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2020年12月号
特集

【量子コンピューター】グルーヴノーツ 「物流最適化ソリューションセット」をリリース

三菱地所と効果を検証  福岡市に拠点を置くスタートアップのグルーヴノーツは、AIと量子コンピューターを搭載したクラウド型プラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」(マゼランブロックス)の運用と、児童向けにIT教育を行う「TECH PARK」(テックパーク)の二つのサービスを展開している。
 2020年9月、同社は「物流最適化ソリューションセット」をリリースした。
配送ルートや業務の効率化はもちろん、三元率(積載率・実車率・稼働率)向上、物流コストの最小化、CO2排出量削減などの一連の問題を一度に解消することができる。
宅配サービスを展開する大手小売事業者から提供された配送データを基に効果検証を行ったところ、従来の配送距離をおよそ50パーセント削減することに成功したという。
 ドライバーの技能や労働条件、配送地域、受取希望時間、届け先特有の要件、交通状況など多数の制約条件を考慮して、最適な配送ルートを導く計算は負荷が大き過ぎて通常のコンピュータ―では処理できない。
しかし、量子コンピューターならそれができる。
 同社の最首英裕社長は「われわれは組み合わせ最適化問題を解くに当たり、AIをはじめいろいろな方法を試してみた。
しかし、量子コンピューターに適うものはないと分かった。
そして量子コンピューターを使ってソリューションを提供している企業もない。
そこにわれわれの強みがある」という。
 2019年9月、同社は三菱地所と共同で東京・丸の内エリアの廃棄物収集ルートの最適化に関するシミュレーションを実施した。
丸の内エリアには三菱地所が所有または運営管理する26棟のビルがある。
そこから出るゴミを、廃棄物収集事業者11社が収集・運搬している。
そのルートの最適化を試みた。
 廃棄物収集の現場を視察して日ごとの廃棄物の種類やビルごとの収集のルール、収集車が全てのビルに入れるかなどを調査、収集車両の仕様、量、ビル1棟当たりの収集にかかる時間を整理して制約条件を特定した。
 次に、ゴミの発生量を予測した。
ビル26棟別の入居企業数や従業員数、テナントタイプとその割合、可燃ゴミや不燃ゴミなど14種類の廃棄物の発生量の過去3年分の実績、さらに気象予測データや、地域のイベント情報なども勘案して廃棄物の発生量をAIで予測した。
その予測に基づいて車両台数が最も少なく、かつ移動距離が最短になる組み合わせを制約条件を加味して計算した。
 その結果、収集車の台数が75台から31台に削減できることが分かった。
総走行距離は従来の2296キロから1004キロに約57パーセント短縮、総作業時間は8650分から5372分に減少する。
ちなみに廃棄物発生量の予測精度は94パーセントだった。
 企業が出す廃棄物は通常はビルの管理会社が民間の廃棄物収集事業者と直接契約を結んで回収させている。
この形態を変更して街単位で廃棄物の収集を最適化すれば、車両台数と走行距離を大幅に削減できる。
それだけ二酸化炭素排出量が減る。
持続可能な社会への貢献を期待できる。
 「これまでは企業の収益や経済発展が最優先され、労働者個人にかかる負担や事業が環境に与える影響は軽視されがちだった。
しかし、一見トレードオフのような問題も、量子コンピューターを使えば関係者の納得できる解が見つかる」と最首社長。
 最首社長はIT企業、米国ベンチャーの日本法人社長を経験した後、1998年に独立。
基幹システムの構築などを手掛けるイーシー・ワンを立ち上げた。
その後、事業再編や社名変更を経て2012年に現在のグルーヴノーツが誕生した。
 当初はAIを用いた需要予測サービスがメーンだった。
しかし、正確な予測を行うには、従来のコンピューターの処理能力では十分ではなかった。
試行錯誤の末にたどり着いたのが量子コンピューターだった。
