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2021年3月号
特集

海外論文 物流業界におけるコラボレーション戦略

イントロダクション  物流業におけるコラボレーションのコンセプトは次のように定義される。
「道路上の大型トラックの台数を削減して温室効果ガスの排出量を減らすことを目的とした、オペレーター同士がより緊密に協働するための共同イニシアティブ。
そこには空荷を削減すること、そして複数のオペレーターの貨物を1台の車両で運搬できるようなルートと行程を策定することが含まれる」  英運輸省のデータによると、英国における空荷の割合は2006年に27%だったものが、16年には30%に増加している。
道路交通ネットワーク上で空荷のトラックが増えることは、交通渋滞・生産性・環境にマイナスの影響を及ぼす。
効率的で持続可能な交通システムを維持するためには、物流業者同士のコラボレーションが欠かせない。
確固としたアライアンスがなければ、業務計画の改善、空荷で走るトラックの削減、積載率の向上、環境改善などを実現することはできない。
 これがサプライチェーンにおけるコラボレーションということであれば、なにも昨日今日始まったものではなく、これまでもサプライチェーンのパートナー間で広く実施されてきた。
多くはサプライヤーと小売り、あるいはサプライヤーとメーカーの間で行われ、その分野も需要計画・調達・マーチャンダイジング・流通の効率化など多岐にわたる。
 ところがサプライチェーンの中核たる肝心の物流業界においては、市場競争が激しく利益率も低いことから、こうしたコラボレーションはあまり一般的になっていない状況にある。
以下、本稿では物流業界のコラボレーションに関してそのネットワーク、形態、プロセス、テクノロジー、戦略、そして普及を阻害している要因とそれへの対処方法について検討していく。
コラボレーションとネットワーク  情報やアセットの共有、あるいは効率的な業務分担のネットワークといったコラボレーションを基本とするビジネスモデルには、コスト削減や顧客サービスの向上だけでなく、それぞれの企業が単独では得ることのできない相乗効果をも期待することができる。
 情報通信技術の進歩、そしてマーケットおよび社会的ニーズに後押しされるかたちで、これまでさまざまな形態のコラボレーティブネットワークが登場してきた。
コラボレーティブネットワークは「さまざまな形態(組織、人間、機械など)の自律的なネットワークであり、地理的な広がりを持ち、環境・文化・社会関係資本・目的などの面で多様性を持つが、共通もしくは両立可能な目標の達成に向けてコラボレーションをしながら共に価値を生み出していくもので、相互のやり取りはコンピューターネットワークに支えられる」ものとして定義される。
コラボレーションの形態 ▼コラボレーティブネットワークの物理的構造  運送業のコラボレーティブネットワークの物理的構造には、このセクター特有の三つの形態がある(図1参照)。
1.水平コラボレーション  物流ネットワークにおいて同じ階層に属して競合する複数の独立組織同士が、情報やリソースを共有しながら共同で輸送などの業務を遂行する。
水平コラボレーション輸送は主に以下の二つのカテゴリーに分けられる。
 (a)長距離輸送では通常、一つの発地から一つの着地へフルトラック輸送(FTL)で荷物が運ばれる。
ここでのポイントは、同じ路線を走っているが帰り便は自社とは逆方向の企業を見つけることである。
 (b)都市部では、小口トラック輸送(LTL)で比較的短距離の配送を行う。
この文脈における共同配送の狙いは、オペレーションを調整することで全体として必要な車両の数を減らすことである。
2.垂直コラボレーション  荷受人、荷主、物流業者など、物流ネットワーク中の異なる階層に属する複数の企業が、ある特定のサプライチェーンが対象とする一連のエンドユーザー向けに、責務・リソース・データ・情報などを共有する。
 垂直コラボレーション輸送では通常、輸送ルートは複数の階層に分けられる。
そして各段階の提携パートナーが一つもしくは複数の階層を受け持つ。
効率的な配送を実現するには、パートナー同士の連携と協力が鍵となる。
3.ハイブリッドコラボレーション  水平と垂直の両方向でケイパビリティを組み合わせることで、より一層のフレキシビリティが実現する。
▼コラボレーティブネットワークの制御  コラボレーションの形態は、ネットワークの各メンバーを制御するシステムという観点から大きく二つに分けられる。
一つがヒエラルキー型制御(集中制御)、いまひとつが非ヒエラルキー型制御(分散制御)である。
コラボレーションのプロセス  複数の企業間でコラボレーションが合意されれば、次はコラボレーションプロセスを検討することになる。
