2021年3月号
特集
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三菱商事×FLEXEが仕掛けるセンター運営DX
登録寄託倉庫1千拠点の達成に目途
──倉庫シェアリングに乗り出した背景は?
三菱商事 物流開発部 田中 鉄 部長「以前、私はグループの三菱商事ロジスティクスに出向して現場管理に携わっていました。
『倉庫が空いた』『溢れた』と近隣のセンター長とやりとりして何とか都合をつけるというドタバタを散々経験して、これを何とかできないものかという問題意識を持つようになりました。
その後、2017年に出向から戻って現職に就いたのをきっかけにその事業化に動きました」 「われわれ物流開発部は新規事業開発を役割としています。
そのネタ探しのために米国を中心に海外にスタッフを派遣して、物流関連のテクノロジーやスタートアップの動向を広く調べています。
そこから生まれた事業が(物流ロボット導入支援サービス)『Roboware(ロボウェア)』であり、また『WareX(ウェアエックス)』でした」 三菱商事 物流開発部 中村 遼太郎 マネージャー「私は2017年に北米三菱商事が米シリコンバレーに置いている『M─Lab』という組織に長期出張で派遣されました。
三菱商事の社内だけでなく、いわゆる三菱系企業、さらには三菱グループ外の日本企業のスタッフがそこに派遣されて、シェアオフィスのような環境で情報を共有しながら、現地のスタートアップやさまざまな組織との協業や投資などを検討するための組織です」 「そこに籍を置いて商社とは縁の深い海上輸送やエアフォワーディングはもちろん、国内輸送、倉庫、ラストワンマイルまで、延べ300社近くのスタートアップをヒアリングして回りました。
そこで目を付けたのがFLEXE(フレックス)でした。
その優位性を確認し、共同創業者でCEOのカール(Karl Siebrecht)にわれわれの問題意識や日本の物流の課題をぶつけたところ、すぐに意気投合して出資と提携を受け入れてもらうことになりました」 ──フレックスは当時から既に知られた存在だったのでしょうか。
中村「『倉庫版Airbnb』あるいは『倉庫番AWS(アマゾンウェブサービス)』としてその存在は知られるようになってきてはいましたが、まだ『シリーズA』(製品化して間もない初期のステージ)と呼ばれる段階でした。
『クラウド型倉庫』や『WaaS(ウェアハウジング・アズ・ア・サービス)』など説明の仕方も二転三転していました。
『オンデマンドウェアハウジング』という表現に落ち着いたのは、ごく最近のことです」 田中「それでも当時既にフレックスは米国の大手チェーンストアと契約を結んでいました。
米国全土を翌々日配送圏としてカバーするには、どこに何カ所の倉庫が必要かといった視点から取り組みを説明していてとても新鮮に感じました。
倉庫シェアリングのコンセプトも魅力的でした」 「カールも含めてアメリカの物流関連のスタートアップの創業者は、多くがテクノロジー系の素養を持っていて物流業界出身ではありません。
外から物流業界を見て、そこに事業機会を感じて入ってきている。
物流業界の中からは発想の転換や新しい知恵は生まれにくい。
イノベーションは外からやってくるのだなと感じたことを覚えています」 ──フレックスの仕組みを日本市場に持ち込むにあたり、そのまま使う部分とローカライズする部分はどう切り分けましたか。
中村「当初は向こうの仕組みをほとんどそのまま日本に持ち込むつもりでした。
しかし、倉庫業やBtoBのビジネスはその国の事業法や商慣習に大きく影響を受けます。
アメリカには日本の倉庫業法に当たるものがなく、州によって簡単な運用の決まりがあるだけ。
保険の規定も緩く、自家倉庫でも営業倉庫として使える。
そうした違いに直面して日本版に落とし込んできましたが、今もまだ走りながら考えているところです」 「それでもフレックスの基本的なビジネスモデルはそのまま踏襲しています。
彼らはマッチングという言葉を使いません。
賃貸を仲介するのではなく、ユーザーとサービスレベルアグリーメントを結び、遊休スペースを使ってサービスを提供する。
日本の倉庫業法でいえば倉庫寄託契約です。
そのコンセプトをWareXも採り入れています」 「もうひとつがマーケティングです。
現在のフレックスはパレット、ケース、ピースの全ての荷姿に対応しています。
ソリューションは『在庫オーバーフロー』『リテール物流』『ECフルフィルメント』の三つ。
そのうち在庫オーバーフローは倉庫から溢れた在庫をパレット単位で外部に逃がす。
リテール物流は卸向けでケース商品を仕分けて納品する」 ──むしろフレックスはアマゾンに出店する中小EC事業者向けのサービスという認識でした。
中村「もともとはパレットからスタートしています。
荷姿が標準化されているのでサービスを標準化しやすい。
その後からケース、ピースと進めていった。
われわれもまずはパレットから入って対象を広げていくというシナリオで進めています」 ──『マッチングではなくソリューション』とは? 中村「フレックスは今、全米1500以上の倉庫をネットワーク化していますが、それを一つの巨大な仮想倉庫と見立てています。
