2020年7月号
特集
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Interview GROUND 宮田啓友 社長 「物流スタートアップも淘汰を避けられない」
ロボットの活用は不可逆的
──コロナの影響はいつ、どのようなかたちで始まりましたか。
「やはり緊急事態宣言が出てからですね。
日用品を扱っているお客さまを除いて、問い合わせがパタッと止まった。
投資計画にいったんストップをかけるお客さまも出てきました。
その一方で物流を絶対に止められない事業者が、現場の“3密”を回避してオペレーションを維持する狙いから、ロボットの導入を検討し始めました。
物量が急増しているのでスループットを最大化したい、30人でやっている現場で60人分の物量を処理するためにロボットを使いたいというニーズです。
従来の省人化とは全く観点が違う」 ──これから導入の検討を始めても稼働はコロナの特需が収束した後になるのでは。
「従来の『GTP(Goods To Person:ロボットが作業員のいる場所まで荷物を搬送する)型』のシステムは、施設側の整備が必要になるため、稼働まで1年近くかかりました。
しかし、AMRは、既存の設備、施設、什器のまま導入できる。
ロボットの在庫さえ確保できれば短期間で導入できます」 ──一時的な引き合いという可能性は。
「それは分かりません。
しかし、当社だけでなく世界的にも、AMRのような協働型ロボットがコロナの影響で従来の予想よりはるかに短期間で普及すると見ている人が多い。
ロボット活用にはいったん始まったら後には戻らない、不可逆的な性質があります。
われわれにとっては、ピンチのようで実は大きなチャンスが到来しています」 ──UberやAirbnb、Weworkなどのユニコーン企業がコロナで大きなダメージを受けています。
「それでもテレワーク関連や、医療、物流などライフラインを支える領域で大きな合理化を提供しているスタートアップは着実に伸びているし、十分な資金調達もできています。
ただし、日本に限っていえば、全てが一緒くたにされて資金の流れが止まっている。
たまたま当社は昨年8月に総額17・1億円を調達し、この6月にも日本ユニシスさんから約2億円を調達させてもらいましたが、今の日本ではかなり特殊なケースです」 ──物流スタートアップの淘汰が始まるのでしょうか。
「そうなると思います。
淘汰を乗り越える方法は基本的には二つ。
ロボットやAIソフトウエアの市場は、まだ誰もが畑を耕している段階です。
それでも今後2、3年で収穫できるところまでは来ている。
そうした分野はソリューションの完成度を高めて、しっかりマネタイズできることを示して資金を確保しながら、石橋を叩きながらも開発資金を投じていく」 「もうひとつの方法は縮小均衡です。
従来の方針を大きく転換して事業を絞り込み、年内にも独力で黒字化する。
新規採用はストップする。
場合によってはダウンサイジングする。
先々に大きく成長する可能性を削ぎ落とすことにはなります。
しかし、スタートアップは3カ月から6カ月くらいで投資ラウンドを繰り返していきます。
どっちつかずで次のラウンドにも進めないとなれば、すぐに資金ショートしてしまう」 ──エンジニア出身の若い起業家にとっては、かなりハードルの高い舵取りになります。
「確かに、突き抜けた技術とアイデアを持ったエンジニアが、マネジメントや財務の能力も備えているというケースは稀ですから、マネジメントチームで役割を分担して四隅を固める必要がある」 ──オートメーション市場全体の今後については、どう予想しますか。
「成長がさらに加速するとみています。
このままではECの成長を支えていけないことがますます明らかになり、物流施設内の環境も問題視されるようになった以上、事業継続の観点からもオートメーション化を進めていくしかない。
実際、コロナの渦中にあっても、ウォルマートは倉庫の自動化を一気に進めていく方針を打ち出し、イギリスのオカド(Ocado)は、フランスとカナダで新たなロボットセンターを立ち上げた。
EC事業者に加えて、そうしたオムニチャネル化していく小売業にもロボットの普及が広がるのは間違いのない流れだと思います」 ──サブスクリプションモデルでロボットを提供する「RaaS」も広がりますか。
「大企業がサブスクリプションモデルを採用するかと言えば、それはしません。
