2020年3月号
特集
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日本郵便 Interview 諫山 親 副社長 60サイズ以下の小型貨物で攻勢をかける
郵便配送網の強みを生かす
──現中計では「商品やオペレーションの一体的見直し」が柱の一つに位置付けられています。
具体的には何を意味しているのでしょうか。
「お客さまのニーズに合わせて商品を開発してきたことで複雑化したオペレーションを整理して効率化しようということです。
以前は『郵便』と『荷物』、昔の言い方だと『小包』でオペレーションの体系が完全に分かれていました。
区分(仕分け)の仕方も違えば、配達も2輪(バイク・自転車)と4輪で別だった。
その統合に取り組んでいます」 「郵便物と荷物を一緒に配達することを内部では『併配』と呼んでいるのですが、これが従来は掛け声ばかりで思ったように進んでいませんでした。
しかし、『ゆうパケット』が登場して小さな荷物が非常に増えたことで、一気に併配が進んできました。
『ゆうパック』でも60サイズの小型の荷物は2輪で持って行ってくれるようになった。
そのために集配用のキャリーボックスも大型化しました」 ──これまで宅配市場の主戦場は60サイズから160サイズの荷物でした。
「それが60サイズ以下の小さな荷物にシフトしています。
当社を含めた宅配3社の足元の実績を見ても大きなサイズは個数が減っています。
デリバリープロバイダに流れていることもありますが、荷物自体の小型化が進んでいるのは間違いありません。
近所の店舗で買っていた商品までECで買うようになってきたことに加え、荷送人が運賃を考慮して商品の形状や梱包をできるだけ小さくする工夫をするようになりました」 ──日本郵便には追い風ですか。
「小型貨物の配達ではコスト面でも品質面でも強みがあると自負しています。
郵便物は減っているとはいえ年間167億通ですから、宅配便よりはるかに多い。
そのネットワークに『ゆうパック』や『ゆうパケット』、郵便でも荷物として配達する『レターパック』や定形外を乗せられると大変に効率が良い。
勝負していく絵が描けます」 「ただし、荷物のハンドリングは郵便と比べてこれまで機械化が遅れていました。
そこで一昨年あたりから小型荷物を自動で仕分ける『パケット区分機』の導入を各地で進めています。
また2輪に乗せるだけでは足りなくなる可能性もあるので、2輪の持つ機動性を維持しながら効率良く配達する新たな仕組みの検討を始めています」 ──昨年10月には厚さ7㎝までの小型荷物を扱う「ゆうパケットプラス」を発売しました。
「従来は『ゆうパック』の60サイズと、厚さ3㎝以内の『ゆうパケット』の間に商品がありませんでした。
ヤマト運輸さんはそこにいち早く目を付けて『宅急便コンパクト』を商品化されましたが、それを宅配便のネットワークで届ける『判取り(受領印)』ありのサービスとして設計されている。
それに対してわれわれは受け箱(郵便箱)配達を基本にすることでコストを抑え、低料金で提供することにしました」 ──厚さが3㎝なら郵便箱の差し込み口に入りますが、7㎝だと後ろに回って入れるしかない。
「再配達が大量に発生してしまうかもしれないという危惧はありました。
そこでまずは『メルカリ』さん限定のサービスとしてスタートしましたが、今のところ再配達率は想定の範囲内に収まっています。
しかも、大変に評判が良い。
今後、対象を広げていくことを検討しています。
ただし、その場合には『置き配』をセットにするといった工夫も必要になるかもしれません」 ──昨年夏に置き配バッグ『OKIPPA(オキッパ)』を10万個無料配布しました。
「10万件のモニター募集に対して29万件もの応募がありました。
モニターのアンケート結果を分析したところ、オキッパを設置することで再配達を62%減らせることが分かりました。
オキッパは荷物を入れたら鍵を掛けるので次が使えないとか、生モノなどバッグに入れられない荷物もありますが、再配達問題の有効な解決策の一つになり得ます」 ──昨年末にはアマゾンと置き配の実証実験を行いました。
アマゾンは今年、置き配を全国展開する計画でデリバリープロバイダだけでなく、日本郵便とも連携すると報道されています。
「われわれとしても置き配は推進したい。
