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2020年3月号
特集

CBcloud 日本郵便が宅配効率化ソリューションを採用

ベテラン配達員の技能を忠実に製品化  日本郵便は物流スタートアップ企業のCBcloudが開発した宅配効率化ソリューション「SmaRyu Post(スマリューポスト)」の採用を決めた。
軽4輪の配達員にスマートフォンを配布、スマリューポストのアプリをダウンロードして業務用端末として使用する。
まずは200局で運用する。
 アプリを起動して荷札のバーコードを携帯のカメラでスキャンすると、クラウドシステムがその日の最適な配達ルートを計算、車両への荷物への積み込み方法から配達を済ませて帰庫するまでの一連の宅配業務を一貫して支援する。
新人ドライバーでも一定のパフォーマンスを発揮できる。
日本郵便は昨年9月に実証実験を行い、その効果を確認した。
 同ソリューションのファーストユーザーとなったアスクルでは、2年前から既存の自社端末をスマリューポストに置き換えて、オフィス通販や個人向け通販の配達に利用している。
他にも家電量販店や飲料メーカーなどが導入、これまでに延べ約4万便、約160万個の配達実績がある。
 CBcloudの松本隆一代表取締役CEOは「他のITベンダーと違って当社はもともと物流会社。
デジタルネイティブの若い世代だけでなく、誰にでも使ってもらえるように、UI/UX(ユーザーインターフェイス/ユーザーエクスペリエンス)を現場で徹底的に突き詰めた。
そこを郵政さんにも評価いただいた」という。
 同社の設立は2013年10月。
保冷軽トラックの個人事業主を組織化した利用運送事業者として出発した。
16年6月に荷主のスポット輸送の依頼を軽トラックのドライバーとマッチングするウーバー型のプラットフォーム「軽Town」の運用を開始、17年6月に現在の「PickGo(ピックゴー)」に名称を変更した。
 同サービスは軽トラの、いわゆる“一人親方”を多重下請け構造から解放して、自由な働き方と十分な手取りを保証する仕組みとして、ドライバーから人気を集めた。
登録ドライバー数は現在1万5千人以上に上っている。
一方、荷主には、配送依頼を出してから平均1分以内に99%以上の確率でマッチングが成立することが評価されている。
登録荷主数は個人を含め2万6千以上。
累計の配送実績は16万件以上に達している(2019年10月時点)。
今年2月には2トン車〜10トン車の普通トラックの取り扱いも開始した。
 ただし、ピックゴーはこれまでの宅配便の仕事を取り扱ってこなかった。
松本CEOは「EC事業者や宅配会社からはドライバーを出してほしいとよく頼まれるが断ってきた。
宅配に投入されたドライバーは使われるだけで、自分の成長や価値を上げていく機会がほとんどない。
それでは単なる人材派遣になってしまう。
ドライバーファーストの当社の方針と合わない」という。
 宅配の仕事はドライバーからも人気がない。
配達効率の悪いエリアや慣れないドライバーが1個いくらの個建てで仕事を請け負うと時給換算が1千円を切ってしまうこともある。
それでも宅配の仕事に就く人がいるのは、スポット輸送と違って安定して仕事があるから。
好きでやっている人は少ないという。
 宅配現場にドライバーを投入する前に、まずは宅配の環境を整える必要がある。
松本CEOはそう判断して、宅配業務を効率的かつ魅力的なものにする仕組みを2年がかりで作り込んできた。
それがスマリューポスト、旧LAMSだ。
なお、同社は今年2月にソリューションのブランドを整理して、LAMSをスマリューポストに、無料で使用できるAI動態管理システム「ichimana(イチマナ)」を「SmaRyu Truck(スマリュートラック)」に名称変更した。
 スマリューポストの開発に当たり、CBcloundのエンジニアは作業服を着て、ベテラン配達員と一緒に配達することでオペレーションを身体で学び、ドライバーの生の声を引き出した。
 宅配便のドライバーは毎朝、かなりの時間をかけて荷札の住所から白地図に届け先をプロットし、届け先の在宅率や宅配ボックスの有無まで考慮に入れて配達ルートを組み立てている。
そして配達の順番から逆算して荷物を車両に積み込むため、届け先で荷物を探すことがない。
そのノウハウは属人的で新人にはそう簡単に真似ができない。
 CBcloundのエンジニアは、ベテランドライバーの経験と勘に基づくスキルを一つ一つ分解して忠実にアプリに移植した。
「宅配現場の“あるある”の課題を全てプロダクトに反映した」と松本CEOは胸を張る。
 届け先の世帯構成、一軒家か集合住宅かといった属性で時間帯別在宅率を弾き、時間指定の制約や燃料消費量なども考慮に入れた最適ルートを作成、荷物の積み込み方を指示する。
運転中はドライバーをナビゲーション。
目的地に到着すれば車両のどこに荷物があるのか教えてくれる。
 現状、宅配ボックスはドライバーの奪い合いになっている。
投函すれば配達終了になるため、ドライバーは真っ先に駆け付ける。
しかし、既に埋まっていることが多い。
そうしたロスを低減する効果もある。
しかも、各戸の時間帯別在宅率や宅配ボックスの空きを予測する精度は、運用実績の蓄積に伴い機械学習によって高まっていく。
 スマリューポストは宅配の生産性を向上するだけでなく、宅配業務を可視化する。
ドライバーのパフォーマンスを定量的に評価できるようになる。
仕事の付加価値が上がり、ドライバーは自己成長の機会を得られる。
CBcloudはスマートバリューを導入した宅配現場に対してはドライバーの供給にも応じる方針だ。
ドライバーシェアリングの環境を整備  荷主とドライバーを直接アプリでマッチングするウーバー型のシェアリングの仕組みは、日本の運送業に適用するのが難しいと考えられている。
ピックゴーがそれに成功したのは、4輪でも軽トラだけは例外として個人営業が認められていることに加え、その市場が近代化や組織化から取り残されて放置されてきたことが大きい。
 松本CEOは「黒ナンバーの登録車両台数は23万台にも上る。
これはタクシーの25万台に匹敵する数だ。
私自身、蓋を開けてみるまで、そこまで大きな市場だとは気付いていなかった。
ただし、23万台のうち半数近くは既に年金受給年齢に達している高齢のドライバーで、若い世代は入ってきていない。
今後は23万人のパイを増やしていくことにも取り組みたい」という。
 その一環で2018年7月からドライバー希望者に軽貨物車両をリースする「PickGoカーリース」を事業化している。
ウーバーイーツの配達員から「隙間時間に自転車で配達するだけでは生活できない。
配達の仕事を職業にしたい」と相談を受けたことがきっかけだったという。
最近では「自分の息子をドライバーにしたい」という依頼まで舞い込むようになった。
 今年2月にPickGo事業本部長に就任した佐川大介執行役員は、グーグルのマーケティングマネージャーからこの1月にCBcloudに転じた。
「宅配の現場はアナログかつ属人的で、ITやAIの進化の恩恵をほとんど受けていない。
そこにスマリューポストを浸透させることでイノベーションが起きる。
一般個人でも宅配できる環境を整えて、ドライバーになるハードルを低くしていきたい。
例えば黒ナンバーの車両を100円パーキングなどに配置して自由に使えるようにすれば、車両を持っていない人でも空いた時間にPickGoで仕事を受けてスマリューポストで配達するといったことが可能になる」と、佐川執行役員は新たな事業展開の構想を練っている。

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