プロセスには①各種の取り決め、②情報交換のプランニング、③交渉および例外処理の前提となるワークモデルの設定、④実行、⑤業績評価、以上五つのフェーズがある。
 一連のプロセスで一番問題となるのは、得られた利益をどのようにして公平に配分するかについてであり、これはコラボレーションの安定に欠くことのできない要素である。
その他の課題としては、プロセスがいったん決まった後でも各メンバーにフィードバックする必要があることや、必要に応じてプランを見直す必要があることなどがある。
このプロセスを表したものが図2である。
 取り決めとは、コラボレーションをどのように進めていくかということについて、メンバー全員の正式な合意を取りつけることを意味する。
そこには得られる利益、コラボレーションする製品・サービス、コラボレーションの範囲、制御メカニズム、交換する情報の種類、関係者の範囲、業績評価、報酬システム、紛争解決メカニズムなどが含まれる。
また、メンバーそれぞれの思惑はさておいてコラボレーションの全体としての統一目標を定め、何よりそれを優先することが求められる。
 情報交換のプランニングに当たっては、どのような情報およびアセットをどのような頻度でシェアするかについて決めておく。
またメンバー同士が交渉ごとに臨む際の前提条件として、責任分担・リスクの率直な開示・インセンティブ・契約上の義務などを含む明示的なワークモデルの存在も欠かせない。
 そうして実行の段階に至れば、今度はその実績を評価し、その評価に応じて合意した報酬システムを適用する。
最後にプランの有効性をみんなで評価し、必要があれば改善提案を行う。
物流業者のコラボレーション コラボレーションのステージ  物流業者同士のコラボレーションには、さまざまなステージとレベルがある。
大抵の場合は、もともとお互いを知っている間柄であった企業同士が、相手側のマインドセットを学びながら共同作業のやり方を模索していくという過程をたどる。
物流業におけるコラボレーションのステージは以下のようなものである。
・事務処理コラボレーション  ロジスティクスと輸配送の現場では、事務処理方法および書類の統一性が求められる。
事務処理や情報通信システムを一本化することが第一ステージとなる。
・情報コラボレーション  配送計画・数量・場所・日時といった情報を互いに交換し合う段階。
ここで留意すべきことは、機密保持と競争原理がコラボレーションを阻害する可能を持つことである。
情報はシェアリングの核心であり、あらゆるコラボレーションは情報が無ければ成立し得ない。
・意思決定コラボレーション  計画と経営上の意思決定に関するさまざまなコラボレーションのことを指す。
これらの意思決定は、リソースが必要とされる期間とコミットメントのレベルに応じて、戦略・戦術・運営という三つの計画レベルに分類することができる。
①戦略計画  年単位の射程を持つことが多い長期的計画であり、戦略を支える財政・人材・資本など多大なリソースが投入される。
このレベルでは、戦略的なパートナーシップモデルとネットワークモデルを定め、コラボレーションプロセス全体を構築するための下準備的な取り決めを結ぶ。
②戦術計画  策定した戦略に沿ったかたちで、組織の全体的な計画および目標を遂行するのが戦術計画である。
戦略よりも短い期間(中期的)を対象とした1カ月〜数カ月単位の計画であり、リソースの投入もそれに応じて相対的に低いレベルにとどまる。
この段階で用いられる意思決定モデルは、オーダー予測モデル、出荷予測モデル、配車計画モデルである。
また戦術計画の一環として、メンバー間でどのようにコストと利益を分け合うかについても決めておく必要がある。
③運営計画  期間的には1日〜数週間単位(短期的)の現場レベルの日常業務に関する計画であり、必要なリソースもその分少ない。
物流業の運営計画における意思決定は、顧客の要請に日々応えていく一連のプロセスをカバーするものである。
このレベルの意思決定はスケジューリングモデル、ルートモデル、注文処理モデルの三つである。
 企業間の信頼関係がいったん醸成されれば、意思決定コラボレーションのステージが始動する。
全てのメンバーの参加と公平性を担保するため、戦略レベルの意思決定には分散制御の原則を適用することが望ましい。
一方、運営計画レベルでの公平性を担保するためには、中央の司令塔による集中制御が求められる。
コラボレーション戦略  輸配送のコラボレーション戦略で最も一般的なのは、キャパシティの共有である。
この方法は輸配送の局面だけでなく倉庫作業や在庫、その他の業務にも適用できる。
コラボレーティブな意思決定と情報共有がこうした戦略を支える。
こうしたコラボレーションは少数のメンバーによる協力体制というかたちをとり、正式な契約書を取り交わさないその場限りのパートナーシップであるのが普通である。
 物流企業同士のシェアリングは簡単なことではないが、地理的に分散している場合は特に困難を伴う。
