2020年11月号
特集
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海外論文 ビッグデータ時代の物流革新・最適化戦略
イントロダクション
中国のECが拡大を続けている。
中国商務部によると、2018年の中国のEC取引額は前年比8・5%増の4・48兆ドル(約480兆円)に達した。
そのうちネット通販は1・25兆ドルで、前年比23・9%増となっている。
一方、物流企業による荷物の取扱個数は、前年から26・6%増えておよそ5070億個となった。
EC関連の職に従事する労働者数も、前年比10・6%増の4700万人に上っている。
人々の日常生活において、ECの存在は日を追うごとに大きくなっている。
今のところネット通販企業には、商品配送のモードとして、①自社物流、②3PLへの委託、③両者の併用、という三つの選択肢がある。
配送モードの選択は、ロジスティクスのコストと質を大きく左右することから、ネット通販企業の競争力を評価する重要な指標として、ロジスティクスが、一躍脚光を浴びるようになっている。
ビッグデータ時代を迎え、ECとロジスティクスの関係は、ますます強まったといえるだろう。
ビッグデータ時代のEC物流の特徴は、情報の一元化、配送リソースのシェア、データリソースの統合などである。
昨今、中国および海外の数多の研究者が、EC物流の配送モデルや手法について提言を行っている。
そうした研究は主に、配送モードの基礎的研究や計算モデルの見直し、問題解決のためのアプリケーションなどを対象としている。
しかしながら、ビッグデータを活用したEC物流には、理論レベルにおいてさえ、次のような不十分な点が認められる。
(1)ビッグデータ時代にEC物流がどのように発展していくのか、そのプロセスの全容究明がなされていない。
そのため今後の発展について、明確な方向性が見出せていない。
(2)EC物流の深化と発展に伴い、さまざまな課題が浮上している。
そうであるにもかかわらず、ビッグデータ時代のEC物流の基本的な構成要素、範囲、理論的基礎などについての検討が不十分である。
したがって、現状の研究ステータスを体系的に分類し、今後の研究の方向性に関する合理的な提言を行うことが急務となっている。
EC物流におけるネット通販企業の最大の課題は、ビッグデータの解析およびマイニングを活用しつつ、どのように配送サービスの効率を改善していくかということである。
以下、本稿ではEC物流におけるデータ処理、ビジネスプロセス、ルート最適化戦略について検討を行う。
また、EC物流イノベーションの最適化戦略を提案するため、商品の販売と配送を一括りにして最適化する手法についても見ていく。
ビッグデータ環境下におけるEC物流 1.非効率的なデータ処理 EC物流におけるビッグデータの活用は、今のところ特定のサービス分野に限られている。
それを全ての分野へと拡大させたくても、解析処理技術が追いついていかないのが現状である。
ビッグデータの解析処理技術には依然として改善の余地があり、今後のさらなる発展が期待される。
2.イノベーション戦略の欠如 ビッグデータの登場以来、新たなテクノロジーが次々に生み出されて、さまざまな業界で活用されてきた。
ビッグデータ、そして物流サービスを向上させることの重要性を認識することは、ECのスタートアップの死命を制するといっても過言ではない。
EC物流のイノベーション戦略とサービスレベルを向上するには、オープン系あるいはWeb系のアプリケーションシステムを完備する必要がある。
戦略策定には、膨大なデータ処理が欠かせない。
そのためにアプリケーションシステムの内部アーキテクチャーは、煩雑なデータ処理の影響を被ることになる。
そのことがEC物流の改善を阻む一因ともなっている。
3.配送プロセス最適化という課題 EC物流向けに物流・配送センターを構築するという局面においては、企業のケイパビリティが如実に現れる。
そしてその成否は、もっぱら適切なタイミングと立地の選択如何にかかっている。
EC用物流センターの業務効率と安全性には、デザインとプランニングの合理性が、広範囲かつ直接的な影響を与える。