ご存じの通りコンビニ受け取りや宅配ロッカーは期待されたほど利用されていません。
やはり消費者は自宅で受け取ることを希望されている。
置き配は受取人、差出人、そして配達するわれわれの全員にメリットがあります。
ただし、置き配を普及させるには、ECサイト側で置き配を選択できるようにしたり、配達予告通知を出す仕組みに対応してもらう必要があります。
盗難リスクの問題や、ラベルから個人情報が漏れることを心配する声もある。
そこで政府に働き掛けて『置き配検討会』を設置してもらい周知や啓発に向けた活動を進めています」 郵便外務員の働き方改革 ──物流業界では労働時間規制が大きなコストアップ要因として浮上しています。
日本郵便は従来から残業が少ないことで知られてきました。
競争上優位に働くはずです。
「宅配会社のセールスドライバーは自分の担当エリアを基本的に自分一人で完結します。
最近になって『toC』を分離する動きも出てきましたが、当社の場合は昔から同じエリアを複数の配達員が交替でカバーしてきました。
外部委託にしても、国営時代には国家公務員の定員管理で増員が難しかっため、小包が増えた分は多くを外部に委託してきました。
その伝統は今も生きていて『ゆうパック』の配達の半分が外部委託です」 ──赤帽とは違うのですか。
「違います。
ほぼ郵便専属で継続的に業務を委託している事業者です。
ここに来て他社が軽トラ事業者の募集に乗り出しているので引き抜きが心配だったのですが、大きな影響は出ていません。
がむしゃらに働くより、安定した生活を求める層が支えてくれているのだと思います」 ──今年度に入って日本郵便の郵便・物流部門が黒字転換しています。
値上げの定着と並びコスト削減が理由に挙がっています。
「日別・時間帯別に必要な労働力を必要なところに配置できるようになってきました。
どの郵便局で何人が何時間、何の仕事に就いているのか、国営から公社の時代までは本社では把握できませんでした。
民営化後にようやく着手してシステムを構築し、精度を高めてきました。
今は本社にいながら一人一人の勤務状況が全て分かります。
超過勤務の発生も予測できる。
郵便局別・業務区分別の必要な要員数も見えるようになりました。
他と比べて生産性が低い場合には改善を促す。
当然の取り組みではありますが、そうした活動が業績に反映されるようになってきました」
具体的には何を意味しているのでしょうか。
「お客さまのニーズに合わせて商品を開発してきたことで複雑化したオペレーションを整理して効率化しようということです。
以前は『郵便』と『荷物』、昔の言い方だと『小包』でオペレーションの体系が完全に分かれていました。
区分(仕分け)の仕方も違えば、配達も2輪(バイク・自転車)と4輪で別だった。
その統合に取り組んでいます」 「郵便物と荷物を一緒に配達することを内部では『併配』と呼んでいるのですが、これが従来は掛け声ばかりで思ったように進んでいませんでした。
しかし、『ゆうパケット』が登場して小さな荷物が非常に増えたことで、一気に併配が進んできました。
『ゆうパック』でも60サイズの小型の荷物は2輪で持って行ってくれるようになった。
そのために集配用のキャリーボックスも大型化しました」 ──これまで宅配市場の主戦場は60サイズから160サイズの荷物でした。
「それが60サイズ以下の小さな荷物にシフトしています。
当社を含めた宅配3社の足元の実績を見ても大きなサイズは個数が減っています。
デリバリープロバイダに流れていることもありますが、荷物自体の小型化が進んでいるのは間違いありません。
近所の店舗で買っていた商品までECで買うようになってきたことに加え、荷送人が運賃を考慮して商品の形状や梱包をできるだけ小さくする工夫をするようになりました」 ──日本郵便には追い風ですか。
「小型貨物の配達ではコスト面でも品質面でも強みがあると自負しています。
郵便物は減っているとはいえ年間167億通ですから、宅配便よりはるかに多い。
そのネットワークに『ゆうパック』や『ゆうパケット』、郵便でも荷物として配達する『レターパック』や定形外を乗せられると大変に効率が良い。
勝負していく絵が描けます」 「ただし、荷物のハンドリングは郵便と比べてこれまで機械化が遅れていました。
そこで一昨年あたりから小型荷物を自動で仕分ける『パケット区分機』の導入を各地で進めています。
