2020年8月号
特集
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郵船ロジスティクス 神山 亨 社長 需要以上に供給が落ち込む異常事態が発生
フォワーダーチャーターで業績に明暗
──現在の売上規模とポートフォリオは?
「2020年3月期の連結営業収益は約4500億円です。
事業セグメント別の構成比は航空が31%、海上31%、ロジスティクスが38%となっています。
地域セグメント別では日本が19%、アメリカ15%、欧州25%、東アジア19%、南アジア・オセアニアが22%です」 ──4月以降の航空フォワーディング事業の概況について教えて下さい。
「物量としては輸出入合わせて新型コロナ前の通常時期の3割減に近い状態です。
概算では輸出が約35%減、輸入が約20%減です。
現在、国際旅客便の約9割が飛んでいません。
旅客便の貨物室、いわゆるベリーは世界の航空貨物スペースのおよそ5割を占めています。
それが今はほとんどありません。
こうした状況下でフォワーダーに求められるのはスペースを確保することです。
そのためチャーター機を飛ばしてお客さまに供給しています。
貨物専用機もチャーターしますがメインは旅客機です」 ──業績への影響は。
「新型コロナの関係で需要は確かに落ちました。
しかし、需要の落ち込み以上に供給が落ちている。
需要の3割減に対して、供給は5割減といったところです。
その結果、運賃は高騰しています。
通常時の数倍の価格です。
あまりにも大きく需給のバランス崩れたため、物量が減ったのとは裏腹に航空フォワーディングの業績自体は堅調といってもいいくらいです」 「そうした傾向が4月、5月、6月と続きました。
その結果、第1四半期は大手と中小のフォワーダーで差が出ました。
スペース確保の面が大きかったと思います。
フォワーダーチャーターには物量が必要です。
1便に30トン積めるのであれば、それを満載にできるだけのお客さまを確保しなくてはいけませんから。
基本的に需要の方が多い時はフォワーダーはもうかる。
逆に供給が多いと過当競争が起こり安値になります。
そして需要の方が多い時期はスペースを確保できるフォワーダーが強い」 「とりわけ4月と5月は医療関係の輸送が非常に多かった。
その中には通常だったら航空機では運ばれないマスクや防護服といった貨物も相当数が航空便で輸送されました。
マスクなどは5月の半ばごろまで全部航空機で運ぶような状況でした。
こうした貨物が航空需要を相当押し上げました」 「旅客便を飛ばせないため、航空会社の中には旅客機の客席を撤去して、そのスペースをフォワーダーに販売するケースも増えてきています。
旅客がいない以上、貨物が航空会社にとって唯一の生きる道とも言える状況になっている。
大型の貨物専用機を持っている航空会社の中には旅客便の赤字を全部消し去って、航空事業自体が黒字になっている会社もあるようです」 ──こうした状況はしばらく続きますか? 「需要過多の状況は現在も続いています。
しかしそれほど長くは続かないでしょう。
航空貨物の価格があまりにも高騰しすぎて、従来は航空で運んでいた生鮮品が海上リーファーコンテナ輸送に流れている例も6月ごろから散見されます。
平時に戻った時にそうしたお客さまが航空に戻って来なくなるといった不安もあります」 ──ロジスティクス事業は新型コロナでどのような影響を受けていますか。
「弊社のロジスティクス事業の主力は地域的には欧州と南アジア、業種的には自動車やヘルスケア、半導体、食品などです。
いずれも倉庫とトラックを運用し、総合的な物流サービスを提供しています。
中でも自動車関連の工場が止まった影響が非常に大きく出ています。
倉庫にモノはあるのに動かない。
トラックも運行できない。
地域によって事情は異なりますが、収益は確実に落ちています。
自動車のサプライチェーンが本格的に動き始めるまで厳しい状況が続くことを覚悟しています」 ──海上はいかがでしょう。
「海上は新型コロナ以前から荷動きが低下していました。
コンテナ船のアライアンスが三つに再編されたことで、船社は需給のバランスが取りやすくなった。
価格適正化のために船腹を調整したことで、海上の価格が上昇するという流れが出ています」 「去年の終わりごろまでは貨物量は少ないものの、需要と供給のバランスがある程度は取れていました。
しかし、新型コロナ以降いわゆる不要不急の貨物が動いていない。
緊急を要する貨物は航空で運ばれる。
一方の海上は需要が落ちているので、スペースをさらに減らして配船しない。
これによって運賃だけが高くなってしまっています。
お客さまと船社の間に入るわれわれはかなり厳しい。
実際、航空、海上、ロジスティクスの中で、海上の落ち込みが最も大きい」 ──御社の事業ポートフォリオはおおむね、航空3、海上3、ロジスティクス4といった比率です。
