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2021年1月号
特集

物流プラットフォーマーが主導権を握る

EC化が卸の役割を問い直す ──ウィズコロナが終息する気配はなく、EC化が加速しています。
アクセンチュア 北川寛樹 製造・流通本部 マネジング・ディレクター「物量が減ってドライバー不足が一服した半面、売り上げが減ったことで荷主企業の物流コスト比率が上昇しています。
それで経営者が物流部門をただしても『最大限やっています』と言うばかりなので、どうしたものか、と相談を受ける機会が増えています。
その一方でECが消費者向けだけでなく、上流のBtoBにも広がってきています。
それに対して総合商社や卸が危機感を強めています。
今や最上流の素材メーカーでさえ、最終消費者と直接コンタクトをとって自社製品の企画・販売に乗り出しています。
そうなると中間流通業には居場所がない」 アクセンチュア 保科学世 AIセンター長 マネジング・ディレクター「AIの活用を担当している私の部隊でも、これまでBtoBでやってきた会社がD2C(ダイレクト・トゥ・カスタマー)に入っていく、という案件がかなりの割合を占めるようになってきました。
モノ売りからコト売りへ、モノではなく体験やサービスを売ろうという話は以前からあったわけですが、それにはお客さまと直接つながる必要があります。
コロナ禍に入ってその動きが急加速しています」  「これまでわれわれの部隊はサプライチェーン分析とCRMの顧客分析でチームを分けて対応してきたのですが、サプライチェーン分析の提案にいっても顧客分析の話がもれなく出てくるようになり、物流の話にいってもマーケティングの話になったり、逆もまた真なりで、(産業の垣根が崩れて融合する)インダストリーコンバージェンスがそこら中で起きている印象です」 ──ECが一般化することで〝問屋不要論〟が数十年ぶりに再燃することになりそうです。
北川「しかし、業界によっては、中間流通業者はプラットフォームを握っていくことになるとみています。
彼らは川上のことも川下のことも分かっている。
受発注情報も持っているわけですから、自分たちの情報網をオープンにしてサプライチェーンの縦横と連携してスコープを広げていくことで、サプライチェーンのハブになれる。
さらにはサプライチェーンを最適化することができる」  「そのような今までなかった機能をデジタルの世界で実現するのが、次の時代の中間流通業の姿です。
ただし、それには従来の卸や商社のビジネスをいったん破壊する覚悟が要ります。
川上にいるメーカーは消費者を見たがっている。
これまで卸や小売業を挟んでいたから見えなかったものを見えるようにすることをプラットフォームに求めます。
その要請に応えるには捨てなければいけないものがかなりある」 保科「お客さまを理解するためには、モノを作るところからお客さまにモノを届けて決済して、さらには周辺サービスを提供するところまで、エンド・トゥ・エンドでつなぐことが大事だというのは、既に共通認識でしょう。
誰が何を欲しいと思っているかを知るために、われわれはAIでデータを分析するわけですが、それには今の世の中で動いているモノのデータがどうしても必要です」  「さらには実際にモノが動く前のデータ、購買する前にお客さまがサイトで何を見ていたのかといった履歴も知りたい。
できるだけ広い範囲のデータを分析することで最適化のレベルは上がっていきます。
それが進んで最終的には、そのお客さまが欲しいと思って注文する前に、その欲しいモノが目の前に現れるところまで到達するはずです。
その時にサプライチェーンの主導権を誰が握るのかというのは大変に興味のあるところです」 ──しかし、現状とはまだかなり乖離があります。
保科「そうでもありません。
確かにこれまでは最適化といっても倉庫の中だけとか、倉庫と店舗の在庫を最適化する程度でした。
店舗の需要予測と工場の生産計画、年次や中長期の経営計画がそれぞれ別のアルゴリズムで動いていました。
しかし、私が今担当しているクライアントは、長期計画から日々の予測まで同じアルゴリズムを使い、それに基づいて生産や調達を回しています。
そのため今回のコロナのような予想外の事態が起きてもリアルタイムに全ての計画をアップデートできる。
最先端はそこまで来ています」  「われわれの『AI POWEREDサービス』の一つ『AI POWERED マネジメントコックピット』は経営を可視化するサービスですが、KPIを可視化するだけではなく、予想外の事態が起きて期末の目標を達成できないことが判明したら、その瞬間にアラートが上がり、さらには何をすべきかというアクションまで提示してくれます。
これまで経営層は、マーケティング、生産、ロジスティクスを総合的に見て意思決定するということができませんでした。
各部門に任せるしかなかった。
しかし、マネジメントコックピットを使えば、『船便を空輸に変えると物流費は30%増えるけれど、これだけの機会損失を防げる』『商品Aはこのままだと大量に売れ残る。
売り値を下げれば利益率は下がるけれど資金効率がこれだけ改善する』といったシミュレーションに基づいて、経営層が自分で判断できます」 物流企業のポテンシャル 北川「確かにサプライチェーンを垂直統合して全ての情報を握っているSPA(製造小売り)ならそれができる。
しかし、SPAではないメーカーや卸、小売りが同じことをやるには、ベースとなるデータと、データを共有するプラットフォームが必要です。
そのデータを持っているのは物流会社です。
しかも、物流会社はそのインダストリーに対して第三者の立場にある。
物流会社にはプラットフォーマーを目指す条件が揃っています」  「ただし、業界によってプラットフォームのモデルは違ってくる。
例えば食品の中間流通は総合商社による系列化が進み、陣取り合戦が激しい。
三菱商事系、伊藤忠系、三井物産系の卸が手を握るというのはいかにもハードルが高い。
しかし、商社色がそれほど強くない業界であれば踏み込んでいけます。
そこを見極めてわれわれアクセンチュアは今、クライアントと一緒に産業別にそれぞれプラットフォームの構築を進めています」 保科「私も主導権は荷主から物流プラットフォーマーに徐々に移っていくとみています。
物流プラットフォーマーは誰が何を買っているのか把握できる。
そのデータを基に需要を予測して、必要なモノを適切なタイミングで調達する。
需給に応じた価格の最適化はもちろん、安いタイミングで仕入れて高く売ることだってできる。
顧客の在庫を管理して自動補充することさえできます」 ──米アマゾンの「Amazon Dash」や「Amazon Echo」はそうした狙いですし、企業向けにサプライ品を自動補充する「Amazon Shelf」も2019年に開始しました。
保科「BtoCよりもむしろBtoBの方が普及は早いかもしれない」 北川「そうなるとビジネスのスコープの広い総合商社はともかく、業種卸、業態卸は付加価値を生めなくなります。
実際、コンビニ向けの卸はもはや物流機能しか果たしていない。
メーカーのプロモーションを代行する機能も必要なくなる。
その結果、中間流通の淘汰と集約が進んでいきます。
卸もまた物流プラットフォームに生き残りをかけることになります」

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