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2020年5月号
特集

シーオス 松島 聡 代表取締役CEO 「ポストプラットフォームの時代を迎えた」

「水平協働型」のネットワークへ ──コロナ危機の長期的な影響をどう予測していますか。
(本インタビューは4月3日に実施した)  「産業を三つの層に分けるとすると、第1層は余ったお金や富裕層が買うような贅沢品や夜の歓楽街などの不要不急のサービスで、今回のコロナ危機ではまずはその層が吹っ飛んだ。
第2層は自家用車や電化製品の買い換えなど、生活には必要だけれどしばらく購入を控えることができるもの。
そこにも影響は及ぶけれど、これは事態が収束すれば回復する」  「そして第3層が生活の基盤となっているモノやサービスです。
物流は医療などと一緒にそこに含まれる。
あって当たり前で、これまでその価値が低く見積もられてきたけれど、その重要性が見直される。
それと同時にそうしたビジネスのデジタル化を進めて、もっと強くしていかなければいけないという共通認識ができる。
集中型ではなく分散型にして現場をネットワークでつなぎ、もっと柔軟に対応できるようにしなければいけない。
つまり物流や医療など第3層のデジタル化がこれから加速されることになる」 ──ここ数年はその〝第1層〟のお金が物流のスタートアップにも大量に流れ込んでいました。
 「確実にバブルは萎みます。
赤字続きのスタートアップに途方もない企業価値が付くようなことはなくなる。
結局そのやり方で成功したのはアマゾンとアリババだけでした。
もう次は出てこない。
今後は健全な収益性を維持しながら持続的に成長する、いわゆる『Quality Growth』が問われるようになります」 ──プラットフォーマーに資金が集まるのは、利益を独占できるからです。
それは今後も変わらないのでは。
 「『プラットフォーム』という言葉が投資家受けするのは事実です。
そのためにスタートアップが自分たちを『プラットフォーマー』だとPRするのは分かる。
しかし、『プラットフォーム戦略』とか、プラットフォームを目指すというのは、目的と手段が逆で、まず失敗する。
マーク・ザッカーバーグが大学のクラスのコミュニティを作ろうとフェイスブックを立ち上げた時に、プラットフォームなんて全く考えていなかったはずです」  「GAFAにしても“一日では成らず”です。
肝心なのはユーザーを増やしていくことであって、そのために使い勝手を改善していくとか、泥臭い営業活動を続けていくといった、地道な取り組みを繰り返していった先にプラットフォームが出来上がるのだと思います。
目の前の顧客の課題をどう解決するのか、どんな価値を生み出すのかというところにフォーカスしない限り、誰も集まって来ない」 ──IT業界で使われてきた「プラットフォーム」という言葉が、物流の領域でも盛んに流通するようになった理由をどう受け止めていますか。
 「インターネットが登場してスマートフォンが普及してさらにIoTデバイスが出てきて、ネットワークの粒度が企業からヒト、さらには一つ一つのモノへとどんどん小さくなっています。
コネクトする単位が変わってアカウント数が爆発的に増えたので、それをネットワーク化して再構築することで新たな価値を生み出すチャンスが生まれている」  「ただし、そのビジネスを成功させるには、これまでのバリューチェーンの発想は捨てなければいけません。
上流から下流までの関連事業を支配する垂直統合型のビジネスモデルや、垂直統制型のヒエラルキー構造は、『水平協働型』に移行していく上での大きな障害になります」  「よく言われているようにこれからメーカーはどんどんサービス化していきます。
垂直統制型を極めたトヨタでさえモビリティーカンパニーに生まれ変わると言っている。
そこで何が起きるのかというと、自分で商品やサービスを作り出すユーザー同士のコラボレーションです。
ユーザー数、ユーザーの活動量、そして会員相互のコネクティビティが成功のカギを握ります。
そういう発想で『場』を育てていかなくてはならない。
バリューチェーンを統制しようという発想はネットワーク思想の妨げになります」 ――ネットワーク思想とは何でしょう。
 「古典的な発想が染みついた人がその感覚をつかむのは難しいかもしれない。
私自身、コンサルティングから出発して自分でロジスティクスを手掛けて、出版・スポーツ市場に参入してBtoCビジネスを体験したことで、初めてネットワーク型社会の在り方を感覚的につかむことができました」 物流パケットルーティング ――ネットワーク型社会とプラットフォームビジネスの関係はどう整理すれば良いでしょうか。
 「私に言わせればプラットフォームという言葉はもう古い。
プラットフォームはもともと鉄道を乗り降りする場所を意味するわけですが、単純にホームの両側をマッチングするだけでは、つまり単一のサービスのマッチングではエンド・トゥ・エンドの物流の問題は解決しない。
荷物と空きトラックだけではなく、入荷作業や出荷作業、保管スペースなど全てをネットワークにつなぎ、エンド・トゥ・エンドの物流を最適化する必要があります」  「ただし、それには物流のパケット(データ伝送の単位)化が必要です。
0と1で表現できる情報と違って、フィジカルなモノはパケット化しないと通信に乗らない。
それを個人的には『パケットルーティング』(最適なパケットの伝送経路を選ぶ仕組み)と呼んでいます。
また、フィジカルインターネットは『π(パイ)』と呼ぶ規格化されたコンテナを使ってそれを実現しようとしている。
そうした世界観にプラットフォームという言葉は馴染みません」 ──輸出入に使う標準コンテナやヤマト運輸の『宅急便』はパイの先取りでしょうか。
 「パイ化に近い。
ただし、宅配便の場合、同じ『80サイズ』でも縦横高さに無数のバリエーションがあります。
端的に言って物流の規格化はまだ何も始まっていない。
だから今は車両単位のマッチングしかできない。
しかし、これから必ず進んでいく」 ――その先には何があるのでしょうか。
 「シェアリングエコノミーです。
カーシェアリングの『タイムズ』は分かりやすい例だと思います。
彼らは、地形が悪かったり大きさが中途半端で放っておかれていた空き地を、時間貸し駐車場としてシェアするモデルを作った。
そして今度は駐車場にレンタカーを置いてクルマをシェアさせていった。
そこで起きているのは『価値の転換』です」  「それと同じように、価値が失われてしまっているものを、他の価値に転換してシェアするということが、これからさまざまな領域で、ものすごい勢いで広がっていく。
高齢化が進んで元気なまま定年退職してしまう人が大量に生まれていく、その労働力もその一つです。
ただし、駐車場や求車求貨のような単品のマッチングは誰でも思いつくので今さら勝負にはならない。
もっと多くの要素をつなげて新たな価値を生み出すところにチャンスがある。
莫大なマーケットが物流の領域に生まれます」

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