2020年11月号
特集
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MagicalMove 最短7時間・早朝深夜を1時間幅で届ける
孫正義氏が事業化にゴーサイン
筆者は先日、NIKEの公式オンラインストアでスニーカーを購入した。
オプションにあった「最短配送」で注文したところ、「Scatch!」(スキャッチ)という名前の配送業者から当日中に荷物が届いた。
調べてみると、ソフトバンク子会社のMagicalMove(マジカルムーブ、東京・港区本社)が提供している宅配サービスだと分かった。
早速、取材に向かった。
マジカルムーブは、創業者の武藤雄太社長が、「物流をECが発展する際のボトルネックにはさせない」という思いから設立したラストワンマイル企業だ。
現在はEC宅配事業のスキャッチならびに、9月からローンチしたSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型の配送管理サービス「Scalle」(スケール)の二つのサービスを展開している。
武藤社長は自身が宅配・ネットサービスで荷物をスムーズに受け取れなかった経験から、2014年にソフトバンクの社内ベンチャー制度でECの配達部分に着目した新規事業のプレゼンを行った。
そのアイデアがソフトバンクグループの孫正義代表(当時)の目に止まり事業化のゴーサインが出た。
ソフトバンクのプロジェクトとして15年にサービスを開始。
アスクルのB2C通販サイト「LOHACO」の輸送モードとして運用を重ねてPDCAサイクルを回した。
その仕組みが安定したのを確認して17年5月にソフトバンクから分離・独立、現在のマジカルムーブが誕生した。
一般的な宅配事業者とは違い、マジカルムーブはITやテクノロジーといった側面から現状のラストワンマイルに潜む問題を特定・分析し、その解決のための仕組みづくりを行う。
ECの商流の末端に当たる宅配部分においてユーザーエクスペリエンス(UX)の質を高めることに主眼を置く。
「EC産業に必要なものは何かというところから、逆算してサービス展開することから、既存の宅配事業者にはない新しい価値を提供できる」と武藤社長。
スキャッチは、マジカルムーブが開発した独自のAIアルゴリズムで配車組みや物量予測、ルート最適化などを行い、その結果を基にパートナーの地域配送会社が現場を回すというスキームだ。
ビジネスモデル自体は既存の宅配会社と大きく変わらない。
荷物一つ当たりの配送単価を設定してEC事業者と個別契約を交わしている。
一方でラストワンマイルは配送協力会社に委託料を支払う。
現在は首都圏(東京、神奈川、千葉)と大阪の一部地域を対象にしている。
その再配達率は1・7パーセント。
国土交通省が宅配大手3社の再配達率を調査(19年4月)した全国平均16パーセント、都市部18パーセントと比べて格段に低い。
置き配の効果も大きいが、早朝・深夜の時間指定の刻みを大手宅配会社の半分、1時間幅で設定しているため、そもそも在宅率が高い。
この他、スキャッチのサービスの主な特徴として、朝6時から深夜の24時までに受け取りができる幅広いタイムゾーン、注文完了後から最短7時間で購入者の元に荷物を届ける配送スピード、配送の効率化や利便性を高めるテクノロジー──の三つが挙げられる。
ECに特化した配送能力を受け、LOHACOの他にもファッション通販の「LOCONDO」、空港から自宅に荷物を配送するJALエービーシーの「空港宅配サービス」など、大手荷主がECサービスの足としてスキャッチを利用している。
荷物の受取人はアプリのダウンロードなどの余計な手間はかからない。
買い物客が各社のECサイトで、早朝や深夜の時間指定、または最短の配送オプションを選択した場合などに、EC事業者側がスキャッチに配送依頼を行う。
つまり裏方だ。
万が一、荷物を受け取り損ねた時だけ、スキャッチのサービスサイトから、不在連絡票に書かれている指定の番号を入力することで再配達を依頼する。
非接触の荷物受け取りについても対策を講じている。
3月に、受け取りサインをなくすための施策としてQRコードの活用を発表した。
受取人は、荷物を届ける予定時間を知らせるメールの中に記載されたURLにアクセスしてQRコードを表示する。
配送員がそれを手持ちの端末で読み込むことによって受領確認に代える。
置き配も二つのパターンを運用している。
置き配でも到着時に配達員がベルを押してインターホン越しに受取人と会話して配達を伝えるサービスを用意している。
通常の置き配でも、届けた荷物を写真で撮影して、受取人がマイページで確認できるようにしている。