棚入れフェーズとピッキングフェーズの不整合、入庫担当と出庫担当の部門間の軋轢、長過ぎる作業動線など、従来型のEC物流センターは業務プロセスの最適化が徹底しておらず、課題が山積している。
4.物流企業への甚大な影響 EC物流への期待に応えて配送プロセスを透明化し、リアルタイムのモニタリングを実現するには、莫大な量のデータ処理が欠かせない。
ますます競争の激しくなる物流マーケットにおいて、主戦場は価格競争からサービス内容へと移行しつつある。
5.3PLの課題 ビッグデータの時代を迎え、多くのEC企業が3PLという選択肢を選んでいる。
ネット通販企業が自社の物流を委託する先が3PLであり、3PLは独自の物流管理プラットフォームを持ち、製品と配送の情報を管理運営する。
通販企業が3PLを選ぶ理由には、物流の質と効率の改善だけではなく、顧客満足度の向上という側面もある。
ところがインフラや人材の質などの要因により、3PLによるEC物流の効率は依然として低迷している。
6.標準化システムの未整備 物流効率化には、コンテナ・パレット・トラック・棚などの輸送機材の標準化が欠かせない。
他方で、情報システムも統一されている必要がある。
すなわち、サプライチェーンの全てのリンクが同一の規準にのっとり、全ての情報システムが、データ共有と情報交換できるように相互接続されていることが望ましい。
主な課題とその影響 1.データ処理の方法 ネット通販はビッグデータの広がりと共に急速に成長した。
その結果、輸送量が増えただけではなく、関連するデータ量も指数関数的に増加することになった。
そうした膨大な量のデータが、従来どおりの方法で取得・処理されるのであれば、通販企業にとってその取り扱いは重い負担となってしまう。
ビッグデータの活用においては、あらゆる物流情報を処理することになるが、それによってEC物流の効率化が促進され、さまざまな要望に応えることが可能になる。
2.高まる情報の利用価値 ネット通販の急速な普及により、その物流に付随するデータも大量に生み出されるようになった。
こうしたデータをフル活用するには、非構造化データを構造化データへと変換する必要がある。
ビッグデータ時代には、情報ロスを回避して利用価値を高めるため、データマネジメントを専門とする組織が設けられることになる。
3.顧客満足度の改善 右肩上がりで発展し続けるネット通販企業と、それに足並みを合わせるように進化してきたビッグデータ技術は、顧客満足度の改善にも役立てることができる。
従来型のEC物流には、サービスレベルを改善する余地が乏しかった。
しかしビッグデータ時代には、AIやデータマイニングの手法を用いることで、顧客の購買履歴の分析が可能になる。
それによって顧客一人一人に合わせて物流をカスタマイズできるようになり、それが顧客満足度の向上へとつながる。
4.持続可能な開発目標との相互作用 (1)EC物流の発展は、物流業界全体の成長および物流システムの改善を加速する。
ただし、そのためには業界全体にわたるリソースの再配置が必要であり、それがロジスティクスプロバイダーの成長を促すことにもつながる。
(2)EC物流の発展は、もうひとつの“ロジスティクススペース”を創り出す。
それが物流の第2の空間、すなわち“e-ロジスティクス”と呼ばれるものである。
(3)EC物流の発展は、物流の情報化を促進する。
ネット通販は情報化という要件を前提とするからである。
(4)EC物流の発展は、物流とビジネスフローの融合を促進する。
オンライン処理と配送という過程において、物流とビジネスフローの垣根は今後ますます低くなっていく。
(5)EC物流の進展は、物流関連のアプリケーション開発を促進する。
ネット通販においては、配送のスピードと正確さが重視される。
そのためにはバーコード技術、無線技術、電子データ交換(EDI)、情報およびネットワーク技術など、多岐にわたる最新テクノロジーの存在が必須となる。
ビッグデータ時代のEC物流モデル ビッグデータ時代には、一般的なデータベースソフトウエアでは、収集・保管・管理・解析がとうてい追いつかないほど膨大なデータ量を取り扱うことになる。
