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2021年4月号
特集

シーオスのDXカッティングエッジ 第1回 特別編集版

巨大な危機から見えてくる 連携・協力・マッチングの大切さ 松島 流通産業には近年、2度の革命が起きました。
一つはコンビニが起こした革命、二つ目がネット通販による革命です。
これが物流に与えた影響を、私は「バラバラ事件」と呼んでいます。
それまでパレットやケース単位で動いていた物流が、コンビニ革命で「バラ」になって、ネット通販革命でさらに「バラバラ」になった。
トランザクションが増えて、要求事項が高くなり、ラストワンマイルの役割も急拡大しました。
 一方、物流の世界で革命といえるのは1976年に始まったヤマト運輸の「宅急便」による荷物の標準化システムだけです。
それ以後45年間、何も起きていない。
そのヤマトがリードしてきた物流も、最近はいろいろな問題が出てきて業界は混沌としています。
そして次の革命のキーとなるのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)、デジタル革命だと思います。
こうした状況下で西成先生は物流の未来像をどう思い描いているのでしょうか。
西成 物流を巡る近年の大きな流れは今の説明の通りだと思います。
最初はコンビニが流通に革命を起こした。
物流ではヤマトが個配送、BtoCを生みだした。
そこから現在までの間にさまざまな変化が起き、いろいろな問題が生まれている。
最大の変化の要因はeコマースです。
みんなどんどん注文し始めて猛烈な勢いで伸びている。
 そしてついには「物流危機」といわれる状況に陥り、物流の未来は従来の延長線上にはないとみんなが気付いた。
そこから従来の効率化とは異なる次元に進むために、DXが出てきたのだと私は受け止めています。
そして、DXのさらに先はどうなるのか、何が起きるのか、コロナ禍の中でずっと思いを巡らしてきました。
 まず一つは、このような危機的状況においては、一企業単独では対応できないということが明らかになりました。
これからの時代、企業が個別に危機に備えようというのは無理なんです。
小さな災害なら何とかなるかもしれませんが、未曾有の規模の緊急事態に備えて、自社だけのサプライチェーンを整えておける企業は、あったとしても世界で数社です。
 コロナのような危機のときに大切なのは、いかに連携するかです。
普段は競争していていいし、それが利益の源泉でもあるのですが、イザというときには協力できる体制を用意しておく。
今はそれがうまくいってないからバタバタしている。
 そこで思い出されるのは東日本大震災です。
社会インフラが至る所で破壊されてどの道が通れるか分からないという事態が起きた。
自動車メーカーはそれぞれ自分の会社のクルマの位置情報は取れるけれど、それでは足りない。
そこで普段なら絶対オープンにしないデータをみんなで出し合ってみたら「通れる道マップ」が浮かび上がってきた(図1)。
 これは1社では絶対に無理なことでした。
みんなが協力することで震災時の物流がうまくいった。
有事が起きて、みんながまとまったことに私は感動しました。
その後、時間がたつにつれて、みんなまたバラバラに戻りましたが、それでもこの時の経験によって、連携・協力の大切さが明らかになりました。
危機のときはどうすべきか、考えるきっかけを与えてくれたと思います。
 物流の未来像で一番重要なのは連携・協力・マッチングだと考えています。
そして連携をしていくための前提となるのがDXだと私は考えています。
デジタル化されていない状態でフォーマットの異なるデータをつなごうとしたってつながらない。
電話で「形式が違うんだけど」とか「2行目に何書いてある?」とか言い合っていたら永遠に終わりません。
実際これまで私はそういう場面をたくさん見てきました。
 そんなやりとりはやめて、DXをベースに連携・協力の体制を整えておかなければなりません。
コロナの問題だけでなく、これから物流事業にはアマゾンや中国企業という黒船が参入してくる。
いろんな意味で備えておく必要があります。
そのために内閣府は、私も関与している「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)」を走らせているし、またいろいろな所で準備が進んでいます。
人が止まり、モノは動き続ける 状況が導き出す日本の未来 松島 コロナ禍に入って、今までになかったモノやサービスがすごい勢いで売れだしたり、テレワーク、オンライン、非接触などの仕方なく取った手段が、実際にやってみると「これでも全然問題ない」ということが分かったり、いろいろなことが一気に顕在化し、加速しました。
