2021年4月号
特集
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海外論文 物流企業のDX 課題・成功要因・具体策
イントロダクション
“デジタル時代”とも称されるこの10年の間に、産業界の競合状況には根源的な地殻変動が生じた。
それはロジスティクスサービスも例外ではない。
最新テクノロジーを駆使した倉庫や輸配送に投資を惜しまないアマゾンやアリババなどのネット通販企業、そしてuShip、Delive、Cargonexxなどのクラウドをはじめとする多様な物流プラットフォームを提案するデジタルスタートアップが、続々とロジスティクス市場に参入し、既存のロジスティクスサービスプロバイダー(LSP)に取って代わる機会を虎視眈々とうかがっている。
こうした状況の下、LSPの生き残りは一にも二にも顧客価値の向上にかかっている。
顧客価値の向上が意味するものは、過度の分散、透明性の不足、不充分なアセットの活用、費用のかさむ人手を要するプロセス、時代遅れのカスタマーインターフェースなどの問題点を明確化し、それを通じて顧客企業の経営効率を改善することであり、またスマートで迅速かつ持続可能なロジスティクスを提供することで、カスタマーエクスペリエンスを向上させることである。
ロジスティクス関連業務の50〜70%はアウトソーシングされる。
そのため荷主企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)も多くはLSPの双肩にかかっているといってよい。
荷主が「インダストリー4・0」の流れに棹さしてさらに先へと進んでいく際に船頭の役割を果たすのがLSPであり、それは同時にECの発展を支えるバックボーンでもある。
LSPはニューテクノロジーとデジタル化がもたらす商機を最大限に生かすべく、自らの戦略・企業風土・ビジネスモデルを進化させる必要がある。
ロジスティクスの差別化で決定的に重要な役割を果たすのはテクノロジーである。
テクノロジーはイノベーションを誘発し、ロジスティクスの効率性と迅速性のステージを上げる。
ロジスティクスサービス業界はこれまでもテクノロジーの採用に熱心に取り組んできた。
それなりのイノベーションも遂げてきた。
しかしながらロジスティクス業界におけるDXの現状は今のところ、メディア・通信・金融・小売りなどと比べて見劣りすると言わざるを得ない。
技術的ノウハウの不足、労働者の教育レベルの低さ、業務内容が多様で地理的にも拡散しているため、LSPの各部門の隅々にまでイノベーションを行き渡らせることが難しいことなど、その原因はいくつも考えられる。
本稿が考察の対象とするのは、サプライチェーンにおいて荷主とその顧客を結ぶという特別な役割を担っているLSPである。
彼らのDXを妨げる要因は何か、そしてDXを成功に導くには何が必要なのか、それらを明らかにするのがここでのわれわれの目的である。
デジタルトランスフォーメーション DXというコンセプトは、学問的、そして実務的にも近年脚光を浴びるようになっているにもかかわらず、その定義はまだ定まっていない。
学者たちはそれを戦略やプロセス、あるいはビジネスモデルと捉えている。
「新しいデジタルテクノロジーを利用してビジネスの質を向上させること」というのが大方の見解だ。
DXは何か特定のテクノロジーを指すものではなく、「情報・コンピューティング・コミュニケーション・コネクティビティに関する各技術の結合体」、つまり「物理的システムとデジタルシステムを統合する先端技術の融合」を基礎とする大きな変革のことをいう。
ここで強調しておきたいのは、DXにまつわるテクノロジーが必ずしも全てデジタルであるとは限らないことである。
つまりそれ自体はデジタルではないテクノロジー(配送車両、フォークリフト、コンベヤーなど)であっても、例えば位置とスピードを追跡するニューテクノロジーの一部に組み入れられることで、それらはDXの一構成要素と見なされるのである。
DXの目的は価値の創造であって、具体的には業務効率の改善、カスタマーエクスペリエンスの向上、ビジネスモデルの強靱化、差別化戦略、競合優位性、ステークホルダーリレーションシップの改善、コスト削減などである。
DXは絶え間ない進化のプロセスだが、当該組織の「デジタル成熟度」によってその様相は異なる。
デジタル成熟度とは、組織がデジタルビジネス環境にどの程度適応しているかを表す。
Westermanら(2014)の研究によれば、デジタル成熟度が高い企業ほど業績も好調であるという。
ロジスティクス企業とDX ロジスティクス業界には、ロジスティクスサービスを提供するありとあらゆる種類のプレーヤーが存在する。
ロジスティクスサービス業界は、グローバル化・アウトソーシング化・技術的イノベーションの進展などとともに、幾十万の企業が単に輸送と保管だけを請け負うコモディティ化した市場から、より幅広い総合的なサービスを提供する3PL、そして数多のサービスプロバイダーの司令塔としての役割を果たす4PLなどが活躍する場へと変貌した。
LSPは企業規模・株主構成・サービス範囲などの面で千差万別であり、いかにして荷主に付加価値を提供するかについても、量・プロセス・イノベーションのうちどの面を重視するかによってビジネスモデルは大きく異なる。
