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2020年8月号
特集

中国市場:「宅経済」広がり生鮮EC急成長

EC化率は24・1%に上昇  既報の通り、武漢市は1月23日に封鎖された。
中国の他の地域も、不要な外出や集まりが厳しく制限されて、生活必需品を提供するスーパーやコンビニエンスストアなどを除き、ショッピングモールなどの大型商業施設、博物館や公園などの公共施設は全て営業を停止した。
町中から人の姿が消え、まるで時間が止まったかのようだった。
 この時期の中国はちょうど春節(1月24日から30日まで)に当たり、長期休暇期間に入っていたため、企業活動に大きな混乱は見られなかった。
しかし、感染の拡大は収束のめどが立たず、政府は1月27日に春節を2月2日まで3日間延長することを発表した。
後に2月13日に再延長された。
 市民には生活への不安が広がり、一部の都市では野菜などの生鮮品の買い占めも起きた。
それでも新規感染者数は2月4日をピークに減少傾向に転じた。
政府は同14日から、生活必需品やマスク、消毒製品を提供する企業を皮切りに、生産活動の再開を段階的に認めていった。
武漢市でも3月18日には新規感染者数が初めてゼロになり、4月8日に封鎖が解除された。
 中国の今年第1四半期のGDP成長率は、新型コロナの影響でマイナス6・8%を記録した。
「社会消費財小売総額」も大きく落ち込んだ。
既に回復基調にはあるものの、今も前年同期比マイナスが続いている。
とりわけ外食市場は4月もマイナス31・1%と低迷している。
政府による規制が解除されても、外食に対する消費者の不安は消えていないようだ(図1)。
 外食と比べると小売業へのダメージは比較的小さかった。
在宅消費「宅経済」に支えられた。
コロナによって在宅時間が増えて、買物だけでなく、仕事、勉強、社交、娯楽(映画、ゲーム、スポーツなど)など、生活の多くをオンラインで行うようになった。
EC、出前、テレワーク、オンライン教育、オンラインゲーム、ショートムービーなどのサービスを提供する企業が急速に成長して、「宅経済」が広く注目を集めることになった。
 そして実店舗の利用が難しくなるのと並行して、「到家」(家まで届ける)が当たり前のサービスとして広がった。
小売市場全体のパイが大きく縮小したのに対して、ネット小売販売額は1~2月がマイナス3・0%、3月はマイナス0・8%と下げ幅が小さく、4月には早くもプラスに転じた。
ECが小売総額に占める割合、いわゆるEC化率は24・1%にも達した。
 商品別のネット販売額の伸び率は食料品が最も高く、コロナが収まった3月、4月も30%台を維持している(図2)。
従来は店舗で購入されていた生鮮食品が、ついにネットで購入するようになったことが、その大きな要因となっている。
 中国の生鮮食品市場は年を追うごとに拡大している。
2018年の取引規模は前年比6・9%増の1兆9135億元に達した。
うち、生鮮ECの取引額は2158億元で、全体の11・3%を占めている。
 生鮮ECは、産地・センター直送型、店舗型、前置倉庫型の大きく三つに分類できる。
産地・センター直送型は、農家や卸、小売業などが総合的なECプラットフォームに出店し、産地もしくはセンターから商品を出荷し、宅配物流を利用するモデルである。
店舗型は、店舗を持つ小売企業が店頭から商品をピックアップし、即時物流を利用し配達する。
前置倉庫型とは、消費者に最も近い立地には店舗ではなく、倉庫を構えることで配達を行う(表1)。
 調査会社のQuestMobileによれば、中国生鮮ECの1日当たりの平均アクティブユーザー数は今年の春節休暇中に1009万人に達し、前年同期の527万人から倍増した。
上海に本部を置く生鮮EC「叮咚買菜(dingdong)」が274・6%増、アリババ傘下の次世代スーパー「盒馬鮮生(フーマ)」は127・5%増、北京の生鮮EC「毎日優鮮(MissFresh)」は101・0%、京東(JD.com)系の「京東到家」98・3%増で各社とも利用者数が跳ね上がった。
 しかし、注文が急増する半面、配達員不足、商品不足も深刻化している。
春節時は配達員も多くが里帰りする。
また道路封鎖、産地の休暇などにより、商品供給も通常より少なかった。
特に野菜の欠品が目立ち、入荷してすぐに売れ切れるという現象が連日見られた。
その結果、朝6~8時に注文のピークを迎えるという事態を招いた。
 中国商務部(日本の経済産業省に相当)は、生活必需品の供給を安定させるため、各地の経験をまとめて、次の11の供給方法を推奨している。