こうしたことが、これから人流・物流、実体流にも大きく影響を与えてくると思います。
西成 事実として、人が動かなくなって、モノが動くようになりました。
松島 これまでは人が動かないとモノも動かなかった。
西成 それなのに人が動かなくてもモノが動くようになった。
その結果、人が動くことで支えてきた産業は今、壊滅的な打撃を受けている。
モノだけが動いている。
これによって今までのマネジメント体制や社会体制は一気に変わることになります。
 「人が会う」ということ自体にしても、本当に会わなければならないのは、どのようなときなのか、浮かび上がってきた。
報告だけのリアル会議は必要ない。
リモートでPCを開けばいい。
ただしブレーンストーミングのように、多人数で集まって意見を出し合うような会議はリモートでは無理です。
オンラインツールの性能がまだそこまでいっていないということなのかもしれませんが、みんなで同時に意見を出し合って瞬間瞬間を高めていくといったコミュニケーションはオンラインではできない。
松島 情報を同時多発的にシェアしてマッチングしていくような連携はこれまでのやり方ではうまくいかない。
だからこそDXというベースが必要なのだと思います。
そして今、これまでのやり方を変えるチャンスを迎えている。
西成 日本は強制力がないと動かない。
今はその強制力が企業の考え方を変えてくれています。
東日本大震災の時も強制力は働いたけれど、全体ではなく一部でした。
それ以外の人たちは傍観していた。
ところが今回のコロナ禍では全世界に強制力が働いていて、変化に対する反発や抵抗を抑えることができている。
この変化に乗らない企業は淘汰されていくと思います。
松島 全世界同時に同じ条件で起きる変化というのは過去にあまり例がありません。
今はみんな同じスタートラインに立っている。
この状況が日本にどう影響していくのか。
日本の仕組みをどう変えていったらいいのか。
西成 1年前まではリスク管理として、サプライチェーンのBCP(事業継続計画)やリスク分散がよく議論されていました。
国際物流ではチャイナリスクや海賊リスクが考慮されて、分散型のサプライチェーンが検討されていた。
しかし、今回のコロナでは全世界同時にBtoBが止まった。
これまで誰も経験したことのないサプライチェーンリスクです。
BtoBがこれだけ止まると1社ではポートフォリオを組めない。
連携するしかありません。
 そこでひらめいたのは、1社とか数社ではなく、途中までそれこそ“百貨混載”で何でも運ぶ。
みんなで連携して次の港あるいは場所まで行って、「ここからはこういうルートで行ける」という情報があれば業界を超えて連携する。
「インドのここからここまでバスが走っている」ということなら「じゃあバスを輸送手段に入れよう」といったように連携する。
今、本当にそういう必要が生じています。
危機感を持ってみんながまとまっていかないと駄目です。
フィジカルインターネットを 可能にする二つのやり方 松島 それを聞いているとフィジカルインターネットの風景が浮かんできます。
これまでフィジカルインターネットは、「通信の世界では空いているスペースをパケット通信でうまく埋めている。
それを物流でやるにはどうするか」という話をしてきました。
私も「そういうふうにした方がいいよね」とは言っていましたが、そう簡単に変わるとは思っていなかった。
しかし今回のコロナ禍でわれわれは人流・物流、実体流の構造が大きく変わるのを目の当たりにしています。
変化というのは、長い時間をかけて変わることもあるけど今回は一気に変わって「何十年後はこうなるかもしれない」という未来を見させられている。
 物流・情報流を合わせてロジスティクスと定義されていますが、この状況下になって私は初めて、情報流だけを切り出してもいいのではないかと考えるようになりました。
モノが動いていくのは実体流として変わらなくても、モノ以外は切り離して瞬時に共有する。
そのために情報流を標準化して、データ交換可能なパケットにするといったことができるのではないか。
そうしたことに対して世の中の誰もがノーと言わなくなった気がします。
西成 まさに“DX元年”だと思います。
今回はやらざるを得ない状況になっている。
ただし、物流と情報流の流れは逆向きです。
情報が流れて受けた側が「分かった」と言ってモノを流す。
お金も情報だとすると、これもまた逆で、モノを受け取った側が「ありがとう」と言って支払う。
その裏表がうまくペアになって、サイバーフィジカルになってつながれる世界に入る。
その時にシーオスにはプラットフォームとしての活躍を期待しています。