DXの前提条件であるテクノロジーは、大きくハードウエアとソフトウエアに分けられる。
だがハードウエアソリューションでさえハイテク商品となりつつあるのが現状である(例えば倉庫作業員の後を付いていくスマート・フレキシブル・コンベヤなど)。
技術的イノベーションとされるのは、それが製品化されたものであれカスタマイズされたものであれ、必ずしもマーケットに新しく登場したものである必要はない。
大抵の場合、それは導入を決めた個々の企業にとっては目新しいというだけのことなのである。
DXの阻害要因 ⃝複雑なロジスティクスネットワークとそれを支える業務プロセス ロジスティクスのDXの前に立ちはだかる最も大きな阻害要因は複雑性である。
これには二つの側面があって、一つにはロジスティクス産業そのものの性質に由来する複雑性が挙げられる。
さまざまなタイプのLSPが、世界中に分布する規模も業種も異なる荷主や顧客の間の仲立ちをしており、さらには長期もしくはスポット契約を結んだ運送業者、倉庫業者、ターミナルオペレーターなどを相手に、彼らのまとめ役も務めなければならない。
つまりLSPのDXとは、多様なネットワークメンバーに影響を与えるメガプロジェクトであり、複数の企業・国・ロケーション・部門にまたがるコーディネーションが必要なのである。
それぞれ異なるITシステム、規格、ナレッジを持つDXプロジェクトのパートナーを一つにまとめあげること、それこそがLSPに課せられた最大の課題である。
LSPが直面する複雑性にはもうひとつ、基本的な業務プロセスの煩雑さと標準化の難しさという意味合いもある。
さまざまなマーケットが統合されて発展してきたため、各国特有のITシステムや法制度が混在していることがその理由の一つである。
法的制約については、次のような声も聞かれる。
「デジタル化を推進するには、“押印および署名済みの書類”の代わりに電子インボイス(E-invoice)や電子署名をもってすれば話は早いのですが、いまだに紙のハードコピーが必要とされる国もあるのです」 一方で、カスタマイズに対応することで業務プロセスがいっそう煩雑化するという問題もある。
ある企業がデジタル化を成し遂げて自らの基準に従がってやっていこうとしても、力のある大口クライアントからの圧力は無視することができない。
しかし例外を一度でも認めてしまうと、その取り扱いに後々とても苦労することになる。
こうした理由の他にも、世界には例えば中欧のように賃金の安い国々があり、それは結果として業務の非効率となって現れる。
そうした状況にあっては、あえて業務プロセスを簡素化する必要性がそれほどないからである。
⃝リソース不足 2番目に大きな問題としては、さまざまな面でのリソース不足がある。
時間と予算はもとより、LSPにはデジタルスキルを備えた人材が必須である。
ところがドライバーや配送・倉庫作業員の確保に苦労するのと同様に、有能なIT担当者の採用待ちを理由に、デジタル化プロジェクトが足踏みを余儀なくされることは珍しくない。
宅配便や小包を運ぶ企業は昨今、ウーバーやウーバーイーツその他のラストマイルデリバリー企業と従業員の争奪戦を演じているが、テクノロジーの力を借りれば、配達員が初日から一人前の仕事をこなせるような環境を整えることができる。
それが倉庫現場であれば、テクノロジーによって単純作業を自動化することで必要な人員の頭数が減る。
しかしながら実際のところ、ロジスティクス業界におけるテクノロジーは現実的な問題へのソリューションというよりも、イノベーティブな企業イメージを醸し出すためのマーケティングの一手法、という意味合いが強いと言わざるを得ないだろう。
予算についての最大の問題は、アセットへの(先行)投資にかなりの金額がかかるケースが多いことで、デジタルプロジェクトの検討をする度に、投資計画書を作ってROI(費用対効果)を計算することの繰り返しになる。
予算の逼迫や長過ぎる投資回収期間は、大企業にとってさえ頭の痛い問題である。
⃝テクノロジーの採用 期限内の適切な時期に適切なテクノロジーを選択することはとても難しい課題である。
変化を望まない従業員たちの抵抗にも増して、LSPはそれこそが問題であると考えている。
IT部門の助力を仰ぎながらテクノロジーを導入しても、結局のところそれは不適切な投資だったということも起こり得る。
ある国際エクスプレスサービス企業(編集部注:独DHL)は数年前、莫大な資金を投入して「All you need」という名のオンラインマーケットプレイスを始めたところ、ほどなく頓挫してしまった。
テクノロジー導入の意思決定は、ベンダーの誇大広告やメディアによるあおり記事に左右される部分が極めて大きい。
また“デジタル”という名を冠したプロジェクトに関しては、ともかく何でもIT部門の縄張りだという思い込みがあるため、しかるべきテクノロジーの選定および導入プロセスに、当事者がそれほど関与できなくなるケースが多く見られる。
IT部門が主導するとなると、往々にして技術面が重視されることになり、選択肢が最新流行かあるいは一見斬新そうに見えるソリューションかの二択になりがちである。
ところが当の企業とその顧客が本当に必要としているニーズを満たすという見地からは、それが必ずしも効果的かつ効率的であるとは限らないのである。
