2021年1月号
特集
特集
わが国卸売業界の構造変化と勢力地図
食料品卸
──総合商社による系列化が進む
食品卸業界は総合商社による系列化とサプライチェーンの階層の短縮化が進んでいる。
そしてフルライン化は現在、低温品の取り扱い拡大が焦点となっている。
物流政策においては、社会的にも問題視されるようになったトラックドライバーの労働時間短縮に向け、製造業者との取引における着荷側荷主として協力する姿勢を見せている。
上位集中とフルライン化が進行 食料品卸売業(日本標準産業分類でいう「飲食料品卸売業」)の年間商品販売額は、1991年(調査実施年)をピークに減少傾向が続いている。
他の卸売業者への販売額の減少が大きな要因である。
小売業販売額に対する卸売業販売額の比率「W/R比率」は、流通経路の長さを示す指標の一つである。
筆者がまとめた「飲食料品関連」のW/R比率は、79年の2・59倍をピークに低下傾向にあり、2002年以降は2倍を下回っている(図表1)。
小売業者が卸売業者を介さず、製造業者などから直接仕入れるようになってきたことが一因と考えられる。
卸売業者間の取引回数を示す「W/W比率」も低下している。
「飲食料品卸売業」のW/W比率は1979年に2・08倍まで上昇した後、低下傾向に転じて、88年以降は2倍を下回る水準で推移している(図表2)。
とりわけ「食料・飲料卸売業」は近年では1・7倍前後まで低下している。
これも2次卸など他の卸売業者への販売の比重が下がり、小売業者などに対する直接販売が高まっているためと考えられる。
つまり流通経路が短縮しているのである。
それに伴い、卸売業者の上位集中が進展している。
図表3、図表4は、卸売業者の規模別シェアの推移を示している。
年間商品販売額が最も多い「1千億円以上」は、91年時点では0・2%の企業数で総販売額の25%を占めていた。
それが2007年には同じ0・2%の企業数で販売額の41%を占めるまで上昇した。
1990年代以降、大規模小売業者の広域化やそれに伴う品揃えの拡大などに対応するために、大手卸売企業が各地の中堅企業を買収したり、準大手企業同士が合併したりするなどの動きがみられた。
さらに近年、総合商社による系列卸売企業同士の合併・経営統合が本格化している。
上位集中が加速するとともに、販売網の広域化、取り扱い商品の総合化(フルライン化)が進展している。
薄利多売の収益構造と資金繰り 食料品卸最大手の三菱食品の2020年3月期の売上高は2兆6546億円に達している。
2位の日本アクセスも2兆円を超えている。
続く国分グループ本社も19年12月期に1・8兆円となり2兆円に迫っている。
しかし、売上規模こそ大きいが、いずれも収益構造は薄利多売となっている。
主要6社平均の粗利率は6・7%である。
そこから販管費に6・0%分の費用を投じて、営業利益率0・7%(経常利益率も0・7%)が残るという構造である(図表5)。
後述の日用品卸売業と比べて、粗利率、販管費率、営業利益率・経常利益率共に低い。
他方で資金繰りは、日用品卸売業より余裕がある(図表5)。
食料品卸売業の在庫水準(棚卸資産回転日数)は、主要4社平均で9日分の売り上げに相当する量にすぎない。
日用品卸売業に比べて回転が速く、在庫負担が小さい。
仕入債務回転期間は平均64日であり、売上債権回転期間(44日)よりも長い。
つまり支払いが遅くて回収が早い。
9日分の在庫を抱えても、プラス11日分の売り上げに相当する回転差資金が手元に残る。
ただし特定の小売業に対する取引依存度は高まっている。
主要な食料品卸売業者にはそれぞれ売上高比率10%以上を占める特定の小売業者がいる。
三菱食品にとってのローソン、日本アクセスにとってのファミリーマートなどである(図表6)。
これらは同じ総合商社系列の企業同士の取引であり、系列内取引が進展している。
他方で、食料品卸売業者の上位集中化に伴い、製造業者は特定の卸売業者に売り上げの多くを依存するようになってきている(図表7)。
低温品の取り込みが焦点に 日本加工食品卸協会の「加工食品卸売統計調査」によると、食料品卸売業の取扱商品分野は、常温品の売上高構成比がほぼ横這いで推移し、酒類が低下傾向にある中で、低温品の取り扱いが拡大している。
冷蔵品・冷凍品の合計売上高構成比はおよそ10年前には2割程度だった。
それが直近の19年には3割程度まで上昇している。