松島 コロナ禍の前、DXという言葉がキャッチーに使われるようになる前には、「インダストリー4・0」や「デジタルツイン(仮想空間に物理空間と同じ環境を再現して制御すること)」という言葉が流行りました。
デジタルツインには実体流である人の流れ・モノの流れとは別に情報の流れがあります。
人の流れについては既に、ここからここへ移動するのにどういうルートがあるか、いくらで移動できるかなどを、グーグルが教えてくれるようになりました。
これは情報がシェアされているから可能なことです。
ところが、物流は、ここからここへ何かを送るとき、どういう手段があっていくらかかるのか、グーグルは答えてくれません。
情報の分断が起きているからです。
西成 フィジカルインターネットはそれを解消しようということから考案されました。
全体を見渡しているインターネット網は、例えば「今、アフリカに行った方がいい」とか、人間が指定しているわけではないのに勝手に判断してパケットを飛ばす。
そうしたルート最適化をフィジカルにやろうという野望です。
 物流というインターネット網があって、われわれはそこにモノを放り込むだけ。
途中のルートのことは知らない。
メールを送るのと同じです。
メールがどういうルートをたどっているか、後からトレースしてみるとすごく面白い。
遠回りして、地球の裏側まで行っていたりする。
 それをできるようにするには全部を把握してないと駄目なんですが、そのやり方は2通りある。
一つは超巨大中央集権型です。
もうひとつは、お互いで「今、空いてる?」とか「こっち混んでる」「じゃあ向こうに連絡しよう」みたいなミクロなコミュニケーションでやっていくやり方です。
全体最適ではないかもしれないけれど、部分最適をつないでいく。
どちらも正解だと私は思います。
 いずれにしろこれから、情報の世界とフィジカルの世界のいい形での融合ができていく。
できたところは速いし安い、ということで残っていく。
人も集まる。
できないところは選択されない。
痛みを伴う改革がこれから続くのではないかとみています。
大手荷主が物流を取り戻せば その瞬間に構造が変わる 松島 先生はよく「日本にはプラットフォーマーが出てこない」と言われます。
今、フィジカルインターネットに一番近いことをやっているのはアマゾンで、自分の物流プラットフォームをどんどん広げていって、他社の荷物も受け入れるということをやっている。
このままアマゾンが物流プラットフォームを際限なく広げていったら他社は参入できなくなる。
参入しても勝てなくなるといったことも起きてきそうです。
西成 もうすでに起きているのではないですか。
危険な状況です。
松島 そういう危機的なことが起きている中で、中央集権型のプラットフォーム以外の方法、フィジカルインターネットをみんなでシェアする具体的な方法はありますか? 西成 いくつかあると思います。
一つは日本の超巨大企業が一肌脱ぐという方法です。
例えば、トヨタ自動車が「物流プラットフォーマーになる」と宣言したら、みんな震え上がると思うんです。
系列会社を含めて究極の物流網を築いているトヨタが、日本のために物流カンパニーとして立ち上がると言いだしたらこれは面白い。
 アマゾンの物流は赤字です。
彼らはAWS(アマゾンウェブサービス)で儲けている。
他に儲けがあるところは強いんです。
トヨタが自動車の儲けで物流網を作っていけば、日本に一発逆転のチャンスが生まれると思います。
私がトヨタの社長だったら「トヨタはモビリティカンパニーかつロジスティクスカンパニーになる」と言いたい。
松島 その話が夢物語とも思えないのは、流通物流が時代の節目に来ているからです。
例えばコンビニは今、卸物流と流通物流を一緒にやっている。
ドミナント方式で店舗網を拡大しているときはそれでよかったけれど、これから効率化を求めていこうというときには、卸物流と流通物流を一緒にしない方がいいのではないかと私は思います。
 なぜなら卸物流は保管型だからです。
保管型の卸物流の荷物を、コンビニの流通物流でバラにするには手数がかかります。
そこを人力で対応するというやり方は限界に来ている。
物流構造を変えていかないと、今後は耐えられなくなってくる。
しかし、庫内作業の自動化はある程度の規模がないと投資に見合わない。
各エリア200~300店のサイズではできることは限られています。
 これから少子高齢化は進んでいくのに、物流にはどんどん利便性が求められていく。
日本の構造が変わってくる中で、これまで企業が別々にやっていた物流を共通のインフラに取り込んで、それをベースに物流を再構築していくというアプローチに可能性を感じています。
西成 トヨタの完成車物流を調べたことがあるのですが、実は積載率がかなり低いんです。
