2021年3月号
特集
特集
大手コンビニ3社の店舗配送共同化実験
「個別最適」を共同化で乗り越える
コンビニエンスストアの店舗配送における共同化の実証実験について紹介する前に、まずはその実施背景にある業界の状況について確認したい。
現在まで、コンビニに代表されるチェーン型の小売業は、温度帯別に自社の専用物流センターを設置し、店舗での欠品ゼロ、店内作業の効率化を目的として、個々のチェーンごと、店舗ごとに最適となるような物流を志向してきた。
特にコンビニという業態は、一定のエリアにまとめて出店するドミナント戦略を取ることで、サプライチェーン効率を高めることに成功した業態である。
そして、商品のサプライヤーである卸売業やメーカーも規模拡大を続けるチェーン小売業の物流施策に従って、物流センターフィーを支払いつつ、個別に対応してきた。
そのため、大手コンビニの店舗への商品配送における物流は、個々の企業によって程度の差はあれど、業界として相当のレベルで高度化されている。
つまり、それぞれの企業における最適化・効率化ができている「個別最適」ともいえる状況にある。
しかし、総人口が減少し、物流分野の人手不足・コスト上昇が深刻になる中、チェーン別の専用物流体制に課題が生じている。
いくつか実例を挙げれば、同じ地域に複数のチェーンの専用物流センターがある場合でも、メーカー・卸売業が各センターの発注に対応した個別納品を行っていることや、同一地域に店舗を展開していても、それぞれのチェーンで個別に店舗配送が行われることが課題となっている。
とりわけ、自社の物流センターから店舗への配送は、2~4トンサイズのトラックでの小口配送となるため、同じ地域の中でチェーン別に多くのトラックが走り回る状況となっている。
都市部を中心としたエリア面積に対して店舗数が多いエリアでは、それだけの店舗配達需要があるため問題とはならないが、店舗の集中レベルが低い地方においては非効率が発生している。
つまり、エリア面積に対して、店舗数が少ないエリアでは、それぞれのチェーンが独自に店舗配送を行うよりも、共同で配送を行う方がトラックの積載率を高めることにつながり、物流を効率化できる可能性があるのである。
コンビニエンスストアは現在、全国で約5万8千店舗ある。
駅前の商業施設や大学、病院など様々な施設内にも展開するほか、多くのチェーンは災害対策基本法に基づく指定公共機関にも指定され、災害時においても重要な役割を果たすことが期待されるなど、もはや社会インフラとなっている。
そのため、ビジネス的にも社会的にも、また安定的に商品を供給するための物流網の維持・構築は非常に重要なテーマであるといえる。
今回われわれは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を通じて、大手コンビニ3社の協力の下、個別に最適化・高度化されてきたコンビニ物流における共同化の効果について実証実験を通じて検証した。
本稿では、その結果について報告したい。
なお、SIPは、総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設する内閣府管掌のプログラムである。
13のテーマで実施されており、本実証実験はそのうちの「スマート物流サービス」の研究開発の一環として実施した。
このスマート物流サービスは、サプライチェーン全体の生産性を飛躍的に向上させ、世界に伍していくため、生産、流通、販売、消費までに取り扱われるデータを一気通貫で利活用し、最適化された生産・物流システムを構築するとともに、その社会実装を目指すものとされている。
共同配送のスキーム 本実証では、都内湾岸エリアの大手コンビニ3社の近接した店舗に対し、同じトラックで商品の納入を実施し、共同化による物流の効率化の効果を検証した(図1)。
実証の対象店舗は、セブン─イレブン13店舗、ファミリーマート13店舗、ローソン14店舗の合計40店舗であり、実験期間は2020年8月1日−7日の1週間とした(図2)。
具体的な実証内容としては、江東区にある佐川急便が運営する大型物流施設「Xフロンティア」に共同物流センターを設置して、各社の常温配送の商品(飲料・菓子・日用雑貨など)をそれぞれのセンター(各社とも千葉県市川市に存在)から運び込み、チェーン横断的に効率化した配送ルートで配達するものとした(図3)。
