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2020年8月号
特集

伊藤忠ロジスティクス 佐々和秀 社長 中国市場のEC化率はさらに上昇していく

消費財からメディカルに領域拡大 ──御社の海外事業は中国物流が大きな柱です。
新型コロナでどのような影響を受けましたか?  「中国に関しては新型コロナの前に米中貿易戦争がありました。
米中問題が広く取り沙汰されたのは一般的には2019年からですが、18年の半ばごろからその影響を感じていました。
19年は年間を通して米中問題に起因する経済のトーンダウンが続き、そこに新型コロナの感染拡大が始まりました」  「春節休暇期間の延長とステイホームで、当社の中国の現地法人でもかなりの数の従業員がなかなか職場に戻ることができず、センター運営などに支障が出ました。
物量も前年対比で大きく落ち込みました。
それが4月まで続きました」  「今は急速に通常に戻りつつあります。
当社は中国の国内でアパレル、スポーツ用品、シューズ、化粧品などのECと店舗の両方の物流を手掛けています。
店舗はもちろんECも4月は通常の4割程度まで減っていました。
しかし、5月は5割〜6割、6月は8割〜9割近い水準まで戻している。
この後の7月、8月、9月は逆に新規の引き合いが多くなっています」  「そのためECに関しては確実に戻る。
一方のリアル店舗はまだまだ戻っていません。
その結果、元々世界一高かった中国のEC化率がさらに上昇しています」 ──今後どう対応しますか。
 「ビジネスのアプローチの仕方をこれまでとは少し変えていくことになるでしょう。
伊藤忠ロジスティクスは単なる物流企業ではありません。
パートナー企業への出資もするし、プロジェクトにも参画する。
場合によっては商流にも入る。
その本質は物流をベースとしたマルチ機能集団だと定義しています」  「これまではお客さまのニーズに応えるマーケットインに軸足を置いていました。
しかし、これからはマーケットインだけでなく、プロダクトアウトの発想をそこに組み合わせた提案型で商売を作り込んでいく必要を強く感じています。
そのための仕掛けづくりを数年前から進めてきました」  「その一つが中国・成都の医薬品卸・ドラッグストア『泉源堂』への資本参加です。
泉源堂は成都や重慶を中心に数百店規模のドラッグストアを展開する他、ネットとリアルを融合した、いわゆる『ニューリテール』に進出しています。
店舗に設置された情報端末を使って医師による遠隔診療を行ったり、処方箋の取得から薬剤師のチェックまで全てオンラインで行って、店舗や宅配便で処方薬を受け取れる仕組みを構築しています」  「非常に面白いビジネスだと感じて昨年、経営参画しました。
その物流に加えて、店頭に開設されている日本製品コーナーへの商品供給を伊藤忠ロジスティクスが支援しています」  「今回の新型コロナの感染拡大をきっかけに中国のECのユーザーは、若者だけでなく年配の消費者にも広がりました。
健康関連商品などの取扱拡大が期待できます。
われわれの当初の想定を超えて成長していきそうです」  「メディカル関係ではもうひとつ新しい取り組みを始めています。
人工透析液や関連機器の保管と病院内透析センターへの配送です。
こちらも順調に推移しています。
現在、当社が中国で取り扱っている商品の8割は一般消費財ですが、今後は医薬、健康、美容といった分野を伸ばしていきたい。
既に十分な手応えがあります」 半導体と自動車の荷動きは停滞 ──EC以外で目立った変化はありますか。
 「大きく二つあります。
一つは半導体関連の動向です。
日本から輸出した半導体製造装置が中国の倉庫に留め置かれたままになっています。
モノが到着したはいいが、装置を設置するのに必要な日本の技術者が新型コロナの関係で現地に入れない」  「先に送った装置を設置できないから、次の装置を送ることもできない。
半導体関連は日本発の航空混載便の主要貨物です。
その停滞は航空貨物マーケットに相当な影響を与えるでしょう」  「もうひとつは自動車関連です。
米中貿易戦争に新型コロナが追い打ちをかける形になっています。
しかし、米中問題と新型コロナから私が思うのは、自動車産業の地産地消型のサプライチェーンが本当に最適なのかという点です。
異変が発生した場合に、小規模なサプライヤー1社が被災しただけで、サプライチェーン全体が持ちこたえられなくなる恐れがある」 ──伊藤忠ロジスティクスの海外売上比率は、この10年で急拡大して現在は4割を超えています。
現地駐在員も多い。
コロナショックで海外事業にブレーキがかかる恐れはありませんか。
 「直接的な影響として人の問題があります。
4月の人事で駐在員の異動などを発令したものの、ほとんど移動できていません。
海外出張にも行けない」  「しかし、海外事業そのものは適切に運営できています。
各地の現地パートナーとの関係をこの10年かけて積み重ねてきたことが大きい。
私自身、各地に足を運び、またパートナーも来日して信頼関係を構築してきました。
今は出張に行けないので、定例的な会議などで日常的にビデオ会議ツールを使うようになりましたが、やはり直接、顔を合わせることが大事なのはこれからも変わりません」 ──国際輸送の荷動きをどうみていますか。
 「航空は旅客便が飛んでいないため、現状では貨物スペースがかなりタイトになり、価格が平常時の数倍に高騰しています。
アジア間の航路は値上がりが特に激しい。
航空会社はカーゴ専用機を増便するなどしてスペース拡張に動いていますが、それでも需要に供給が追いついていません」  「海上もトータルの取扱量が落ちています。
ただし、大規模港湾は以前とそれほど配船状況は変わっていない。
新型コロナの影響が大きいのは小規模港湾です。
便がなくなったり、減ったりしている。
その結果、特にアジアの小規模港湾を活用した国際輸送はタイムリーなデリバリーが困難になっています。
その代替策として内航船やトラックを使った陸送を組み合わせるといった提案をするケースが最近は増えてきています」  「新型コロナを契機に国際物流にさまざまな変化が起きているのは事実です。
世界各地の消費者ニーズも変わりつつある。
しかし、このような特異な局面というのは新しいビジネスモデルにチャレンジする機会でもあります。
われわれが持つ機能をフルに使えば、ピンチをチャンスに変えられる可能性がある。
変化を前向きに捉えて進んでいきたいと思います」

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