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2020年8月号
特集

OOCLロジスティクス(ジャパン)樫山峰久 取締役日本統括COO それでも“中国外し”は現実にはあり得ない

特需はECと食品スーパーだけじゃない ──コロナ禍でグローバルサプライチェーンに何が起きているのでしょうか。
 「われわれOOCLロジスティクス(ジャパン)の事業は、大きくグローバルサプライチェーン、フォワーディング、日本国内の倉庫と配送の三つに分類できます。
このうち国内物流は、東南アジア・中国からの輸入品を日本で販売する流通業向けがメーンです。
そのためフォワーディング事業も当社の場合は東南アジア・中国からの輸入が多い。
そこで何が起きたのか、この図(次頁)を見てもらえば分かりやすいと思います」  「図の青い線は当社のフォワーディング事業の2019年52週の取扱実績、赤い線は20年26週までの実績を表しています。
これを見る限り、今年の春節(中華圏の旧正月)が終わるまでは、コロナの影響はありませんでした。
実際、春節前までは中国本土や香港側にも全く危機感はなかった」  「ところが、春節に入ると同時に武漢でロックダウンが始まり、春節を延長するという話になった。
中国からの輸入がストップしたことで、春節終了後の戻りは前年の半分に落ち込みました。
そこから東南アジアの国々にもロックダウンが広がり、例年なら輸入がピークを迎える5月、6月になっても荷物が戻ってこない」  「ただし、その後さらに下降線を辿っているということでもない。
これは中国がいち早く動き出したからです。
つまり中国で生産が再開されて日本への輸出が始まったことで、他の国はほぼ止まっているのに、フォワーディング事業のボリュームは前年比で6割程度の水準を維持している」 ──荷主企業への影響は?  「業種・業態によって極端なほどはっきりと明暗が分かれています。
巣ごもり需要でECや食品スーパー、あるいはドラッグの売り上げが伸びることでは想像がつきますが、例えばホームセンターが軒並み110%以上に跳ね上がっている。
120%、130%というお客さまもいる。
除菌剤やトイレットペーパーなどのドラッグ系の商材を求めてホームセンターを訪れた客が、他の商品も一緒に購入している。
家具量販もやはり売り上げが伸びている」  「一方でアパレルは、春夏物が一番売れる3月、4月に店舗が閉鎖されてパタッと止まってしまった。
既に発注は済んでいるので在庫が山のように倉庫に積み上がっていきました。
しかし、それもピークは超えました。
緊急事態宣言が解除された5月25日を機に一斉に動き出した。
それ以降は連日、大量の出荷指示が出ています。
セールの場合は計画的に数量が決まりますが、プロパーは売れた分を補充するので実際の売れ行きが分かる。
それを見ると予想以上に安定して売れている」 ──3PLにはどのような影響が出ていますか。
 「物流センターで働くパートアルバイトをどうやって維持するかということに何より気を配りました。
当社はできる限り派遣社員を使わず、直接雇用のパートアルバイトで現場を回す方針をとっています。
派遣よりも時給を抑えられる上、教育によって付加価値も高まるからです。
それだけに辞めてほしくない。
しかし、倉庫にモノが溢れていても入出荷がなければ仕事はありません。
一部の倉庫は3月時点でそうした状態に陥りました」  「当社ではお客さまの出荷予測を基に、各拠点の作業にどれだけの人時が必要になるのかシステムで計算し、パートにそれぞれ出勤希望を聞いた上で、2カ月先、3カ月先の勤務シフトを組んでいます。
そこで悩んだ末のことですが、4月、5月のシフトについては実際には出勤がなくても全額支払うことにしました。
6月、7月も続けています。
国会では新型コロナに伴う休業支援の話が議論されていましたが、その時点では何も決まっていなかった。
イチかバチかでした。
しかし、そのお陰で1人の退職者も出ていません」  「その一方で派遣の時給相場が今、大きく値下がりしています。
コロナ前までは時給1500円から1600円、一部では1700円という話まで出ていました。
それが今は1400円以下にまで下がっている。
そこで、出荷指示が集中して、どうしても人手が足りない現場では緊急措置として派遣も使っています」  「現場以外の仕事は在宅勤務で全く問題ないですね。
月曜日に週1日のリモートミーティングをやるだけで十分です。
事務職はもちろん営業系も、お客さまのところには行ってもオフィスに来る必要はない。
ただし、通関業務などはいわゆる“ハンコ文化”が残っているので完全リモートにはできない。
今回のコロナをきっかけに改善を期待したいところです」 モノの流れは変わりようがない ──今後の国際貨物に荷動きをどう予測しますか。
 「巷では米中貿易摩擦に拍車がかかる、グローバルなモノの動きが停滞すると言われています。
私自身そう思っていたのですが、実際にお客さまと話をしても、サプライチェーンから中国を外すことなど誰も考えていません。
中国生産にリスクはあっても、やめることはできない。
中国を代替できる場所はどこにもないということだと思います」 ──それでもチャイナプラスワンは進んでいます。
 「確かに一昨年あたりからお客さまによっては中国と、東南アジアの“プラスワン”で物量が逆転するケースも出て来ました。
ただし、全体として見れば中国のボリュームはいまだに圧倒的です。
付加価値の高いものは中国、大量生産品は東南アジアというかたちで棲み分けが進んでいるだけです。
そして東南アジアは原材料を中国から調達しているので、中国が寸断したら生産が止まってしまう」  「一部にはグローバルサプライチェーンの足を長く伸ばし過ぎた、リスクヘッジのため日本国内に生産を回帰した方がいいという指摘もありますが、本当に戻るのかは疑問です。
在庫の積み増しやレジリエンスの確保にはコストがかかる。
それを負担しようという企業が果たしてどれだけ出てくるのか。
グローバルサプライチェーンの構造は既にかなりのレベルで最適化が進んでいます。
コロナのような事態が起きると一時的に揺り戻したりはするけれど結局、モノの流れはそう大きく変わらないのではないかと今では感じています」 ──御社としては当面どう動くお考えですか。
 「当面はコロナで減った分の戻りがあるので、それに素直に対応しながら、この先を見極めたいと思います。
日系と外資系に荷主を分けると、短期的には外資系に過度に依存するのはリスクが高そうです。
国同士の行き来がこれだけ制限されてしまうと、本国から遠く離れた日本市場の事業展開はどうしても制約を受けてしまう。
そのため当面の営業活動では日系企業向けが重要になってきそうです。
先ほどのホームセンターにしてもインバウンド需要がゼロになったにもかかわらず20%も売り上げが伸びている。
インバウンドに全く依存していなかったことにコロナによって気付かされたと言っています。
日本の内需はまだまだ十分に大きい。
その物流ニーズに丁寧に対応していきます」

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