2021年1月号
特集
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丸紅 小売業・流通業向けに「デジタルSCMサービス」
o9のプラットフォームを日本初導入
われわれ丸紅は2018年4月に物流企画営業部デジタルSCM推進課を設立した。
同課では「デジタルSCMサービス」と名付けたソリューションを手掛けている。
伝統的な総合商社の機能にデジタルテクノロジーを掛け合わせて、お客さまのサプライチェーン改革を「アズ・ア・サービス」モデルで主導し、具体的な成果を創出する事業だ。
従来の総合商社のビジネスは端的に言えば、モノを多く動かせば動かすほど、売り上げと利益が増える構造になっていた。
それが必ずしもお客さまの利益やサプライチェーン全体の最適化につながっているとは言い切れないところがあった。
われわれはそこから脱却して、需要を適確に予測し、発注量や在庫が最適化されたサプライチェーンを創造することで、お客さまの売り上げを最大化し、コストを最小化することを目指している。
デジタルSCMサービスは、需要計画、調達計画、在庫/供給計画、補充/ロジスティクス計画を代行するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)と、国内外の物流受託、商流受託、サプライヤー管理を請け負う実行サービスによって構成している。
さらにお客さまの要望に応じて商品企画や生産、新規サプライヤーの開拓もカバーする。
サービスの対価は業務委託料、成果に基づくゲインシェアリング、あるいは従来からの商流機能やサプライヤー管理機能と計画サービスとの組み合わせなど、お客さまのニーズに合わせて個別に設計する。
まずは簡易的なシミュレーターを用いて、デジタルSCMサービスを利用することでどれだけの効果が得られるのかを定量的に測定し、当社が提供する価値を透明化した上で、お客さまに納得いただける契約方法を取り決めている。
2020年10月、われわれは消費財の大手通販事業者X社を顧客とするデジタルSCMサービスの案件にo9ソリューションズのSCMソフトウエア「o9 AI Platform」を導入した。
米国では既にウォルマート、ネスレ、ナイキなどの大手が同社のソリューションを利用しているが、日本では今回が初導入となった。
以下にその概要を解説する。
X社は取扱品目数が100万以上、在庫品だけでも10万SKU以上という豊富な品揃えと、短納期を武器に持続的な成長を遂げてきた。
しかし近年、巨大グローバル企業の参入が大きな脅威となっている。
その対策としてX社はプライベートブランド(PB)品の強化を打ち出している。
しかし、PB品は発注単位が大きく、引き取り責任も生じる。
しかも、大部分が海外生産でありリードタイムは長い。
その結果、いくつかの課題に直面していた。
一つはサプライチェーンネットワークの問題だ。
同社は全国10カ所に配置した物流拠点で、それぞれ発注と在庫をコントロールしていた。
PB品も管理手法はナショナルブランド(NB)品と同じだった。
そのためリードタイムの長いPB品は構造的に在庫が実需と乖離してしまう。
そのままPB比率を大幅に引き上げれば全体の在庫が膨れ上がってしまうのは明らかだった。
もう一つの課題が計画業務だった。
複雑な取引条件や製造・物流のキャパシティーなどの制約を、SCM担当者の属人的な経験と勘に頼って計画に反映していた。
使用するツールは表計算ソフトExcelだけ。
そのため実行段階で過剰在庫が発生して廃棄やマークダウンを強いられたり、逆に欠品による緊急輸送や売り上げ機会損失が起きていた。
これらの問題を解決するために、われわれはX社のサプライチェーンの「デジタルツイン」を構築した。
PB品の流通に係る実績データと各種の制約や処理能力をシステムに入力、サイバー空間上にサプライチェーンを再現した。
そこでさまざまなシナリオをシミュレーションして、シナリオ別の物流コストや在庫スペースなどを検証した。
その結果、既存の全国10拠点を通過型の「エリアDC」と位置付け、その上流に保管型の「セントラルDC」を設けて在庫を集約することでネットワークが最適化されることが分かった。
セントラルDCからエリアDCに、小ロットかつ短いリードタイムで補充して、在庫レベルを必要最小限に抑制することで、PB品を取り扱うスペースを確保し、より多くのPBを販売することが可能になる。
