2020年11月号
特集
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日立物流 「ECプラットフォームセンター」事業の現在地
個社最適からシェアリングへ
日立物流の「春日部ECプラットフォームセンター」(ECセンター)は、EC物流向けシェアリング自動倉庫「スマートウエアハウス」の第一号施設だ。
AGV、自動製函機・封かん機、オンデマンド印刷機などの最新設備を導入している。
料金は初期費用・固定費負担なしの従量課金制で、土日祝日にも対応、1日20時間稼働する。
昨年9月に小規模荷主3社から運用をスタート。
現在は20社が入居している。
そのうちの1社、サプリメントを製造・販売する年商約20億円の荷主A社は、これまで西日本に物流拠点を置き、宅配便で全国に出荷していた。
しかし、物流の処理能力不足が事業拡大の制約になっていた。
1拠点体制ではBCP対応にも課題があった。
そこでECセンターに売れ筋のAランク品とBランク品を在庫して、関東以北をカバーする2拠点体制に移行した。
これによって配達リードタイムが短縮されて、配送費は約10%削減された。
新たに倉庫費用が発生したがトータルコストは差し引き5%下がった。
何より西日本拠点の負担が軽減されて増産が可能になったことが大きかった。
日立物流で同事業の責任者を務める中安良二営業統括本部営業企画部部長は「ECセンターの稼働から約1年が経過したが、料金面、サービス内容ともお客さまから評価いただき、手応えを感じている。
引き合いの数も順調に伸びている。
目標とする本年度中の単月黒字も見えてきた」という。
同社は大手荷主を対象に最適な物流を構築・運営する典型的な3PLビジネスを主業とする。
アパレルや健康食品などでEC物流の実績はあっても、中小荷主はターゲットから外れていた。
しかし、ECセンターのユーザーは1日の出荷数が100〜200件(箱)クラスのEC事業者が中心だ。
従来とは顧客層が大きく異なっている。
そのニーズに応えるため、不特定多数の荷主のオーダーをまとめて同じラインで処理するオペレーションに始まり、料金体系から営業アプローチ、日頃のコミュニケーションに至るまで、大手荷主相手のビジネスとはまったく違う仕組みを組み立てる必要があった。
荷主の決まっていない自動化施設に先行投資するリスクもあった。
それでも中安部長は「国内の労働人口は減少し、人件費は上昇を続けている。
人海戦術に頼った従来のオペレーションがいずれ限界を迎えるのは明らかだ。
省人化・自動化は、われわれ自身が事業を継続していくためにも避けられない課題だった」と説明する。
同社は常設のR&D部門「スマートロジスティクス推進部」で、あらゆる物流テクノロジーを検証して省人化・自動化技術の知見とエンジニアリング機能を社内に備えている。
ただし、自動化設備は高額だ。
特定荷主の専用センターに導入してもコスト削減効果だけでペイさせるのは難しい。
複数の荷主が設備を共有するシェアリングによって、その壁を乗り越えようというのがスマートウエアハウスのコンセプトだ。
通常の1日8時間稼働を、できる限り24時間稼働に近づける。
設備の稼働時間が最大3倍になれば投資の回収期間はそれだけ短くなる。
設備の稼働率を徹底的に引き上げることで自動化投資を吸収する。
その最初のターゲットにEC物流を選んだ。
ピース単位のハンドリングには人手がかかる。
自動化・省人化が不可欠だ。
しかし、投資に踏み切れる企業は限られる。
従来型3PLの個社対応では設備の固定費負担が重くなってしまう。
シェアリングの潜在需要が期待できる。
2018年度に入ってすぐ、中安部長をリーダーとするECセンターの立ち上げプロジェクトがスタートした。
料金はEC専業の発送代行会社や大手ECモールのフルフィルメントサービスとの競争だ。
最新設備を使っているからといって、荷主が相場より高く払ってくれるわけではない。
自動化率を最大限に高めると同時に、従来の設備と同等以下のコストで現場を回す必要があった。
そのために人手の作業をそのまま自動化するのではなく、二つの工程を一つにするなど、プロセス自体を見直した。
その上で、作業人件費とのコストバランスや設備の信頼性を分析して各工程を設計した。
施設は地域現業子会社の日立物流関東の事業所内に2千坪を確保した。
うち1400坪は作業スペースが占めている。
1日当たり最大1万7400件の出荷能力がある。
1日20時間稼働を、設備の日次処理などを先送りすることで最大23時間まで引き伸ばせる。