量の多さ、データフローの速さ(速度)、多様性、価値密度の低さ、という四つがビッグデータの特徴である。
ITの進化にともなってクラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)、ソーシャル・ネットワーク等々が、広く人々の日常生活や仕事の場で活用されるようになり、多種多様なデータが幾何級数的に増加している。
米インターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)社の調べによると、全世界のデータ量は年々倍増していて、2025年には175ゼタバイト(ZB)に達する見通しだという。
その中でも世界最大規模となる中国の取扱量は48・6ゼタバイトに上り、全世界の27・8%を占めることになると予想されている。
ビッグデータには貴重な情報や知識が原石の状態で埋もれている。
こうしたデータを解析・データマイニングすることにより、企業は顧客サービスの向上・コスト削減・リソースの合理的な配分を実現し、イノベーティブなビジネスモデルと管理手法を手に入れることができる。
次に、ビッグデータという環境下におけるEC物流のマネジメントモデルを検討してみよう。
まずデータ収集の段階で、ネット通販企業・ロジスティクス企業・エンドユーザーのそれぞれの情報が、ビッグデータ・プラットフォームという形で統合される。
そうして集められたデータを、非構造化データから構造化データへと変換するため、ビッグデータ技術を用いた解析・データマイニング・抽出が施される。
その目的はデータとその利用価値の向上にある。
ハイレベルのサービスとカスタマイズを実現することで、より多くの顧客獲得につなげることがそのゴールである。
そのマネジメントモデルを図1に示す。
このモデルはデータの収集・前処理・保管・解析およびマイニングから構成される。
データの解析とマイニングにより、さまざまなアプリケーションプラットフォームを利用する顧客の情報・手順・機能・知識・フィードバック・バックアッププランなどが得られる。
イノベーションと最適化戦略 EC物流の戦略および物流モードに関する現在のビッグデータ技術は、解析と処理の方法がどれも代わり映えしなくて非効率的であり、物流プロセスも最適化されておらず無駄が多い──ということがくり返し指摘されている。
1.物流情報と販売情報のハイブリッド EC物流が急速に進化しているとはいっても、今のところ主たる投資対象はあくまでもECプラットフォームにあり、中国社会における物流のリソースはいまだ十分とはいえず、キャパシティも不足している。
オンライン販売とそのロジスティクスの間には、有機的な関連性がないのである。
しかしながら、購入した商品の情報やドア・ツー・ドアのデリバリー、分割払いサービスなどを提供できなければ、顧客満足度が向上することはないであろう。
だからこそ、商品の販売とロジスティクスを同時に最適化する手法として、ビッグデータプラットフォームが必要とされるのである。
ビッグデータプラットフォームは配送のプロセスで生じる情報と、通販企業側のもつ商品の販売情報を結びつける。
異なる2種類の情報を同時に最適化することで、EC物流のサービスレベルを改善しようという狙いである。
その事例としては、アリババグループの物流プラットフォームであるCainiao Logistics(菜鳥網絡)、JD.com(京東商城)、Yuci Logisticsなどがある。
2.ビジネスプロセスの最適化戦略 次に、実際の条件に沿った形で、EC物流のビジネスプロセスの最適化と改善の方法を見てみよう。
システム・レイアウト・デザインとは、各ファシリティを整然とシステマティックに配置する手法のことである。
これにより各機能領域の業務負荷、および業務ユニット同士の相互関係に則して、各業務を配置することが可能となる。
P(product=商品)、Q(quality=品質)、R(route=ルート)、S(service=サービス)、T(time=時間)という基本的要素の定性分析および定量分析により、各機能領域の相対的位置関係が決まる。