それに加えて、他のクライアントやロケーションに転用することが難しい特定のハードウエアやソフトウエアへ、巨額の投資を行うことには慎重な姿勢で臨む必要がある。
クライアントの身勝手な自己都合に振り回されないよう、こうした投資をする場合は長期的な契約を結んでおかなければならない。
⃝変化への抵抗 DX関連の文献に阻害要因として言及される頻度が最も多いのが、変化への抵抗である。
抵抗には組織的なものと個人的なものがある。
例えば前者は経営会議において「われわれはうまくやっている。
せっかくうまくいっているものを、一体どうしてカネをかけてまで変える必要があるのかね?」といった発言となって現れる。
過去に成功をもたらしたものが未来の成功も保証するという考え方は、いわゆる「コンピテンシートラップ(競争力の罠)」に行き着くが、これはロジスティクスサービス業界でも見慣れた光景である。
同様の現象は個人レベルでも生じる。
個人レベルの抵抗はLSPのデジタル成熟度とはあまり関係がなく、むしろさまざまなタイプの不安に関係する。
追跡システムが引き起こす「透明性と管理への不安」、物流施設におけるソーティングマシンの新規導入がもたらす「失業への不安」、あるいはデジタルの新たなサービスや運用システムの導入にあたっての「失敗への不安」や「業務パフォーマンスとカスタマーエクスペリエンスが著しく低下する不安」などである。
現に業務を遂行している企業は、顧客との契約があって失敗することは絶対に許されない。
こうした不安を抑えるには「サービスラボラトリー」、すなわち試験的実施なども可能性としては考えられるとはいえ、現実的には困難である。
これはサービス業界に共通の課題であり、ロジスティクス業界もその例外ではない。
⃝データ保護と情報漏洩 さまざまな業務アプリケーションとビジネスプロセスを支える情報の一元化は、DXの成功に不可欠な要素である。
きめ細かい多彩なサービスを顧客に提供するに当たっては、もろもろのセルフサービス機能の整備だけでなく、取引関連データ(企業情報、取引履歴、オンライン決済、請求書など)の情報公開が必要となるため、そうした情報の保護が問題となる。
顧客はクラウドが可能にする“いつでもどこでも”アクセスをますます求めるようになってきており、そのことがデータアクセスセキュリティーや情報漏洩および不正アクセス防止の必要性を高めている。
適切な管理を怠れば、企業と顧客のデータの機密は保たれず、それが原因で顧客離れはおろか訴訟にまで発展する可能性さえある。
DXの成功要因 ⃝リーダーシップ 最も大事な要素として多くの企業が挙げる項目がリーダーシップである。
どのような変革にあっても良きリーダーの存在は極めて重要であり、その事情はDXでも何ら変わりがない。
リーダーの役割とは市場動向に常に注意を払うこと、そして技術革新の成果を商機に変えていくことであり、それがLSPを一つのチームにまとめ上げることにもつながる。
リーダーシップは土台を用意するだけではなく、変革を前に進めていく実際の行動と強い統率力を発揮しなければならない。
そこにはDXの方向性を明確に打ち出したビジョンをステークホルダーに指し示し、従業員・運送会社・ビジネスパートナーなどを導いていくことも含まれる。
オペレーションとカスタマーサービスという面から見た場合、DXが組織全体にとってどのような意味と目的を持つのかを最初の段階から明確にしておかないと、技術的イノベーションの導入は残念な結果を迎えることにもなりかねない。
⃝組織風土 次に重要な要素はDXに親和的な組織風土である。
ある企業がどのような行動をとるか、変革に対していかに立ち向かうか、それらを規定するものが組織文化である。
全てのステークホルダーに伝えられ共有される一連の規範、価値意識、心的態度などを指す。
そうした価値や態度を上意下達で組織に浸透させるため、あるLSPは会議、プレゼンテーション、勉強会などを活用するインタラクティブメソッドを採用している。
ロジスティクス業界の組織文化の中でDXを成功させる最も大事な要素は、顧客中心主義と変革への意欲である。
顧客中心主義とは、企業(B2B)と最終消費者(B2C)に正面から向き合い、何をするにしても全ては顧客のためである、ということを従業員に叩き込むことを意味する。
しかしながら重要なのは、顧客の抱えている問題を認識して、企業のイノベーションが生み出した手際の良い迅速かつ持続可能なサービスでそれに対応することだけではない。
全従業員が率先してボトムアップの提案をして現場やオペレーションを改善し、それが結果として顧客のためにつながるということも、忘れてはならない大事な要素である。
移ろいやすく混沌とした現実世界では、変革への意欲が問われることになる。
そこでは顧客側のプロジェクトに応じて随時結成されるチーム、柔軟なプロセス、そして変革への意欲に満ちた人材が欠かせない。
人々の変革への意欲をかき立てるため、LSPは信頼と権限付与をベースとした風通しの良い仕事環境を作り、部門やロケーション、あるいは国境をも越えた従業員たちのコミュニケーションやコラボレーションを支援しなければならない。
⃝社員とパートナーの積極的関与 3番目にくるのが従業員とパートナーの積極的関与である。
分野を横断する複数のデジタルプロジェクトを抱える大きな組織にあっては、DXリーダーを支持する経営陣の後ろ盾がどうしても必要である。
