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2021年4月号
特集

あらた&TSUNAGUTE 入荷トラックの見える化が倉庫運営を変える

バース予約システムの標準化視野に ──あらたは2019年4月に、スタートアップのTSUNAGUTE(ツナグテ)が開発した入荷予約受付システム「telesa-reserve」(テレサリザーブ)をファーストユーザーとして導入しました。
あらた 大原康一 ロジスティクス本部 物流企画部長兼労働安全担当部長(以下、あらた・大原)「当社は日用品・化粧品メーカー約1200社と取引があり、センターで入荷が集中するとドライバーを長時間待たせてしまうことがありました。
それを解消したかったというのが背景です。
数年前のことになりますが、当時から既にさまざまなベンチャー企業が入荷予約システムをリリースしていました」  「しかし、われわれは標準化を強く意識していました。
個社個社で勝手に進めてしまうと納品先ごとに仕組みが違うことになって、結局はドライバーさんに迷惑をかけてしまう。
そこでまずは(日用品業界VAN運営会社の)プラネットの会合で業界標準システムの開発を提案しました。
しかし残念ながら実現には至りませんでした」  「次に相談を持ちかけたのがJPR(日本パレットレンタル)でした。
JPRは『T11型』の標準パレットのレンタルシステムを運営するプラットフォーマーですから、そこが開発したシステムであれば多くの会社が乗ってくれるだろうと考えました。
それから間もなくJPRはTSUNAGUTEを立ち上げて、入荷予約システムの開発に乗り出してくれました。
すぐに話に乗りました」 TSUNAGUTE 春木屋 悠人 社長(以下、ツナグテ・春木屋)「当社は、納品書をはじめとする紙伝票の電子化と標準化を目的に18年9月に創業しました。
バース予約システムを開発する構想は会社の設立当初からありました。
トラックの待機問題もやはり、受付簿が紙ベースであることが根底になっています。
そのペーパーレス化は当社の使命の一つでした」  「そこでまずはプロトタイプを作って、それをあらたさんに持ち込んで開発に向けて連携していただきました。
あらたさんの『三郷デポ』に張りつき、機能や操作性に対する現場の声を聞いて、すぐに手直ししてまた現場に持ち込むといったトライ・アンド・エラーを重ね、19年4月1日から本運用に移りました」 ──システムの標準化については。
ツナグテ・春木屋「JPRは標準化がベースにあって成り立っている会社です。
ばら積みをやめてパレットを使いましょう、それを標準にしましょうというところから事業が始まり、各社でパレットの仕様がバラバラだと積み替えなどの問題があるのでサイズも共通化しましょう、さらには標準パレットを業界で共有しましょうと進んできました」  「そのDNAをTSUNAGUTEは受け継いでいますから当然ながら標準化はとても大事にしています。
そのためテレサリザーブの利用料金もできる限り抑えました。
予約する側の運送会社は全て無料。
受け入れ側の物流センターも月額基本料は無料です」  「われわれがJPRのグループではなく、独立したスタートアップとして稼いでいこうとするのであれば、もっと違うやり方もあると思います。
しかし、当社は伝票のペーパーレス化と標準化を通じて日本の物流を最適化することを目指しています。
持続可能な物流を実現することがKPIであって、そこは普通のスタートアップやベンチャーとは大きく違うところです」 ──低料金といっても、バース予約システムのメリットを享受するのは直接的には納品側です。
そのために受け入れ側のセンターがコストを負担することを、あらたはどう判断したのですか。
あらた・大原「確かに社内の一部にはその点を問題視する声もありました。
しかし、世の中の役に立つのであれば個社の利益より優先すべきだという考えですし、当社は早い段階で『ホワイト物流』推進運動に賛同して自主行動宣言を提出しています。
システムの導入による当社側のメリットははっきりしないまま導入に踏み切りました」  「しかし、実際に運用を始めてみると、納品トラックのデータがパソコンで分かるようになったことで庫内作業の大幅な効率化が実現しました。