AWSと同様のクラウド型で、どこにでも保管できるということを利用者に対する付加価値と位置付けています。
だからオンデマンド倉庫なんです。
実際にマッチングはしていてもそれは利用者の価値とは関係ない」 田中「徹底的に利用者目線で利便性を高めていくというのは、彼らから学んだことの一つです。
機能開発にしても、それによっていくら追加料金がもらえるかといった提供者目線で採算を考えていたら負けてしまう。
利用者のためにどんどんやる。
ひたすら便利にすることでユーザーを増やしていく。
そうしたアプローチを当社の上層部も理解してくれるようになってきました」 倉庫スペースの3割をシェアリング ──WareXは当面1千拠点の登録を目指すと発表されています。
田中「既にその目途は立ってきました。
本格運用を始める前の昨年4月頃から営業を始めたのですがその活動を通じて、実際に登録してもらえるかどうかは、物流会社の経営層やデジタル担当ではなく、現場のセンター長にかかっていることが分かってきました。
センター長にサービスを理解してもらい納得してもらう必要があります。
このコロナ禍では対面は難しいので毎週ウェブセミナーを開いています」 ──オンデマンド倉庫は日本の物流をどう変えていくでしょうか。
中村「物流には競争すべき領域と協調すべき領域があると思います。
自分で投資をして内部でしっかり機能を高めていくべき領域と、外部のリソースを使ってアウトソーシングした方がいい領域がある。
固定費と変動費の世界といってもいい。
その線引きが変わってくる。
倉庫事業については3割くらいは協調領域だとカールは言っています」 ──倉庫スペースの3割はシェアリングすべきだということですか。
田中「そうです。
そのためにWareXを国内の営業倉庫がかなりの割合で登録されているというレベルまで普及させたい。
いざスペースが空いてから登録に動いても会社の了承などに時間がかかり時機を逸してしまうので、すぐには使わなくても、登録は無料なので登録だけは済ませておく。
必要になったら使う。
そうやって柔軟な戦略を組むための選択肢を準備しておく」 「登録数が増えてくればスペースを探している人も『まずはWareXを見てみよう』となる。
オープンな仕組みをみんなで共同利用することで協調領域が広がっていきます。
その結果、再寄託などに追われているセンター長の業務負荷は大幅に軽減されます。
あちこちに電話やメールをしていた仕事が自動化されて、紙ベースの作業指示もデジタル化される。
指示書が到着してないので作業を始められないといったこともなくなる。
それでどれほどセンター長の仕事が楽になるのか、一度、使ってもらえば分かるはずです」
『倉庫が空いた』『溢れた』と近隣のセンター長とやりとりして何とか都合をつけるというドタバタを散々経験して、これを何とかできないものかという問題意識を持つようになりました。
その後、2017年に出向から戻って現職に就いたのをきっかけにその事業化に動きました」 「われわれ物流開発部は新規事業開発を役割としています。
そのネタ探しのために米国を中心に海外にスタッフを派遣して、物流関連のテクノロジーやスタートアップの動向を広く調べています。
そこから生まれた事業が(物流ロボット導入支援サービス)『Roboware(ロボウェア)』であり、また『WareX(ウェアエックス)』でした」 三菱商事 物流開発部 中村 遼太郎 マネージャー「私は2017年に北米三菱商事が米シリコンバレーに置いている『M─Lab』という組織に長期出張で派遣されました。
三菱商事の社内だけでなく、いわゆる三菱系企業、さらには三菱グループ外の日本企業のスタッフがそこに派遣されて、シェアオフィスのような環境で情報を共有しながら、現地のスタートアップやさまざまな組織との協業や投資などを検討するための組織です」 「そこに籍を置いて商社とは縁の深い海上輸送やエアフォワーディングはもちろん、国内輸送、倉庫、ラストワンマイルまで、延べ300社近くのスタートアップをヒアリングして回りました。
そこで目を付けたのがFLEXE(フレックス)でした。
その優位性を確認し、共同創業者でCEOのカール(Karl Siebrecht)にわれわれの問題意識や日本の物流の課題をぶつけたところ、すぐに意気投合して出資と提携を受け入れてもらうことになりました」 ──フレックスは当時から既に知られた存在だったのでしょうか。
中村「『倉庫版Airbnb』あるいは『倉庫番AWS(アマゾンウェブサービス)』としてその存在は知られるようになってきてはいましたが、まだ『シリーズA』(製品化して間もない初期のステージ)と呼ばれる段階でした。
『クラウド型倉庫』や『WaaS(ウェアハウジング・アズ・ア・サービス)』など説明の仕方も二転三転していました。
『オンデマンドウェアハウジング』という表現に落ち着いたのは、ごく最近のことです」 田中「それでも当時既にフレックスは米国の大手チェーンストアと契約を結んでいました。