こうしたコラボレーティブなオペレーションの全体を管理するのは、配車係にとってはネットワークデザインの問題となる。
彼らはコラボレーティブネットワークの全体にわたって経路や荷物の積み降ろしの采配をしなければならないからである。
 とりわけ中小の物流企業にとってのコラボレーション戦略は、主に次のような課題に取り組むことを念頭に置くべきである。
⑴荷主の要求水準が年々上がって、地理的にも拡散していること、⑵インターネットおよびICTの影響で競争が激化し、新たなマーケットが創出されていること、⑶中小企業が大企業同様の「規模の経済」を追求しており、そのことが彼らの競争力を強化していること。
 次にその戦略を六つの局面に分けて具体的に見ていく。
1.配送計画  配送計画は、コラボレーティブネットワークを統合してサプライチェーンを効率化することを可能にする。
ロジスティクスに関わる企業は、サプライチェーンオペレーションの一環として何らかの配送計画を立てる。
メンバー同士のコラボレーションこそがサプライチェーンの効率性を実現する唯一の方法である。
 例えばサプライヤーとカスタマーによる垂直コラボレーションは、注文サイクルと配送スケジュールの最適化につながる可能性がある。
水平コラボレーションの場合には、一定の配送ルートで物流業者同士が連携すれば、キャパシティの有効活用と共に空荷の低減も期待できる。
ところが実際には水平コラボレーションの例はそれほど多くない。
その理由はおそらく、コラボレーションと競合が両立するビジネスモデルの不在であろう。
2.帰り荷  この戦略の目的は、配送先からの帰り便にも荷物を確保することで空荷を減らすことである。
その延長線上にあるのが、空荷のトラックが“途中”で荷物をピックアップする“フォワード輸送”であり、こちらは空荷で走る距離をトータルで少しでも減らすことが狙いである。
 この種のコラボレーションは、物流ネットワークの同一の階層に属するメンバー間でのみ成立し得る。
通常、両者は配送ルートと顧客が共通するかあるいは似通っている競合関係にある。
従ってこの戦略は水平コラボレーションの一種といえる。
3.求車求貨システム  求車求貨システムとは、貨物と車両キャパシティをマッチングすることを目的としたオンラインプラットフォームのことをいう。
そこではデータベース上で運搬待ち貨物の検索や余剰車両キャパシティの告知、あるいは輸送条件を提示して入札を募ることなどが可能である。
定額課金制が基本だが、広告出稿や検索には若干の別料金が必要な場合が多い。
この戦略は多彩なロジスティクスパートナーが情報を共有することになるため、ハイブリッド型のコラボレーションに分類される。
4.クロスドックセンター  クロスドックセンターとは配送先に比較的近い場所に位置し、そこから共同配送をする物流施設である。
ここでいったん荷を降ろし、それらを最終目的地に向かうしかるべき車両(環境に優しいクリーンな車両が使われる場合もある)に積み合わせる。
こうした施設があることで、企業の垣根を越えて荷物を混載したり、積載率が高くなる適切な車両を利用することが可能になる。
この戦略もハイブリッド型のコラボレーションである。
5.納品計画  納品計画の眼目は複数の施設(比較的広域に及ぶ場合もある)へ納品する運搬車両の台数を減らすことにあり、調達におけるベストプラクティスの原則に基づく。
複数の施設(潜在的にはパートナーシップで結ばれた多種多様な企業も含む)からの全ての注文を1社が代表して取りまとめて一括納入することで納入車両の総数を削減する。
 通常は一つの企業がリードサプライヤーとしての役割を果たし、他のサプライヤーは自社製品をこのリーダーを通じて共同で納品する。
この方法は例えば中心地のショッピングセンター、オフィスや公共施設(地方自治体や教育施設など)が集積する地域などに特に向いている。
この戦略は垂直コラボレーションである。
6.車両やデポの共有による最適化  この戦略は要するに、それぞれが抱えている配送業務を最適化するように、2台以上の車両などのリソースを共有することを意味する。
帰り荷やクロスドックセンターと比べ、こうしたアセットの共有は実際にはあまり一般的ではない。
費用の問題というよりもむしろ想像力やビジネスモデル、あるいは適切なテクノロジーの不足が普及の足かせとなっている。
しかし、コスト削減効果や恩恵は極めて大きい。
どのような配送需要に対しても共有車両のどれかが利用できるように、共有資産をあたかも単独のオペレーターが所有しているかのごとく取り扱うというアイデアである。
この戦略は水平コラボレーションである。
コラボレーションの阻害要因とその対策  物流業界のコラボレーションはこれまで見てきたように、荷主・物流業者・社会のいずれにとっても有益であるのは自明である。