低温品の市場はほぼ一貫して拡大しており、常温加工食品を中心に取り扱ってきた卸売業者にとっては事業拡大を期待できる商品分野である。
大手食料品卸売業者は自身で新しいチルド・冷凍商品を開発したり、低温DCの新設をはじめ低温物流網を整備したりしている。
食料品卸売業者のフルライン化は近年、低温品の取り扱い拡大という方向で進展していると言える。
食料品卸売業者の主な販売チャネルは、スーパーとコンビニエンスストアである。
いずれの市場もおおむね堅調に推移している。
その一方、一部の卸売業者はドラッグストアの売上高構成比を高めている。
ドラッグストア市場は店舗数の増加を伴って拡大しているが、食品販売額はその伸び以上に増加しており、ドラッグストアの食品販売額構成比は上昇傾向にある(図表8)。
これを受けて食料品卸売業者は、ドラッグストア専用組織の設置や、ドラッグストアに適した商品・カテゴリーの提案、専用物流センターの運営受託などを推進している。
物流に関する近年の動向 食料品卸売業者は、小売業者の大規模化や出店地域の広域化などに合わせるように、DCの大型化、広域化、総合化、専用物流センターの運営受託などを推進し、小売業者を物流面からも支援している。
他方、製造業者に対しては、社会的にも問題視されるようになったトラックドライバーの労働時間短縮に向け、着荷側の荷主として協力する姿勢を見せている。
ドライバーの手待ち時間のうち、接車までの納品待機時間、その後の検品にかかる手待ち時間の短縮にそれぞれ取り組んでいる。
納品待機時間の短縮に向けたツールの一つとして、「トラック予約受付システム」の導入が広がっている。
トラックドライバーや配車係などが、ウェブサイト、SNS、Eメールなどの電子的な方法で納品予定時刻を事前に予約するシステムである。
日本加工食品卸協会において日本初となる業界標準の予約受付システム「N─Torus」が開発され、普及し始めている。
協会に加盟する食料品卸売業数社のDCで18年に試験運用が始まり、19年に完成、加盟社のDCへの導入が広がっている。
政府主導で国土交通省・経済産業省・農林水産省が省庁横断で推進する「ホワイト物流」推進運動に参画する食料品卸売業各社の自主行動宣言にも同システムの導入が表明されている。
他方、検品にかかる手待ち時間の短縮では、検品の省力化、検品レスに向けた取り組みが始まっている。
製造業者などから送信される賞味期限を含むASNを活用して入荷時の検品を省略する。
日本加工食品卸協会においては16年にASNが「日食協標準EDIフォーマット」の新たなデータ種として制定され、17年にはファイネットの商品流通VANサービスのデータ種に採用されたことが、こうした取り組みを後押ししている。
卸売業のデジタル化が始まった 食料品卸売業者は社内にデジタル化を推進する専門組織を設置して、経理などの定型業務にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入したり、発注やDC内の商品・人員配置などの業務にAIを活用したりするなど、新技術を活用したデジタル化に取り組んでいる。
ECの拡大に対しても、自ら大手ECモールに出店してBtoCに乗り出したり、BtoBではネット卸やマーケットプレイスを運営したりするなどの動きが見られる。
その関連で注目されるのは、テクノロジー企業との連携・協業である。
AI企業との連携・協業や、専門的なサービスを展開する企業のデータを活用したリテールサポート(RS)の強化および新規事業開発などの事例が見られる(図表9)。
新たな機能を採り入れてビジネスモデルを変革しようとしている姿勢がうかがえる。
日用品卸 ──PALTACとあらたが寡占 日用品卸業界はPALTACとあらたの大手2社による寡占化が進んでいる。
両社は主要顧客のドラッグストアのニーズに応えるため、買収統合を重ねて事業エリアと規模を拡大するとともに、物流拠点整備とオペレーションの自動化に巨額の投資を継続している。
その動きを食品卸業界と対比しながら解説する。
食品卸業界に先行して再編が進む 食料品卸売業と同様に、日用品卸売業(日本標準産業分類でいう医薬品・化粧品等卸売業のうち医薬品卸売業以外の「化粧品など卸売業」)の構造変化を確認しよう。
「化粧品など卸売業」の年間商品販売額は、1994年(調査実施年)から他の卸売業者への販売額の減少が続くものの、小売業者への販売額の増加などが寄与して、2000年代に入っても増加が見られた。