基本的な店舗別の商品のピッキングや台車への積み付けは、各チェーンのもともとの物流センターで実施し、共同物流センターでは、店舗別の商品が載ったカゴ台車の配送ルート別の仕分けと配達のみを行った。
しかしながら、将来の共同在庫の可能性も検討する必要があることから、一部商品は共同物流センターで在庫し、店舗別にピッキングなども行った。
本実証はもともと、2020年の東京オリンピックの時期に合わせ、オリンピック会場が集中する都内ベイゾーンおいて、飲料などを中心に需要が増加する一方で、交通規制や交通渋滞が見込まれることから、チェーン横断的な共同配送を行い、効率化の検証を行うことを計画していた。
実証実験の対象エリアが都内の湾岸エリアであるのはこのためである。
2020年3月24日、新型コロナウイルス感染症の影響で、東京オリンピックの延期が正式決定される事態になってしまったが、既に多くの準備や調整を実施していたことに加え、協力する大手コンビニ3社が「社会課題解決のための取り組みとして非常に重要」と判断したことから、本実証は、期間を短縮しつつ、エリアは据え置きで実施した。
実証実験の結果 まず、実証実験の結果について、確認していこう。
ただし、実証にあたっては大きな制約が一つだけあった。
それは、1週間の期間に限定した実証であったことから、店舗の納品時間を調整することが難しかったことである。
そのため、店舗間の距離が短かったとしても、納品時間の関係で配送を組むことができなかった店舗も存在し、効率化を最大限まで追求する配車ルートを組むことができなった。
そこで今回は実証実験結果を拡張して分析して、納品時間を調整し、最も効率の良いルートで配送できた場合のシミュレーションも実施した。
①輸送距離の短縮効果 輸送距離短縮効果の検証に当たっては、店舗間の配送距離について、共同化前の各コンビニチェーンのもともとの配送ルートとの比較を行った。
比較にあたっては、当然ながら元の市川市の物流センターと江東区の共同物流センターの距離の補正を行ったほか、配送ルートに含まれる店舗の差異を除去するため、配送ルートにおける前後の店舗との距離の1/2を店舗固有の距離として算出し、積み上げる形で計算を行った。
今回の実証対象店舗のうち、共同配送のルートにおいて、前の納品店舗、あるいは次の納品店舗に他チェーンの店舗が入る店舗は20店舗存在した。
これら20店舗における配送距離は、共同化を行うことでもともとのルートよりも13・8%短縮した。
また、実験対象とした全ての店舗(40店舗)では、7・6%の距離を短縮した。
さらに、店舗の納品時間を調整することができた場合のシミュレーションでは、最大で配送距離を32・3%短縮できることが明らかになった。
この結果は、自明ではあるが、チェーンに関係なく、最も近い店舗を巡る形で配送ルートを組むことが輸送距離の短縮に寄与すること、つまり店舗配送の共同化は輸送距離短縮に貢献することを示すものである。
なお、輸送距離の短縮によって、店舗配送における環境負荷を低減できることも明らかになった。
今回の実証実験だけでも、配送1店舗あたりのCO2の排出量を295g、燃料消費量を115㎖削減できることが分かった(燃費はCVS実績から試算、CO2排出量は国交省データより、積載率60%・4t車で試算)。
②トラックの生産性 トラックの生産性は、納品トラック1台あたり1日あたりの納品店舗数で評価を行う。
この数字は、1日のトラックの回転数(1日に何ルートを回ることができるか)と、1ルートあたりの納品店舗数の掛け算で算出できる。
こちらも、輸送距離と同様に既存の各チェーンの実験対象店舗を含む配送ルートとの比較によって評価した。
ただし、分析にあたっては、配送車両が2t車に限定されており、特別対応が必要な1店舗・1ルート、ならびに特定チェーンの休配日の実績を除外した。
トラック台数は、実験対象店舗を含む各チェーンのもともとの納品ルートの運行表からカウントした。
その結果、実証実験においてはトラックの回転数は1台当たり0・8回増加するものの、1ルートあたりの納品店舗数が減少してしまうことで、トラックの生産性全体としては1台あたり1日あたり0・2店舗減少する結果となってしまった。
これは、輸送距離の短縮によって、回転数は上がるものの、制約として納品時間の調整ができないために、1ルート当たりの納品店舗数を増やすことができなかったことが要因だと考えられる(図4)。