多様な受け取り方を可能にすることで利用者のニーズを満たしている。
イオンネットスーパーの配達を開始 マジカールムーブは今年5月、イオンリテールが運営するECサービス「イオンネットスーパー」の配送パートナーに指名された。
都内の一部エリアを対象に、ネットスーパーの商品をスキャッチで自宅に届ける。
スキャッチが生鮮品を取り扱うのはこれが初めて。
常温品と比べてオペレーションのハードルが上がる。
それでも標準化を徹底することで、配送員の負担を最小限に抑制したという。
元々スキャッチのサービスは、ネットスーパーの物流ニーズと相性がいい。
一つはスピード。
当日配達に対応できる。
そしてタイムゾーン。
10時~20時の時間帯は他の宅配会社と同様の2時間刻みだが、前述の通り6時~10時および20時~24時は1時間幅で指定できる。
既存の宅配会社ではこれに対応できないため、ネットスーパーの多くは専用便を貸切で抱え込んでいる。
それが固定費となり、また配送キャパシティーの制約ともなっている。
スキャッチを利用することで課題を解消できる。
しかも、スキャッチはテクノロジーを活用してサービス品質を改善していく仕組みを備えている。
運用で問題が生じる度に現場から発されるフィードバックをシステムに蓄積してオペレーションに反映している。
運用を重ねるごとにサービスの質が上がっていく。
マジカルムーブが新しくローンチしたスケールでは、スキャッチ向けに開発したシステムを、第三者にソリューションとして提供する。
既存の運送事業者や自社で商品配送を行う小売りをターゲットとしている。
スケールの管理者向けの配送管理アプリケーションは、注文データの登録・編集や配送ステータスの確認などの機能を備えている。
一方、荷物の受取人にはAIが予測した荷物の到着予定時間や配送状況を可視化する機能をスマホアプリとして提供する。
スケールは既に自律走行ロボット(AMR)の配送アプリケーションとしても活用されている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のAMRを活用した新たな配送サービスを実現するための公募事業に採択されて検証・評価を受けた。
武藤社長は「われわれのプロダクトを通じてデリバリーが効率化・自動化されることで、よりたくさんの人々がより多くの場面で便利なサービスを利用できるようになる。
その結果としてeコマースのマーケットがどんどん大きくなっていく。
それがわれわれの目指していることだ」という。
オプションにあった「最短配送」で注文したところ、「Scatch!」(スキャッチ)という名前の配送業者から当日中に荷物が届いた。
調べてみると、ソフトバンク子会社のMagicalMove(マジカルムーブ、東京・港区本社)が提供している宅配サービスだと分かった。
早速、取材に向かった。
マジカルムーブは、創業者の武藤雄太社長が、「物流をECが発展する際のボトルネックにはさせない」という思いから設立したラストワンマイル企業だ。
現在はEC宅配事業のスキャッチならびに、9月からローンチしたSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)型の配送管理サービス「Scalle」(スケール)の二つのサービスを展開している。
武藤社長は自身が宅配・ネットサービスで荷物をスムーズに受け取れなかった経験から、2014年にソフトバンクの社内ベンチャー制度でECの配達部分に着目した新規事業のプレゼンを行った。
そのアイデアがソフトバンクグループの孫正義代表(当時)の目に止まり事業化のゴーサインが出た。
ソフトバンクのプロジェクトとして15年にサービスを開始。
アスクルのB2C通販サイト「LOHACO」の輸送モードとして運用を重ねてPDCAサイクルを回した。
その仕組みが安定したのを確認して17年5月にソフトバンクから分離・独立、現在のマジカルムーブが誕生した。
一般的な宅配事業者とは違い、マジカルムーブはITやテクノロジーといった側面から現状のラストワンマイルに潜む問題を特定・分析し、その解決のための仕組みづくりを行う。
ECの商流の末端に当たる宅配部分においてユーザーエクスペリエンス(UX)の質を高めることに主眼を置く。
「EC産業に必要なものは何かというところから、逆算してサービス展開することから、既存の宅配事業者にはない新しい価値を提供できる」と武藤社長。
スキャッチは、マジカルムーブが開発した独自のAIアルゴリズムで配車組みや物量予測、ルート最適化などを行い、その結果を基にパートナーの地域配送会社が現場を回すというスキームだ。
ビジネスモデル自体は既存の宅配会社と大きく変わらない。