そのことは従業員の関与を強めることにもなる。
従業員の関与を強める一連の施策の手始めは、DXプロジェクトの運営に主立った経営幹部を巻き込むことであろう。
そうして早々に経営陣の承認を勝ち取り、後顧の憂いなくDXに取り組む体制を整えるのである。
経営陣にデジタルプロジェクトの進捗状況を報告するには、定期的な会合や電話会議の場を設ける。
もっと下のレベルに対してはプレゼンテーション、勉強会、斬新なアイデアを募るプログラムなどを開催し、チームワークと「グロースマインドセット(成長型マインドセット)」の育成に努める。
こうした施策によって、部門やロケーションの違いを越えてDXというコンセプトの共通理解を醸成し、それぞれの役割・責任・進め方を明確にするのである。
⃝経営戦略とIT戦略の連動 DXの狙いとリソースを、デジタル経営戦略の一環として企業全体の目標に連動させる。
そのような戦略的ケイパビリティの確立も非常に重要な要素である。
経営戦略と、それとは直接的には関係しない副次的な位置づけのIT戦略を、確固としたデジタル経営戦略が一つにするわけである。
デジタル経営戦略の導入と、CIO(最高情報責任者)に加えてCDO(最高デジタル責任者)を取締役会の一員として置くことが、変革のブレークスルーとなることもある。
ただし、ビジネスおよびテクノロジー環境のダイナミズムと複雑性が、デジタル経営戦略を前面に押し出すことを難しくしている。
デジタル戦略とは、ダイナミックに変化する経営戦略と常に足並みをそろえていく不断のプロセスともいえるのである。
あるLSPは「われわれはもはや単なるロジスティクス企業ではなく、ロジスティクスサービスを提供するテクノロジー企業なのです。
CEOとCIOは、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が使うような言葉でわが社の戦略を説明します」と述べている。
⃝プロセスの標準化とデータ統合 組織的な観点から見た場合、DXに立ちはだかる最大の問題は、こみ入ったプロセスから成るロジスティクスシステムの複雑性である。
それへの対策として考えられるのは、効率的・効果的なオペレーションやプロセスマネジメントであり、中でもとりわけ簡略化(付加価値を生まない要素の排除)とプロセスの標準化がポイントとなる。
その定義からしてロジスティクスシステムの簡略化は極めて難しい課題であるが、プロセスの複雑性はLSPの手に負えないというほどではない。
多種多様なムダを取り除き、効率性とカスタマーエクスペリエンスが向上するようにプロセスを再編するには、「5S」「バリュー・ストリーム・マッピング(VSM)」「タクトタイム」など、さまざまなリーンマネジメント技法がある。
標準化はシステム、アプリケーション、データについても同様である。
オンラインシステム、TMS(輸配送管理システム)、WMS(倉庫管理システム)、アプリケーション、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末などの規格が統一されていれば、LSP側はそうしたデータを組み合わせて自由に活用できる。
データを価値のある有意義な情報へと生まれ変わらせる第一歩が標準化であり、それは同時にLSP側が自分たちのサービスの全貌をリアルタイムで把握するということにもつながる。
⃝機敏なトランスフォーメーションマネジメント リソースの再配置や組織の再編を迅速に行うアジリティ(機敏性)は、顧客の移り気な要望やマーケットの変化に対応するための成功要因である。
デジタル化では、先駆者とそれにいち早く追随するものたちが一番得をする。
技術的イノベーションに基づく新たなサービスが現れたとき、アジリティの有無が命運を分けるのはそのためである。
ロジスティクス業界におけるトランスフォーメーションはチームワーク、従業員と顧客の関与、コミュニケーションおよびフィードバックなどに大きく依存する。
アジャイル(機敏な)トランフォーメーションの実践として第一に挙げるべきは試験的プロジェクトであり、定期的な会合と機能横断型チームなどがそれに続く。
試験的プロジェクトは、イノベーティブなソフトウエア、ハードウエア、サービスなどの問題点の洗い出し、ノウハウの獲得などに極めて有効であり、単一のクライアント、ロケーション、国で実施されるケースが多い。
⃝社内外の(技術的)ナレッジの活用 成功要因の最後に来るのは、イノベーションを増幅させるLSPのナレッジと技術的ケイパビリティである。
彼らが投資する研究開発センターには、技術面でのパートナー(スタートアップ企業など)と社員たちからのアイデアが寄せられる。
テクノロジー企業とのコラボレーションは大きく次の2種類に分けられる。
①ERP、TMS、WMS、コントロールタワー、音声ピッキング、ビジョンピッキング、協働ロボットなどの分野での、基本的に一対一の企業同士の取り組み ②自動運転車、ブロックチェーン、フィジカルインターネットなどの業界標準を策定するための、業界の垣根を越えた幅広い構想への参加 そしてロジスティクス業務の改善が期待できる奥の手としてのビッグデータがある。
LSPは輸配送の過程や倉庫などに幾千ものセンサーを設置し、そこから膨大なデータを吸い上げている。