米国全土を翌々日配送圏としてカバーするには、どこに何カ所の倉庫が必要かといった視点から取り組みを説明していてとても新鮮に感じました。
倉庫シェアリングのコンセプトも魅力的でした」 「カールも含めてアメリカの物流関連のスタートアップの創業者は、多くがテクノロジー系の素養を持っていて物流業界出身ではありません。
外から物流業界を見て、そこに事業機会を感じて入ってきている。
物流業界の中からは発想の転換や新しい知恵は生まれにくい。
イノベーションは外からやってくるのだなと感じたことを覚えています」 ──フレックスの仕組みを日本市場に持ち込むにあたり、そのまま使う部分とローカライズする部分はどう切り分けましたか。
中村「当初は向こうの仕組みをほとんどそのまま日本に持ち込むつもりでした。
しかし、倉庫業やBtoBのビジネスはその国の事業法や商慣習に大きく影響を受けます。
アメリカには日本の倉庫業法に当たるものがなく、州によって簡単な運用の決まりがあるだけ。
保険の規定も緩く、自家倉庫でも営業倉庫として使える。
そうした違いに直面して日本版に落とし込んできましたが、今もまだ走りながら考えているところです」 「それでもフレックスの基本的なビジネスモデルはそのまま踏襲しています。
彼らはマッチングという言葉を使いません。
賃貸を仲介するのではなく、ユーザーとサービスレベルアグリーメントを結び、遊休スペースを使ってサービスを提供する。
日本の倉庫業法でいえば倉庫寄託契約です。
そのコンセプトをWareXも採り入れています」 「もうひとつがマーケティングです。
現在のフレックスはパレット、ケース、ピースの全ての荷姿に対応しています。
ソリューションは『在庫オーバーフロー』『リテール物流』『ECフルフィルメント』の三つ。
そのうち在庫オーバーフローは倉庫から溢れた在庫をパレット単位で外部に逃がす。
リテール物流は卸向けでケース商品を仕分けて納品する」 ──むしろフレックスはアマゾンに出店する中小EC事業者向けのサービスという認識でした。
中村「もともとはパレットからスタートしています。
荷姿が標準化されているのでサービスを標準化しやすい。
その後からケース、ピースと進めていった。
われわれもまずはパレットから入って対象を広げていくというシナリオで進めています」 ──『マッチングではなくソリューション』とは? 中村「フレックスは今、全米1500以上の倉庫をネットワーク化していますが、それを一つの巨大な仮想倉庫と見立てています。
AWSと同様のクラウド型で、どこにでも保管できるということを利用者に対する付加価値と位置付けています。
だからオンデマンド倉庫なんです。
実際にマッチングはしていてもそれは利用者の価値とは関係ない」 田中「徹底的に利用者目線で利便性を高めていくというのは、彼らから学んだことの一つです。
機能開発にしても、それによっていくら追加料金がもらえるかといった提供者目線で採算を考えていたら負けてしまう。
利用者のためにどんどんやる。
ひたすら便利にすることでユーザーを増やしていく。
そうしたアプローチを当社の上層部も理解してくれるようになってきました」 倉庫スペースの3割をシェアリング ──WareXは当面1千拠点の登録を目指すと発表されています。
田中「既にその目途は立ってきました。
本格運用を始める前の昨年4月頃から営業を始めたのですがその活動を通じて、実際に登録してもらえるかどうかは、物流会社の経営層やデジタル担当ではなく、現場のセンター長にかかっていることが分かってきました。
センター長にサービスを理解してもらい納得してもらう必要があります。
このコロナ禍では対面は難しいので毎週ウェブセミナーを開いています」 ──オンデマンド倉庫は日本の物流をどう変えていくでしょうか。
中村「物流には競争すべき領域と協調すべき領域があると思います。
自分で投資をして内部でしっかり機能を高めていくべき領域と、外部のリソースを使ってアウトソーシングした方がいい領域がある。
固定費と変動費の世界といってもいい。
その線引きが変わってくる。
倉庫事業については3割くらいは協調領域だとカールは言っています」 ──倉庫スペースの3割はシェアリングすべきだということですか。
田中「そうです。
そのためにWareXを国内の営業倉庫がかなりの割合で登録されているというレベルまで普及させたい。
いざスペースが空いてから登録に動いても会社の了承などに時間がかかり時機を逸してしまうので、すぐには使わなくても、登録は無料なので登録だけは済ませておく。
必要になったら使う。
そうやって柔軟な戦略を組むための選択肢を準備しておく」 「登録数が増えてくればスペースを探している人も『まずはWareXを見てみよう』となる。
オープンな仕組みをみんなで共同利用することで協調領域が広がっていきます。
その結果、再寄託などに追われているセンター長の業務負荷は大幅に軽減されます。
あちこちに電話やメールをしていた仕事が自動化されて、紙ベースの作業指示もデジタル化される。
指示書が到着してないので作業を始められないといったこともなくなる。
それでどれほどセンター長の仕事が楽になるのか、一度、使ってもらえば分かるはずです」