そのW/W比率は、1985年以降低下傾向にあり、2007年には1・4倍まで低下した(図表10)。
成長するドラッグストアなどの小売業者や産業用使用者などとの直接的な取引が拡大する一方、2次卸など他の卸売業者との取引が縮小するなどして、卸売段階の流通経路が短縮している。
上位集中化を医薬品卸売業を含めた医薬品・化粧品等卸売業で確認すると、2000年代に入って市場全体の販売額が増加傾向にある中でも進展している。
1991年の時点では0・2%の企業数で販売額の18%を占めていた。
それが2007年には0・3%の企業数で販売額の56%を占めるまで集中が進んだ(図表11、図表12)。
食料・飲料卸売業と比べて上位集中化が短期間のうちに進展し、寡占的な状況に近づいている。
うち「化粧品など卸売業」はPALTACとあらたの2社で市場の多くを占める状況である。
ドラッグストアなど大規模小売業者の成長に伴う全国的な商品供給などの要求に対応するため、合併・買収を通じて機能強化や広域化などが進められてきた結果である。
粗利率は高いが資金繰り負担大 ここでは売上規模が大きく総合的な品揃えをもつPALTAC、あらた、CBグループマネジメントの3社に注目する。
PALTACは、15年にマツモトキヨシHDの子会社の伊東秀商事と合併するなどして規模を拡大し、19年3月期には売上高を1兆円の大台に乗せた。
あらたの20年3月期の連結売上高は8千億円弱だが、同社が20年8月に公表した「長期経営ビジョン2030」では2030年に1兆円を目指すことが示された。
またCBグループマネジメントの売上高は、近年1500億円前後を推移している。
日用品卸売業3社合計の損益構造は、粗利率が9・1%で、販管費率7・3%をかけて事業を推進し、営業利益率1・8%・経常利益率1・9%を残すという構造である(図表13)。
食料品卸売業に比べて、粗利率は高いが販管費率も高い。
そして資金繰りは、食料品卸売業に比べて負担が大きい(図表13)。
在庫水準(棚卸資産回転日数)は、日用品卸売業主要3社平均が17・9日分である。
食料品卸売業に比べて回転が遅く、在庫負担が大きい。
しかも、仕入債務回転期間は平均50日であり、売上債権回転期間(55日)よりも短い。
つまり支払いが早くて回収が遅い。
回転差資金はマイナスであり、食料品卸売業とは対照的である。
ドラッグストアと共に成長 日用品卸売業にも取引依存度が高い関係は見られる。
小売業者との取引では、あらたにとってのツルハHD、CBグループマネジメントにとってのアマゾンジャパンなど、特定の小売業者が売上高の10%以上を占めている(図表14)。
ただし、PALTACとあらたに限れば、事業規模の拡大に伴い、特定の小売業者への依存度は薄れてきている。
日用品卸売業者の主要販売先はドラッグストアである。
PALTACとあらたの販売先業態別売上高構成比を見ると、ドラッグストアが最も高く、PALTACが63%、あらたが49%であり、過去から上昇傾向にある(図表16)。
ドラッグストアの市場は、日用品卸売業者に関係の深い日用品(調剤、食品などを除く)に限れば堅調に拡大している(図表17)。
つまり日用品卸売業者は、ドラッグストアとともに成長しており、ドラッグストア向けDCの出荷能力の増強や生産性の向上などに力点を置いている。
他方、日用品卸売業者に対する製造業者の売上高比率は食料品業界よりも高い。
PALTACとあらたの2社に対する売り上げが50%超を占める製造業者も見られる(図表15)。
PALTACとあらたによる寡占化の表れである。
物流に関する近年の動向 物流に関する近年の動向を、PALTACとあらたに注目して概観すると、DCの全国的な整備とともに、首都圏など市場の拡大する地域における出荷能力向上を推進していることがうかがえる。
PALTACは、これまで全国にRDC(Regional Distribution Center、大型物流センター)を開設するとともに、特定小売業者の専用物流をRDCで運用するハイブリッド化や、RDCを支援するFDC(Front Distribution Center)の設置など、物流機能の統合と分担を推進して効率化を図ってきた。
近年では、「AIやロボット等の最新テクノロジーと当社が持つ物流ノウハウを融合させた、独自開発の次世代型物流システム」(同社ニュースリリース2019年10月10日)である「SPAID(Super Productivity Advanced Innovative Distribution)」を開発し、DC内のピースピッキングなどの生産性向上と、重量物の荷役などにかかる作業負担軽減などを実現している。
