2021年3月号
特集
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「プラネット物流」解散後の日用品物流
卸の集約で何が起きたか
物流共同化の機運が社会的に高まっています。
しかし、その先行事例とされるプラネット物流は、四半世紀にわたる活動を経て2016年に解散しました。
共同物流は現在も必要かつ重要です。
しかし、共同化の内容やスキームは時代と共に変わっていきます。
プラネット物流は、環境の変化に対応して構造を変革できなかったことが、解散の大きな要因だと考えています。
以下に順を追って説明します。
まず設立に至るまでの背景は大きく三つに整理できます。
一つ目は、バブル期後半に物流会社からの車両の供給などがひっ迫したことです。
一方でロジスティクスという言葉が産業界で一般的に使われるようになり「必要なモノを・必要な時に・必要な量だけ」供給することが大切だとされました。
多品種小口化が進んで納品リードタイムは発注後24時間以内となり、メーカーは物流の手配に四苦八苦していました。
関東・関西圏以外の地方は数量がまとまらないため特に苦労が大きく、積載効率を悪化させながら何とか顧客の要望に対応している状況でした。
安定した物流環境をつくることは、当時のメーカーの物流担当の悲願だったのです。
二つ目は、業界最大手の花王さんとの関係です。
花王は卸店流通での販売を止め、販社をつくり、小売りへの直販を進めます。
1980年代以降どんどん売り上げを伸ばす状況にもあり、他の日用品メーカーや卸店は危機感を募らせました。
そして三つ目が、1985年に日用品メーカーが共同出資で設立したVAN会社、プラネットの誕生です。
プラネットの運営を通して同業者と共同で事業を行う基盤ができて、それなら物流も共同でやろうという意識が生まれました。
この三つを背景にして1989年にプラネット物流が創業しました。
同社は中部地方を皮切りに、東北、九州と拠点を立ち上げていき、4カ所目の北海道で、拠点構築をひと段落させました。
量が少なく配送範囲が広いエリアの物流を、ライオンの拠点を基軸に共同化することで積載効率向上を目指したのですから、人口密度の低い地域だけでよかったわけです。
(図表1) しかし、それから10年余りが経過する間に、流通事情、物流事情は大きく変わっていきました。
1990年時点では全国に1200カ所以上あったメーカーの届け先(卸拠点)が、2000年には900カ所、2010年には700カ所に集約されていきました。
販売店の大型化に加えてドラッグチェーンが成長すると同時に、卸店の統廃合が進んで大手は全国規模に拡大します。
その結果として、特に地方の届け先が大きく減少しました。
(図表2) またこの時期に、道路網をはじめとする社会的な物流インフラの整備が急ピッチで進みます。
受注から24時間以内に届けられる距離が大きく伸びたことで、メーカーは地方拠点の集約に動きました。
(図表3) この環境変化を受けてプラネット物流のエリア拠点は、東北、名古屋の順に閉鎖されて、北海道と九州だけになり、取り扱い規模は半分以下になってしまいます。
そこでプラネット物流の再生策として関東と関西に拠点を立ち上げることになりました。
しかし、都市圏はもともとメーカー各社の取引規模が大きいため共同化のメリットは小さく、上手くは回りませんでした。
プラネット物流の事業を北海道と九州だけに縮小することや、本州はノンアセットで3PLに徹するなど、構造を変革して継続する方法も検討されました。
しかし、事業会社として既に長期にわたって運用を続けていた構造を、急激に変えることは事実上困難だったのだろうと思います。
参加企業の意見の調整や意思統一も容易ではなかったはずです。
振り返って日用品メーカーの物流担当の立場から、プラネット物流の主なメリット、デメリットを整理すると以下のようになります。
デメリットよりも、メリットの方がはるかに大きいことが分かるでしょう。