適切なレイアウトの選択にはPQ分析(Product=品目とQuality=量を基にした数値分析手法)が利用される。
その目的は、ワークフローの必要性および合理性の検証と、さらなる改善である。
業務ユニット同士の相互関係は、最適の組み合わせを得るために参照される。
最も経済的で合理的なプランを得るためには、不断の修正と選択が欠かせない。
システム・レイアウト・デザインによるEC物流の最適化プロセスを図2に示す。
3.配送ルート最適化 ネット通販物流のプロセスにおいて、担当者は通常、自分の経験則や市場の分析結果に基づいて意思決定を行う。
しかし、経験則はあくまで主観的なものに過ぎず、市場分析の結果も判明するのには時間がかかる。
他方、続々と大量に生み出されるデータは客観的かつリアルタイムのものであり、市場と顧客のニーズを正確に反映している。
配送ルートの選定に関係する要因を詳しく分析するのに、ネット通販企業がこのようなビッグデータを利用しない手はない。
EC物流の配送ルートに影響を及ぼす要因の分析には、定量分析が用いられる。
そのようにして配送ルートを選ぶことで、科学的・合理的・効果的なコスト削減が可能になる。
それが全体的な配送効率を改善し、交通渋滞による遅延などの問題も解決する。
EC物流の持続可能な発展が実現する。
EC物流のビジネスマネジメントに おけるビッグデータ技術 EC物流のビジネスマネジメントへのビッグデータ活用は、分野を大別すれば輸送、倉庫、配送の三つに分けられる(図3参照)。
輸送ビジネスマネジメントでは、輸送工程で生じるデータの処理および分析にビッグデータを用いることで、輸送リソースのアロケーションを最適化し、輸送工程のコントロールとインテリジェントマネジメントが実現する。
倉庫分野では、必要な商品や在庫の厳密な管理が可能となり、予測精度が向上する。
そしてそうした効率の改善による保管コストの低下が、ロジスティクスの透明化や可視化につながる。
最終的な配送という局面では、ダイナミックな配送スキームを支える種々のデータ、すなわち道路状況・コスト・顧客数などを、網羅的に収集・解析し、リアルタイムの情報を顧客に提供することで、配送効率のみならずサービス品質も向上することになる。
(翻訳構成 大矢英樹)
中国商務部によると、2018年の中国のEC取引額は前年比8・5%増の4・48兆ドル(約480兆円)に達した。
そのうちネット通販は1・25兆ドルで、前年比23・9%増となっている。
一方、物流企業による荷物の取扱個数は、前年から26・6%増えておよそ5070億個となった。
EC関連の職に従事する労働者数も、前年比10・6%増の4700万人に上っている。
人々の日常生活において、ECの存在は日を追うごとに大きくなっている。
今のところネット通販企業には、商品配送のモードとして、①自社物流、②3PLへの委託、③両者の併用、という三つの選択肢がある。
配送モードの選択は、ロジスティクスのコストと質を大きく左右することから、ネット通販企業の競争力を評価する重要な指標として、ロジスティクスが、一躍脚光を浴びるようになっている。
ビッグデータ時代を迎え、ECとロジスティクスの関係は、ますます強まったといえるだろう。
ビッグデータ時代のEC物流の特徴は、情報の一元化、配送リソースのシェア、データリソースの統合などである。
昨今、中国および海外の数多の研究者が、EC物流の配送モデルや手法について提言を行っている。
そうした研究は主に、配送モードの基礎的研究や計算モデルの見直し、問題解決のためのアプリケーションなどを対象としている。
しかしながら、ビッグデータを活用したEC物流には、理論レベルにおいてさえ、次のような不十分な点が認められる。
(1)ビッグデータ時代にEC物流がどのように発展していくのか、そのプロセスの全容究明がなされていない。
そのため今後の発展について、明確な方向性が見出せていない。
(2)EC物流の深化と発展に伴い、さまざまな課題が浮上している。
そうであるにもかかわらず、ビッグデータ時代のEC物流の基本的な構成要素、範囲、理論的基礎などについての検討が不十分である。