いつどんな荷物がバースに入ってくるのか、これまでは分かりませんでした。
それが見える化された効果は想定以上でした」  「導入前まで、納品ドライバーはセンターに到着すると事務所の『受付カウンター』で台帳にサインをして車両に戻り、1台出ていったら1台分だけ前に進むというやり方で自分の順番を待ちました。
ドライバーがうたた寝して自分の順番に気付かず、20分近くバースが空いてしまうといったことも起きていました。
紙ベースのやり取りで、車両から受付カウンターまで100メートル近く歩くこともありますから、どの車が到着しているのかリアルタイムに情報を共有できないんです」   「それがシステムを導入したことで、現場のフォークマンでも自分のスマホで『車が到着しているのにバースが空いてる。
すぐ呼ばないと』と分かるようになりました。
バースの隙間時間がなくなり、庫内作業員の残業時間削減にもつながりました」  「三郷デポは紙製品専用なので納品メーカー数は10社余りのスモールスタートだったのですが、導入は大成功でした。
そこで2カ所目に大型汎用拠点の『江南センター』を選び、メーカー60社・1日当たり約100台を対象に運用しました。
事前にメーカーを集めて説明会を開きましたが、どこも好意的に受けとめてくれて導入も非常にスムーズでした。
その後は段階的に横展開を進めています。
現在、関東エリア9拠点、中部3拠点、九州1拠点の計13拠点に導入済みです。
続いて中四国の導入を予定しています」 140拠点・ドライバー7万人が利用 ──納品する運送会社側の効果は? ツナグテ・春木屋「トラックの待機時間はもちろん大幅に削減されました。
その結果、あるメーカーでは1日1回転しかできなかった車両を2回転できるようになりました。
あらたの江南センター長は日雑業界の長年の慣習だった午前中納品を見直して、納品時間を午後にも延長して、それに合わせて庫内作業員の出勤シフトも変更しました。
これによって、あらた側ではバースを効率的に回せるようになり、メーカー側でも車両を2回転できるところが増えています」 ──物流のデジタル化やDXと、あらたはどう向き合っていきますか。
あらた・大原「社内のペーパーレス化は既にめどが立っています。
完全ペーパーレス化に向けたプロジェクトが立ち上がり投資計画も固まっています。
庫内のデジタル化にも従来から取り組んできました。
自動倉庫などの既存のマテハンはもちろん、重量検品機能付きのピッキングカート『AiMAS(アイマス)』は画面タッチで操作できます。
シールやラベルも自動貼付しています。
残るペーパー類も全てPDF化してタブレットで確認できるようにします」  「ただし、入出荷の部分については、まだかなり紙が残っています。
小売業との取引は既に多くがEDI化されていて伝票レスです。
当社からはASN(事前出荷情報)を小売りに送信しています。
ところが上流の取引は、在庫の引き当てデータは送られてきても、ASNを送信できないメーカーがかなりある」 ツナグテ・春木屋「確かにサプライチェーンの上流にいくほど紙が増えていきます。
原因の一つはメーカーの協力物流会社が運賃請求の証拠として紙の伝票を使用しているからです。
ペーパーレス化できるはずなのに慣習として残っている。
当社のクラウドにエクセルファイルをアップロードすれば情報共有できる仕組みも用意しているのですが、中小零細の運送会社にはそれでもハードルが高いようです」 あらた・大原「どのトラックが何を何ケース運んでくるのか事前にデータを把握できるようになれば現場はずっと楽になります。
現在、JPRを中心にSIP(内閣府主催の「戦略的イノベーション創造プログラム」)で取り組んでくれていますが、当社も伝票レスには協力させていただく方針です」 ツナグテ・春木屋「テレサリザーブは現在、全国約140拠点に導入されて、累計約7万人のドライバーに利用されています。
バース予約システムはDXの入口です。
そこから納品書の電子化をはじめ機能を付加していくことで物流のデジタル化を進めてもらえるように働きかけていきます」

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