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2020年12月号
特集

三菱商事物流ロボットのコストを「RaaS」で変動費化

グループの現場で運用ノウハウ磨く  三菱商事は近年、物流領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援プロジェクトを展開している。
その一環でグループの物流事業会社の三菱商事ロジスティクス(MCLOGI)と連携して2020年4月、新サービス「Roboware(ロボウェア)」を開始した。
 ロボウェアは物流ロボットを月額料金の従量課金制で貸し出す「Robot As A Service(RaaS、ロボット・アズ・ア・サービス)」だ。
ユーザーが取り扱う荷物量の増減に応じてその都度最適な台数を提供、コストを変動費化することでロボット活用のハードルを下げた。
 ロボウェアで取り扱うロボットの第1号に採用したのは、日本国内でも導入事例が増えているインド発祥のロボットベンチャーGreyOrange(グレイオレンジ)製の「Ranger(レンジャー) GTP」(旧名Butler=バトラー=)だ。
商品の保管棚の下に潜り込んで棚ごと持ち上げ、ピッキング担当の作業員が待つエリアまで運ぶため、作業員は庫内を歩き回らなくて済む。
 ロボウェアは単にロボットを貸し出すだけにとどまらず、導入前の分析・戦略立案から導入後の運用フォローまで包括的に顧客のロボット活用を支援する。
初期提案までは無料で対応している。
 さらに、ロボットを初めて導入する企業を想定して、顧客の基幹システムと連携可能な独自のロボット管理ソフトウエア「Stream(ストリーム)」を用意している。
運用台数を増やす際にも基幹システム側の改修を必要最小限に抑えられる。
 三菱商事物流開発部の中村遼太郎マネージャーは「ロボウェアを使うことで巨額な初期投資や煩雑なシステム対応といったロボット導入の課題を解消できる。
準備も含めると1年以上要するケースもあった導入期間を数カ月まで短縮した」と語る。
既に複数の企業が契約しており、ピッキング効率2倍や移動距離8割削減などの効果を見込む。
 三菱商事は2019年、ロボウェアの提供に先立ち、MCLOGIの京浜事業所(横浜市鶴見区)にレンジャーGTPを持ち込み、MCLOGIが請け負っているファッション雑貨の入出庫業務に投入。
約1年にわたって実地でロボットの生産性向上や省人化の効果を見極めてきた。
 その結果、ロボットを使うイメージが強いBtoCの領域だけでなく、店舗に商品を供給するBtoBの領域でも円滑に入出荷をこなせることが分かった。
さらに、業務量の拡大に応じてロボットを随時増やしていくオペレーションを実施。
取扱量の増減に適した適正な台数をその都度確保してコストを変動費化できることを確認した。
 三菱商事物流開発部の櫻井進悟プロジェクトマネージャーは「単にロボットを売るだけでは現場で十分性能を発揮してもらうのは難しい。
当社はロボウェアを通して最適なオペレーションを提案し、定期的に効果をチェックしてサポートを続けるところまでカバーする」と強調する。
 MCLOGIの中谷徳志常務執行役員も「当社としては現場で積み重ねてきた経験、知見を反映させてロボットを使った3PLサービスを提供し、ロボット普及を確実なものにしていく」と抱負を語る。
 MCLOGI自身、ロボットを駆使して物流サービスのレベル向上を図っている。
京浜事業所ではレンジャーGTPの検証を終えた現在も45台、専用棚約400基を使って入出荷業務を継続。
利用フロアは現状の約2100平方メートルから拡大することを検討しており、他の拠点への横展開も視野に入れている。
複数拠点でロボットを運用する経験もロボウェアにフィードバックできると見込む。
 ロボットの導入を検討している顧客には、実際に動いている現場を自分の目で確認し、検討材料にしてもらうよう勧めている。
現在は新型コロナウイルスの感染拡大で対面の説明会を大規模に開催するのは難しいため、ウェビナー形式でのオンライン視察会を毎週開催している。
 中村マネージャーは「ウェビナーは毎回100人くらいに視聴いただいており、関心と期待が高いことを肌身で感じている。
コロナ禍であってもできることは積極的に手掛けていきたい」と意気込む。
第3弾の自動化機器を検証中  三菱商事はより多様な作業工程の自動化・機械化をカバーできるよう、ロボウェアサービスで取り扱うロボットのラインアップを順次広げていく方針だ。
中国の新興ロボットメーカー、シリウスロボティクスの協働型ロボット(AMR)「FlexComet(フレックスコメット)」の採用を正式決定している。
ピッキング作業員の運搬歩行を代行するAI(人工知能)を搭載した自律搬送ロボットだ。
 WMS(倉庫管理システム)のデータに基づき、目的の商品が収まった棚へ移動して作業員を導き、作業員がピッキングした荷物をコンテナに入れれば、次のピッキング対象商品の場所へ移動する。
作業員はフレックスコメットの後に付いて移動すれば効率的にピッキングを終えられる。
導入の際に庫内レイアウトの大規模な変更は不要で、通信はWi-Fi環境とSIMカードを用意すれば済むため、すぐに運用を開始できる。
 レンジャーGTPと同様、MCLOGIの京浜事業所内に倉庫内を模した実験場を作って、複数台を同時に運用、ピッキングの精度などの実証を続けてきた。
レンジャーGTPが比較的規模の大きな施設での運用に適しているのに対して、フレックスコメットは中小規模のEC事業者でも使いやすいと見込んでいる。
 他にも、京浜事業所内では2機種に続く第3弾の投入を目指し、自動化機器のテストを進めている。
三菱商事物流開発部の中西心紀マネージャーは「ラインアップの豊富さにはこだわっていきたい。
お客さまの多様なニーズに応えられる体制がロボット普及には不可欠だ」と指摘する。
 取り扱うロボットの種類や台数が増えていけば、複数の顧客企業がロボットを共有して各社間で需要の強弱に沿って融通し合う「ロボットシェアリング」の道が開けてくるとみている。

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