しかし今のところ、集めたデータを何らかのアクションに落とし込むことに成功しているとは言い難いのが現状である。
(翻訳構成 大矢英樹)
それはロジスティクスサービスも例外ではない。
最新テクノロジーを駆使した倉庫や輸配送に投資を惜しまないアマゾンやアリババなどのネット通販企業、そしてuShip、Delive、Cargonexxなどのクラウドをはじめとする多様な物流プラットフォームを提案するデジタルスタートアップが、続々とロジスティクス市場に参入し、既存のロジスティクスサービスプロバイダー(LSP)に取って代わる機会を虎視眈々とうかがっている。
こうした状況の下、LSPの生き残りは一にも二にも顧客価値の向上にかかっている。
顧客価値の向上が意味するものは、過度の分散、透明性の不足、不充分なアセットの活用、費用のかさむ人手を要するプロセス、時代遅れのカスタマーインターフェースなどの問題点を明確化し、それを通じて顧客企業の経営効率を改善することであり、またスマートで迅速かつ持続可能なロジスティクスを提供することで、カスタマーエクスペリエンスを向上させることである。
ロジスティクス関連業務の50〜70%はアウトソーシングされる。
そのため荷主企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)も多くはLSPの双肩にかかっているといってよい。
荷主が「インダストリー4・0」の流れに棹さしてさらに先へと進んでいく際に船頭の役割を果たすのがLSPであり、それは同時にECの発展を支えるバックボーンでもある。
LSPはニューテクノロジーとデジタル化がもたらす商機を最大限に生かすべく、自らの戦略・企業風土・ビジネスモデルを進化させる必要がある。
ロジスティクスの差別化で決定的に重要な役割を果たすのはテクノロジーである。
テクノロジーはイノベーションを誘発し、ロジスティクスの効率性と迅速性のステージを上げる。
ロジスティクスサービス業界はこれまでもテクノロジーの採用に熱心に取り組んできた。
それなりのイノベーションも遂げてきた。
しかしながらロジスティクス業界におけるDXの現状は今のところ、メディア・通信・金融・小売りなどと比べて見劣りすると言わざるを得ない。
技術的ノウハウの不足、労働者の教育レベルの低さ、業務内容が多様で地理的にも拡散しているため、LSPの各部門の隅々にまでイノベーションを行き渡らせることが難しいことなど、その原因はいくつも考えられる。
本稿が考察の対象とするのは、サプライチェーンにおいて荷主とその顧客を結ぶという特別な役割を担っているLSPである。
彼らのDXを妨げる要因は何か、そしてDXを成功に導くには何が必要なのか、それらを明らかにするのがここでのわれわれの目的である。
デジタルトランスフォーメーション DXというコンセプトは、学問的、そして実務的にも近年脚光を浴びるようになっているにもかかわらず、その定義はまだ定まっていない。
学者たちはそれを戦略やプロセス、あるいはビジネスモデルと捉えている。
「新しいデジタルテクノロジーを利用してビジネスの質を向上させること」というのが大方の見解だ。
DXは何か特定のテクノロジーを指すものではなく、「情報・コンピューティング・コミュニケーション・コネクティビティに関する各技術の結合体」、つまり「物理的システムとデジタルシステムを統合する先端技術の融合」を基礎とする大きな変革のことをいう。
ここで強調しておきたいのは、DXにまつわるテクノロジーが必ずしも全てデジタルであるとは限らないことである。
つまりそれ自体はデジタルではないテクノロジー(配送車両、フォークリフト、コンベヤーなど)であっても、例えば位置とスピードを追跡するニューテクノロジーの一部に組み入れられることで、それらはDXの一構成要素と見なされるのである。
DXの目的は価値の創造であって、具体的には業務効率の改善、カスタマーエクスペリエンスの向上、ビジネスモデルの強靱化、差別化戦略、競合優位性、ステークホルダーリレーションシップの改善、コスト削減などである。
DXは絶え間ない進化のプロセスだが、当該組織の「デジタル成熟度」によってその様相は異なる。
デジタル成熟度とは、組織がデジタルビジネス環境にどの程度適応しているかを表す。
Westermanら(2014)の研究によれば、デジタル成熟度が高い企業ほど業績も好調であるという。
ロジスティクス企業とDX ロジスティクス業界には、ロジスティクスサービスを提供するありとあらゆる種類のプレーヤーが存在する。
ロジスティクスサービス業界は、グローバル化・アウトソーシング化・技術的イノベーションの進展などとともに、幾十万の企業が単に輸送と保管だけを請け負うコモディティ化した市場から、より幅広い総合的なサービスを提供する3PL、そして数多のサービスプロバイダーの司令塔としての役割を果たす4PLなどが活躍する場へと変貌した。
LSPは企業規模・株主構成・サービス範囲などの面で千差万別であり、いかにして荷主に付加価値を提供するかについても、量・プロセス・イノベーションのうちどの面を重視するかによってビジネスモデルは大きく異なる。
DXの前提条件であるテクノロジーは、大きくハードウエアとソフトウエアに分けられる。