そのため、店舗納品時間を調整できた場合のシミュレーションでは、トラック回転数は1台当たり0・9回転/日増加するにもかかわらず、1ルート当たりの納品店舗数を既存ルートと同様に維持することで、トラックの生産性(1台当たり1日当たりの納品店舗数)を3店舗増加できることが明らかになった。
これは、トラックが1台当たり1日3ルート(回転)、1ルート当たり平均3店舗へ納品していると仮定した場合、共同化によってトラックの台数を1/3削減することができる可能性を示唆している。
③積載率の向上 続いて、積載率についての検証を行った。
積載率の算出に当たっては、条件をそろえるための補正をいくつか行っている。
そもそも店舗からの発注商品を納入にするに当たり、バラ出荷などもある発注単位が細かいコンビニの物流では、オリコン1つ当たりの重量はバラバラである。
そのため、容積ベースでの積載率を算出することとし、実証期間中の実績(小数点四捨五入)から、カゴ台車1台当たりのオリコン・ケース積載量は13個で計算することにした。
また、一部のチェーンでは、納品トラックへの荷物の積載にあたり、カゴ台車を使わず、ベタ積みを行っていることから、容積・重量計算に当たっては、カゴ台車を使わないチェーンについては、カゴ台車利用時の損失係数を30%で補正している。
こちらも各チェーンの既存の配送ルートとの比較で評価している。
実証期間中の積載率は、一部のチェーンの休配日を除いた実験期間中の最大荷量日(8月3日)の実績で算出した。
その結果、実証期間中の実績では、積載率が平均で7・8%改善、納品時間を調整できた場合は1ルート当たりの納品店舗数が増えることもあり、平均で積載率を36・1%改善できることを明らかにした(図5)。
以上の結果から、チェーン横断的にコンビニ店舗配送を共同化することによって配送距離、トラック生産性、積載率などの物流効率を高めることが可能であることを検証した。
加えて店舗の納品時間を調整することで、さらなる効率化ができることも明らかになった(図6)。
実証実験で見えた課題 今回の実証では、コンビニ店舗配送の共同化について、物流効率化の効果を定量的に評価できたことは大きな成果であるが、その一方でオペレーションなど、社会実装を行う上での課題も明確になった。
以下に、今回の実証を通じて明らかなとなった課題をいくつか紹介しよう。
①納品オペレーションがチェーンによって 異なること 同じコンビニ業態でも、チェーンごとの納品オペレーションには大きな差異があることが、今回の共同物流の実証で明らかになった。
コンビニは、棚に並ぶ通常の商品の他、金券からファストフード、クリーニング、ネット購入の店頭受け取り商品、予約商品などさまざまな物品を取り扱う。
店舗に配送する物品が多岐にわたるため、細かいオペレーションと付随業務の内容と量はチェーンによって大きく異なっている。
なお、本実証では納品難易度の高い商品は対象外としたが、今後の社会実装の取り組みの中ではチャレンジしていく必要があるだろう。
また、コンビニの立地には、独立した路面店から、オフィスビルの中、ショッピングセンターの中、病院の中まで、さまざまなバリエーションが存在している。
ビルや病院内などでは、それぞれの建物ごとに厳格な納品のルールがあるところも少なくない。
チェーンごとの納品オペレーションの差異に加えて、こうした店舗ごとの納品ルールへの対応も、今後の社会実装においては重要になってくると想定される。
②システム化(仕組み化)の必要性 実際に社会実装として、コンビニ各社が共同配送を行っていくに当たっては、必ず物流データの相互交換が求められる。
しかし、社会課題への対応、物流の全体最適の視点から物流の共同化では手を取り合うことができるコンビニ各社も、商品販売、サービス提供といった本業の分野では、非常に厳しい競合関係にある。
健全な競争環境を維持するためにも、データ交換については慎重な議論が求めれる。
なお、今回は本実証を通じて、コンビニ各社間の物流データをやり取りするためのプラットフォームとなる物流データ基盤のプロトタイプ構築も実施した。
今後は、この物流データ基盤の活用と社会実装に向けて、システム連携の調整や、相互に公開するデータ、秘匿するデータの切り分けなどを進めていく必要がある。
③商慣習の課題 本実証では、一部の商品について共同物流センターでの在庫を行い、共同在庫の可能性の検討も行った。