したがって、現状の研究ステータスを体系的に分類し、今後の研究の方向性に関する合理的な提言を行うことが急務となっている。
EC物流におけるネット通販企業の最大の課題は、ビッグデータの解析およびマイニングを活用しつつ、どのように配送サービスの効率を改善していくかということである。
以下、本稿ではEC物流におけるデータ処理、ビジネスプロセス、ルート最適化戦略について検討を行う。
また、EC物流イノベーションの最適化戦略を提案するため、商品の販売と配送を一括りにして最適化する手法についても見ていく。
ビッグデータ環境下におけるEC物流 1.非効率的なデータ処理 EC物流におけるビッグデータの活用は、今のところ特定のサービス分野に限られている。
それを全ての分野へと拡大させたくても、解析処理技術が追いついていかないのが現状である。
ビッグデータの解析処理技術には依然として改善の余地があり、今後のさらなる発展が期待される。
2.イノベーション戦略の欠如 ビッグデータの登場以来、新たなテクノロジーが次々に生み出されて、さまざまな業界で活用されてきた。
ビッグデータ、そして物流サービスを向上させることの重要性を認識することは、ECのスタートアップの死命を制するといっても過言ではない。
EC物流のイノベーション戦略とサービスレベルを向上するには、オープン系あるいはWeb系のアプリケーションシステムを完備する必要がある。
戦略策定には、膨大なデータ処理が欠かせない。
そのためにアプリケーションシステムの内部アーキテクチャーは、煩雑なデータ処理の影響を被ることになる。
そのことがEC物流の改善を阻む一因ともなっている。
3.配送プロセス最適化という課題 EC物流向けに物流・配送センターを構築するという局面においては、企業のケイパビリティが如実に現れる。
そしてその成否は、もっぱら適切なタイミングと立地の選択如何にかかっている。
EC用物流センターの業務効率と安全性には、デザインとプランニングの合理性が、広範囲かつ直接的な影響を与える。
棚入れフェーズとピッキングフェーズの不整合、入庫担当と出庫担当の部門間の軋轢、長過ぎる作業動線など、従来型のEC物流センターは業務プロセスの最適化が徹底しておらず、課題が山積している。
4.物流企業への甚大な影響 EC物流への期待に応えて配送プロセスを透明化し、リアルタイムのモニタリングを実現するには、莫大な量のデータ処理が欠かせない。
ますます競争の激しくなる物流マーケットにおいて、主戦場は価格競争からサービス内容へと移行しつつある。
5.3PLの課題 ビッグデータの時代を迎え、多くのEC企業が3PLという選択肢を選んでいる。
ネット通販企業が自社の物流を委託する先が3PLであり、3PLは独自の物流管理プラットフォームを持ち、製品と配送の情報を管理運営する。
通販企業が3PLを選ぶ理由には、物流の質と効率の改善だけではなく、顧客満足度の向上という側面もある。
ところがインフラや人材の質などの要因により、3PLによるEC物流の効率は依然として低迷している。
6.標準化システムの未整備 物流効率化には、コンテナ・パレット・トラック・棚などの輸送機材の標準化が欠かせない。
他方で、情報システムも統一されている必要がある。
すなわち、サプライチェーンの全てのリンクが同一の規準にのっとり、全ての情報システムが、データ共有と情報交換できるように相互接続されていることが望ましい。
主な課題とその影響 1.データ処理の方法 ネット通販はビッグデータの広がりと共に急速に成長した。
その結果、輸送量が増えただけではなく、関連するデータ量も指数関数的に増加することになった。
そうした膨大な量のデータが、従来どおりの方法で取得・処理されるのであれば、通販企業にとってその取り扱いは重い負担となってしまう。
ビッグデータの活用においては、あらゆる物流情報を処理することになるが、それによってEC物流の効率化が促進され、さまざまな要望に応えることが可能になる。
2.高まる情報の利用価値 ネット通販の急速な普及により、その物流に付随するデータも大量に生み出されるようになった。
こうしたデータをフル活用するには、非構造化データを構造化データへと変換する必要がある。
