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2021年5月号
特集

ケーススタディ:アルプス物流 対象市場とエリアを見定め顧客層を拡大する

外販比率をさらに引き上げる ──2021年1月に東証2部から1部への指定替えが行われました。
一般的に1部上場は物流子会社の「上がり」ともみなされます。
 「2部から1部に指定替えしたからといって特段大きな変化があるというわけではありません。
ただし、経営に対する厳しい視線と期待を感じるのは確かです。
成長のスピードなどが今まで以上に問われますし、企業価値を上げることへの期待も大きくなる。
ビジネスの成長とガバナンスの両方を重視しつつ、一段と質の高い経営を目指してステークホルダーの要求に応えていかないといけません」  「親会社であるアルプスアルパインと、われわれアルプス物流は全く異なる業態の企業です。
アルプスアルパインは電子部品や電子機器の製造業で当社は物流業。
独立した経営をこれまでも行ってきましたし、これからもそうです。
ただし現在、親子上場はガバナンスの観点から風当たりも強い。
独立した経営をしっかりと確保できているかのチェックは今まで以上に厳しくなります」  「当社の連結売上高のうち、約3割をグループの仕事が占めています。
グループからの依存度をなるべく早い段階でもっと下げる必要がある。
これは親会社であるアルプスアルパインからの強い要望でもあります。
いつまでにどれくらいという明確な目標は立てきれていないのですが、外販の拡大によってグループの仕事の比率を全体の2割くらいまで下げる必要があると考えています。
ただ、アルプスアルパインの生産活動を支えるロジスティクスの質と効率向上も当社の重要な役割です。
それをやりつつ、外販のゾーンで独自性を発揮して伸ばしていきます」 ──今後どのような物流会社を目指しますか。
 「今、進めているのは強みを発揮できる領域を一つずつ増やしていくことです。
当社はずっと電子部品物流を手掛けてきました。
この分野についてはある程度のポジションを確保できたと思っています。
その延長線上にある新たな分野への取り組みを本格化させます。
具体的なターゲットは大きく二つ。
一つは自動車電装品の分野です」  「現在、電子部品が最も多く使われる製品は自動車とスマホ。
電子部品物流のお届け先をみても、自動車関連が増え続けています。
自動車は今後、電子化がさらに進む。
EV化も加速する。
自動車で使われる電装品に裾野を広げることで顧客層を拡大していきます」  「もうひとつは産業機器関連です。
当社は生産設備関連の部品を扱っており、一部設備については移動や据え付けのビジネスも手掛けています。
これを拡大していく。
工場におけるロボット設備や半導体の製造装置関連などが主体になります」  「一方、消費物流を担うグループ会社の流通サービスはこれまで生協の個配事業をメーンにしてきましたが、今後は生協関連に加えて化粧品や医薬品のセンター事業へと幅を広げます。
企業間物流からECセンターの運営まで手掛けていきます。
流通サービスはここ1、2年業績が急拡大しています。
マネジメント層の代替わりもあり、今後は新分野への展開をさらに本格化させます」 ──1964年の設立から今日までの沿革を振り返って、ターニングポイントをどう捉えていますか。
 「創業から80年ごろまでは親会社の荷物を運ぶ普通のトラック運送会社でした。
最初の節目は81年ごろから始めた国内拠点の整備です。
86年ごろまで続き、国内における基盤が整いました。
さらに当社にとって最も大きなターニングポイントとなったのが、87年に当時の長迫令爾社長が進めた改革です。
トラック運送に加えて、倉庫や輸出入も含めた総合的な物流会社を目指しました。
社名も現在のアルプス物流に変更した。
その方針が現在の骨格を形づくっています。
つまり運送事業、保管事業、輸出入事業、商品販売事業という四つの塊が整備されました」  「海外関連は88年に輸出入事業を開始して、94年の香港を皮切りに海外に進出し、2002年にIATAのライセンスを取得しました。
ゼロ年代半ばには海外売り上げが100億円を超え、その後の成長の重要なエンジンになりました」 ──電子部品物流市場の今後をどのようにみていますか。
 「20年度の上期は世界中で電子機器や自動車の生産が落ちたので、電子部品の物量も大きく落ち込みました。
前年度に米中貿易摩擦の件もあっただけに厳しい状況だった。
しかし20年度の下期はかなり挽回してきました。
そして、電子部品市場の今後についてはプラス材料が多い。
自動車の電子化、IoT、5G、DX、デジタル化といった流れの中で電子部品は半導体も含めて、長期レンジでは物量が確実に増えます。
短期でもデータセンターの建設需要や5G基地局関連など電子部品が使われる局面は増えている。
自動車に関しては電子化に加えてEV化の流れもある。
これも電子部品にとっては追い風です。
さらに海外に出ていた生産が一部は日本に戻ってきている状況もある。
こちらのアウトソーシング需要も狙います」 自動化倉庫の展開を本格化 ──成長戦略をどのように描いていますか。
 「地域と市場・顧客の2軸、つまりエリアとマーケットの縦横で業容を拡大していきます。
日本や中国といった既存展開エリアにおける衛星拠点の展開と既存顧客の深耕拡販は基盤となる部分なので引き続き注力します。
その上で新たな展開を図る。
海外における今年の目標となるのがインドです。
二つの現地法人を設置しているので、こちらの経営の安定化を進めます。
新たな進出先としてはフィリピンをどうするかを見極める必要がある。
同時にインドネシアや東欧のマーケティングも進めていきます。
既に進出している地域については顧客の要望に対応しつつ、衛星拠点を展開していきます」  「顧客軸については自動車と産業機器関連が電子部品関連のターゲットとなるのですが、もうひとつ重要となるのが流通サービスの展開です。
直近では生協の個配事業とそれ以外のセンター事業の比率がおよそ6対4なのですが、センター事業の拡大によってこれを5対5に持っていきたい。
そのための戦略的ターゲットが化粧品と医薬品となります」  「国内の電子部品物流の体制については主要なハブ拠点の増強を検討していきます。
地域的には関東圏、関西圏、中京圏です。
埼玉県の加須に設置しているようなハブ拠点をさらに整備していきたい。
ただ、土地の取得などといった条件があるので、タイミングをみて動く必要があると考えています」 ──拠点整備と生産性向上を図る「戦略投資」の拡大を掲げています。
その内容は?  「当社の戦略投資の内容は大きく三つ。
一つは先ほど述べた国内外の拠点展開。
二つ目が倉庫の自動化です。
20年度には二つの新しいタイプの自動化倉庫を本格稼働させました。
電子部品をカートン単位でハンドリングできる自動化設備を20年春に西宮倉庫で導入した。
自動倉庫棚、ソーター、オートスキャナー、オートラベラーなどを導入した当社初のカートン自動倉庫です。
もうひとつは流通サービスが受託している化粧品EC拠点でのAGV導入です。
20年秋にAGV約330台を運用する自動化設備を稼働させています」  「三つ目のシステムですが、現在新たなWMSへの変更作業を進めています。
切り替え完了は24年の予定です。
当社は『お客さまごとの最適物流追求』を企業テーマに掲げています。
そのための倉庫のシステムも顧客ごとにカスタマイズする部分が多い。
立ち上げまでにある程度の時間もかかっていた。
新WMSでは立ち上げ期間の大幅な短縮を実現します。
自動化と合わせた、テクノロジーの力を最適物流の構築に活用していきます」

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