その結果、共同在庫の実現のためには、在庫の所有権や発注点管理などの面での商慣習の見直しが必要であることが明らかになった。
これらの議論には、サプライチェーンを構成するメーカー、卸売業といった商流に関わるプレーヤーの参加も必要となる。
実証結果の社会実装に向けた展望 共同配送の社会実装に向けた課題を以下の通り整理した。
もともと東京オリンピック期間中での共同配送の実証を予定していたため、今回は都内の湾岸エリアで実証を行ったが、コンビニ共同配送モデルは、人口密度が高く、各チェーンが多く出店し、ドミナントのレベルが高い都市部よりも、人口密度、店舗密度共に低い地方部の方が実施効果が大きいと想定できる。
店舗数が少ない遠隔地の店舗への納品は、チェーンが個別で実施するよりも共同化した方が効率が良くなり、買い物困難者などへの対策にもつながっていくことが期待される。
また、今回のコンビニ共同物流を小売物流の共同化、と拡張して考えた場合、コンビニ業態だけではなく、食品スーパーやドラッグストアなども含めた物流の共同化も視野に入る。
とりわけ物流効率が良くないエリアについては、業態横断的な物流の最適化が効果的であると考えられる。
こうした地方でのコンビニ共同配送の社会実装、小売(リテール)業界全体での物流共同化、最適化のためには、関連するプレーヤー、業界全体で利用できるインフラとしての物流データ基盤の整備や物流資材の標準化が必要である。
特に業界全体での物流のデータ連携は、物流の共同化にとって必要不可欠(競合間であっても、物流データの連携がなければ、共同での配送ルートの構築などは困難)である。
さらには、小売業界の物流データの連携基盤ができれば、将来的には防災・災害対応にも活用できることが見込まれる。
コンビニをはじめとした最寄り品を扱う小売業の共同配送は、物流頻度の多い回転率の高い商品を取り扱うため、小売業の物流効率化だけではなく、日本全体の物流余力の向上、サプライチェーンの環境負荷の低減、買い物困難者対策といった社会課題解決にもつながるものである。
今後も引き続きコンビニ各社、ならびに関係する事業者の協力を得ながら、SIPなどを通じて、課題を一つ一つ丁寧に解決する形で、共同物流の社会実装と、物流データ基盤の開発と普及を行っていきたい。
現在まで、コンビニに代表されるチェーン型の小売業は、温度帯別に自社の専用物流センターを設置し、店舗での欠品ゼロ、店内作業の効率化を目的として、個々のチェーンごと、店舗ごとに最適となるような物流を志向してきた。
特にコンビニという業態は、一定のエリアにまとめて出店するドミナント戦略を取ることで、サプライチェーン効率を高めることに成功した業態である。
そして、商品のサプライヤーである卸売業やメーカーも規模拡大を続けるチェーン小売業の物流施策に従って、物流センターフィーを支払いつつ、個別に対応してきた。
そのため、大手コンビニの店舗への商品配送における物流は、個々の企業によって程度の差はあれど、業界として相当のレベルで高度化されている。
つまり、それぞれの企業における最適化・効率化ができている「個別最適」ともいえる状況にある。
しかし、総人口が減少し、物流分野の人手不足・コスト上昇が深刻になる中、チェーン別の専用物流体制に課題が生じている。
いくつか実例を挙げれば、同じ地域に複数のチェーンの専用物流センターがある場合でも、メーカー・卸売業が各センターの発注に対応した個別納品を行っていることや、同一地域に店舗を展開していても、それぞれのチェーンで個別に店舗配送が行われることが課題となっている。
とりわけ、自社の物流センターから店舗への配送は、2~4トンサイズのトラックでの小口配送となるため、同じ地域の中でチェーン別に多くのトラックが走り回る状況となっている。
都市部を中心としたエリア面積に対して店舗数が多いエリアでは、それだけの店舗配達需要があるため問題とはならないが、店舗の集中レベルが低い地方においては非効率が発生している。
つまり、エリア面積に対して、店舗数が少ないエリアでは、それぞれのチェーンが独自に店舗配送を行うよりも、共同で配送を行う方がトラックの積載率を高めることにつながり、物流を効率化できる可能性があるのである。
コンビニエンスストアは現在、全国で約5万8千店舗ある。