「SPAID」は、現在、18年稼働の「RDC新潟」と19年稼働の「RDC埼玉」で展開されている。
RDC埼玉は、同社最大規模のDCであり、近隣の既存DCからの移管などを通じて、最大市場の首都圏における最適な物流体制の構築を目指している。
他方、あらたも、全国のDCを集約して大型化の方向に整備するとともに、首都圏におけるDCの新設・増床などを通じて出荷能力を増強してきた。
将来を見据えた「九州物流構想」「首都圏物流構想」を掲げて、18年には庫内業務のIT化・ロボティクスを推進する「九州南センター」を開設した。
続いて「首都圏物流センター(仮称)」を開設予定である。
トラックドライバー不足は、食料品業界と同様に日用品業界でも問題視されており、予約受付システムの導入が進んでいる。
PALTACは自社開発のシステムを19年11月稼働のRDC埼玉で本格的に導入した。
あらたはTSUNAGUTEの「telesa-reserve」を19年4月から「三郷デポ」に導入している。
今後は両社ともシステムを全国展開する予定である。
また「telesa-reserve」は中央物産、ハリマ共和物産も導入している。
食料品卸売業と共通するのは、卸売業者がトラックドライバーの労働時間の短縮による生産性向上に向け、着荷側の荷主として協力の姿勢を見せているところである。
異なるのは、食料品卸売業では業界団体の日本加工食品卸協会が開発した業界標準のシステムを同協会に加盟する各卸売業者が導入しているのに対し、日用品卸売業では大手を中心に個別に導入しているところである。
当該システムの仕様などの詳細については分からないが、日用品卸売業では業界の寡占化を一つの要因とした物流の専用化が垣間見られる。
積極的な先行投資で物流機能を増強 ドライバー不足と並んでDC内の作業者不足も課題となっている。
対応策の一つは、DC内における荷役の省力化・機械化である。
このうち、AIとロボットを活用した荷役の自動化を先進事例として以下に取り上げたい。
PALTACは、自社開発のAIケースピッキングロボットを18年稼働のRDC新潟に導入し、パレット自動倉庫からの出庫作業を自動化した。
当該ロボットが画像認識カメラでさまざまなケースサイズを認識し、定位置ではなく任意の位置から任意の位置に搬送する。
続く19年稼働のRDC埼玉では、外部企業の自動化技術を導入して、ピースピッキング、ケースピッキング、ケース積付作業の自動化を実現した。
ピースピッキングにはRightHand Roboticsの「RightPick」、ケースピッキングの自動化にはKyoto Robotics、ケース積付作業の自動化にはMUJINのロボットを導入した。
これらは荷役作業の機械化だけではなく、AIの活用によって商品の形状や重量などの事前登録を不要とする「マスターレス」や、ロボットの把持・積付などに関する動作の設定を必要としない「ティーチレス」などの自動化を実現している。
あらたも、AIデパレタイズロボットを18年稼働の九州南センターに導入して、パレット自動倉庫からの出庫作業を自動化した。
当該ロボットは、本体が安川電機、認識技術にKinema Systemsの「Kinema Pick」を採用しIHIと共同開発したものである。
このように、大手日用品卸売業2社は、DCの新設や新しいシステム・物流機器の導入などに積極的に投資している。
PALTACの設備投資額は、直近5年間で年平均130億円(売上高比平均1・4%)に上っている。
先行投資型でDC建設などを行っている。
あらたも、従来の設備投資額は年平均50億円弱(同0・6%)であったが、「中期経営計画2023」では、今後3年間でこれまでの2倍に相当する計300億円の投資を予定している。
なお、設備投資額の全てが物流に関するものではないが、多くを占める。
このように大手日用品卸売業者は、食料品卸売業者と同様、新しい技術を他企業との連携・協業を通じて取り入れながら、将来に必要とされる事業規模や物流の革新などに向けて積極的に投資している。
参考文献 木島豊希(2020a)「卸売業の基本」坪井信也・河田賢一編著『流通と小売経営』創成社、pp.42-66。
木島豊希(2020b)『卸売流通動向講座―日用品卸編―』流通経済研究所。