荷物一つ当たりの配送単価を設定してEC事業者と個別契約を交わしている。
一方でラストワンマイルは配送協力会社に委託料を支払う。
現在は首都圏(東京、神奈川、千葉)と大阪の一部地域を対象にしている。
その再配達率は1・7パーセント。
国土交通省が宅配大手3社の再配達率を調査(19年4月)した全国平均16パーセント、都市部18パーセントと比べて格段に低い。
置き配の効果も大きいが、早朝・深夜の時間指定の刻みを大手宅配会社の半分、1時間幅で設定しているため、そもそも在宅率が高い。
この他、スキャッチのサービスの主な特徴として、朝6時から深夜の24時までに受け取りができる幅広いタイムゾーン、注文完了後から最短7時間で購入者の元に荷物を届ける配送スピード、配送の効率化や利便性を高めるテクノロジー──の三つが挙げられる。
ECに特化した配送能力を受け、LOHACOの他にもファッション通販の「LOCONDO」、空港から自宅に荷物を配送するJALエービーシーの「空港宅配サービス」など、大手荷主がECサービスの足としてスキャッチを利用している。
荷物の受取人はアプリのダウンロードなどの余計な手間はかからない。
買い物客が各社のECサイトで、早朝や深夜の時間指定、または最短の配送オプションを選択した場合などに、EC事業者側がスキャッチに配送依頼を行う。
つまり裏方だ。
万が一、荷物を受け取り損ねた時だけ、スキャッチのサービスサイトから、不在連絡票に書かれている指定の番号を入力することで再配達を依頼する。
非接触の荷物受け取りについても対策を講じている。
3月に、受け取りサインをなくすための施策としてQRコードの活用を発表した。
受取人は、荷物を届ける予定時間を知らせるメールの中に記載されたURLにアクセスしてQRコードを表示する。
配送員がそれを手持ちの端末で読み込むことによって受領確認に代える。
置き配も二つのパターンを運用している。
置き配でも到着時に配達員がベルを押してインターホン越しに受取人と会話して配達を伝えるサービスを用意している。
通常の置き配でも、届けた荷物を写真で撮影して、受取人がマイページで確認できるようにしている。
多様な受け取り方を可能にすることで利用者のニーズを満たしている。
イオンネットスーパーの配達を開始 マジカールムーブは今年5月、イオンリテールが運営するECサービス「イオンネットスーパー」の配送パートナーに指名された。
都内の一部エリアを対象に、ネットスーパーの商品をスキャッチで自宅に届ける。
スキャッチが生鮮品を取り扱うのはこれが初めて。
常温品と比べてオペレーションのハードルが上がる。
それでも標準化を徹底することで、配送員の負担を最小限に抑制したという。
元々スキャッチのサービスは、ネットスーパーの物流ニーズと相性がいい。
一つはスピード。
当日配達に対応できる。
そしてタイムゾーン。
10時~20時の時間帯は他の宅配会社と同様の2時間刻みだが、前述の通り6時~10時および20時~24時は1時間幅で指定できる。
既存の宅配会社ではこれに対応できないため、ネットスーパーの多くは専用便を貸切で抱え込んでいる。
それが固定費となり、また配送キャパシティーの制約ともなっている。
スキャッチを利用することで課題を解消できる。
しかも、スキャッチはテクノロジーを活用してサービス品質を改善していく仕組みを備えている。
運用で問題が生じる度に現場から発されるフィードバックをシステムに蓄積してオペレーションに反映している。
運用を重ねるごとにサービスの質が上がっていく。
マジカルムーブが新しくローンチしたスケールでは、スキャッチ向けに開発したシステムを、第三者にソリューションとして提供する。
既存の運送事業者や自社で商品配送を行う小売りをターゲットとしている。
スケールの管理者向けの配送管理アプリケーションは、注文データの登録・編集や配送ステータスの確認などの機能を備えている。
一方、荷物の受取人にはAIが予測した荷物の到着予定時間や配送状況を可視化する機能をスマホアプリとして提供する。
スケールは既に自律走行ロボット(AMR)の配送アプリケーションとしても活用されている。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のAMRを活用した新たな配送サービスを実現するための公募事業に採択されて検証・評価を受けた。
武藤社長は「われわれのプロダクトを通じてデリバリーが効率化・自動化されることで、よりたくさんの人々がより多くの場面で便利なサービスを利用できるようになる。
その結果としてeコマースのマーケットがどんどん大きくなっていく。
それがわれわれの目指していることだ」という。