駅前の商業施設や大学、病院など様々な施設内にも展開するほか、多くのチェーンは災害対策基本法に基づく指定公共機関にも指定され、災害時においても重要な役割を果たすことが期待されるなど、もはや社会インフラとなっている。
そのため、ビジネス的にも社会的にも、また安定的に商品を供給するための物流網の維持・構築は非常に重要なテーマであるといえる。
今回われわれは、内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を通じて、大手コンビニ3社の協力の下、個別に最適化・高度化されてきたコンビニ物流における共同化の効果について実証実験を通じて検証した。
本稿では、その結果について報告したい。
なお、SIPは、総合科学技術・イノベーション会議が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設する内閣府管掌のプログラムである。
13のテーマで実施されており、本実証実験はそのうちの「スマート物流サービス」の研究開発の一環として実施した。
このスマート物流サービスは、サプライチェーン全体の生産性を飛躍的に向上させ、世界に伍していくため、生産、流通、販売、消費までに取り扱われるデータを一気通貫で利活用し、最適化された生産・物流システムを構築するとともに、その社会実装を目指すものとされている。
共同配送のスキーム 本実証では、都内湾岸エリアの大手コンビニ3社の近接した店舗に対し、同じトラックで商品の納入を実施し、共同化による物流の効率化の効果を検証した(図1)。
実証の対象店舗は、セブン─イレブン13店舗、ファミリーマート13店舗、ローソン14店舗の合計40店舗であり、実験期間は2020年8月1日−7日の1週間とした(図2)。
具体的な実証内容としては、江東区にある佐川急便が運営する大型物流施設「Xフロンティア」に共同物流センターを設置して、各社の常温配送の商品(飲料・菓子・日用雑貨など)をそれぞれのセンター(各社とも千葉県市川市に存在)から運び込み、チェーン横断的に効率化した配送ルートで配達するものとした(図3)。
基本的な店舗別の商品のピッキングや台車への積み付けは、各チェーンのもともとの物流センターで実施し、共同物流センターでは、店舗別の商品が載ったカゴ台車の配送ルート別の仕分けと配達のみを行った。
しかしながら、将来の共同在庫の可能性も検討する必要があることから、一部商品は共同物流センターで在庫し、店舗別にピッキングなども行った。
本実証はもともと、2020年の東京オリンピックの時期に合わせ、オリンピック会場が集中する都内ベイゾーンおいて、飲料などを中心に需要が増加する一方で、交通規制や交通渋滞が見込まれることから、チェーン横断的な共同配送を行い、効率化の検証を行うことを計画していた。
実証実験の対象エリアが都内の湾岸エリアであるのはこのためである。
2020年3月24日、新型コロナウイルス感染症の影響で、東京オリンピックの延期が正式決定される事態になってしまったが、既に多くの準備や調整を実施していたことに加え、協力する大手コンビニ3社が「社会課題解決のための取り組みとして非常に重要」と判断したことから、本実証は、期間を短縮しつつ、エリアは据え置きで実施した。
実証実験の結果 まず、実証実験の結果について、確認していこう。
ただし、実証にあたっては大きな制約が一つだけあった。
それは、1週間の期間に限定した実証であったことから、店舗の納品時間を調整することが難しかったことである。
そのため、店舗間の距離が短かったとしても、納品時間の関係で配送を組むことができなかった店舗も存在し、効率化を最大限まで追求する配車ルートを組むことができなった。
そこで今回は実証実験結果を拡張して分析して、納品時間を調整し、最も効率の良いルートで配送できた場合のシミュレーションも実施した。
①輸送距離の短縮効果 輸送距離短縮効果の検証に当たっては、店舗間の配送距離について、共同化前の各コンビニチェーンのもともとの配送ルートとの比較を行った。
比較にあたっては、当然ながら元の市川市の物流センターと江東区の共同物流センターの距離の補正を行ったほか、配送ルートに含まれる店舗の差異を除去するため、配送ルートにおける前後の店舗との距離の1/2を店舗固有の距離として算出し、積み上げる形で計算を行った。
今回の実証対象店舗のうち、共同配送のルートにおいて、前の納品店舗、あるいは次の納品店舗に他チェーンの店舗が入る店舗は20店舗存在した。