新型コロナでこの比率にも変化が出ていますか? 「この第1四半期に限れば、通常時の比率が崩れるくらい変動しています。
おそらく第1四半期は航空がマジョリティーになっていると思います」 デジタルフォワーディングを開始 ──今後どう対応していきますか。
「これまでフォワーディング事業では空港と空港、あるいは港湾と港湾といったポート・トゥ・ポートの積み高拡大に力を入れてきました。
船社や航空会社に対して有利な購買を実現するためでもあります。
しかし、輸送キャリアのサービスをただ仕入れて売るだけでは差別化ができない。
そこでポート・トゥ・ポートだけではなく、その手前と先も含めたエンド・トゥ・エンドにビジネスのスコープを広げていきます。
当社の混載貨物専用倉庫でバンニングをして船に載せる。
到着したら、今度はデバンして通関して配達する。
航空も同じです。
ここまで全てを一つのパッケージにして売っていく」 「当社は国内でも海外でもトラックを運行し、倉庫も構えてローカルオペレーションを展開しています。
その全てを活用してエンド・トゥ・エンドのサービスを作り込む。
これをサプライチェーンソリューション事業として、航空、海上、ロジスティクスに続く四本目の柱に育てます」 「発地と着地における地場物流は国際輸送と比較すると売上規模としては大きくありません。
しかし、ローカルオペレーションを高い品質でキチンとこなし、コントロールタワーとしての機能を提供することで、お客さまからの信頼度は確実に高まります。
難易度は確かに高い。
しかし、グローバルで成長するには、実現しなくてはならない」 「そのためのツールの一つとして新たなITプラットフォーム『Yusen Vantage』もリリースしました。
SCMシステムとトラッキングシステムを刷新しました。
SKUレベルでリアルタイムの可視化ができます。
関係者間のシームレスな情報共有や先端テクノロジーを使った分析・予測が行えます」 ──新型コロナでフォワーダーの在り方は変わりますか? 「お客さまのリモートワークが進むためサービス提供の仕方も変わってくるでしょう。
当社は数年前からデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進部門を設置してデジタルフォワーディングの実現を進めてきました。
その一環としてワンクリックでお客さまが求めるサービスを提供する仕組みを作っています。
今夏から秋ごろに本格的なトライアルを実施し、今年度中には世に出すつもりです」
事業セグメント別の構成比は航空が31%、海上31%、ロジスティクスが38%となっています。
地域セグメント別では日本が19%、アメリカ15%、欧州25%、東アジア19%、南アジア・オセアニアが22%です」 ──4月以降の航空フォワーディング事業の概況について教えて下さい。
「物量としては輸出入合わせて新型コロナ前の通常時期の3割減に近い状態です。
概算では輸出が約35%減、輸入が約20%減です。
現在、国際旅客便の約9割が飛んでいません。
旅客便の貨物室、いわゆるベリーは世界の航空貨物スペースのおよそ5割を占めています。
それが今はほとんどありません。
こうした状況下でフォワーダーに求められるのはスペースを確保することです。
そのためチャーター機を飛ばしてお客さまに供給しています。
貨物専用機もチャーターしますがメインは旅客機です」 ──業績への影響は。
「新型コロナの関係で需要は確かに落ちました。
しかし、需要の落ち込み以上に供給が落ちている。
需要の3割減に対して、供給は5割減といったところです。
その結果、運賃は高騰しています。
通常時の数倍の価格です。
あまりにも大きく需給のバランス崩れたため、物量が減ったのとは裏腹に航空フォワーディングの業績自体は堅調といってもいいくらいです」 「そうした傾向が4月、5月、6月と続きました。
その結果、第1四半期は大手と中小のフォワーダーで差が出ました。
スペース確保の面が大きかったと思います。
フォワーダーチャーターには物量が必要です。
1便に30トン積めるのであれば、それを満載にできるだけのお客さまを確保しなくてはいけませんから。
基本的に需要の方が多い時はフォワーダーはもうかる。
逆に供給が多いと過当競争が起こり安値になります。
そして需要の方が多い時期はスペースを確保できるフォワーダーが強い」 「とりわけ4月と5月は医療関係の輸送が非常に多かった。
その中には通常だったら航空機では運ばれないマスクや防護服といった貨物も相当数が航空便で輸送されました。
マスクなどは5月の半ばごろまで全部航空機で運ぶような状況でした。
こうした貨物が航空需要を相当押し上げました」 「旅客便を飛ばせないため、航空会社の中には旅客機の客席を撤去して、そのスペースをフォワーダーに販売するケースも増えてきています。