 ①既存小売業のネット購買、②住宅団地の代理・団体購買、③無接触配達、④住民委員会スタッフによる配達、⑤バスによる配達、⑥セット販売、⑦ガソリンスタンドでの車までの配達、⑧道路市場の開設、⑨青果のトラック販売、⑩供給マップの開発、⑪従業員シェア。
物流の回復──郵政、順豊、京東が先導  中国物流・購買連合会は毎月、中国物流業の景気指数「Logistics Performance Index:LPI)」を発表している。
物流の業務量、新規受注数、従業員数、在庫回転回数、設備利用率の、五つの指数によって計算され、50%を分岐点とする。
今年2月のLPIは26・2%で、統計が発表された2013年以来の最低値を示した。
しかし、3月には回復に向かい、4月は前年同期並みの53・6%まで戻っている(図3)。
 鉄道、トラック、船舶の貨物輸送量は2月に前年同月比26・5%減少した。
トラック輸送は半分以下にまで落ち込んだ。
しかし、コロナの収束や生産活動の再開、また春節から実施された高速道路無料化を政府が5月6日までに延長したこともあり、トラック輸送も3月には7割程度まで回復した。
 宅配会社は例年、春節前後の2~3週間を休みにする企業が多かった。
しかし今年は郵政、順豊(SFエクスプレス)、京東物流(JDロジスティクス)が春節休暇中にも営業を続け、円通(YTO Express)も1月28日にいち早く営業を再開した。
これらの企業は緊急物資の輸送にも大きな役割を果たした。
 中通(ZTO Express)、韻達(Yunda Express)、申通(STO Express)も2月10日には営業を再開した。
その結果、2月17日には宅配取扱個数は通常の4割程度まで回復した。
さらに3月初頭になると、武漢市のある湖北省を除いて、中国のほぼ全土で通常通りの営業に戻った。
 中国国家郵政局の資料によると、4月の全国宅配取扱個数は前年同月比27%増の62億5000万個となった(図4)。
一方、業務収入は712億元で同20・2%増だった。
取扱個数に比べて収入の伸びが小さかったのは、各社が値下げ競争に走ったためと考えられる。
 例えば2月に順豊は10元の「資源調整費」をなくした。
百世は通常料金の3割引を実施した。
中通や安能物流は積替え費用の3割引き、韻達はその5割引を実施した。
義烏など一部激戦地域では、「0・8元で全国配達」を出した宅配企業さえあった。
ただし、高速道路無料化の終了に伴うコストの上昇を受けて、現在、各社は再び値上げに踏み切っている。
ロボット物流がさらに進展  今回のコロナ問題を機に中国の物流業界では「非接触」「無人化」がキーワードとなり、非接触配達や配達ロボット、ドローンなどが広く活用された。
 感染拡大防止策として住宅地単位で人の出入りを厳しくコントロールしたことで、配達員が家まで荷物を届けることは難しくなった。
そこで建物の入口などに棚を設置、配達員は荷物をそこに置き、顧客に電話で知らせた後、自ら取りに来てもらうという非接触型の配達方法が広く採用された。
 宅配ロッカーは2019年末時点で既に全国に40万6000台が設置されていた。
しかし、コロナ期間中の使用率は47・1%にとどまった。
宅配ロッカーの多くはマンションの敷地内に設置されていて、配達員はそこまで入れなかったためだ。
それでも宅配ロッカーの利便性は広く消費者に認知されるようになった。
その結果、宅配ロッカーによる配達が宅配全体に占める割合は、現状の10%から15%に拡大すると見込まれている。
 配達ロボットは宅配や薬、食事の配達などに活用された。
アリババ系物流企業の菜鳥(Cainiao)は、杭州、上海、成都、天津などの住宅地や大学などに配達ロボットを投入した。
1台当たり18個の荷物を配達可能で、1回の充電で40キロ走れる。
 京東は武漢で配達ロボットを使った。
病院に医療物資および生活物資を配達した。
コロナの疑似症患者や接触者の隔離施設となった広州のあるホテルでは、食事を部屋まで届けるのに配達ロボットが使われた。
1回2部屋分の食事を約5分で配達する。
 ドローンは病院への医療物資の輸送、照明、消毒、宣伝などに利用された。
順豊は武漢の金銀潭病院への医療物資の輸送にドローン2台を投入して、計27個・総重量70㎏の荷物を配達した。
 また、コロナ患者用に新設した武漢火神山病院の建設時には、夜間の照明に6台のドローンが使用された。
50メートルの高さから1回の飛行で10時間点灯できる。
ドローンはコロナの感染者が出たエリアの消毒、コロナ感染症対策を案内したり宣伝する移動型スピーカーとしても使われた。

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