 同社が提供するマゼランブロックスは、必要なデータの収集・統合・分析ならびにディープラーニングによる90パーセント以上の高精度での予測が可能で、量子コンピューターによる最適解を導き出せるSaaS型のソフトウエアだ。
利用者はデータを用意するだけでプログラミングなどの作業を自社で行う必要はない。
 物流業にスポットライトを当てることにしたのは、人材不足に端を発してクライアントから物流の最適化を要請されるケースが増えたこと、そして物流業界には組み合わせの最適化によって答えの出せる課題が多いと実感したからだという。
 最首社長は「物流の世界にはたくさんの組み合わせ最適化問題が存在する。
ドライバー不足をはじめ、長時間労働、生産性、さらにはコロナによって今までの常識が通用しないという環境変化にも直面している。
最適解を見つけて効率を一段でも二段でも上げていかないと事業が成立しなくなっていると思う。
それを支援することに社会的な意義を感じている」という。
 最適解を求めるのに必要なのは端的にはルールだ。
まずは最適とは何かを定義する。
次のそのための制約条件を洗い出す。
それさえ決まれば後は量子コンピューターが最適解を計算してくれる。
プロジェクトの規模にもよるが、クライアントの現場でヒアリングを行ってからおよそ2週間で答えを算出できるという。
複合的な問題を解決する  多くの運送会社にとっての最適とは配送コストの最小化だろう。
コストの過半はドライバーの人件費だから、投入する人数を最小にすればいい。
ただし、1人が1日に働ける時間は決まっている。
休憩も取らせなくてはならない。
荷台に積載できる量には上限がある。
届け先の指定時間の問題もある。
配送する荷物の情報とそうした制約をマゼランブロックスに入力すれば自動的に最適な配送計画が作成される。
 しかし、それで全てが解決されるわけではない。
配送の荷物が確定するのは往々にして前日や当日だ。
それでもドライバーの出勤日は事前に決めておかなくてはならない。
そのため配送量を予測する必要がある。
それにはAIによる分析が必要だ。
 現実の物流の問題は複合的だ。
配送ルートだけでなく、出荷量の予測やドライバーの勤務シフトなど複数の最適を解いていかなくてはならない。
しかし、配送ルートを最適化する会社は配送だけ、AIで予測する会社は予測だけしか通常は取り扱わない。
 最首社長は「当社はそれを一気通貫で全部できる。
そこが他社との圧倒的な違いだと自負している。
当社には数学に強く、お客さんの話を噛み砕いて、ビジネスの課題を把握する力のあるスタッフが揃っている。
納得のいく答えが出るまで粘り強く取り組む。
なんでもかんでも量子コンピューターで解くのではなく、量子コンピューターはただの計算機と割り切ることが結局はサービス確立への近道だった」という。
 10月、同社はキユーピーの惣菜工場における量子コンピューティング技術を活用した製造ラインのシフト最適化プロジェクトを本格的に開始した。
本プロジェクトは、経済産業省が推進するロボットフレンドリーな環境を実現するための研究開発事業「令和2年度 革新的ロボット研究開発等基盤構築事業」に採択されている。
本事業においてキユーピーとグルーヴノーツは協働して「量子コンピュータによる高速シフト計算検討」ならびに「AIによる需要予測と協調領域データレイク検討」に取り組む。
 シフト計画を作成するには、スタッフの労働条件や休暇希望、必要人数・スキル要件、人と人の相性など、さまざまな条件を考慮する必要がある。
これらの制約を満たした上で、無数の組み合わせパターンの中から最適な答えを量子コンピューティング技術で導く。
 従来からキユーピーとグルーヴノーツはマゼランブロックスを利用して実証実験を行ってきた。
そこでは熟練のシフト作成者が30分かけて作成するのと同レベルのシフト表を1秒で作成することに成功している。
そのスコープを広げていく。
日々の需要量に応じた製造計画の策定から、製造順序の最適化、シフト最適化、食品用コンテナの積み付けの最適化、物流の最適化などが可能になると期待されている。

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