{literal} {/literal}

2020年3月号
特集

ラストワンマイル協同組合 中小運送会社の企業連合で低価格宅配便

作業工程の分担でコストを抑制  ラストワンマイル協同組合では30社以上の中小運送事業者が企業連合を組み、宅配サービスを展開している。
首都圏の一都五県(東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木、茨城)での集配に加え、2月からは大阪府で首都圏向けの集荷作業をスタートさせている。
設立は2018年4月。
結成の背景にはEC市場の拡大による宅配貨物の急増とそれに伴う宅配大手の総量規制や料金改定があった。
 「集荷制限や運賃値上げによって、私が社長を務めるデリバリーサービスにも荷主企業から宅配に関する相談が多く寄せられるようになった。
従来水準の値段で運んでくれる企業、あるいは荷姿や数量制限なしで運んでくれる会社を知らないかという内容だった。
引き受けたいと思ったものの、当社の宅配ネットワークの主体は多摩地区を軸とした東京都。
荷主の大半は最低でも東京、神奈川、千葉、埼玉の一都三県での集配を要望していたため、対応したくてもできなかった。
そこで構想したのが中小運送事業者の企業連合によるラストワンマイルネットワークの構築だった」とラストワンマイル協同組合の志村直純理事長(デリバリーサービス社長)は振り返る。
 当初構想ではデリバリーサービスが受託した宅配業務を提携した地域密着型の事業者に配送してもらう方向での連携を模索していた。
話を持ちかけた各地域の中小事業者はいずれも大手宅配の業務を請けた経験のある企業だった。
しかし、この連携構想は思うように進まなかった。
アンダーの形で仕事をすることに事業者が抵抗を覚えたからだった。
どうすれば企業連合を組めるのかを考えた末、中小企業協同組合の形式を取ることにした。
各社が同格となる協同組合ならば「立場の公平性」と「料金の透明性」の両方を確保できるからだ。
協同組合によるラストワンマイルネットワーク構想を再度説明しに行ったところ、賛同を得ることに成功し、18年4月に23社でラストワンマイル協同組合が発足。
トライアルを経て、同年9月から本格的に事業を開始した。
 ラストワンマイル協同組合の主な荷主はECを主体とする通販事業者や倉庫・3PL事業者だ。
宅配大手よりも安価な運賃と大手がサービス対象外としている規格外貨物の引き受けなどを軸に取扱個数を拡大していった。
現在は1日当たり平均2千個、繁忙期には6千個の荷物を取り扱っている。
 大手宅配よりも安い運賃を実現している理由の一つは荷物の持ち込みを軸とした料金体系の存在だ。
集荷を行うプランも設定してはいるが、荷主が方面別に仕分けて協同組合のハブセンターや各組合企業のデポなどに持ち込むことでより高い割引率を得られる。
宅配大手の価格と比べると平均して1割から4割程度安価な運賃を安定的に実現しているという。
「フルオプションでサービスを展開したら大手との価格差はそれほど出せない。
荷主と物流工程の作業を分担することで低料金を実現できる」と志村理事長は説明する。
 ラストワンマイル協同組合では加盟する組合員各社が特定エリアの集配をそれぞれ「面」で担当する「エリア制」を敷いている。
共同受注した小口配送業務を各エリア担当の組合企業が責任を持って配送する体制だ。
例えば、八王子市を除く多摩地区担当の組合企業であるデリバリーサービスは担当地区での配送を1社で全面的に担う。
同じく豊島区と板橋区を担当する組合企業はそのエリアでの配送に責任を持つ。
各組合企業が得意としている地域を担当エリアに設定し、それを組み合わせていくことでラストワンマイル協同組合全体でのサービス提供エリアとしている。
点ではなく面で区切るため、あるエリア内に複数組合企業がとびとびに配置されるといった形態にはならない。