〈メリット〉 ・ 共同物流を切り口に社内を改革できた ・ 物流コストの上昇を抑止できた、もしくは物流コストを削減できた ・ システム環境が全国で統一されていたため、拠点の参入や撤退が容易にできた ・ 物流EDI化の投資を最小に抑えられた ・ 物流会社との交渉や車両手配、問い合わせなどが無くなり、管理費用が最小で済んだ ・ 同業メーカーとの情報交換が、物流だけでなくパッケージや設計などにも広がった ・ 卸店の要望に対して、どのメーカーも同じ水準のサービスを提供することができた 〈デメリット〉 ・ 共同物流なので、オリジナルなサービスには対応できない ・ イレギュラーに弱く、災害時などの対応が遅れる ・ サービスの対象が卸店への納品に限られていたため、医院や理美容などへの販売物流は別管理する必要があった ・ 共同化に参加するメーカーが抜けた場合には物量の穴埋めが必要であり、その分をどのメーカーが負担するのか調整が難しかった 昨年夏、プラネット物流に参加していたメーカーの多くが、内閣府の主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の実証実験に参加しました。
日用品業界のメーカーと卸店が連携して、「トラック車両別のASN(事前出荷情報)発信による伝票レス」の実証実験を行ったのです。
その結果、入荷作業の時間短縮や伝票印刷、紙の削減など、大きな効果を得られることが分かり、実証から実施に向けて動き始めました。
さらにRFID(電子タグ)の活用も業界共通のテーマとなっています。
これらの実現には、流通とメーカーが一丸となって商流・物流を連携させる共同作業が重要になると考えています。
先の業界VAN会社のプラネットは昨年、物流EDIの常設部門を新設して、商・物情報の連携を実現する活動を開始しました。
今年2月には、エステー、牛乳石鹸共進社、クラシエホームプロダクツ、小林製薬、サンスター、日本製紙クレシア、ホーユー、マンダム、ユニ・チャーム、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング、ライオン(五十音順)が協議して作成した「ロジスティクスEDI概要書」を発表しています。
プラネットには400社以上の卸と、600社以上のメーカーが参画しています。
今後はプラネットの物流EDI部門が核となって、業界の物流情報共有や連携を進めていくことが期待されます。
業界全体で商物連携の情報共同化を進めるという取り組みは、日用品のみならず他業界を見回しても恐らく初めてではないかと思います。
それだけ画期的かつ価値のある取り組みだと考えています。
「共同クロスドック配送」を試験運用 こうした動きと並行してわれわれ日用品メーカーはプラネット物流の解散後も、メーカーが集まって情報交換できる場として、流通経済研究所に事務局をお願いして『SCM研究会』を組織しました。
コロナ禍の今もWebで研究会を続けています。
プラネット物流が解散する少し前から、物流業界では人手不足による供給減少が発生しています。
2019年には「ホワイト物流」推進運動が始まり、ドライバーの労働時間規制の厳守や適正運賃の問題なども表面化し、物流の環境改善に対する荷主責任が問われるようになりました。
こうした状況下で、荷主企業が単独で物流の合理化を進めることには限界があると考えています。
そのため共同化の取り組みは現在も続けているのです。
その具体的なアイデアの一つが、2トン〜5トンクラスの中ロット配送の共同化です。
上位10%に入る大口の届け先であっても、中ロット以下のオーダーは頻繁に発生しています。
路線便(特別積合せ貨物)では1トン以上の取り扱いは難しいので、現状ではメーカーが低い積載率のまま、それぞれ貸し切りで運んでいます。
その結果、中規模以下のセンターでは各メーカーの車両が列をなして待機することがあります。
この問題を解消するために、複数メーカーでクロスドック配送を行うことを検討しています。
その実現には卸(発注元)との連携がどうしても必要です。
われわれメーカーは他メーカーの納品データを持っていません。
どのメーカーと組めばロットがまとまるのか、カテゴリー的にも都合が良いのかは、発注元である卸に選んでもらうのが一番です。
そして、一緒に納品するメーカーに対しては、同じ日に発注してもらう必要があります。
そうした活動を今、卸店と共同で進めています。
昨年11月から1カ所でテストを始めているのですが、良い結果が出ています。
(図表4)この件に限らず、日用品メーカーの共同物流は今後、卸(買い手)が軸になってくる例が多くなるとみています。
買い手主導の物流の最適化は非常に有効です。
これまでの「必要なモノを・必要な時に・必要な量だけ」発注するのを改めてリードタイムとコスト効率に基づいて発注する。