この分析結果に基づいてネットワークを修正した。
この案件では、日々の計画業務とセントラルDCの運営およびセントラルDCからエリアDCへの補充輸送を、当社が請け負っている。
当社のSCMプランナーが顧客のオフィスに常駐、o9プラットフォームを用いてデータドリブンで需要を予測して、発注や補充輸送計画を立案している。
セントラルDCの現場運営と輸送管理の実務には、グループ企業の丸紅ロジスティクスが当たっている。
市場環境は常に変化しているため、需要予測の精度は放っておけば低下してしまう。
そこで当社のSCMプランナーは、需要トレンドや物量の変化、さらにはお客さまの中長期的な商品ポートフォリオ戦略に対応して、需要予測モデルを常にチューニングして精度を高めていく役割も担っている。
SCM最適化をアズ・ア・サービスで デジタルSCMサービスは計画業務から属人性を排除する。
従来は担当者の判断に委ねられていた在庫計画・発注計画が、科学的なデータ解析に置き換えられて、業務はほぼ自動化される。
在庫水準と物流コストを常に最適な状態に維持できる。
X社の取り組みはまだ道半ばではあるが、既にその成果は表れている。
売り上げの向上という面では、在庫の集約によってエリアDCの狭隘化が解消されて、そのスペースを活用した新製品の投入および非在庫品の在庫化が始まっている。
欠品による売り上げ機会損失の低減、マークダウン率の抑制効果も見込める。
コスト面では在庫量の削減にとどまらず、輸送費や保管費などの物流コストとのトレードオフを反映した最適化が可能になった。
そして何より、業務の自動化・標準化を通じて、PB品比率の大幅な向上によるSCMの複雑化に耐えられるオペレーションを構築できたことが大きい。
人がボトルネックとなって売り上げを伸ばせないという問題が解消した。
制約を加味した計画の立案とSCMの自動化、そして継続的な改善はo9のプラットフォームにデジタルツインを構築したことで可能になった。
欧米の巨大企業はサプライチェーンの高度化を進めるために必要なデータサイエンティストなどの高度人材を社内に抱え込んでいる。
組織体制も備えている。
同じことを日本企業に求めるのは現実的ではないだろう。
そこにわれわれ総合商社の新たな役割の一つがあると考えている。
o9プラットフォームを活用したデジタルSCMサービスによってそれを証明していきたい。
同課では「デジタルSCMサービス」と名付けたソリューションを手掛けている。
伝統的な総合商社の機能にデジタルテクノロジーを掛け合わせて、お客さまのサプライチェーン改革を「アズ・ア・サービス」モデルで主導し、具体的な成果を創出する事業だ。
従来の総合商社のビジネスは端的に言えば、モノを多く動かせば動かすほど、売り上げと利益が増える構造になっていた。
それが必ずしもお客さまの利益やサプライチェーン全体の最適化につながっているとは言い切れないところがあった。
われわれはそこから脱却して、需要を適確に予測し、発注量や在庫が最適化されたサプライチェーンを創造することで、お客さまの売り上げを最大化し、コストを最小化することを目指している。
デジタルSCMサービスは、需要計画、調達計画、在庫/供給計画、補充/ロジスティクス計画を代行するBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)と、国内外の物流受託、商流受託、サプライヤー管理を請け負う実行サービスによって構成している。
さらにお客さまの要望に応じて商品企画や生産、新規サプライヤーの開拓もカバーする。
サービスの対価は業務委託料、成果に基づくゲインシェアリング、あるいは従来からの商流機能やサプライヤー管理機能と計画サービスとの組み合わせなど、お客さまのニーズに合わせて個別に設計する。
まずは簡易的なシミュレーターを用いて、デジタルSCMサービスを利用することでどれだけの効果が得られるのかを定量的に測定し、当社が提供する価値を透明化した上で、お客さまに納得いただける契約方法を取り決めている。
2020年10月、われわれは消費財の大手通販事業者X社を顧客とするデジタルSCMサービスの案件にo9ソリューションズのSCMソフトウエア「o9 AI Platform」を導入した。
米国では既にウォルマート、ネスレ、ナイキなどの大手が同社のソリューションを利用しているが、日本では今回が初導入となった。
以下にその概要を解説する。