だがハードウエアソリューションでさえハイテク商品となりつつあるのが現状である(例えば倉庫作業員の後を付いていくスマート・フレキシブル・コンベヤなど)。
技術的イノベーションとされるのは、それが製品化されたものであれカスタマイズされたものであれ、必ずしもマーケットに新しく登場したものである必要はない。
大抵の場合、それは導入を決めた個々の企業にとっては目新しいというだけのことなのである。
DXの阻害要因 ⃝複雑なロジスティクスネットワークとそれを支える業務プロセス ロジスティクスのDXの前に立ちはだかる最も大きな阻害要因は複雑性である。
これには二つの側面があって、一つにはロジスティクス産業そのものの性質に由来する複雑性が挙げられる。
さまざまなタイプのLSPが、世界中に分布する規模も業種も異なる荷主や顧客の間の仲立ちをしており、さらには長期もしくはスポット契約を結んだ運送業者、倉庫業者、ターミナルオペレーターなどを相手に、彼らのまとめ役も務めなければならない。
つまりLSPのDXとは、多様なネットワークメンバーに影響を与えるメガプロジェクトであり、複数の企業・国・ロケーション・部門にまたがるコーディネーションが必要なのである。
それぞれ異なるITシステム、規格、ナレッジを持つDXプロジェクトのパートナーを一つにまとめあげること、それこそがLSPに課せられた最大の課題である。
LSPが直面する複雑性にはもうひとつ、基本的な業務プロセスの煩雑さと標準化の難しさという意味合いもある。
さまざまなマーケットが統合されて発展してきたため、各国特有のITシステムや法制度が混在していることがその理由の一つである。
法的制約については、次のような声も聞かれる。
「デジタル化を推進するには、“押印および署名済みの書類”の代わりに電子インボイス(E-invoice)や電子署名をもってすれば話は早いのですが、いまだに紙のハードコピーが必要とされる国もあるのです」 一方で、カスタマイズに対応することで業務プロセスがいっそう煩雑化するという問題もある。
ある企業がデジタル化を成し遂げて自らの基準に従がってやっていこうとしても、力のある大口クライアントからの圧力は無視することができない。
しかし例外を一度でも認めてしまうと、その取り扱いに後々とても苦労することになる。
こうした理由の他にも、世界には例えば中欧のように賃金の安い国々があり、それは結果として業務の非効率となって現れる。
そうした状況にあっては、あえて業務プロセスを簡素化する必要性がそれほどないからである。
⃝リソース不足 2番目に大きな問題としては、さまざまな面でのリソース不足がある。
時間と予算はもとより、LSPにはデジタルスキルを備えた人材が必須である。
ところがドライバーや配送・倉庫作業員の確保に苦労するのと同様に、有能なIT担当者の採用待ちを理由に、デジタル化プロジェクトが足踏みを余儀なくされることは珍しくない。
宅配便や小包を運ぶ企業は昨今、ウーバーやウーバーイーツその他のラストマイルデリバリー企業と従業員の争奪戦を演じているが、テクノロジーの力を借りれば、配達員が初日から一人前の仕事をこなせるような環境を整えることができる。
それが倉庫現場であれば、テクノロジーによって単純作業を自動化することで必要な人員の頭数が減る。
しかしながら実際のところ、ロジスティクス業界におけるテクノロジーは現実的な問題へのソリューションというよりも、イノベーティブな企業イメージを醸し出すためのマーケティングの一手法、という意味合いが強いと言わざるを得ないだろう。
予算についての最大の問題は、アセットへの(先行)投資にかなりの金額がかかるケースが多いことで、デジタルプロジェクトの検討をする度に、投資計画書を作ってROI(費用対効果)を計算することの繰り返しになる。
予算の逼迫や長過ぎる投資回収期間は、大企業にとってさえ頭の痛い問題である。
⃝テクノロジーの採用 期限内の適切な時期に適切なテクノロジーを選択することはとても難しい課題である。
変化を望まない従業員たちの抵抗にも増して、LSPはそれこそが問題であると考えている。
IT部門の助力を仰ぎながらテクノロジーを導入しても、結局のところそれは不適切な投資だったということも起こり得る。
ある国際エクスプレスサービス企業(編集部注:独DHL)は数年前、莫大な資金を投入して「All you need」という名のオンラインマーケットプレイスを始めたところ、ほどなく頓挫してしまった。
テクノロジー導入の意思決定は、ベンダーの誇大広告やメディアによるあおり記事に左右される部分が極めて大きい。
また“デジタル”という名を冠したプロジェクトに関しては、ともかく何でもIT部門の縄張りだという思い込みがあるため、しかるべきテクノロジーの選定および導入プロセスに、当事者がそれほど関与できなくなるケースが多く見られる。
IT部門が主導するとなると、往々にして技術面が重視されることになり、選択肢が最新流行かあるいは一見斬新そうに見えるソリューションかの二択になりがちである。
ところが当の企業とその顧客が本当に必要としているニーズを満たすという見地からは、それが必ずしも効果的かつ効率的であるとは限らないのである。
それに加えて、他のクライアントやロケーションに転用することが難しい特定のハードウエアやソフトウエアへ、巨額の投資を行うことには慎重な姿勢で臨む必要がある。
