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2020年12月号
特集

【ピースピッキング】MUJIN モーションプランニングで人間並みの処理速度

物流企業のロボット導入が急拡大 ──MUJINがロボットのコントローラーに搭載している「モーションプランニングAI」とはどのような技術なのでしょうか。
 「ロボットにプログラミングで動きを事前に教え込む『ティーチング』をしなくても、ロボット自身で最適な動作を計算して稼働するというものです。
ティーチングには時間とコストが掛かります。
ピースピッキングのような複雑な作業を自動化するとなると、商品1つ1つについてティーチングを行わなければなりません。
従来はそうした負荷の大きさを理由にロボットの導入に二の足を踏んでいる企業が多かった」  「モーションプランニングAIを搭載した当社の『知能ロボットコントローラ』を利用すれば、ティーチングなしで高度なロボット自動化を実現できます。
製造業向けと物流倉庫向けの両方に知能ロボットコントローラを提供していますが、OEM(相手先ブランドでの製造)も行っています」 ──2011年の創立から来年で10年を迎えます。
この間の産業界でのロボット活用の進み方を振り返ってみて、どのように感じますか。
 「一昔前までロボットは実際に動かしてみなければ生産性向上や業務効率化の効果が分からなかった。
まさに怪しい料理店のような世界でした。
店の外から見るだけではどんな料理を出していてどんな味なのかが十分把握できなかった。
今は導入すれば事前のシミュレーション通りに効果を出せるケースが増えてきました。
本当に大きく変わりましたね」 ──物流現場の自動化に注力されるようになった理由は何ですか。
 「15年にアスクルさんと業務提携したことがきっかけです。
アスクルさんはECですから、最初からピースピッキングという最も難しい領域に飛び込んだ格好です。
それでもPoC(概念実証)が可能な現場を与えていただくなど、二人三脚で自動化に取り組んでいただきました。
そのおかげで物流に対する知見がかなり増え、今の当社の礎になっています」 ──知能ロボットコントローラを使ったロボットの性能は現状でどの程度ですか。
 「同一の商品を扱う単載のデパレタイズでは1時間に1200個を処理できます。
より難しい、さまざまな商品を取り扱う混載のデパレタイズでも1時間当たり800個のレベルに達しています。
いずれも世界最速です」 ──格段に難度が高いピースピッキングについてはいかがですか。
 「お客さまの現場で今出している実績値で1時間当たり1000ピースのレベルまで来ています。
これは人間と同じ程度ですね。
つかみやすい固形の商品が多い産業については、かなり対応できるようになっていると自負しています。
今後の課題は柔らかい物など、ピッキング可能な対象を広げることと、能力を1000からさらに上げていくことですね」 ──庫内作業の完全自動化も可能でしょうか。
 「もちろんお客さまのニーズ次第ですし、一概に全てのケースで可能とは申し上げられません。
荷姿などによっても状況は変わってきますが、条件がそろえば十分可能だと思います」 ──物流自動化への投資はこれまで荷主企業が先行し、物流業界の動きは遅れている印象が否めません。
 「確かに、荷主が変わると扱う商品も大きく変わり、それまで構築してきたシステムが使えなくなる可能性があるため、物流企業はどうしても自動化に慎重にならざるを得ない面がありました。
しかし、17年ごろに『物流危機』が表面化し、自動化に対する意識もだいぶ前向きになってきたと感じています」  「とりわけコロナ禍に入ってからは、そもそも人が足りていない上に、せっかく集めた貴重な人材も現場に来られないとなると、会社として立ち行かなくなってしまいますから、自動化のニーズが非常に増えてきています。
コロナがロボットの導入に拍車を掛けている側面は間違いなくありますね」 ──物流業界からの受注は好調ですか。
 「売り上げなどの詳細は公表を差し控えさせていただきますが、物流業界からの引き合いが非常に伸びていることは確かです。
少なくとも今後3~4年はかなりの需要があるとみています」 1カ月で会社は生まれ変わる ──ロボットの導入は初期投資が巨額になるため、どうしても費用対効果の面で慎重にならざるを得ません。
そのハードルはクリアできていますか。
 「ROI(投資利益率)の観点からもかなりお客さまのご期待に沿えるようになってきました。
これまでは人件費と比較してペイしないという理由で、自動化を先延ばしにしてきた面があると思います。
しかし、ロボットの活用は単に人と機械を置き換えて人件費を抑制するという話ではありません。
現場で働いている方々をルーティンワークから解放し、業務のプロセスをいかに改善していくかといったようなことを考える分野に移せます。
仕事のやりがいが生まれて定着にもつながります」  「実際、単純作業をロボットに任せて自動化し、業務改善を従業員の皆さんが一生懸命考えるようになると、その会社は1カ月で生まれ変わります。
良い人材がどんどん会社に入ってくるようになる。
常に新しいことにチャレンジし、自動化してシステムを改良していくことで現場の生産性が高まり、また自分たちも成長できるという良いサイクルを回していけるようになります」  「そのような現場改善は自動車などの製造業が日々、本当に細かく取り組まれてきたことで、明確な成果も挙がっています。
物流業界もぜひそうした観点を持って自動化に取り組んでいただきたい。
そうなれば物流業界としてもより付加価値の高いサービスを荷主に提供できるようになるでしょう。
当社としてもそのお手伝いをさせていただきたい」 ──海外展開についてはどう考えていますか。
 「オフィスのある日本や中国で製品をさらに成長させた上で、拡販できるタイミングで海外に広げたいですね。
売り上げに占める日本と海外の割合が5年後には半々、10年後には日本が2で海外が8くらいになっていることを想定しています」 ──御社は海外出身の従業員が多いですが、海外展開を見越して採用されてきたのですか。
 「最初から狙っていたわけではなく、優秀な人を探していたら結果としてそうなりました。
ただし、世界で事業を拡大していく際には、各地に人材を出せる体制にはしていきたい。
人材は随時採用したい。
それには技術を生み出してもPoCをやって終わり、ではなく現場できちんと動かし、お客さまに納得していただけるレベルまで性能を高めて引き渡す。
そうした面白い案件、未来のある案件を常に手掛けることが非常に重要です。
夢があるからこそ、優秀な人が来てくれる。
そうした優秀な人と一緒に働きたいという優秀な人がさらに多く集まってくれる。
好循環をこれからも大切にしていきます」

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