年には製配販と行政、物流業界関係者が参画する「持続可能な加工食品物流検討会」が設置された。
メーカーからは味の素とキユーピー、卸から三菱食品と加藤産業、小売りからはカスミとシジシージャパン、マルエツ、行政からは経産省と国交省、農水省、物流業界関係としてJILSと日通総研が参加している。
全体最適の視点から、商慣行の見直しを含む業務の改革と改善につながる解決策を生産性と品質のバランスを図りつつ、議論している。
 15年のプロジェクト開始当初は加工食品メーカーが物流会社から選ばれる荷主となることを目的にしていた。
しかし、それだけでは足りないことが徐々に分かってきた。
私たちの商品をお客さまに持続的かつ安定的にお届けするためには加工食品物流自体を物流会社から選ばれる仕事にしなくてはならない。
 そのため現在は「持続可能な加工食品物流の構築」を目的に設定している。
ドライバーをはじめとする物流従事者の労働環境改善へ向けた足元課題の解決策としては、これまで「納品リードタイム延長」「長時間待機撲滅」「附帯作業撲滅」「ASN検品レス」などを進めてきた。
これらの取り組みは、目の前で流れている“血”を止めるための取り組みであり「地ならし」と位置づけている。
 そして、20年から本格的に進めている新しい取り組みが「データプラットフォームの構築」だ。
これは政府が進めるスマート物流サービスとも連動している。
データプラットフォームの構築には標準化が欠かせない。
先の「地ならし」に続く、標準化に向けた「前さばき」として次の四つのテーマを設定している。
 一つは納品伝票の電子化だ。
20年7月に伝票電子化プロジェクトを始動した。
加工食品メーカーや物流会社F-LINEに加え、セブン&アイHD、伊藤忠食品、三菱食品、ウイングアーク1st、Hacobuと連携して取り組み、検討を進めている。
 加工食品業界では現状、発注、受注、物流会社への発送指示、納品先での受け取り時のハンコまで全ての過程で紙が使われている。
これをデジタル化する。
最終的には全ての工程を電子化するのが目標だ。
そのために、まずは物流会社が納品先へ行って受け取ってもらう際のハンコ部分を電子化することを目的に取り組みを進めている。
伝票データをクラウドに上げ、荷物を受け取る側が商品の到着時に電子的なハンコを押す。
 20年の8月と9月に、味の素製品をF-LINEの川崎物流センターから、伊藤忠食品のイトーヨーカドー相模原IDCセンターへの配送で実証実験を行った。
その結果をレビューして、実際の業務に当たったF-LINE社とシステム会社のウイングアーク1stが連携して機能改良を繰り返しており、21年1月から社会実装に向けた準備を開始している。
4月以降に味の素の工場からF-LINE社のデポに向けた生産移動、デポ間移動、そしてF-LINE社の拠点発三菱食品センター向け配送を開始する見通しだ。
 その後は、F-LINE拠点から大手量販店専用センターや大手食品卸店汎用センター向けでも伝票電子化を検討していきたい。
さらにその先にはSBM会議に参加しているメーカーなど加工食品メーカー発のネットワークに拡大していきたい。
 納品伝票の電子化はスマート物流実現の第一歩と位置づけている。
まずは納品伝票(物流)情報を一つに集めることで、製配販各層が共通の仕組みを活用する環境を構築していく。
次に入庫予約や動態管理情報などといった物流に関わる情報を集約する「物流データプラットフォーム」を確立する。
日野自動車のコネクティッドトラックや各種ドライブレコーダーの普及などによって、かつては難しかったリアルタイムのトラック動態管理が実現しつつある。
 トラックの長時間待機やセンターにおける附帯作業の実施状況は物流会社へのヒアリングでしか実態を把握できなかった。
しかし、プラットフォームにデータを集められれば、そのデータに基づいてメーカー、卸、小売りが物流課題をテーブルの上にあげた上で、対応策を協議することができる。
それによって長時間待機や附帯作業などの物流の社会課題を解決し、後述するデータに基づく超効率化された未来物流、すなわち「持続可能な加工食品物流」の体制構築に結びつける構想だ。
 前さばきの二つ目は外装サイズの標準化だ。
外箱のサイズに一定のルールを設定する。
現在、加工食品メーカーの外箱は各社、各商品でバラバラな状態となっている。
各社がそれぞれ自社製品を取り扱いやすいように外箱を設計している。
メーカー単独で物流体制を組むのであればそれでも構わない。
しかし、共同化では大きな弊害になる。
 外装サイズが標準化されていないと、トラックの積載効率を高めることができない。
物流拠点の自動化設備も利用できない。
箱の重さや高さがバラバラで、バンドがけやシュリンク包装などの規格が統一されていないと、自動化ラインにかけられない。
 そこでサプライチェーンの全体最適の視点から外装サイズを標準化するガイドラインの策定を目指し、20年7月に「外装サイズ標準化協議会」が発足した。
座長は流通経済大の味水教授にお願いし、メーカーからは味の素とキユーピー、卸は日本加工食品卸協会、小売りからはセブン&アイHDとシジシージャパン、メーカー系物流会社としてキユーソー流通システムとF-LINE社、行政からは経産省、国交省、農水省がオブザーバー参加し、日通総研と日本包装技術協会が事務局を務めている。
複数回の会合を経て、21年4月にはガイドラインを発行して関係各所に送付した。
 同ガイドラインは各メーカーに外装サイズの変更を強制するものではない。
製品の改廃時や新製品発売時などのタイミングで順次適用されることを期待している。
業界団体などを通じて普及を図り、3年から5年後までには標準化を実現したいと考えている。
 そのために製品開発担当や包材開発担当にガイドラインの存在を周知して協力を求めていく。
外装サイズの標準化はメーカーにとって直接的にはコスト増となることもある。