また2輪に乗せるだけでは足りなくなる可能性もあるので、2輪の持つ機動性を維持しながら効率良く配達する新たな仕組みの検討を始めています」 ──昨年10月には厚さ7㎝までの小型荷物を扱う「ゆうパケットプラス」を発売しました。
「従来は『ゆうパック』の60サイズと、厚さ3㎝以内の『ゆうパケット』の間に商品がありませんでした。
ヤマト運輸さんはそこにいち早く目を付けて『宅急便コンパクト』を商品化されましたが、それを宅配便のネットワークで届ける『判取り(受領印)』ありのサービスとして設計されている。
それに対してわれわれは受け箱(郵便箱)配達を基本にすることでコストを抑え、低料金で提供することにしました」 ──厚さが3㎝なら郵便箱の差し込み口に入りますが、7㎝だと後ろに回って入れるしかない。
「再配達が大量に発生してしまうかもしれないという危惧はありました。
そこでまずは『メルカリ』さん限定のサービスとしてスタートしましたが、今のところ再配達率は想定の範囲内に収まっています。
しかも、大変に評判が良い。
今後、対象を広げていくことを検討しています。
ただし、その場合には『置き配』をセットにするといった工夫も必要になるかもしれません」 ──昨年夏に置き配バッグ『OKIPPA(オキッパ)』を10万個無料配布しました。
「10万件のモニター募集に対して29万件もの応募がありました。
モニターのアンケート結果を分析したところ、オキッパを設置することで再配達を62%減らせることが分かりました。
オキッパは荷物を入れたら鍵を掛けるので次が使えないとか、生モノなどバッグに入れられない荷物もありますが、再配達問題の有効な解決策の一つになり得ます」 ──昨年末にはアマゾンと置き配の実証実験を行いました。
アマゾンは今年、置き配を全国展開する計画でデリバリープロバイダだけでなく、日本郵便とも連携すると報道されています。
「われわれとしても置き配は推進したい。
ご存じの通りコンビニ受け取りや宅配ロッカーは期待されたほど利用されていません。
やはり消費者は自宅で受け取ることを希望されている。
置き配は受取人、差出人、そして配達するわれわれの全員にメリットがあります。
ただし、置き配を普及させるには、ECサイト側で置き配を選択できるようにしたり、配達予告通知を出す仕組みに対応してもらう必要があります。
盗難リスクの問題や、ラベルから個人情報が漏れることを心配する声もある。
そこで政府に働き掛けて『置き配検討会』を設置してもらい周知や啓発に向けた活動を進めています」 郵便外務員の働き方改革 ──物流業界では労働時間規制が大きなコストアップ要因として浮上しています。
日本郵便は従来から残業が少ないことで知られてきました。
競争上優位に働くはずです。
「宅配会社のセールスドライバーは自分の担当エリアを基本的に自分一人で完結します。
最近になって『toC』を分離する動きも出てきましたが、当社の場合は昔から同じエリアを複数の配達員が交替でカバーしてきました。
外部委託にしても、国営時代には国家公務員の定員管理で増員が難しかっため、小包が増えた分は多くを外部に委託してきました。
その伝統は今も生きていて『ゆうパック』の配達の半分が外部委託です」 ──赤帽とは違うのですか。
「違います。
ほぼ郵便専属で継続的に業務を委託している事業者です。
ここに来て他社が軽トラ事業者の募集に乗り出しているので引き抜きが心配だったのですが、大きな影響は出ていません。
がむしゃらに働くより、安定した生活を求める層が支えてくれているのだと思います」 ──今年度に入って日本郵便の郵便・物流部門が黒字転換しています。
値上げの定着と並びコスト削減が理由に挙がっています。
「日別・時間帯別に必要な労働力を必要なところに配置できるようになってきました。
どの郵便局で何人が何時間、何の仕事に就いているのか、国営から公社の時代までは本社では把握できませんでした。
民営化後にようやく着手してシステムを構築し、精度を高めてきました。
今は本社にいながら一人一人の勤務状況が全て分かります。
超過勤務の発生も予測できる。
郵便局別・業務区分別の必要な要員数も見えるようになりました。
他と比べて生産性が低い場合には改善を促す。
当然の取り組みではありますが、そうした活動が業績に反映されるようになってきました」