クライアントの身勝手な自己都合に振り回されないよう、こうした投資をする場合は長期的な契約を結んでおかなければならない。
⃝変化への抵抗 DX関連の文献に阻害要因として言及される頻度が最も多いのが、変化への抵抗である。
抵抗には組織的なものと個人的なものがある。
例えば前者は経営会議において「われわれはうまくやっている。
せっかくうまくいっているものを、一体どうしてカネをかけてまで変える必要があるのかね?」といった発言となって現れる。
過去に成功をもたらしたものが未来の成功も保証するという考え方は、いわゆる「コンピテンシートラップ(競争力の罠)」に行き着くが、これはロジスティクスサービス業界でも見慣れた光景である。
同様の現象は個人レベルでも生じる。
個人レベルの抵抗はLSPのデジタル成熟度とはあまり関係がなく、むしろさまざまなタイプの不安に関係する。
追跡システムが引き起こす「透明性と管理への不安」、物流施設におけるソーティングマシンの新規導入がもたらす「失業への不安」、あるいはデジタルの新たなサービスや運用システムの導入にあたっての「失敗への不安」や「業務パフォーマンスとカスタマーエクスペリエンスが著しく低下する不安」などである。
現に業務を遂行している企業は、顧客との契約があって失敗することは絶対に許されない。
こうした不安を抑えるには「サービスラボラトリー」、すなわち試験的実施なども可能性としては考えられるとはいえ、現実的には困難である。
これはサービス業界に共通の課題であり、ロジスティクス業界もその例外ではない。
⃝データ保護と情報漏洩 さまざまな業務アプリケーションとビジネスプロセスを支える情報の一元化は、DXの成功に不可欠な要素である。
きめ細かい多彩なサービスを顧客に提供するに当たっては、もろもろのセルフサービス機能の整備だけでなく、取引関連データ(企業情報、取引履歴、オンライン決済、請求書など)の情報公開が必要となるため、そうした情報の保護が問題となる。
顧客はクラウドが可能にする“いつでもどこでも”アクセスをますます求めるようになってきており、そのことがデータアクセスセキュリティーや情報漏洩および不正アクセス防止の必要性を高めている。
適切な管理を怠れば、企業と顧客のデータの機密は保たれず、それが原因で顧客離れはおろか訴訟にまで発展する可能性さえある。
DXの成功要因 ⃝リーダーシップ 最も大事な要素として多くの企業が挙げる項目がリーダーシップである。
どのような変革にあっても良きリーダーの存在は極めて重要であり、その事情はDXでも何ら変わりがない。
リーダーの役割とは市場動向に常に注意を払うこと、そして技術革新の成果を商機に変えていくことであり、それがLSPを一つのチームにまとめ上げることにもつながる。
リーダーシップは土台を用意するだけではなく、変革を前に進めていく実際の行動と強い統率力を発揮しなければならない。
そこにはDXの方向性を明確に打ち出したビジョンをステークホルダーに指し示し、従業員・運送会社・ビジネスパートナーなどを導いていくことも含まれる。
オペレーションとカスタマーサービスという面から見た場合、DXが組織全体にとってどのような意味と目的を持つのかを最初の段階から明確にしておかないと、技術的イノベーションの導入は残念な結果を迎えることにもなりかねない。
⃝組織風土 次に重要な要素はDXに親和的な組織風土である。
ある企業がどのような行動をとるか、変革に対していかに立ち向かうか、それらを規定するものが組織文化である。
全てのステークホルダーに伝えられ共有される一連の規範、価値意識、心的態度などを指す。
そうした価値や態度を上意下達で組織に浸透させるため、あるLSPは会議、プレゼンテーション、勉強会などを活用するインタラクティブメソッドを採用している。
ロジスティクス業界の組織文化の中でDXを成功させる最も大事な要素は、顧客中心主義と変革への意欲である。
顧客中心主義とは、企業(B2B)と最終消費者(B2C)に正面から向き合い、何をするにしても全ては顧客のためである、ということを従業員に叩き込むことを意味する。
しかしながら重要なのは、顧客の抱えている問題を認識して、企業のイノベーションが生み出した手際の良い迅速かつ持続可能なサービスでそれに対応することだけではない。
全従業員が率先してボトムアップの提案をして現場やオペレーションを改善し、それが結果として顧客のためにつながるということも、忘れてはならない大事な要素である。
移ろいやすく混沌とした現実世界では、変革への意欲が問われることになる。
そこでは顧客側のプロジェクトに応じて随時結成されるチーム、柔軟なプロセス、そして変革への意欲に満ちた人材が欠かせない。
人々の変革への意欲をかき立てるため、LSPは信頼と権限付与をベースとした風通しの良い仕事環境を作り、部門やロケーション、あるいは国境をも越えた従業員たちのコミュニケーションやコラボレーションを支援しなければならない。
⃝社員とパートナーの積極的関与 3番目にくるのが従業員とパートナーの積極的関与である。
分野を横断する複数のデジタルプロジェクトを抱える大きな組織にあっては、DXリーダーを支持する経営陣の後ろ盾がどうしても必要である。
そのことは従業員の関与を強めることにもなる。