木島豊希(2020c)「食料品・日用品卸売業の物流センター改革」『流通ネットワーキング』日本工業出版、第321号、pp.10-13。
そしてフルライン化は現在、低温品の取り扱い拡大が焦点となっている。
物流政策においては、社会的にも問題視されるようになったトラックドライバーの労働時間短縮に向け、製造業者との取引における着荷側荷主として協力する姿勢を見せている。
上位集中とフルライン化が進行 食料品卸売業(日本標準産業分類でいう「飲食料品卸売業」)の年間商品販売額は、1991年(調査実施年)をピークに減少傾向が続いている。
他の卸売業者への販売額の減少が大きな要因である。
小売業販売額に対する卸売業販売額の比率「W/R比率」は、流通経路の長さを示す指標の一つである。
筆者がまとめた「飲食料品関連」のW/R比率は、79年の2・59倍をピークに低下傾向にあり、2002年以降は2倍を下回っている(図表1)。
小売業者が卸売業者を介さず、製造業者などから直接仕入れるようになってきたことが一因と考えられる。
卸売業者間の取引回数を示す「W/W比率」も低下している。
「飲食料品卸売業」のW/W比率は1979年に2・08倍まで上昇した後、低下傾向に転じて、88年以降は2倍を下回る水準で推移している(図表2)。
とりわけ「食料・飲料卸売業」は近年では1・7倍前後まで低下している。
これも2次卸など他の卸売業者への販売の比重が下がり、小売業者などに対する直接販売が高まっているためと考えられる。
つまり流通経路が短縮しているのである。
それに伴い、卸売業者の上位集中が進展している。
図表3、図表4は、卸売業者の規模別シェアの推移を示している。
年間商品販売額が最も多い「1千億円以上」は、91年時点では0・2%の企業数で総販売額の25%を占めていた。
それが2007年には同じ0・2%の企業数で販売額の41%を占めるまで上昇した。
1990年代以降、大規模小売業者の広域化やそれに伴う品揃えの拡大などに対応するために、大手卸売企業が各地の中堅企業を買収したり、準大手企業同士が合併したりするなどの動きがみられた。
さらに近年、総合商社による系列卸売企業同士の合併・経営統合が本格化している。
上位集中が加速するとともに、販売網の広域化、取り扱い商品の総合化(フルライン化)が進展している。
薄利多売の収益構造と資金繰り 食料品卸最大手の三菱食品の2020年3月期の売上高は2兆6546億円に達している。
2位の日本アクセスも2兆円を超えている。
続く国分グループ本社も19年12月期に1・8兆円となり2兆円に迫っている。
しかし、売上規模こそ大きいが、いずれも収益構造は薄利多売となっている。
主要6社平均の粗利率は6・7%である。
そこから販管費に6・0%分の費用を投じて、営業利益率0・7%(経常利益率も0・7%)が残るという構造である(図表5)。
後述の日用品卸売業と比べて、粗利率、販管費率、営業利益率・経常利益率共に低い。
他方で資金繰りは、日用品卸売業より余裕がある(図表5)。
食料品卸売業の在庫水準(棚卸資産回転日数)は、主要4社平均で9日分の売り上げに相当する量にすぎない。
日用品卸売業に比べて回転が速く、在庫負担が小さい。
仕入債務回転期間は平均64日であり、売上債権回転期間(44日)よりも長い。
つまり支払いが遅くて回収が早い。
9日分の在庫を抱えても、プラス11日分の売り上げに相当する回転差資金が手元に残る。
ただし特定の小売業に対する取引依存度は高まっている。
主要な食料品卸売業者にはそれぞれ売上高比率10%以上を占める特定の小売業者がいる。
三菱食品にとってのローソン、日本アクセスにとってのファミリーマートなどである(図表6)。
これらは同じ総合商社系列の企業同士の取引であり、系列内取引が進展している。
他方で、食料品卸売業者の上位集中化に伴い、製造業者は特定の卸売業者に売り上げの多くを依存するようになってきている(図表7)。
低温品の取り込みが焦点に 日本加工食品卸協会の「加工食品卸売統計調査」によると、食料品卸売業の取扱商品分野は、常温品の売上高構成比がほぼ横這いで推移し、酒類が低下傾向にある中で、低温品の取り扱いが拡大している。
冷蔵品・冷凍品の合計売上高構成比はおよそ10年前には2割程度だった。
それが直近の19年には3割程度まで上昇している。
低温品の市場はほぼ一貫して拡大しており、常温加工食品を中心に取り扱ってきた卸売業者にとっては事業拡大を期待できる商品分野である。