これら20店舗における配送距離は、共同化を行うことでもともとのルートよりも13・8%短縮した。
また、実験対象とした全ての店舗(40店舗)では、7・6%の距離を短縮した。
さらに、店舗の納品時間を調整することができた場合のシミュレーションでは、最大で配送距離を32・3%短縮できることが明らかになった。
この結果は、自明ではあるが、チェーンに関係なく、最も近い店舗を巡る形で配送ルートを組むことが輸送距離の短縮に寄与すること、つまり店舗配送の共同化は輸送距離短縮に貢献することを示すものである。
なお、輸送距離の短縮によって、店舗配送における環境負荷を低減できることも明らかになった。
今回の実証実験だけでも、配送1店舗あたりのCO2の排出量を295g、燃料消費量を115㎖削減できることが分かった(燃費はCVS実績から試算、CO2排出量は国交省データより、積載率60%・4t車で試算)。
②トラックの生産性 トラックの生産性は、納品トラック1台あたり1日あたりの納品店舗数で評価を行う。
この数字は、1日のトラックの回転数(1日に何ルートを回ることができるか)と、1ルートあたりの納品店舗数の掛け算で算出できる。
こちらも、輸送距離と同様に既存の各チェーンの実験対象店舗を含む配送ルートとの比較によって評価した。
ただし、分析にあたっては、配送車両が2t車に限定されており、特別対応が必要な1店舗・1ルート、ならびに特定チェーンの休配日の実績を除外した。
トラック台数は、実験対象店舗を含む各チェーンのもともとの納品ルートの運行表からカウントした。
その結果、実証実験においてはトラックの回転数は1台当たり0・8回増加するものの、1ルートあたりの納品店舗数が減少してしまうことで、トラックの生産性全体としては1台あたり1日あたり0・2店舗減少する結果となってしまった。
これは、輸送距離の短縮によって、回転数は上がるものの、制約として納品時間の調整ができないために、1ルート当たりの納品店舗数を増やすことができなかったことが要因だと考えられる(図4)。
そのため、店舗納品時間を調整できた場合のシミュレーションでは、トラック回転数は1台当たり0・9回転/日増加するにもかかわらず、1ルート当たりの納品店舗数を既存ルートと同様に維持することで、トラックの生産性(1台当たり1日当たりの納品店舗数)を3店舗増加できることが明らかになった。
これは、トラックが1台当たり1日3ルート(回転)、1ルート当たり平均3店舗へ納品していると仮定した場合、共同化によってトラックの台数を1/3削減することができる可能性を示唆している。
③積載率の向上 続いて、積載率についての検証を行った。
積載率の算出に当たっては、条件をそろえるための補正をいくつか行っている。
そもそも店舗からの発注商品を納入にするに当たり、バラ出荷などもある発注単位が細かいコンビニの物流では、オリコン1つ当たりの重量はバラバラである。
そのため、容積ベースでの積載率を算出することとし、実証期間中の実績(小数点四捨五入)から、カゴ台車1台当たりのオリコン・ケース積載量は13個で計算することにした。
また、一部のチェーンでは、納品トラックへの荷物の積載にあたり、カゴ台車を使わず、ベタ積みを行っていることから、容積・重量計算に当たっては、カゴ台車を使わないチェーンについては、カゴ台車利用時の損失係数を30%で補正している。
こちらも各チェーンの既存の配送ルートとの比較で評価している。
実証期間中の積載率は、一部のチェーンの休配日を除いた実験期間中の最大荷量日(8月3日)の実績で算出した。
その結果、実証期間中の実績では、積載率が平均で7・8%改善、納品時間を調整できた場合は1ルート当たりの納品店舗数が増えることもあり、平均で積載率を36・1%改善できることを明らかにした(図5)。
以上の結果から、チェーン横断的にコンビニ店舗配送を共同化することによって配送距離、トラック生産性、積載率などの物流効率を高めることが可能であることを検証した。
加えて店舗の納品時間を調整することで、さらなる効率化ができることも明らかになった(図6)。
実証実験で見えた課題 今回の実証では、コンビニ店舗配送の共同化について、物流効率化の効果を定量的に評価できたことは大きな成果であるが、その一方でオペレーションなど、社会実装を行う上での課題も明確になった。