全体の物量が増加して各エリア担当の組合企業だけでは配達し切れなくなる場合は「譲渡申請」によってエリアを分割し、新規加盟企業が新たなエリアを担当することになる。
その場合であっても担当エリアは必ず面で区切る形を取っている。
 現在、31社の加盟組合企業全体の総車両台数は3千数百台。
そのうちの300台から400台ほどがラストワンマイル協同組合の宅配業務における1日当たりの運用台数となっている。
配送拠点は東京・立川の立川ハブセンター、各組合企業のデポや営業所などが担う。
代表的な物の流れは次の通りとなる。
各エリアを担当する組合企業拠点へ持ち込まれた貨物は立川ハブセンターへと輸送され、そこで各地から来た貨物をエリアごとに積み合わせ、各エリアを担当する組合企業が配送する。
引き受けた貨物の配達先が組合企業の担当エリア内の場合、例えば渋谷区を担当する組合企業の拠点に持ち込まれ、配達先も同じエリア内の場合は組合企業のネットワークの中で集配が完結する。
 物量拡大は各組合企業の営業によって主に進められる。
集荷を促すための仕組みはシンプルだ。
あらかじめ設定された受託下限の価格である「組合員タリフ」を基に組合企業が個別に新規貨物獲得のための営業を展開。
交渉によって得られた運賃と組合員タリフとの差額が組合企業の収益となる。
この集荷取扱と配達の2本がラストワンマイル協同組合の業務における組合企業の収益の柱となる。
 ラストワンマイル協同組合は日本通運やヤマトHD、佐川急便などといった有力運送会社が出資するコラボデリバリーと提携している。
コラボデリバリーの協力を得て、ヤマトシステム開発の配送管理システムのカスタマイズ版をラストワンマイル協同組合のドライバー端末に導入した。
これは専用アプリを入れたスマートフォンとBluetooth接続したスキャナーを組み合わせた端末システムで貨物追跡が可能なほか、再配達システムや出荷管理システムなども備えている。
大都市圏での事業拡大に本腰  ラストワンマイル協同組合は集配サービスを現在、一都五県で展開している。
2月からは大阪での集荷も始まった。
大阪については当面の間は集荷のみを行い、府内の荷主から集荷した荷物を立川ハブセンターへと幹線輸送し、首都圏の一都五県へと配送する。
6月をめどに今度は関東で集荷した貨物の大阪での配達も開始する計画だ。
組合企業の保有車両は多くは軽トラックや中小型トラックのため、当面の間、幹線輸送は組合企業以外のチャーター便によって行う。
 近畿については主に大阪府内を担当する組合企業の加盟によってネットワークをさらに拡充していく方向だ。
近畿の次は愛知を中心とする中部での展開を検討しており、既に事業者を対象とする説明会も開催している。
複数事業者からの反応も得ているが、中核となる事業者がまだ決定していないため、正式スタートはもう少しかかるもようだ。
首都圏に関してはネットワークの拡充と高密度化を進める。
まだサービスを開始していない群馬のほか、東京、神奈川、千葉、埼玉、栃木でも新たな加盟企業を募集していく。
 今後は取り扱い貨物の増加とそれに伴う組合企業の拡大を推し進める。
物量については取扱個数1万個を短期目標に設定。
中長期的には3万個から5万個を目標に据えている。
協同組合への加盟企業戦略については、従来の中小運送会社に加えて倉庫・3PLの参加を模索していく。
 「われわれに期待されている機能の一つに大手宅配のバイパスラインとしての役割があると思っている。
ただ、いずれにしても特定荷主の専属になるべきではないと感じている。
ラストワンマイル協同組合は中小事業者による企業連合。
特定荷主への極端な傾注は危険だということを組合企業のメンバーはこれまでの経営経験からも知っている。
宅配で困っている幅広い荷主にサービスを提供していきたい」と志村理事長は語り、日本のラストワンマイルの一翼を担っていく構えだ。

月刊ロジスティクス・ビジネス

購読のお申し込みはこちらから