大手食料品卸売業者は自身で新しいチルド・冷凍商品を開発したり、低温DCの新設をはじめ低温物流網を整備したりしている。
食料品卸売業者のフルライン化は近年、低温品の取り扱い拡大という方向で進展していると言える。
食料品卸売業者の主な販売チャネルは、スーパーとコンビニエンスストアである。
いずれの市場もおおむね堅調に推移している。
その一方、一部の卸売業者はドラッグストアの売上高構成比を高めている。
ドラッグストア市場は店舗数の増加を伴って拡大しているが、食品販売額はその伸び以上に増加しており、ドラッグストアの食品販売額構成比は上昇傾向にある(図表8)。
これを受けて食料品卸売業者は、ドラッグストア専用組織の設置や、ドラッグストアに適した商品・カテゴリーの提案、専用物流センターの運営受託などを推進している。
物流に関する近年の動向 食料品卸売業者は、小売業者の大規模化や出店地域の広域化などに合わせるように、DCの大型化、広域化、総合化、専用物流センターの運営受託などを推進し、小売業者を物流面からも支援している。
他方、製造業者に対しては、社会的にも問題視されるようになったトラックドライバーの労働時間短縮に向け、着荷側の荷主として協力する姿勢を見せている。
ドライバーの手待ち時間のうち、接車までの納品待機時間、その後の検品にかかる手待ち時間の短縮にそれぞれ取り組んでいる。
納品待機時間の短縮に向けたツールの一つとして、「トラック予約受付システム」の導入が広がっている。
トラックドライバーや配車係などが、ウェブサイト、SNS、Eメールなどの電子的な方法で納品予定時刻を事前に予約するシステムである。
日本加工食品卸協会において日本初となる業界標準の予約受付システム「N─Torus」が開発され、普及し始めている。
協会に加盟する食料品卸売業数社のDCで18年に試験運用が始まり、19年に完成、加盟社のDCへの導入が広がっている。
政府主導で国土交通省・経済産業省・農林水産省が省庁横断で推進する「ホワイト物流」推進運動に参画する食料品卸売業各社の自主行動宣言にも同システムの導入が表明されている。
他方、検品にかかる手待ち時間の短縮では、検品の省力化、検品レスに向けた取り組みが始まっている。
製造業者などから送信される賞味期限を含むASNを活用して入荷時の検品を省略する。
日本加工食品卸協会においては16年にASNが「日食協標準EDIフォーマット」の新たなデータ種として制定され、17年にはファイネットの商品流通VANサービスのデータ種に採用されたことが、こうした取り組みを後押ししている。
卸売業のデジタル化が始まった 食料品卸売業者は社内にデジタル化を推進する専門組織を設置して、経理などの定型業務にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入したり、発注やDC内の商品・人員配置などの業務にAIを活用したりするなど、新技術を活用したデジタル化に取り組んでいる。
ECの拡大に対しても、自ら大手ECモールに出店してBtoCに乗り出したり、BtoBではネット卸やマーケットプレイスを運営したりするなどの動きが見られる。
その関連で注目されるのは、テクノロジー企業との連携・協業である。
AI企業との連携・協業や、専門的なサービスを展開する企業のデータを活用したリテールサポート(RS)の強化および新規事業開発などの事例が見られる(図表9)。
新たな機能を採り入れてビジネスモデルを変革しようとしている姿勢がうかがえる。
日用品卸 ──PALTACとあらたが寡占 日用品卸業界はPALTACとあらたの大手2社による寡占化が進んでいる。
両社は主要顧客のドラッグストアのニーズに応えるため、買収統合を重ねて事業エリアと規模を拡大するとともに、物流拠点整備とオペレーションの自動化に巨額の投資を継続している。
その動きを食品卸業界と対比しながら解説する。
食品卸業界に先行して再編が進む 食料品卸売業と同様に、日用品卸売業(日本標準産業分類でいう医薬品・化粧品等卸売業のうち医薬品卸売業以外の「化粧品など卸売業」)の構造変化を確認しよう。
「化粧品など卸売業」の年間商品販売額は、1994年(調査実施年)から他の卸売業者への販売額の減少が続くものの、小売業者への販売額の増加などが寄与して、2000年代に入っても増加が見られた。
そのW/W比率は、1985年以降低下傾向にあり、2007年には1・4倍まで低下した(図表10)。