X社は取扱品目数が100万以上、在庫品だけでも10万SKU以上という豊富な品揃えと、短納期を武器に持続的な成長を遂げてきた。
しかし近年、巨大グローバル企業の参入が大きな脅威となっている。
その対策としてX社はプライベートブランド(PB)品の強化を打ち出している。
しかし、PB品は発注単位が大きく、引き取り責任も生じる。
しかも、大部分が海外生産でありリードタイムは長い。
その結果、いくつかの課題に直面していた。
一つはサプライチェーンネットワークの問題だ。
同社は全国10カ所に配置した物流拠点で、それぞれ発注と在庫をコントロールしていた。
PB品も管理手法はナショナルブランド(NB)品と同じだった。
そのためリードタイムの長いPB品は構造的に在庫が実需と乖離してしまう。
そのままPB比率を大幅に引き上げれば全体の在庫が膨れ上がってしまうのは明らかだった。
もう一つの課題が計画業務だった。
複雑な取引条件や製造・物流のキャパシティーなどの制約を、SCM担当者の属人的な経験と勘に頼って計画に反映していた。
使用するツールは表計算ソフトExcelだけ。
そのため実行段階で過剰在庫が発生して廃棄やマークダウンを強いられたり、逆に欠品による緊急輸送や売り上げ機会損失が起きていた。
これらの問題を解決するために、われわれはX社のサプライチェーンの「デジタルツイン」を構築した。
PB品の流通に係る実績データと各種の制約や処理能力をシステムに入力、サイバー空間上にサプライチェーンを再現した。
そこでさまざまなシナリオをシミュレーションして、シナリオ別の物流コストや在庫スペースなどを検証した。
その結果、既存の全国10拠点を通過型の「エリアDC」と位置付け、その上流に保管型の「セントラルDC」を設けて在庫を集約することでネットワークが最適化されることが分かった。
セントラルDCからエリアDCに、小ロットかつ短いリードタイムで補充して、在庫レベルを必要最小限に抑制することで、PB品を取り扱うスペースを確保し、より多くのPBを販売することが可能になる。
この分析結果に基づいてネットワークを修正した。
この案件では、日々の計画業務とセントラルDCの運営およびセントラルDCからエリアDCへの補充輸送を、当社が請け負っている。
当社のSCMプランナーが顧客のオフィスに常駐、o9プラットフォームを用いてデータドリブンで需要を予測して、発注や補充輸送計画を立案している。
セントラルDCの現場運営と輸送管理の実務には、グループ企業の丸紅ロジスティクスが当たっている。
市場環境は常に変化しているため、需要予測の精度は放っておけば低下してしまう。
そこで当社のSCMプランナーは、需要トレンドや物量の変化、さらにはお客さまの中長期的な商品ポートフォリオ戦略に対応して、需要予測モデルを常にチューニングして精度を高めていく役割も担っている。
SCM最適化をアズ・ア・サービスで デジタルSCMサービスは計画業務から属人性を排除する。
従来は担当者の判断に委ねられていた在庫計画・発注計画が、科学的なデータ解析に置き換えられて、業務はほぼ自動化される。
在庫水準と物流コストを常に最適な状態に維持できる。
X社の取り組みはまだ道半ばではあるが、既にその成果は表れている。
売り上げの向上という面では、在庫の集約によってエリアDCの狭隘化が解消されて、そのスペースを活用した新製品の投入および非在庫品の在庫化が始まっている。
欠品による売り上げ機会損失の低減、マークダウン率の抑制効果も見込める。
コスト面では在庫量の削減にとどまらず、輸送費や保管費などの物流コストとのトレードオフを反映した最適化が可能になった。
そして何より、業務の自動化・標準化を通じて、PB品比率の大幅な向上によるSCMの複雑化に耐えられるオペレーションを構築できたことが大きい。
人がボトルネックとなって売り上げを伸ばせないという問題が解消した。
制約を加味した計画の立案とSCMの自動化、そして継続的な改善はo9のプラットフォームにデジタルツインを構築したことで可能になった。
欧米の巨大企業はサプライチェーンの高度化を進めるために必要なデータサイエンティストなどの高度人材を社内に抱え込んでいる。
組織体制も備えている。
同じことを日本企業に求めるのは現実的ではないだろう。
そこにわれわれ総合商社の新たな役割の一つがあると考えている。
o9プラットフォームを活用したデジタルSCMサービスによってそれを証明していきたい。