ビッグデータ時代には、情報ロスを回避して利用価値を高めるため、データマネジメントを専門とする組織が設けられることになる。
3.顧客満足度の改善 右肩上がりで発展し続けるネット通販企業と、それに足並みを合わせるように進化してきたビッグデータ技術は、顧客満足度の改善にも役立てることができる。
従来型のEC物流には、サービスレベルを改善する余地が乏しかった。
しかしビッグデータ時代には、AIやデータマイニングの手法を用いることで、顧客の購買履歴の分析が可能になる。
それによって顧客一人一人に合わせて物流をカスタマイズできるようになり、それが顧客満足度の向上へとつながる。
4.持続可能な開発目標との相互作用 (1)EC物流の発展は、物流業界全体の成長および物流システムの改善を加速する。
ただし、そのためには業界全体にわたるリソースの再配置が必要であり、それがロジスティクスプロバイダーの成長を促すことにもつながる。
(2)EC物流の発展は、もうひとつの“ロジスティクススペース”を創り出す。
それが物流の第2の空間、すなわち“e-ロジスティクス”と呼ばれるものである。
(3)EC物流の発展は、物流の情報化を促進する。
ネット通販は情報化という要件を前提とするからである。
(4)EC物流の発展は、物流とビジネスフローの融合を促進する。
オンライン処理と配送という過程において、物流とビジネスフローの垣根は今後ますます低くなっていく。
(5)EC物流の進展は、物流関連のアプリケーション開発を促進する。
ネット通販においては、配送のスピードと正確さが重視される。
そのためにはバーコード技術、無線技術、電子データ交換(EDI)、情報およびネットワーク技術など、多岐にわたる最新テクノロジーの存在が必須となる。
ビッグデータ時代のEC物流モデル ビッグデータ時代には、一般的なデータベースソフトウエアでは、収集・保管・管理・解析がとうてい追いつかないほど膨大なデータ量を取り扱うことになる。
量の多さ、データフローの速さ(速度)、多様性、価値密度の低さ、という四つがビッグデータの特徴である。
ITの進化にともなってクラウドコンピューティング、モノのインターネット(IoT)、ソーシャル・ネットワーク等々が、広く人々の日常生活や仕事の場で活用されるようになり、多種多様なデータが幾何級数的に増加している。
米インターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)社の調べによると、全世界のデータ量は年々倍増していて、2025年には175ゼタバイト(ZB)に達する見通しだという。
その中でも世界最大規模となる中国の取扱量は48・6ゼタバイトに上り、全世界の27・8%を占めることになると予想されている。
ビッグデータには貴重な情報や知識が原石の状態で埋もれている。
こうしたデータを解析・データマイニングすることにより、企業は顧客サービスの向上・コスト削減・リソースの合理的な配分を実現し、イノベーティブなビジネスモデルと管理手法を手に入れることができる。
次に、ビッグデータという環境下におけるEC物流のマネジメントモデルを検討してみよう。
まずデータ収集の段階で、ネット通販企業・ロジスティクス企業・エンドユーザーのそれぞれの情報が、ビッグデータ・プラットフォームという形で統合される。
そうして集められたデータを、非構造化データから構造化データへと変換するため、ビッグデータ技術を用いた解析・データマイニング・抽出が施される。
その目的はデータとその利用価値の向上にある。
ハイレベルのサービスとカスタマイズを実現することで、より多くの顧客獲得につなげることがそのゴールである。
そのマネジメントモデルを図1に示す。
このモデルはデータの収集・前処理・保管・解析およびマイニングから構成される。
データの解析とマイニングにより、さまざまなアプリケーションプラットフォームを利用する顧客の情報・手順・機能・知識・フィードバック・バックアッププランなどが得られる。
イノベーションと最適化戦略 EC物流の戦略および物流モードに関する現在のビッグデータ技術は、解析と処理の方法がどれも代わり映えしなくて非効率的であり、物流プロセスも最適化されておらず無駄が多い──ということがくり返し指摘されている。