昔は新車を満載したトラックが走っているのを街でよく見かけましたが、今はかなり空いている。
それなら空いている場所に宅配便の荷物を積めばいい。
あるいは協調すればいい。
トヨタとホンダと日産を同じトラックで運べばいい。
各社とも物流で苦しんでいるんだから、そこで競争せずに協力すればいい。
 もちろんトヨタと日産はライバルだけど、コストを考えたら運ぶところくらいはいいだろうということになるはずです。
食品業界にF-LINEという共同物流会社ができたように、そういう発想で競争と協調を線引きして使い分ければいい。
これまでみんな「線引きする」と口では言っていましたが、頭では分かっていなかった。
それでも、これからはそうした線引きがいろいろな所に出てくると思います。
 20年9月にトヨタがミルクランを始めるというニュースが流れました。
これまではサプライヤーがそれぞれ配送会社に運賃を払ってトヨタに届けていた。
それを今度はトヨタが全部自社で回収するという。
その方がジャストインタイムをより効率的にできるのかもしれません。
トヨタが全て自前の物流で回収するとなったら、系列会社の物流コストは軽減される。
そういう構造改革が必要です。
松島 荷主が物流を物流会社に任せている限り「効率化するのはあなたの仕事」となるけれども、自社に物流を取り込んだ瞬間に効率化するのは自分の仕事になる。
西成 今までは3PLを叩いていればよかったけれど、自分でやらなければいけないとなれば必死になります。
空きスペースを見たら「これは何なんだ」「なんで空気運んでるんだ」となる。
松島 大きな流れの転換になるかもしれません。
大手荷主が自社責任で効率化を求めていくとなった瞬間に、物流は変わる。
複数のプラットフォームを ゆるやかに結合する 松島 先ほどの一極集中ではない方法として、個別最適をみんなが競争しながら、その情報を同一の基盤の上に乗せるという姿が想像できるのですが、その場合のブロックチェーン技術の活用可能性をどう考えますか。
当初から「物流に使える」「トレーサビリティーといえば物流だ」と言われて盛んに取り組まれているけれど、なかなか芽が出てこない。
西成 ブロックチェーンは私も注目している技術ではありますが、高速トランザクションに適さないとか、いろいろな課題も指摘されています。
テクノロジーとしてもう一段の進化が必要かなと思います。
 しかし、情報を集めてやる方法ではもうGAFAに勝てないのだとしたら、集めないでやる分散方式、それはブロックチェーン的な概念でもあるわけですが、そこが一つの勝負になってくるのは確かです。
東大にも「集めないプラットフォーム」を研究している先生がいます。
 私個人としては集中型か分散型かは、どちらがいいかというより、バランスだと思うんです。
集中型は中枢部が攻撃されたら終わりです。
部分的なダメージの影響が全体に及んでしまうデメリットがある。
これを解消するためには、集中型でも問題が起きたら一部を切り離すとか、部分最適でもイザというときには部分と部分をつなげられるといった構造が必要になる。
普段は自社物流で最適を追求しているけれど、必要に応じて大手宅配会社の力を借りるといったやり方です。
 地球全体を覆うような巨大なプラットフォームを作るのは恐らく無理なんです。
一部をカバーするプラットフォームをたくさん作って、それらが必要なときに協調するような在り方がいい。
API(Application Programming Interface/アプリケーション・ソフトウェアを構築・統合するために使われるインターフェース)でやりとりしているように、別々のプラットフォームが必要に応じてつながるような在り方です。
いろいろな所に調整できる場所を空けておかないと窮屈な仕組みになってしまう。
 そこでひらめいた人が「これとこれとこれを組み合わせてビジネスをやろう」ということになったりすれば、その仕組みが生きてくる。
そこは競争すればいい。
どこかでビジネスを起こせる余地は必要です。
儲けを確保できる余地がないと、プラットフォームに誰も参入してきませんから。
松島 密結合ではなく疎結合、ゆるい結合でないと、物流は恐らくうまくいかない。
そこでやりとりされるモノがパケットのように標準化されていることが重要ですね。
西成 プラットフォームの究極の在り方には二つあって、一つは営利目的ではなく、社会・公共インフラとしてのプラットフォームです。
例えば50年後にわれわれは電気料金・水道料金と同様に物流料金を毎月支払うことになるかもしれない。
物流が完全に民間から公共になってしまう。
他のプラットフォームは公共から民間へという流れにありますが、これは逆の流れです。
松島 フィンランドの公共自動車交通サービス「Whim」のように、民間から公共への流れが出てきている国も既にありますね。