以下に、今回の実証を通じて明らかなとなった課題をいくつか紹介しよう。
①納品オペレーションがチェーンによって 異なること 同じコンビニ業態でも、チェーンごとの納品オペレーションには大きな差異があることが、今回の共同物流の実証で明らかになった。
コンビニは、棚に並ぶ通常の商品の他、金券からファストフード、クリーニング、ネット購入の店頭受け取り商品、予約商品などさまざまな物品を取り扱う。
店舗に配送する物品が多岐にわたるため、細かいオペレーションと付随業務の内容と量はチェーンによって大きく異なっている。
なお、本実証では納品難易度の高い商品は対象外としたが、今後の社会実装の取り組みの中ではチャレンジしていく必要があるだろう。
また、コンビニの立地には、独立した路面店から、オフィスビルの中、ショッピングセンターの中、病院の中まで、さまざまなバリエーションが存在している。
ビルや病院内などでは、それぞれの建物ごとに厳格な納品のルールがあるところも少なくない。
チェーンごとの納品オペレーションの差異に加えて、こうした店舗ごとの納品ルールへの対応も、今後の社会実装においては重要になってくると想定される。
②システム化(仕組み化)の必要性 実際に社会実装として、コンビニ各社が共同配送を行っていくに当たっては、必ず物流データの相互交換が求められる。
しかし、社会課題への対応、物流の全体最適の視点から物流の共同化では手を取り合うことができるコンビニ各社も、商品販売、サービス提供といった本業の分野では、非常に厳しい競合関係にある。
健全な競争環境を維持するためにも、データ交換については慎重な議論が求めれる。
なお、今回は本実証を通じて、コンビニ各社間の物流データをやり取りするためのプラットフォームとなる物流データ基盤のプロトタイプ構築も実施した。
今後は、この物流データ基盤の活用と社会実装に向けて、システム連携の調整や、相互に公開するデータ、秘匿するデータの切り分けなどを進めていく必要がある。
③商慣習の課題 本実証では、一部の商品について共同物流センターでの在庫を行い、共同在庫の可能性の検討も行った。
その結果、共同在庫の実現のためには、在庫の所有権や発注点管理などの面での商慣習の見直しが必要であることが明らかになった。
これらの議論には、サプライチェーンを構成するメーカー、卸売業といった商流に関わるプレーヤーの参加も必要となる。
実証結果の社会実装に向けた展望 共同配送の社会実装に向けた課題を以下の通り整理した。
もともと東京オリンピック期間中での共同配送の実証を予定していたため、今回は都内の湾岸エリアで実証を行ったが、コンビニ共同配送モデルは、人口密度が高く、各チェーンが多く出店し、ドミナントのレベルが高い都市部よりも、人口密度、店舗密度共に低い地方部の方が実施効果が大きいと想定できる。
店舗数が少ない遠隔地の店舗への納品は、チェーンが個別で実施するよりも共同化した方が効率が良くなり、買い物困難者などへの対策にもつながっていくことが期待される。
また、今回のコンビニ共同物流を小売物流の共同化、と拡張して考えた場合、コンビニ業態だけではなく、食品スーパーやドラッグストアなども含めた物流の共同化も視野に入る。
とりわけ物流効率が良くないエリアについては、業態横断的な物流の最適化が効果的であると考えられる。
こうした地方でのコンビニ共同配送の社会実装、小売(リテール)業界全体での物流共同化、最適化のためには、関連するプレーヤー、業界全体で利用できるインフラとしての物流データ基盤の整備や物流資材の標準化が必要である。
特に業界全体での物流のデータ連携は、物流の共同化にとって必要不可欠(競合間であっても、物流データの連携がなければ、共同での配送ルートの構築などは困難)である。
さらには、小売業界の物流データの連携基盤ができれば、将来的には防災・災害対応にも活用できることが見込まれる。
コンビニをはじめとした最寄り品を扱う小売業の共同配送は、物流頻度の多い回転率の高い商品を取り扱うため、小売業の物流効率化だけではなく、日本全体の物流余力の向上、サプライチェーンの環境負荷の低減、買い物困難者対策といった社会課題解決にもつながるものである。
今後も引き続きコンビニ各社、ならびに関係する事業者の協力を得ながら、SIPなどを通じて、課題を一つ一つ丁寧に解決する形で、共同物流の社会実装と、物流データ基盤の開発と普及を行っていきたい。