1.物流情報と販売情報のハイブリッド EC物流が急速に進化しているとはいっても、今のところ主たる投資対象はあくまでもECプラットフォームにあり、中国社会における物流のリソースはいまだ十分とはいえず、キャパシティも不足している。
オンライン販売とそのロジスティクスの間には、有機的な関連性がないのである。
しかしながら、購入した商品の情報やドア・ツー・ドアのデリバリー、分割払いサービスなどを提供できなければ、顧客満足度が向上することはないであろう。
だからこそ、商品の販売とロジスティクスを同時に最適化する手法として、ビッグデータプラットフォームが必要とされるのである。
ビッグデータプラットフォームは配送のプロセスで生じる情報と、通販企業側のもつ商品の販売情報を結びつける。
異なる2種類の情報を同時に最適化することで、EC物流のサービスレベルを改善しようという狙いである。
その事例としては、アリババグループの物流プラットフォームであるCainiao Logistics(菜鳥網絡)、JD.com(京東商城)、Yuci Logisticsなどがある。
2.ビジネスプロセスの最適化戦略 次に、実際の条件に沿った形で、EC物流のビジネスプロセスの最適化と改善の方法を見てみよう。
システム・レイアウト・デザインとは、各ファシリティを整然とシステマティックに配置する手法のことである。
これにより各機能領域の業務負荷、および業務ユニット同士の相互関係に則して、各業務を配置することが可能となる。
P(product=商品)、Q(quality=品質)、R(route=ルート)、S(service=サービス)、T(time=時間)という基本的要素の定性分析および定量分析により、各機能領域の相対的位置関係が決まる。
適切なレイアウトの選択にはPQ分析(Product=品目とQuality=量を基にした数値分析手法)が利用される。
その目的は、ワークフローの必要性および合理性の検証と、さらなる改善である。
業務ユニット同士の相互関係は、最適の組み合わせを得るために参照される。
最も経済的で合理的なプランを得るためには、不断の修正と選択が欠かせない。
システム・レイアウト・デザインによるEC物流の最適化プロセスを図2に示す。
3.配送ルート最適化 ネット通販物流のプロセスにおいて、担当者は通常、自分の経験則や市場の分析結果に基づいて意思決定を行う。
しかし、経験則はあくまで主観的なものに過ぎず、市場分析の結果も判明するのには時間がかかる。
他方、続々と大量に生み出されるデータは客観的かつリアルタイムのものであり、市場と顧客のニーズを正確に反映している。
配送ルートの選定に関係する要因を詳しく分析するのに、ネット通販企業がこのようなビッグデータを利用しない手はない。
EC物流の配送ルートに影響を及ぼす要因の分析には、定量分析が用いられる。
そのようにして配送ルートを選ぶことで、科学的・合理的・効果的なコスト削減が可能になる。
それが全体的な配送効率を改善し、交通渋滞による遅延などの問題も解決する。
EC物流の持続可能な発展が実現する。
EC物流のビジネスマネジメントに おけるビッグデータ技術 EC物流のビジネスマネジメントへのビッグデータ活用は、分野を大別すれば輸送、倉庫、配送の三つに分けられる(図3参照)。
輸送ビジネスマネジメントでは、輸送工程で生じるデータの処理および分析にビッグデータを用いることで、輸送リソースのアロケーションを最適化し、輸送工程のコントロールとインテリジェントマネジメントが実現する。
倉庫分野では、必要な商品や在庫の厳密な管理が可能となり、予測精度が向上する。
そしてそうした効率の改善による保管コストの低下が、ロジスティクスの透明化や可視化につながる。
最終的な配送という局面では、ダイナミックな配送スキームを支える種々のデータ、すなわち道路状況・コスト・顧客数などを、網羅的に収集・解析し、リアルタイムの情報を顧客に提供することで、配送効率のみならずサービス品質も向上することになる。
(翻訳構成 大矢英樹)