西成 もうひとつはどこかに利益の源泉を持つ在り方です。
それにも二つの在り方があって、一つはシーオスのように尖ったものを持っている会社が、物流を競争領域にして、その価値を売るという在り方。
もうひとつはAWSや『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』のように、物流以外で稼いでそこからお金を回すやり方です。
企業の中でも物流は通常コストセンターであって稼げない。
物流部門は赤字です。
それでも物流は全ての部門を支えるインフラだから、他で稼いだお金を回すという在り方が一つはある。
松島 協調・連携という観点から注目されている具体的な業界・分野はありますか。
西成 SIPでは、セブン─イレブン、ローソン、ファミリーマートの連携を検討しています。
コンビニは都市部では競争できても、地方では採算がとれない。
競争している場合ではありません。
そこでコンビニ3社の店舗を1台のトラックで回る実証実験を始めています。
当然のことながら効率がまったく違います。
これから限界集落がたくさん出てきますから、競争しないで協力する。
各社独自のトラックをやめる。
そうした地域物流を考えなければいけないと思います。
 航空業界にしても、今ANAは東京オリンピックをにらんで飛行機をたくさん購入して莫大な固定費に苦しんでいます。
極論ですがそれなら飛行機のペイントをやめて、JALとANAで同じ飛行機を運用すればいい。
インフラはみんなで共有して、乗客は他のサービスで航空会社を選べばいい。
 マテハン設備も同じです。
自動化は必要でも1社で数十億円も出せない。
だったらリースするとか、みんなで共有するとか、使い方を変えるしかない。
自分だけで投資しようとするから、負担に耐えられなくなって経営が傾いてしまう。
共有すべきところを共有すれば、固定費を共有した企業で割り算できる。
松島 これまでは「共同物流」や「共同化」という言葉で片付けられてしまって、なかなかそれ以上の発想にならなかったけれども、公共インフラという次元で物流を扱うことで突破口が開ける。
サプライチェーンは 「デマンドウェブ」に進化する 西成 そうです。
次元の違う革命です。
さらに言えば、物流というのは誰かが作ったものを運ぶわけですが、究極的には作るところからすべて連携したい。
例えば宮城のAさんがあるモノを求めていて、それを名古屋のB社が作っているとすると、それをわざわざ名古屋から宮城まで運ぶより、同じ宮城のC社の工場に発注すればいい。
製造拠点まで共有すれば、もっと広い全体を最適化できる。
つまりモノを運ぶのではなく、その前の作るという工程から連携する。
商品で競争して、製造・物流は協力する。
 トヨタ生産方式を5年勉強して分かったのは、それが引っ張り生産だということです。
注文があって作る。
デマンドベースで考える。
従来のサプライチェーンの概念はサプライ側の論理です。
そうではなくデマンドベースで作る。
そうしないと作って運んで、売れずに捨てることになる。
いくら物流を最適化しても、運んだ後に捨てていたら何にもならない。
そんな物流はやめましょう、ということです。
 サプライヤーが全体を見渡し、デマンドまで考えて作って運ぶ。
それが今、私の妄想の一番上層にあって「デマンドウェブ」と名付けました。
チェーンだと一次元しかないけど、ウェブだといろんな企業からそのとき最適な所が運ぶことができる。
サプライチェーンの究極の進化形だと思います。
これが私の目指したい世界の姿です。
松島 一歩進んだ動きは既に出てきていて、例えばウーバーイーツはウェブ上で飲食店を宣伝してあげて注文をとり、運び手とマッチングしている。
これまでより少しデマンド寄りになっている。
アマゾンも自分たちの売りたいものを消費者に訴求して買わせている。
しかも事前に効率的に運べるように自分のサプライチェーン上に商品を集めておいて効率化している。
つまりデマンドからコントロールしているわけで、売れてから運ぶ「結果物流」ではない。
西成 そう。
「サプライチェーンを最適化する」という話を聞くたびに、私は「部分最適だよな」と思う。
サプライチェーンの上流と下流を見渡すと、下流で捨てているものを上流でたくさん作っている。
この構造がおかしい。
もう売れないものを作って運んで廃棄する時代は終わりにすべきです。
これはSDGsの観点からも言えることです。
廃棄ゼロの物流でなくてはいけない。
それには注文から製造・輸送まで全部を考えなければいけないと思います。

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