実際、われわれは今、欧米の大手流通にロボットの導入を提案していますが、彼らは自分たちで十分に償却できるのでサブスクには全く興味を示さない。
むしろ割高だと判断する。
サブスクが生きるのはもっと裾野、中小向けです。
当社もAMRをサブスクで提供することを検討してはいますが、現状ではニーズは限定的でこれからのステージの話だと思います」 配達ロボットの圧倒的コスト競争力 ──ラストワンマイルの自動化は今のところ日本では実験段階にとどまっています。
「ロボット先進国と日本を比べると3年から5年のタイムラグがあります。
先進国で起きたことが遅れて日本にやってくる。
今、米国ではSTARSHIPの自動配達ロボットが1台約5500ドルだそうです。
それを数年内には半額にすると彼らは言っている。
量産効果に加えて、配達ロボットは電気自動車とコンポーネントが一緒で、バッテリーの単価は大きく下がっているので恐らく不可能ではない」 「仮に1台5500ドルを1年間360日で回収するとしたら、1日当たり約15ドル。
1日10回配達するとして1回当たり1・5ドルです。
もちろん別途ランニングコストはかかりますが、それでも人が配達するのと比べて圧倒的に安い。
そのロボットがさらに半額になるということだと、法的な整備は必要ですが日本でも導入しようという話に当然なってくる。
その時、ギグワーカーはロボットに仕事を奪われることになる。
実際、米国では今、そのことが問題視されています」 ──庫内ロボットもコモディティ化が進んでいます。
「パーツのコストが下がっているのは庫内のロボットも同じです。
また従来は販売価格に開発コストがかなりの比重で乗っていました。
それが今はソフトウエアの機能ごとに開発プラットフォームが生まれて、それに乗って製品化するという流れになっています。
低コストで開発できるようになり、新しい技術をいち早く製品化するスピードの勝負になってきた」 ──GROUNDは今後どのような役割を果たしていきますか。
「今年4月にGROUNDは創業5周年を迎えました。
そのタイミングで、次の5年の大きな事業戦略をあらためてメンバーたちと共有しました。
一言で表せば、われわれは次世代型物流施設のプラットフォームを作っていきます。
われわれのロボットやAIソフトウエアだけでなく、次世代型のオペレーションに必要な全ての機能をつないで、それを見える化して、シミュレーションできる環境を提供していきます」
「やはり緊急事態宣言が出てからですね。
日用品を扱っているお客さまを除いて、問い合わせがパタッと止まった。
投資計画にいったんストップをかけるお客さまも出てきました。
その一方で物流を絶対に止められない事業者が、現場の“3密”を回避してオペレーションを維持する狙いから、ロボットの導入を検討し始めました。
物量が急増しているのでスループットを最大化したい、30人でやっている現場で60人分の物量を処理するためにロボットを使いたいというニーズです。
従来の省人化とは全く観点が違う」 ──これから導入の検討を始めても稼働はコロナの特需が収束した後になるのでは。
「従来の『GTP(Goods To Person:ロボットが作業員のいる場所まで荷物を搬送する)型』のシステムは、施設側の整備が必要になるため、稼働まで1年近くかかりました。
しかし、AMRは、既存の設備、施設、什器のまま導入できる。
ロボットの在庫さえ確保できれば短期間で導入できます」 ──一時的な引き合いという可能性は。
「それは分かりません。
しかし、当社だけでなく世界的にも、AMRのような協働型ロボットがコロナの影響で従来の予想よりはるかに短期間で普及すると見ている人が多い。
ロボット活用にはいったん始まったら後には戻らない、不可逆的な性質があります。
われわれにとっては、ピンチのようで実は大きなチャンスが到来しています」 ──UberやAirbnb、Weworkなどのユニコーン企業がコロナで大きなダメージを受けています。
「それでもテレワーク関連や、医療、物流などライフラインを支える領域で大きな合理化を提供しているスタートアップは着実に伸びているし、十分な資金調達もできています。
ただし、日本に限っていえば、全てが一緒くたにされて資金の流れが止まっている。
たまたま当社は昨年8月に総額17・1億円を調達し、この6月にも日本ユニシスさんから約2億円を調達させてもらいましたが、今の日本ではかなり特殊なケースです」 ──物流スタートアップの淘汰が始まるのでしょうか。