それでも足りない場合にはオフラインを併用して人手で処理する設計だ。
人員は営業所内の他フロアーや近隣のセンターからも融通できる。
保管需要が増えればバックヤードを拡張する余地もある。
中安部長は「機械化はお客さまにとって直接的な価値ではない。
お客さまは何より物量の上限を切られることを嫌がる。
売れただけどんどん出荷したい。
そうした期待に応えるために、ピーク時の処理能力の確保を重視した」と中安部長はいう。
「混流」のオペレーションを構築 複数荷主が設備をシェアリングする現場の運用もまったく新しいチャレンジだった。
既存の施設では、汎用センターでも荷主ごとに担当者を置いて作業計画を立てている。
しかし、ECセンターに荷主別の担当者はいない。
荷主からそれぞれ出荷見通しや販促計画などの情報を聞き出すように努めているが、コミュニケーションには限界がある。
その代わり、ECセンターは機械化を徹底していることから、どの設備・工程でどれだけの流量が発生しているのか、既存施設より可視化のレベルがはるかに高い。
それを基に各荷主の保管量、出荷量の動きを常にウォッチして、1日当たりの平均出荷件数、1件当たりの平均行数などを詳細に分析している。
中安部長は「運用して1〜2カ月するとそのお客さまの物流のパターンが見えてくる。
それをベースに新しく運用を開始した荷主の波動に注目してセンター全体をコントロールしている」と説明する。
各工程の作業計画と進捗を見て、どの時間にどの工程でどれだけの余力が発生するのかを判定。
各荷主の受注サイクル、出荷までのリードタイム、サービスレベルの許容範囲を勘案して、人員の配置や作業の順序を調整する。
定期購買形式の荷主であれば出荷3日前にオーダーをもらい設備のアイドルタイムを埋めるなどの工夫で稼働率の向上を図っている。
現在は本社の営業企画部のスタッフがECプラットフォームセンター長として常駐して、本社直轄でオペレーションの確立に取り組んでいる。
現場のリアルタイム情報と、事務所で把握している物量を合算してみたり、個社の動きを見たり、カテゴリー単位で分析してみたり──どういう管理が必要か、どのデータがカギになるのかを洗い出している。
「現状ではそれを表計算ソフトでやっている。
まさに試行錯誤だ。
しかし、管理方法を確立すればシステム化して横展開ができる。
それを目指している。
複数のお客さまの『混流』をどうコントロールするか。
それがシェアリングモデルのコアになる」と中安部長は考えている。
AGV、自動製函機・封かん機、オンデマンド印刷機などの最新設備を導入している。
料金は初期費用・固定費負担なしの従量課金制で、土日祝日にも対応、1日20時間稼働する。
昨年9月に小規模荷主3社から運用をスタート。
現在は20社が入居している。
そのうちの1社、サプリメントを製造・販売する年商約20億円の荷主A社は、これまで西日本に物流拠点を置き、宅配便で全国に出荷していた。
しかし、物流の処理能力不足が事業拡大の制約になっていた。
1拠点体制ではBCP対応にも課題があった。
そこでECセンターに売れ筋のAランク品とBランク品を在庫して、関東以北をカバーする2拠点体制に移行した。
これによって配達リードタイムが短縮されて、配送費は約10%削減された。
新たに倉庫費用が発生したがトータルコストは差し引き5%下がった。
何より西日本拠点の負担が軽減されて増産が可能になったことが大きかった。
日立物流で同事業の責任者を務める中安良二営業統括本部営業企画部部長は「ECセンターの稼働から約1年が経過したが、料金面、サービス内容ともお客さまから評価いただき、手応えを感じている。
引き合いの数も順調に伸びている。
目標とする本年度中の単月黒字も見えてきた」という。
同社は大手荷主を対象に最適な物流を構築・運営する典型的な3PLビジネスを主業とする。
アパレルや健康食品などでEC物流の実績はあっても、中小荷主はターゲットから外れていた。
しかし、ECセンターのユーザーは1日の出荷数が100〜200件(箱)クラスのEC事業者が中心だ。
従来とは顧客層が大きく異なっている。
そのニーズに応えるため、不特定多数の荷主のオーダーをまとめて同じラインで処理するオペレーションに始まり、料金体系から営業アプローチ、日頃のコミュニケーションに至るまで、大手荷主相手のビジネスとはまったく違う仕組みを組み立てる必要があった。
荷主の決まっていない自動化施設に先行投資するリスクもあった。
それでも中安部長は「国内の労働人口は減少し、人件費は上昇を続けている。