まさにロジスティクスだと思います。
われわれメーカーはそのことを十分に理解して、発注者と連携した物流共同化を進めるべきだと考えます。
しかし、その先行事例とされるプラネット物流は、四半世紀にわたる活動を経て2016年に解散しました。
共同物流は現在も必要かつ重要です。
しかし、共同化の内容やスキームは時代と共に変わっていきます。
プラネット物流は、環境の変化に対応して構造を変革できなかったことが、解散の大きな要因だと考えています。
以下に順を追って説明します。
まず設立に至るまでの背景は大きく三つに整理できます。
一つ目は、バブル期後半に物流会社からの車両の供給などがひっ迫したことです。
一方でロジスティクスという言葉が産業界で一般的に使われるようになり「必要なモノを・必要な時に・必要な量だけ」供給することが大切だとされました。
多品種小口化が進んで納品リードタイムは発注後24時間以内となり、メーカーは物流の手配に四苦八苦していました。
関東・関西圏以外の地方は数量がまとまらないため特に苦労が大きく、積載効率を悪化させながら何とか顧客の要望に対応している状況でした。
安定した物流環境をつくることは、当時のメーカーの物流担当の悲願だったのです。
二つ目は、業界最大手の花王さんとの関係です。
花王は卸店流通での販売を止め、販社をつくり、小売りへの直販を進めます。
1980年代以降どんどん売り上げを伸ばす状況にもあり、他の日用品メーカーや卸店は危機感を募らせました。
そして三つ目が、1985年に日用品メーカーが共同出資で設立したVAN会社、プラネットの誕生です。
プラネットの運営を通して同業者と共同で事業を行う基盤ができて、それなら物流も共同でやろうという意識が生まれました。
この三つを背景にして1989年にプラネット物流が創業しました。
同社は中部地方を皮切りに、東北、九州と拠点を立ち上げていき、4カ所目の北海道で、拠点構築をひと段落させました。
量が少なく配送範囲が広いエリアの物流を、ライオンの拠点を基軸に共同化することで積載効率向上を目指したのですから、人口密度の低い地域だけでよかったわけです。
(図表1) しかし、それから10年余りが経過する間に、流通事情、物流事情は大きく変わっていきました。
1990年時点では全国に1200カ所以上あったメーカーの届け先(卸拠点)が、2000年には900カ所、2010年には700カ所に集約されていきました。
販売店の大型化に加えてドラッグチェーンが成長すると同時に、卸店の統廃合が進んで大手は全国規模に拡大します。
その結果として、特に地方の届け先が大きく減少しました。
(図表2) またこの時期に、道路網をはじめとする社会的な物流インフラの整備が急ピッチで進みます。
受注から24時間以内に届けられる距離が大きく伸びたことで、メーカーは地方拠点の集約に動きました。
(図表3) この環境変化を受けてプラネット物流のエリア拠点は、東北、名古屋の順に閉鎖されて、北海道と九州だけになり、取り扱い規模は半分以下になってしまいます。
そこでプラネット物流の再生策として関東と関西に拠点を立ち上げることになりました。
しかし、都市圏はもともとメーカー各社の取引規模が大きいため共同化のメリットは小さく、上手くは回りませんでした。
プラネット物流の事業を北海道と九州だけに縮小することや、本州はノンアセットで3PLに徹するなど、構造を変革して継続する方法も検討されました。
しかし、事業会社として既に長期にわたって運用を続けていた構造を、急激に変えることは事実上困難だったのだろうと思います。
参加企業の意見の調整や意思統一も容易ではなかったはずです。
振り返って日用品メーカーの物流担当の立場から、プラネット物流の主なメリット、デメリットを整理すると以下のようになります。
デメリットよりも、メリットの方がはるかに大きいことが分かるでしょう。