「そうなると思います。
淘汰を乗り越える方法は基本的には二つ。
ロボットやAIソフトウエアの市場は、まだ誰もが畑を耕している段階です。
それでも今後2、3年で収穫できるところまでは来ている。
そうした分野はソリューションの完成度を高めて、しっかりマネタイズできることを示して資金を確保しながら、石橋を叩きながらも開発資金を投じていく」 「もうひとつの方法は縮小均衡です。
従来の方針を大きく転換して事業を絞り込み、年内にも独力で黒字化する。
新規採用はストップする。
場合によってはダウンサイジングする。
先々に大きく成長する可能性を削ぎ落とすことにはなります。
しかし、スタートアップは3カ月から6カ月くらいで投資ラウンドを繰り返していきます。
どっちつかずで次のラウンドにも進めないとなれば、すぐに資金ショートしてしまう」 ──エンジニア出身の若い起業家にとっては、かなりハードルの高い舵取りになります。
「確かに、突き抜けた技術とアイデアを持ったエンジニアが、マネジメントや財務の能力も備えているというケースは稀ですから、マネジメントチームで役割を分担して四隅を固める必要がある」 ──オートメーション市場全体の今後については、どう予想しますか。
「成長がさらに加速するとみています。
このままではECの成長を支えていけないことがますます明らかになり、物流施設内の環境も問題視されるようになった以上、事業継続の観点からもオートメーション化を進めていくしかない。
実際、コロナの渦中にあっても、ウォルマートは倉庫の自動化を一気に進めていく方針を打ち出し、イギリスのオカド(Ocado)は、フランスとカナダで新たなロボットセンターを立ち上げた。
EC事業者に加えて、そうしたオムニチャネル化していく小売業にもロボットの普及が広がるのは間違いのない流れだと思います」 ──サブスクリプションモデルでロボットを提供する「RaaS」も広がりますか。
「大企業がサブスクリプションモデルを採用するかと言えば、それはしません。
実際、われわれは今、欧米の大手流通にロボットの導入を提案していますが、彼らは自分たちで十分に償却できるのでサブスクには全く興味を示さない。
むしろ割高だと判断する。
サブスクが生きるのはもっと裾野、中小向けです。
当社もAMRをサブスクで提供することを検討してはいますが、現状ではニーズは限定的でこれからのステージの話だと思います」 配達ロボットの圧倒的コスト競争力 ──ラストワンマイルの自動化は今のところ日本では実験段階にとどまっています。
「ロボット先進国と日本を比べると3年から5年のタイムラグがあります。
先進国で起きたことが遅れて日本にやってくる。
今、米国ではSTARSHIPの自動配達ロボットが1台約5500ドルだそうです。
それを数年内には半額にすると彼らは言っている。
量産効果に加えて、配達ロボットは電気自動車とコンポーネントが一緒で、バッテリーの単価は大きく下がっているので恐らく不可能ではない」 「仮に1台5500ドルを1年間360日で回収するとしたら、1日当たり約15ドル。
1日10回配達するとして1回当たり1・5ドルです。
もちろん別途ランニングコストはかかりますが、それでも人が配達するのと比べて圧倒的に安い。
そのロボットがさらに半額になるということだと、法的な整備は必要ですが日本でも導入しようという話に当然なってくる。
その時、ギグワーカーはロボットに仕事を奪われることになる。
実際、米国では今、そのことが問題視されています」 ──庫内ロボットもコモディティ化が進んでいます。
「パーツのコストが下がっているのは庫内のロボットも同じです。
また従来は販売価格に開発コストがかなりの比重で乗っていました。
それが今はソフトウエアの機能ごとに開発プラットフォームが生まれて、それに乗って製品化するという流れになっています。
低コストで開発できるようになり、新しい技術をいち早く製品化するスピードの勝負になってきた」 ──GROUNDは今後どのような役割を果たしていきますか。
「今年4月にGROUNDは創業5周年を迎えました。
そのタイミングで、次の5年の大きな事業戦略をあらためてメンバーたちと共有しました。
一言で表せば、われわれは次世代型物流施設のプラットフォームを作っていきます。
われわれのロボットやAIソフトウエアだけでなく、次世代型のオペレーションに必要な全ての機能をつないで、それを見える化して、シミュレーションできる環境を提供していきます」