しかし、それはサプライチェーンの最上流に位置するメーカーの責任であるという認知を広げていきたい。
データプラットフォーム構想  前さばきの三つ目はコード体系の標準化だ。
加工食品業界においてはサプライヤー、メーカー、卸、小売・外食それぞれがPVコード(プライベートコード)を使用している。
さらにメーカーとサプライヤー間、メーカーと卸間、卸と小売・外食間の業界データベースでもPVコードが用いられている。
 長い年月をかけて個別に作り込まれてきたPVコードを強制的に標準化するのは現実的ではないと判断している。
そこで各社・各業界のPVコードを残したまま、データを「GS1(サプライチェーン効率化のための国際規格を策定する国際組織)」に準拠した標準コードに変換することでサプライチェーンをシームレスにつなぐことを想定している。
 ただし、テクノロジーは日進月歩であるため、PVコードをGS1標準コードに変換せず直接連携させる仕組みも可能であるかもしれない。
複数の仕組みを並行して検討している。
 最終的にはデータを製配販の各層が参照して、データに基づいたサプライチェーンの効率化について手を打っていくというモデルになる。
それは内閣府が主導している戦略的イノベーションプログラムのスマート物流サービスとも方向性が一致している。
 四つ目の外装表示の標準化については既に実装が進んでいる。
従来は外装の物流情報の表示位置に明確な決まりがなく、メーカーや商品でバラバラだった。
そこで外箱の右上に物流情報を集約する味の素の「外装表示ガイドライン」を公開した。
その普及促進に4年ほど前から取り組んでいる。
 これも各メーカーには表示方法の変更を強いることはせず、あくまで各社が製品改定の際に切り替えてもらうよう提案することで徐々に変更が進んだ。
今、倉庫に行き加工食品外箱の表示を見るとかなりそろってきたことが実感できる。
メーカーの協働から製配販の連携へ  当初は加工食品メーカーによる取り組みとして始まったプロジェクトだったが、現在は製配販三層の連携が必要な段階に入ってきている。
加工食品メーカーによるF-LINEプロジェクトとSBM会議は卸の業界団体である日本加工食品卸協会の「物流問題研究会」と連動して取り組みを進めている。
 同研究会で議論されている内容の一つが納品リードタイムの延長だ。
「納品リードタイム延長小WG」を設置して、メーカーと卸間でリードタイムの延長について検討を進めている。
味の素、カゴメ、キユーピー、キッコーマン、ハウス、国分、三菱食品、伊藤忠食品、加藤産業、日本アクセスなどが参画している。
経産省が関与する製配販連携協議会に設置されている「ロジスティクス最適化加工食品小WG」とも密接に連携している。
製配販連携協議会には「スマート物流推進検討会」も配置されており、データプラットフォームの構築に向けた議論が製配販三層で行われている。
 このような大がかりな連携は、15年のF-LINEプロジェクト開始時には想像していなかった。
そもそも当初はメーカーが共同配送すること自体にも大きな抵抗があった。
同じ倉庫から各社が出荷するとなれば特売情報などの機密が漏れてしまうという懸念を各社がもっていた。
 しかし、今や加工食品業界でも共同配送は当たり前になった。
F-LINEプロジェクト発足後の6年間で加工食品業界の意識は大きく変化したといえる。
とりわけ主要メーカーが物流会社と連携して課題解決を議論し、実行するリアルなプラットフォームとしてF-LINE社を設立できたことは大きな成果の一つだと思っている。
 F-LINE社は発足から約2年が経過した。
複数の物流子会社を一度に合併することになり、まずは実務の安定化を最優先に取り組んできた。
そのため、「持続可能な加工食品物流の構築」という設立理念の実現に関しては当初計画より若干遅れている部分もある。
それでも、外装サイズ標準化協議会や納品伝票電子化などの取り組みで事務局機能と実行を担った功績は大きい。
荷主=出資者とその物流会社が一体となったからこそできる改革をこれからもどんどん進めていきたい。
 これまでの経験からはっきり分かったことがある。
自社のことだけ考えていたら、物流課題の解決は永遠にできないということだ。
同業他社、異業種他社、製配販三層のサプライチェーン全体、物流会社、行政当局、業界団体とタッグを組まない限り何も変わらない。
 コスト削減がメーカー物流部門の主な役割であったのはもう過去の話だ。
物流のリソースが限られる時代においては「運びきる仕組みづくり」に知恵を絞ることが最大の役割だ。
そのために古い慣習と決別しなければならない。
メーカーだけではなく、サプライチェーンに携わる全てのプレーヤーが当たり前だと思っていた業務フロー、商習慣、物流費に対する考えをゼロから見直す必要がある。
 物流を取り巻く危機的な状況は物流関係者以外にも広く認知され、改革の必要性については幅広い層で共有できるようになった。
しかし、「総論賛成、各論反対」はいまだに多い。
「綺麗事」を「当たり前」にまで持っていく必要がある。
 その試金石の一つが納品リードタイムの延長だろう。
一部のメーカーの一部の製品の納品リードタイムが翌日配達から翌々日配達に変わっただけでも物流会社の負荷は大きく下がる。
「追われる物流」から「計画する物流」となり、また翌日出荷のため深夜に行っていた作業を昼間にすることができるようになる。
労働環境の改善、効率の向上など、その効果は計り知れない。
 メーカーの物流部には個別最適から全体最適への道筋をつけることが求められている。
最新テクノロジーの活用や効率化の取り組みも、それによって部分最適を発生させてしまえば本末転倒になる。
そこにも方向性を指し示す組織や団体の存在が必要だろうと考えている。

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