〈メリット〉 ・ 共同物流を切り口に社内を改革できた ・ 物流コストの上昇を抑止できた、もしくは物流コストを削減できた ・ システム環境が全国で統一されていたため、拠点の参入や撤退が容易にできた ・ 物流EDI化の投資を最小に抑えられた ・ 物流会社との交渉や車両手配、問い合わせなどが無くなり、管理費用が最小で済んだ ・ 同業メーカーとの情報交換が、物流だけでなくパッケージや設計などにも広がった ・ 卸店の要望に対して、どのメーカーも同じ水準のサービスを提供することができた 〈デメリット〉 ・ 共同物流なので、オリジナルなサービスには対応できない ・ イレギュラーに弱く、災害時などの対応が遅れる ・ サービスの対象が卸店への納品に限られていたため、医院や理美容などへの販売物流は別管理する必要があった ・ 共同化に参加するメーカーが抜けた場合には物量の穴埋めが必要であり、その分をどのメーカーが負担するのか調整が難しかった 昨年夏、プラネット物流に参加していたメーカーの多くが、内閣府の主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の実証実験に参加しました。
日用品業界のメーカーと卸店が連携して、「トラック車両別のASN(事前出荷情報)発信による伝票レス」の実証実験を行ったのです。
その結果、入荷作業の時間短縮や伝票印刷、紙の削減など、大きな効果を得られることが分かり、実証から実施に向けて動き始めました。
さらにRFID(電子タグ)の活用も業界共通のテーマとなっています。
これらの実現には、流通とメーカーが一丸となって商流・物流を連携させる共同作業が重要になると考えています。
先の業界VAN会社のプラネットは昨年、物流EDIの常設部門を新設して、商・物情報の連携を実現する活動を開始しました。
今年2月には、エステー、牛乳石鹸共進社、クラシエホームプロダクツ、小林製薬、サンスター、日本製紙クレシア、ホーユー、マンダム、ユニ・チャーム、ユニリーバ・ジャパン・カスタマーマーケティング、ライオン(五十音順)が協議して作成した「ロジスティクスEDI概要書」を発表しています。
プラネットには400社以上の卸と、600社以上のメーカーが参画しています。
今後はプラネットの物流EDI部門が核となって、業界の物流情報共有や連携を進めていくことが期待されます。
業界全体で商物連携の情報共同化を進めるという取り組みは、日用品のみならず他業界を見回しても恐らく初めてではないかと思います。
それだけ画期的かつ価値のある取り組みだと考えています。
「共同クロスドック配送」を試験運用 こうした動きと並行してわれわれ日用品メーカーはプラネット物流の解散後も、メーカーが集まって情報交換できる場として、流通経済研究所に事務局をお願いして『SCM研究会』を組織しました。
コロナ禍の今もWebで研究会を続けています。
プラネット物流が解散する少し前から、物流業界では人手不足による供給減少が発生しています。
2019年には「ホワイト物流」推進運動が始まり、ドライバーの労働時間規制の厳守や適正運賃の問題なども表面化し、物流の環境改善に対する荷主責任が問われるようになりました。
こうした状況下で、荷主企業が単独で物流の合理化を進めることには限界があると考えています。
そのため共同化の取り組みは現在も続けているのです。
その具体的なアイデアの一つが、2トン〜5トンクラスの中ロット配送の共同化です。
上位10%に入る大口の届け先であっても、中ロット以下のオーダーは頻繁に発生しています。
路線便(特別積合せ貨物)では1トン以上の取り扱いは難しいので、現状ではメーカーが低い積載率のまま、それぞれ貸し切りで運んでいます。
その結果、中規模以下のセンターでは各メーカーの車両が列をなして待機することがあります。
この問題を解消するために、複数メーカーでクロスドック配送を行うことを検討しています。
その実現には卸(発注元)との連携がどうしても必要です。
われわれメーカーは他メーカーの納品データを持っていません。
どのメーカーと組めばロットがまとまるのか、カテゴリー的にも都合が良いのかは、発注元である卸に選んでもらうのが一番です。
そして、一緒に納品するメーカーに対しては、同じ日に発注してもらう必要があります。
そうした活動を今、卸店と共同で進めています。
昨年11月から1カ所でテストを始めているのですが、良い結果が出ています。
(図表4)この件に限らず、日用品メーカーの共同物流は今後、卸(買い手)が軸になってくる例が多くなるとみています。
買い手主導の物流の最適化は非常に有効です。
これまでの「必要なモノを・必要な時に・必要な量だけ」発注するのを改めてリードタイムとコスト効率に基づいて発注する。
まさにロジスティクスだと思います。
われわれメーカーはそのことを十分に理解して、発注者と連携した物流共同化を進めるべきだと考えます。
