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2020年11月号
特集

207 受取人のGPSで在宅を判定して宅配効率化

ラストワンマイル協同組合と実証実験  スタートアップの207(ニーマルナナ、東京・目黒区本社)は「いつでもどこでもモノがトドク世界へ」をビジョンに掲げて、再配達問題の解決に向けたソリューションを世に送り出している。
 創業者の高柳慎也社長は、バックパッカーとして世界中を旅行していた際、自宅の家賃をずっと払い続けなければならないことに疑問を感じて、トランクルームに興味を持った。
それが縁で帰国後、クラウド収納サービス「ミニクラ」を展開する寺田倉庫が出資するサマリーに入社。
倉庫に送った荷物をスマートフォンアプリで確認・管理できる「サマリーポケット」事業に参画する。
 しかし、サマリーポケットが物流を宅配会社に依存していることに気付き、興味の対象が物流に移った。
そして2017年の宅配クライシスを受け、ラストワンマイルの課題をテクノロジーによって解決することを目指して、18年に207を創業した。
 高柳社長は「物流という切り口からアプローチして、『モノを所有する』という概念を変えたい。
いずれ物流は自動化される。
それを前提にモノを所有するのではなく、必要なモノが必要な時に必要な場所に届く世界を実現したい」という。
 当面の課題は再配達問題だ。
スマートフォンのGPSを使えば受取人の位置情報は把握できる。
受取人が自分の位置情報をドライバーに公開すれば問題は解決される。
技術的には難しいことではないはずだ。
 配達ノウハウの問題もテクノロジーを使えば解消できる。
現状では届け先の在宅情報や駐車場所、効率の良いルート組みなどが、ドライバー個人のノウハウとして属人化している。
それをシステム化することで誰でも配達できるようになる。
 現行の時間指定配達は変える必要がある。
基本的には一筆書きの要領で配達ルートを組むのが一番効率が良い。
ところが今は時間指定がそれをできなくしている。
やはりアプリを使うことで、この問題も解決できる。
アイデアは次々に湧いてきた。
 そこから受取人向け再配達解消アプリ「TODOCU」、配送員向け配送業務効率化アプリ「TODOCUサポーター」、TODOCUから得られたデータを基にギグワーカーの配達能力を底上げして一つの宅配会社のように組織する「スキマ便」──の三つのサービスが生まれた。
 TODOCUは、荷物の受取人が配送員と双方向コミュニケーションをとるためのツールだ。
リリースは18年5月。
既に数十万人がアプリをダウンロードしている。
一方、TODOCUサポーターは配送員向け。
宅配会社のドライバーや軽トラックの個人事業主、ギグワーカーなど現在、2千人以上が利用している。
 受取人はTODOCUに在宅情報を公開したり置き配を指定したりすることで確実に荷物を受け取れる。
一方、配送員はTODOCUサポーターで受取人の情報を把握した上で、その日の配送ルートを組み立てられる。
受取人のGPS情報や指定がない場合は、配送員から受取人にSMSを送って在宅か尋ねることができる。
 受取人が在宅か不在かを回答する方法は三つある。
TODOCUアプリをダウンロードしている場合、スマートフォンのGPS機能がオンであれば自動で回答する。
オフの場合は配達員の問い合わせに対してアプリで「在宅」もしくは「不在」のボタンを押す。
アプリをダウンロードしていない場合にはSMSで返信する。
SMSに帰宅予定時間を提示できることもできる。
 207はラストワンマイル協同組合と連携してTODOCUサポーターの利便性を確認・検証するための実証実験を、19年9月から東京都品川区・大田区・目黒区を対象エリアに約4カ月間実施した。
 ラストワンマイル協同組合の組合員がTODOCUサポーターを利用して、まずは約3万件の配達を行った。
受取人の40パーセントから在宅情報に関する回答を取得した。
その結果、単位時間当たりの配達個数は従来比の188・9パーセントに上昇した。
続いて配達規模を約20万件に拡大して実験を行ったところ、在宅情報の回答率はやはり40パーセントだった。
 高柳社長は「SMS経由の回答が多かったのは意外だった。
実験する前までは受取人にアプリをダウンロードしてもらわなければ仕組みとして成り立たないと考えていた。
それが実際には受取人側のアプリがなくても、TODOCUサポーターだけでも機能することが分かった」という。
ギグワーカーで「スキマ便」  実証実験を通じてアプリの使い勝手やサービスを改善することもできた。
従来はドライバーが荷物の登録を手入力する必要があり、面倒だとの声が挙がった。
そこでTODOCUサポーターにOCR機能を付加、伝票を撮影することで自動入力できるようにした。
オフィスビルや集合住宅など、同じ住所の届け先に複数の荷物がある場合には、一目で分かるようにマップ上の配達先の表示に届け先の軒数を示したバッジをつけた。
 受取人からの意見を反映して置き配の運用も開始した。
当初は配送員が受取人の不在を確認すると荷物を拠点に持ち帰っていた。
それを改め受取人が配送オプションとして置き配をその都度、選べるようにした。
 TODOCUもTODOCUサポーターとも現状では無料。
207には収入源がない。
物流会社から受託したシステム開発や外部からの資金調達で当面の運営費を確保している状態だ。
今年8月にベガコーポレーションおよび環境エネルギー投資から計8千万円の出資を受けた。
まずは二つのアプリの普及を最優先する。
 今年5月、207はTODOCUとTODOCUサポーターのトランザクション情報を基に開発した宅配サービス「スキマ便」をスタートした。
207が物流会社や小売店の「荷物宅配」、飲食店の「出前宅配」などの依頼を受けて、TODOCUサポーターに集荷と配達を依頼する。
 207にはTODOCUとTODOCUサポーターのやり取りを通して各戸の在宅傾向、宅配ボックスの有無、配達メモなどの情報が蓄積されている。
それを反映した配達方法をTODOCUサポーターに指示する。
未経験のギグワーカーでも空いた時間を生かして効率良く仕事ができる。
 現在は渋谷駅・恵比寿駅・中目黒駅からそれぞれ半径3キロメートルをサービス対象エリアとしている。
荷物の集荷場所が対応エリア外にある場合は207がトラックを手配して集荷、エリア内の飲食店やオフィスの空きスペースなどを借りた保管スペースに荷物を持ち込む。
 同社は近くラストワンマイルの配送ルート最適化AIの開発・提供を行うオプティマインドと業務提携を結ぶ見込みだ。
オプティマインドの配送ルート作成技術にTODOCUサポーターの在宅・不在情報を組み込むことで精度を上げる。
高柳社長は「SMSの他に『LINE』でも在宅・不在を知らせることができるようにするなど、配送員と受取人を結ぶチャネルをさらに増やしていきたい」という。

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