ところが現実には、この業界のコラボレーティブネットワークはそれほど一般的にはなっていない。
その理由を特定して理解しておく必要がある。
コラボレーション促進の障害となっているものをしっかりと見定め、それらを克服する戦略を立てなければならない。
そこで最後に数々の阻害要因とそれらへの対策を見ていくことにしよう。
阻害要因1 運送契約を結んだ当事者とは異なる業者に対して荷主側が抱く懸念 対策:聞き慣れない業者に対して荷主側が抱く懸念は、独立した第三者の活用と車両に社名を明記しないことで払拭できる。
自社の荷物をいつもとは違う物流業者が運ぶことを荷主に容認させるには、何らかのインセンティブを含む取り決めを結んでコラボレーションの利点をアピールし、荷主をアライアンスの一員として取り込むことが有効である。
阻害要因2 中小零細企業の情報獲得能力と通信技術(ICT)が限られていること 対策:中小が集まってICTのコストを分担して規模の経済が働くようなアライアンスを組む。
阻害要因3 自社のデータが競合相手に利用されてしまうことに対する懸念 対策:プライバシー問題をクリアするには、センシティブな情報とデータの蓄積をフィルタリングして匿名化し、残りのデータだけを公開するという方法が考えられる。
第三者的立場の中立の組織が、セキュリティー対策を施した上でデータを保管し、経路とスケジュールを最適化する。
そうすれば各パートナーがアクセスできるのは自身のデータと、全体最適の見地から導き出された日々の業務スケジュールのみとなる。
阻害要因4 法律による規制。
独占禁止法など、データ共有を制限する法律の存在 対策:ヨーロッパ連合(EU)は第三者機関の活用を推奨している。
各ステークホルダーは自分たちのデータの保管と分析を第三者機関に一任し、数量・配送先住所・コスト・製品特性などの営業秘密などの漏洩を防止する。
阻害要因5 人材不足(特に中小零細企業) 対策:司令塔の決定に従うという特別な取り決めの下、全体の最適化と配送計画の意思決定権を中心となる組織に一任し、キャパシティの効率性・コスト削減・社会的および環境的利益を追求する。
このやり方をとれば各物流企業が人材を増員する必要は生じない。
阻害要因6 データやアセットの共有と業務の完遂に強大な調整力が必要であること 対策:集中制御型のコラボレーションスキームにおいて、中央指令部たるコーディネーターが全パートナーを制御する責任を担う一方、パートナー側は中央からの指令を順守することでコラボレーションスキームを潤滑に機能させる。
阻害要因7 正確なデータの欠如 対策:一定の形式にのっとった正確なデータを収集するために、データ構造の要件を定義しておく。
データ収集過程での機密保持については、コラボレーションのパートナーと中央の指令部との間で取り決めを結ぶ。
阻害要因8 信頼関係と共通目標の欠如 対策:守秘義務方針、サービス・レベル・アグリーメント(SLA)、不履行や違反の罰則規定、支払条件、指揮命令系統、非常時の対応、契約期間などについて定義し、パートナー間で明確な取り決めをしておく。
阻害要因9 利益分配メカニズムにおける公平性の欠如 対策:利益分配方法の選択肢、そして各選択肢のコストベネフィット分析を各パートナーに提示し、彼らに選択の余地を与える。
阻害要因10 コラボレーションの促進に中立的な第三者が要請されること 対策:パートナー同士を結びつけるには媒介者が必要だが、第三者を立てることに消極的なパートナーもいることが考えられる。
しかしそれは各パートナーと第三者の間で契約を結ぶことで克服できる。
阻害要因11 往路と復路のうち一方の荷物が多くもう一方には少ないなどの輸送量の地域的な偏り 対策:来た道をそのまま逆に帰るのではなく、帰り荷を積むために別の場所まで迂回する。
走行距離は全体として増えるが、空荷の距離は減る。
阻害要因12 積荷の種類によるシェア能力の制限 対策:取扱製品・設備・車両共に類似する企業同士をマッチングする。
阻害要因13 輸送業務における責任の所在 対策:コラボレーションが責任の所在を明確に定めた取り決めや手順通りに遂行されれば、こうした懸念はシェアリングの障害とはならない。
阻害要因14 コラボレーション・プロジェクトへ参加するメリットの認識不足 対策:ステークホルダーの積極的な関与は必要不可欠の要素である。
パートナー候補に対しては、類似のコラボレーティブ・プロジェクトでの実際のメリットと、可能であれば現に参加を要請しているプロジェクトで見込まれるメリットを、交渉の初期段階で明示することが求められる。
阻害要因15 コラボレーションのプロセスにおいて利己的な戦略的行動が頻発するリスク 対策:戦略的行動を抑制する効果を持つ適切な利益分配メカニズムが必要とされる。
(翻訳構成 大矢英樹)

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