成長するドラッグストアなどの小売業者や産業用使用者などとの直接的な取引が拡大する一方、2次卸など他の卸売業者との取引が縮小するなどして、卸売段階の流通経路が短縮している。
上位集中化を医薬品卸売業を含めた医薬品・化粧品等卸売業で確認すると、2000年代に入って市場全体の販売額が増加傾向にある中でも進展している。
1991年の時点では0・2%の企業数で販売額の18%を占めていた。
それが2007年には0・3%の企業数で販売額の56%を占めるまで集中が進んだ(図表11、図表12)。
食料・飲料卸売業と比べて上位集中化が短期間のうちに進展し、寡占的な状況に近づいている。
うち「化粧品など卸売業」はPALTACとあらたの2社で市場の多くを占める状況である。
ドラッグストアなど大規模小売業者の成長に伴う全国的な商品供給などの要求に対応するため、合併・買収を通じて機能強化や広域化などが進められてきた結果である。
粗利率は高いが資金繰り負担大 ここでは売上規模が大きく総合的な品揃えをもつPALTAC、あらた、CBグループマネジメントの3社に注目する。
PALTACは、15年にマツモトキヨシHDの子会社の伊東秀商事と合併するなどして規模を拡大し、19年3月期には売上高を1兆円の大台に乗せた。
あらたの20年3月期の連結売上高は8千億円弱だが、同社が20年8月に公表した「長期経営ビジョン2030」では2030年に1兆円を目指すことが示された。
またCBグループマネジメントの売上高は、近年1500億円前後を推移している。
日用品卸売業3社合計の損益構造は、粗利率が9・1%で、販管費率7・3%をかけて事業を推進し、営業利益率1・8%・経常利益率1・9%を残すという構造である(図表13)。
食料品卸売業に比べて、粗利率は高いが販管費率も高い。
そして資金繰りは、食料品卸売業に比べて負担が大きい(図表13)。
在庫水準(棚卸資産回転日数)は、日用品卸売業主要3社平均が17・9日分である。
食料品卸売業に比べて回転が遅く、在庫負担が大きい。
しかも、仕入債務回転期間は平均50日であり、売上債権回転期間(55日)よりも短い。
つまり支払いが早くて回収が遅い。
回転差資金はマイナスであり、食料品卸売業とは対照的である。
ドラッグストアと共に成長 日用品卸売業にも取引依存度が高い関係は見られる。
小売業者との取引では、あらたにとってのツルハHD、CBグループマネジメントにとってのアマゾンジャパンなど、特定の小売業者が売上高の10%以上を占めている(図表14)。
ただし、PALTACとあらたに限れば、事業規模の拡大に伴い、特定の小売業者への依存度は薄れてきている。
日用品卸売業者の主要販売先はドラッグストアである。
PALTACとあらたの販売先業態別売上高構成比を見ると、ドラッグストアが最も高く、PALTACが63%、あらたが49%であり、過去から上昇傾向にある(図表16)。
ドラッグストアの市場は、日用品卸売業者に関係の深い日用品(調剤、食品などを除く)に限れば堅調に拡大している(図表17)。
つまり日用品卸売業者は、ドラッグストアとともに成長しており、ドラッグストア向けDCの出荷能力の増強や生産性の向上などに力点を置いている。
他方、日用品卸売業者に対する製造業者の売上高比率は食料品業界よりも高い。
PALTACとあらたの2社に対する売り上げが50%超を占める製造業者も見られる(図表15)。
PALTACとあらたによる寡占化の表れである。
物流に関する近年の動向 物流に関する近年の動向を、PALTACとあらたに注目して概観すると、DCの全国的な整備とともに、首都圏など市場の拡大する地域における出荷能力向上を推進していることがうかがえる。
PALTACは、これまで全国にRDC(Regional Distribution Center、大型物流センター)を開設するとともに、特定小売業者の専用物流をRDCで運用するハイブリッド化や、RDCを支援するFDC(Front Distribution Center)の設置など、物流機能の統合と分担を推進して効率化を図ってきた。
近年では、「AIやロボット等の最新テクノロジーと当社が持つ物流ノウハウを融合させた、独自開発の次世代型物流システム」(同社ニュースリリース2019年10月10日)である「SPAID(Super Productivity Advanced Innovative Distribution)」を開発し、DC内のピースピッキングなどの生産性向上と、重量物の荷役などにかかる作業負担軽減などを実現している。