人海戦術に頼った従来のオペレーションがいずれ限界を迎えるのは明らかだ。
省人化・自動化は、われわれ自身が事業を継続していくためにも避けられない課題だった」と説明する。
同社は常設のR&D部門「スマートロジスティクス推進部」で、あらゆる物流テクノロジーを検証して省人化・自動化技術の知見とエンジニアリング機能を社内に備えている。
ただし、自動化設備は高額だ。
特定荷主の専用センターに導入してもコスト削減効果だけでペイさせるのは難しい。
複数の荷主が設備を共有するシェアリングによって、その壁を乗り越えようというのがスマートウエアハウスのコンセプトだ。
通常の1日8時間稼働を、できる限り24時間稼働に近づける。
設備の稼働時間が最大3倍になれば投資の回収期間はそれだけ短くなる。
設備の稼働率を徹底的に引き上げることで自動化投資を吸収する。
その最初のターゲットにEC物流を選んだ。
ピース単位のハンドリングには人手がかかる。
自動化・省人化が不可欠だ。
しかし、投資に踏み切れる企業は限られる。
従来型3PLの個社対応では設備の固定費負担が重くなってしまう。
シェアリングの潜在需要が期待できる。
2018年度に入ってすぐ、中安部長をリーダーとするECセンターの立ち上げプロジェクトがスタートした。
料金はEC専業の発送代行会社や大手ECモールのフルフィルメントサービスとの競争だ。
最新設備を使っているからといって、荷主が相場より高く払ってくれるわけではない。
自動化率を最大限に高めると同時に、従来の設備と同等以下のコストで現場を回す必要があった。
そのために人手の作業をそのまま自動化するのではなく、二つの工程を一つにするなど、プロセス自体を見直した。
その上で、作業人件費とのコストバランスや設備の信頼性を分析して各工程を設計した。
施設は地域現業子会社の日立物流関東の事業所内に2千坪を確保した。
うち1400坪は作業スペースが占めている。
1日当たり最大1万7400件の出荷能力がある。
1日20時間稼働を、設備の日次処理などを先送りすることで最大23時間まで引き伸ばせる。
それでも足りない場合にはオフラインを併用して人手で処理する設計だ。
人員は営業所内の他フロアーや近隣のセンターからも融通できる。
保管需要が増えればバックヤードを拡張する余地もある。
中安部長は「機械化はお客さまにとって直接的な価値ではない。
お客さまは何より物量の上限を切られることを嫌がる。
売れただけどんどん出荷したい。
そうした期待に応えるために、ピーク時の処理能力の確保を重視した」と中安部長はいう。
「混流」のオペレーションを構築 複数荷主が設備をシェアリングする現場の運用もまったく新しいチャレンジだった。
既存の施設では、汎用センターでも荷主ごとに担当者を置いて作業計画を立てている。
しかし、ECセンターに荷主別の担当者はいない。
荷主からそれぞれ出荷見通しや販促計画などの情報を聞き出すように努めているが、コミュニケーションには限界がある。
その代わり、ECセンターは機械化を徹底していることから、どの設備・工程でどれだけの流量が発生しているのか、既存施設より可視化のレベルがはるかに高い。
それを基に各荷主の保管量、出荷量の動きを常にウォッチして、1日当たりの平均出荷件数、1件当たりの平均行数などを詳細に分析している。
中安部長は「運用して1〜2カ月するとそのお客さまの物流のパターンが見えてくる。
それをベースに新しく運用を開始した荷主の波動に注目してセンター全体をコントロールしている」と説明する。
各工程の作業計画と進捗を見て、どの時間にどの工程でどれだけの余力が発生するのかを判定。
各荷主の受注サイクル、出荷までのリードタイム、サービスレベルの許容範囲を勘案して、人員の配置や作業の順序を調整する。
定期購買形式の荷主であれば出荷3日前にオーダーをもらい設備のアイドルタイムを埋めるなどの工夫で稼働率の向上を図っている。
現在は本社の営業企画部のスタッフがECプラットフォームセンター長として常駐して、本社直轄でオペレーションの確立に取り組んでいる。
現場のリアルタイム情報と、事務所で把握している物量を合算してみたり、個社の動きを見たり、カテゴリー単位で分析してみたり──どういう管理が必要か、どのデータがカギになるのかを洗い出している。
「現状ではそれを表計算ソフトでやっている。
まさに試行錯誤だ。
しかし、管理方法を確立すればシステム化して横展開ができる。
それを目指している。
複数のお客さまの『混流』をどうコントロールするか。
それがシェアリングモデルのコアになる」と中安部長は考えている。