旅客がいない以上、貨物が航空会社にとって唯一の生きる道とも言える状況になっている。
大型の貨物専用機を持っている航空会社の中には旅客便の赤字を全部消し去って、航空事業自体が黒字になっている会社もあるようです」 ──こうした状況はしばらく続きますか? 「需要過多の状況は現在も続いています。
しかしそれほど長くは続かないでしょう。
航空貨物の価格があまりにも高騰しすぎて、従来は航空で運んでいた生鮮品が海上リーファーコンテナ輸送に流れている例も6月ごろから散見されます。
平時に戻った時にそうしたお客さまが航空に戻って来なくなるといった不安もあります」 ──ロジスティクス事業は新型コロナでどのような影響を受けていますか。
「弊社のロジスティクス事業の主力は地域的には欧州と南アジア、業種的には自動車やヘルスケア、半導体、食品などです。
いずれも倉庫とトラックを運用し、総合的な物流サービスを提供しています。
中でも自動車関連の工場が止まった影響が非常に大きく出ています。
倉庫にモノはあるのに動かない。
トラックも運行できない。
地域によって事情は異なりますが、収益は確実に落ちています。
自動車のサプライチェーンが本格的に動き始めるまで厳しい状況が続くことを覚悟しています」 ──海上はいかがでしょう。
「海上は新型コロナ以前から荷動きが低下していました。
コンテナ船のアライアンスが三つに再編されたことで、船社は需給のバランスが取りやすくなった。
価格適正化のために船腹を調整したことで、海上の価格が上昇するという流れが出ています」 「去年の終わりごろまでは貨物量は少ないものの、需要と供給のバランスがある程度は取れていました。
しかし、新型コロナ以降いわゆる不要不急の貨物が動いていない。
緊急を要する貨物は航空で運ばれる。
一方の海上は需要が落ちているので、スペースをさらに減らして配船しない。
これによって運賃だけが高くなってしまっています。
お客さまと船社の間に入るわれわれはかなり厳しい。
実際、航空、海上、ロジスティクスの中で、海上の落ち込みが最も大きい」 ──御社の事業ポートフォリオはおおむね、航空3、海上3、ロジスティクス4といった比率です。
新型コロナでこの比率にも変化が出ていますか? 「この第1四半期に限れば、通常時の比率が崩れるくらい変動しています。
おそらく第1四半期は航空がマジョリティーになっていると思います」 デジタルフォワーディングを開始 ──今後どう対応していきますか。
「これまでフォワーディング事業では空港と空港、あるいは港湾と港湾といったポート・トゥ・ポートの積み高拡大に力を入れてきました。
船社や航空会社に対して有利な購買を実現するためでもあります。
しかし、輸送キャリアのサービスをただ仕入れて売るだけでは差別化ができない。
そこでポート・トゥ・ポートだけではなく、その手前と先も含めたエンド・トゥ・エンドにビジネスのスコープを広げていきます。
当社の混載貨物専用倉庫でバンニングをして船に載せる。
到着したら、今度はデバンして通関して配達する。
航空も同じです。
ここまで全てを一つのパッケージにして売っていく」 「当社は国内でも海外でもトラックを運行し、倉庫も構えてローカルオペレーションを展開しています。
その全てを活用してエンド・トゥ・エンドのサービスを作り込む。
これをサプライチェーンソリューション事業として、航空、海上、ロジスティクスに続く四本目の柱に育てます」 「発地と着地における地場物流は国際輸送と比較すると売上規模としては大きくありません。
しかし、ローカルオペレーションを高い品質でキチンとこなし、コントロールタワーとしての機能を提供することで、お客さまからの信頼度は確実に高まります。
難易度は確かに高い。
しかし、グローバルで成長するには、実現しなくてはならない」 「そのためのツールの一つとして新たなITプラットフォーム『Yusen Vantage』もリリースしました。
SCMシステムとトラッキングシステムを刷新しました。
SKUレベルでリアルタイムの可視化ができます。
関係者間のシームレスな情報共有や先端テクノロジーを使った分析・予測が行えます」 ──新型コロナでフォワーダーの在り方は変わりますか? 「お客さまのリモートワークが進むためサービス提供の仕方も変わってくるでしょう。
当社は数年前からデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進部門を設置してデジタルフォワーディングの実現を進めてきました。
その一環としてワンクリックでお客さまが求めるサービスを提供する仕組みを作っています。
今夏から秋ごろに本格的なトライアルを実施し、今年度中には世に出すつもりです」