「SPAID」は、現在、18年稼働の「RDC新潟」と19年稼働の「RDC埼玉」で展開されている。
RDC埼玉は、同社最大規模のDCであり、近隣の既存DCからの移管などを通じて、最大市場の首都圏における最適な物流体制の構築を目指している。
他方、あらたも、全国のDCを集約して大型化の方向に整備するとともに、首都圏におけるDCの新設・増床などを通じて出荷能力を増強してきた。
将来を見据えた「九州物流構想」「首都圏物流構想」を掲げて、18年には庫内業務のIT化・ロボティクスを推進する「九州南センター」を開設した。
続いて「首都圏物流センター(仮称)」を開設予定である。
トラックドライバー不足は、食料品業界と同様に日用品業界でも問題視されており、予約受付システムの導入が進んでいる。
PALTACは自社開発のシステムを19年11月稼働のRDC埼玉で本格的に導入した。
あらたはTSUNAGUTEの「telesa-reserve」を19年4月から「三郷デポ」に導入している。
今後は両社ともシステムを全国展開する予定である。
また「telesa-reserve」は中央物産、ハリマ共和物産も導入している。
食料品卸売業と共通するのは、卸売業者がトラックドライバーの労働時間の短縮による生産性向上に向け、着荷側の荷主として協力の姿勢を見せているところである。
異なるのは、食料品卸売業では業界団体の日本加工食品卸協会が開発した業界標準のシステムを同協会に加盟する各卸売業者が導入しているのに対し、日用品卸売業では大手を中心に個別に導入しているところである。
当該システムの仕様などの詳細については分からないが、日用品卸売業では業界の寡占化を一つの要因とした物流の専用化が垣間見られる。
積極的な先行投資で物流機能を増強 ドライバー不足と並んでDC内の作業者不足も課題となっている。
対応策の一つは、DC内における荷役の省力化・機械化である。
このうち、AIとロボットを活用した荷役の自動化を先進事例として以下に取り上げたい。
PALTACは、自社開発のAIケースピッキングロボットを18年稼働のRDC新潟に導入し、パレット自動倉庫からの出庫作業を自動化した。
当該ロボットが画像認識カメラでさまざまなケースサイズを認識し、定位置ではなく任意の位置から任意の位置に搬送する。
続く19年稼働のRDC埼玉では、外部企業の自動化技術を導入して、ピースピッキング、ケースピッキング、ケース積付作業の自動化を実現した。
ピースピッキングにはRightHand Roboticsの「RightPick」、ケースピッキングの自動化にはKyoto Robotics、ケース積付作業の自動化にはMUJINのロボットを導入した。
これらは荷役作業の機械化だけではなく、AIの活用によって商品の形状や重量などの事前登録を不要とする「マスターレス」や、ロボットの把持・積付などに関する動作の設定を必要としない「ティーチレス」などの自動化を実現している。
あらたも、AIデパレタイズロボットを18年稼働の九州南センターに導入して、パレット自動倉庫からの出庫作業を自動化した。
当該ロボットは、本体が安川電機、認識技術にKinema Systemsの「Kinema Pick」を採用しIHIと共同開発したものである。
このように、大手日用品卸売業2社は、DCの新設や新しいシステム・物流機器の導入などに積極的に投資している。
PALTACの設備投資額は、直近5年間で年平均130億円(売上高比平均1・4%)に上っている。
先行投資型でDC建設などを行っている。
あらたも、従来の設備投資額は年平均50億円弱(同0・6%)であったが、「中期経営計画2023」では、今後3年間でこれまでの2倍に相当する計300億円の投資を予定している。
なお、設備投資額の全てが物流に関するものではないが、多くを占める。
このように大手日用品卸売業者は、食料品卸売業者と同様、新しい技術を他企業との連携・協業を通じて取り入れながら、将来に必要とされる事業規模や物流の革新などに向けて積極的に投資している。
参考文献 木島豊希(2020a)「卸売業の基本」坪井信也・河田賢一編著『流通と小売経営』創成社、pp.42-66。
木島豊希(2020b)『卸売流通動向講座―日用品卸編―』流通経済研究所。
木島豊希(2020c)「食料品・日用品卸売業の物流センター改革」『流通ネットワーキング』日本工業出版、第321号、pp.10-13。