従業員の関与を強める一連の施策の手始めは、DXプロジェクトの運営に主立った経営幹部を巻き込むことであろう。
そうして早々に経営陣の承認を勝ち取り、後顧の憂いなくDXに取り組む体制を整えるのである。
経営陣にデジタルプロジェクトの進捗状況を報告するには、定期的な会合や電話会議の場を設ける。
もっと下のレベルに対してはプレゼンテーション、勉強会、斬新なアイデアを募るプログラムなどを開催し、チームワークと「グロースマインドセット(成長型マインドセット)」の育成に努める。
こうした施策によって、部門やロケーションの違いを越えてDXというコンセプトの共通理解を醸成し、それぞれの役割・責任・進め方を明確にするのである。
⃝経営戦略とIT戦略の連動 DXの狙いとリソースを、デジタル経営戦略の一環として企業全体の目標に連動させる。
そのような戦略的ケイパビリティの確立も非常に重要な要素である。
経営戦略と、それとは直接的には関係しない副次的な位置づけのIT戦略を、確固としたデジタル経営戦略が一つにするわけである。
デジタル経営戦略の導入と、CIO(最高情報責任者)に加えてCDO(最高デジタル責任者)を取締役会の一員として置くことが、変革のブレークスルーとなることもある。
ただし、ビジネスおよびテクノロジー環境のダイナミズムと複雑性が、デジタル経営戦略を前面に押し出すことを難しくしている。
デジタル戦略とは、ダイナミックに変化する経営戦略と常に足並みをそろえていく不断のプロセスともいえるのである。
あるLSPは「われわれはもはや単なるロジスティクス企業ではなく、ロジスティクスサービスを提供するテクノロジー企業なのです。
CEOとCIOは、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)が使うような言葉でわが社の戦略を説明します」と述べている。
⃝プロセスの標準化とデータ統合 組織的な観点から見た場合、DXに立ちはだかる最大の問題は、こみ入ったプロセスから成るロジスティクスシステムの複雑性である。
それへの対策として考えられるのは、効率的・効果的なオペレーションやプロセスマネジメントであり、中でもとりわけ簡略化(付加価値を生まない要素の排除)とプロセスの標準化がポイントとなる。
その定義からしてロジスティクスシステムの簡略化は極めて難しい課題であるが、プロセスの複雑性はLSPの手に負えないというほどではない。
多種多様なムダを取り除き、効率性とカスタマーエクスペリエンスが向上するようにプロセスを再編するには、「5S」「バリュー・ストリーム・マッピング(VSM)」「タクトタイム」など、さまざまなリーンマネジメント技法がある。
標準化はシステム、アプリケーション、データについても同様である。
オンラインシステム、TMS(輸配送管理システム)、WMS(倉庫管理システム)、アプリケーション、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末などの規格が統一されていれば、LSP側はそうしたデータを組み合わせて自由に活用できる。
データを価値のある有意義な情報へと生まれ変わらせる第一歩が標準化であり、それは同時にLSP側が自分たちのサービスの全貌をリアルタイムで把握するということにもつながる。
⃝機敏なトランスフォーメーションマネジメント リソースの再配置や組織の再編を迅速に行うアジリティ(機敏性)は、顧客の移り気な要望やマーケットの変化に対応するための成功要因である。
デジタル化では、先駆者とそれにいち早く追随するものたちが一番得をする。
技術的イノベーションに基づく新たなサービスが現れたとき、アジリティの有無が命運を分けるのはそのためである。
ロジスティクス業界におけるトランスフォーメーションはチームワーク、従業員と顧客の関与、コミュニケーションおよびフィードバックなどに大きく依存する。
アジャイル(機敏な)トランフォーメーションの実践として第一に挙げるべきは試験的プロジェクトであり、定期的な会合と機能横断型チームなどがそれに続く。
試験的プロジェクトは、イノベーティブなソフトウエア、ハードウエア、サービスなどの問題点の洗い出し、ノウハウの獲得などに極めて有効であり、単一のクライアント、ロケーション、国で実施されるケースが多い。
⃝社内外の(技術的)ナレッジの活用 成功要因の最後に来るのは、イノベーションを増幅させるLSPのナレッジと技術的ケイパビリティである。
彼らが投資する研究開発センターには、技術面でのパートナー(スタートアップ企業など)と社員たちからのアイデアが寄せられる。
テクノロジー企業とのコラボレーションは大きく次の2種類に分けられる。
①ERP、TMS、WMS、コントロールタワー、音声ピッキング、ビジョンピッキング、協働ロボットなどの分野での、基本的に一対一の企業同士の取り組み ②自動運転車、ブロックチェーン、フィジカルインターネットなどの業界標準を策定するための、業界の垣根を越えた幅広い構想への参加 そしてロジスティクス業務の改善が期待できる奥の手としてのビッグデータがある。
LSPは輸配送の過程や倉庫などに幾千ものセンサーを設置し、そこから膨大なデータを吸い上げている。
しかし今のところ、集めたデータを何らかのアクションに落とし込むことに成功しているとは言い難いのが現状である。
(翻訳構成 大矢英樹)
