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2020年6月号
特集

世界最強のD2Cが東京から始まる

メーカー直販が加速する ──現在のアッカの荷主のうち、オムニチャネル企業はどれくらいの割合を占めていますか。
 「EC専業というお客さまはほとんどいませんね。
既存チャネルとECを両方やっているうち、ECだけを当社が請け負っているというお客さまが約半分、残り半分はECだけでなく、卸販売や店舗納品まで丸ごと請け負っているお客さまです」 ──新型コロナの感染拡大は、アッカのビジネスにどのような影響を与えていますか。
 「これはメーカーも小売りも同じなのですが、販売チャネルがECしかないという状態になったことで、店舗在庫がネット通販側に押し寄せて、前年対比200%、300%というレベルで在庫量が急増しています。
海外で生産した製品が日本に届いても店舗が閉まっているために行き場を失い、われわれの拠点にたまっている」  「幸い当社は大和ハウスグループの一員なので、専用センターのちょっとした空きなど、切れ端のようなスペースを紹介してもらって荷出し先を確保して、そこから必要に応じて在庫を補充するロジックを組み立て、それに合わせてシステムとオペレーションを回しているという状態です」 ──中長期的な影響をどう予想されますか。
 「いわゆる『ダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)』の比率が一気に上昇するとみています。
これまでブランドの直販チャネルは、基本的には限定商品などを求めるコアなファン層が利用するものでした。
しかし、今はそれがマス化しています。
店舗で購入できないので、一般消費者も直販サイトに集中している。
この傾向はコロナが終息した後も加速していくと思います」 ──メーカーが量販店の売り上げをあからさまに侵食するわけにはいかないはずです。
 「確かに、日本市場ではグローバルブランドでも卸販売がまだ9割を占めています。
そのチャネルを当面、維持していく必要はある。
しかし、長期的にはD2Cに向かっていくしかありません。
メーカーにとってブランドは命なわけですが、卸販売では結局、ブランディングを確立できませんから。
新製品を卸した当初は定価で販売されていても、シーズンが山を越えると安売りがはじまって最後は叩き売りされてしまう」  「それでもリアル店舗で販売しているうちは営業エリアも決まっているのでまだ影響は限られていた。
しかし、Eコマースの世界で同じことをやられたら、それこそダイナミックプライシング(需要と供給に応じて価格を柔軟に変動させる手法)などを使って自社在庫がゼロになるまで機械的に売っていくということをされたりすれば、ブランド価値はどんどん損なわれてしまいます。
それを避けるためにD2Cを強化するという動きが、とても強く出て来ています」 ──実際、日本では有力アパレルの“ZOZO離れ”が進み、米国ではNIKEがアマゾンから撤退することを表明しました。
 「その流れは今後も続くと思います」 ──巨大なグローバルブランドであればSPAのように直販に移行して自分でブランディングすることもできるでしょうが、中堅以下は難しいのでは。
 「そう思います。
実際にはグローバルブランドでも二番手以下になると、今は目先の現金が欲しいあまりに、ブランド価値の損失に目を瞑って安売りに走っている。
中堅以下となればなおさらです」 ──中堅以下のブランドにとってD2Cはどのような意味を持つのでしょうか。
 「中小の場合はそもそも、百貨店やファッションモールなどのリアル店舗の売り場をなかなか確保できないために路面店やECを展開してきました。
ただし、アマゾンやZOZOに卸せば、ごっそりとマージンを抜かれてしまう。
自社サイトならその半分のコストで済む。
そのため『楽天』や『ヤフー』などのモール型ECサイトや、アマゾンでも自社販売ではなくマーケットプレイスに出店してブランディングすることになる」 ブランドvsアマゾンが本格化 ──大手荷主向けと、中堅以下向けでは、アッカのソリューションにどのような違いがありますか。
 「グローバルブランド、SPAも同じですが、自己完結できるボリュームを持っている荷主は、サプライチェーンを大元までさかのぼってソリューションを構築できます。
それに対して中小の場合は部分最適も必要になってきます。
われわれはその部分最適のところに大手向けで構築したソリューションの一部をカスタマイズして転用したり、あるいは大手が作ったベースの上に中小を乗せるということをしています」 ──アッカが第三者にソリューションを転用することを、オリジナルとなった大手荷主は許しますか。
 「従来なら自社の優位性として囲い込んだかもしれません。
しかし、今や競争の構図は変わりました。
グローバルブランドにとって最大のライバルは、もはや他のブランドではなく、アマゾンをはじめとする異業種です。
そうであれば他のブランドと物流で差別化するより、手を組んでマスでメリットを享受したほうが得策だという考え方に傾いている」 ──ブランドがアマゾンと戦うといった荷主の新しい競争環境に、アッカはどう対応しますか。
 「そうした市場の動きをいち早く察知して、われわれが先回りをしてソリューションを構築する。
われわれ自身で一定の準備を済ませた上で、クライアントと一緒にサービスを構築するガイドのような役割を果たしたいと考えています。
アッカは世間から3PLとして受けとめられていますが、われわれ自身はそう考えていません。
今はたまたま物流をやり、システムを構築しているけれど、ニーズが変化すれば、すぐにそっちにシフトチェンジする。
そうやって常に、お客さまのビジネスを加速するためのソリューションを構築していく集団でありたいと考えています」 ──昨年6月にアッカが千葉県市川市に稼働した、NIKE専用センター「The DUNK」は、WEB注文から顧客の手元に届けるまで数時間というスキームを実現したと聞いています。
 「NIKEのビジネスをいかに加速させるかということが、われわれに与えられた命題でした。
それを実現するために、一切の制約なしに現時点で考え得る世界最高のフルフィルメントを提案してほしいと要望を受けました。
NIKEにとってD2Cのフルフィルメントは日本だけでなく世界共通の課題です。
オリンピックが開催されて全世界の目が集まる東京で、その課題が解決できることを証明しようという狙いでした」  「そして日本で構築したモデルを世界の他の市場にコピー・アンド・ペーストしていく。
そのために、属人性が低く、汎用性が高く、スケーラビリティーのある仕組み、日本だけでなくアメリカでもヨーロッパでもアジアでも、世界のどこに持ち込んでも通用する仕組みを目指しました」 ──メーカーがD2Cでアマゾンに伍していくことは可能ですか。
 「十分戦えます。
そもそも小売りのフルフィルメントとメーカーのそれは似て非なるものです。
アマゾンは小売りの立場で最善を目指していますが、メーカーにはメーカーの戦い方がある。
モノが入って出ていくのは一緒でも、その上流にある生産と下流の販売チャネルとの連携など、メーカー特有のフォーカスの仕方を磨いていくことで競争力を高めていけます」

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