2020年3月号
特集
特集
ラストマイルの革新─外部不経済の観点から
物流の外部不経済とは
都市部において物流がもたらす外部不経済(*編集部注:ある経済主体の行動が、他の経済主体に、何らの対価の支払いを伴わずに不利益を与えること。
公害など)は、特に大きな問題である。
物流セクターが引き起こす環境問題への市民の関心の高さを背景にして、政策立案者たちはこれまで物流の外部不経済削減に向けた長期戦略に取り組んできた。
主として陸上運送に起因する外部不経済には大気汚染、気候変動、騒音公害、交通渋滞、交通事故、インフラの損耗などが挙げられる。
大気汚染は健康への悪影響(各種アレルギー、呼吸器系・循環器系の病気など)や、非可逆的かつ治癒不能なダメージを人に与える。
さらに大気汚染や粒子状物質は建物、とりわけ歴史的建造物の表面の汚れとなって付着したり装飾的な成分を破壊する。
また、気候変動は温室効果ガス排出の当然の帰結である。
これらはまさに現在進行中の現象であり、科学者たちはその影響を最低限に抑えるべく、イノベーションを模索している。
これは一地域だけでなく全世界が一丸となって取り組まなければならないグローバルな課題である。
仮に全ての都市が陸運によって生じる温室効果ガスを削減したとすれば、その外部不経済は目覚ましく減少する。
騒音公害は住宅地において特に深刻な問題である。
不安、身体的苦痛、睡眠障害、過度の緊張などを引き起こすことが、研究により明らかになっている。
都市部では交通渋滞が公共交通機関の遅れや効率の低下を招くだけでなく、運転時間・交通量・燃料消費量などが増加する原因となっている。
交通事故は人の命を奪い、健康を損ない、身体的・精神的苦痛と医療費負担を生じさせる。
大型車両の存在と交通量の増加はインフラの劣化を加速させる。
しかし、イノベーティブな技術と戦略、新たな組織モデルの導入などの対策を講じれば、こうした外部不経済のある程度の削減は可能である。
本稿では物流の外部不経済に関する近年の研究のうち、特にラストマイルロジスティクスという領域に焦点を絞ってレビューすることにする。
ラストマイルロジスティクス ラストマイルロジスティクスはサプライチェーン全体の中で最も非効率的な部分であり、実に全配送コストの28%を占めている。
都市部のロジスティクスと輸送システムの分野では近年、主にICTの進化によっていくつかのイノベーションがもたらされた。
ICT技術が活用されているのは次のような分野である。
(a)位置特定技術を利用した移動体追跡(GPSとモバイルネットワーク) (b)衛星その他の技術を利用した情報およびデータのユーザーからの収集、あるいはユーザーへの提供 (c)ユーザーフレンドリーなインターフェース技術を用いたモバイルアプリケーション (d)IoTやビッグデータツールによる情報の収集と分析 こうした技術をまとめて一つのデバイスに収めるのに、スマートフォンはまさにうってつけである。
運輸セクターにおけるイノベーションは、ロジスティクスプロバイダーとのコミュニケーションチャネルとして、このデバイスとアプリを中心に今後発展していくものと思われる。
以下に運輸セクターで活用されるイノベーションのさまざまな側面、あるいは既存のインフラおよび輸送システムの改善に向けた手法と戦略といった視点から見ていくことにしたい。
自動車のイノベーション 自動車市場には破壊的なイノベーションが次々と現れている。
それが前世紀の自動車産業に出現する原動力となったのは、新しいエンジン技術、自動運転車、画期的な配送手段などである。
電気自動車(EV)やハイブリッド車、燃料電池車(FCEV)は外部不経済の削減を可能にするイノベーションである。
こうした技術は環境や騒音公害に対してプラスのインパクトを持つ上に、すでに市場で普通に入手できるまでになっている。
電気自動車の最大の弱点はバッテリー容量(=走行可能距離の短さ)と充電時間の長さである。
研究者たちはバッテリー性能の向上を目指すと同時に、ラストマイルの配送経路最適化にも取り組んでいる。
燃料電池車は極めて信頼性の高いシステムであるにもかかわらず、世間では安全性に問題があると思われがちだ(水素の可燃性による)。
水素ステーションのネットワークというインフラもまだ発展途上にある。
しかしながら走行可能距離の長さ(600〜700㎞)と燃料補給時間の短さは強みである。
ハイブリッド車はこれらのイノベーションの中では実際に最も多く販売されている。
投資コストがそれほどかからないことと、走行可能距離の長さ(燃料+バッテリー)が特徴である。
欧州連合ではモペッド(いわゆる原動機付き自転車)および小型オートバイ、全地形対応車、三輪車、その他三輪または四輪の小型車両などをEL-V(Electric L-category Vehicle)として分類している。
こういったEL-Vも、都市部での移動や配送に適した手軽な輸送手段としてのイノベーションといえる。
小回りが利いて駐車スペースもそれほど必要としないため、都市部での小荷物配送に向く。
従来の輸送手段より小さくて軽いEL-Vは、駐車に時間と手間を取られないために配送時間が短くなり、さらには燃費や大気汚染、騒音公害なども抑制されるという非常に優れた輸送手段である。
自転車、三輪車、カーゴバイク(普通の自転車より多くの荷物が運べる自転車)というカテゴリーが登場してきたのは比較的最近のことである。
キャパシティ向上のため電力を利用するようになった新世代の自転車などは、従来の車両と比べても遜色ない存在に成長しつつある。
ラストマイル配送で生じる都市の外部不経済を減らすには、完全に電気で動く電動車両が大きな意味を持つ。
これによる外部不経済削減の評価については原注【1】を、性能評価とディーゼルトラックとの比較は【2】を参照されたい。
【1】Menga, P.; Buccianti, R.; Bedogni, M.; Moroni, S. Promotion of freight mobility in Milan: Environmental, energy and economical aspects. In Proceedings of the 2013 Electric Vehicle Symposium and Exhibition (EVS27), Barcellona, Spain, 17–20 November 2013. 【2】Lebeau, P.; Macharis, C.; Van Mierlo, J.; Maes, G. Implementing electric vehicles in urban distribution: A discrete event simulation. In Proceedings of the 2013 Electric Vehicle Symposium and Exhibition (EVS27), Barcellona, Spain, 17–20 November 2013. 電気自動車とICTを活用した都市部でのスマートロジスティクスは【3】、【4】、マーケットのEL-Vに対する高い評価に関しては【5】に論じられている。
【3】Schau, V.; Rossak, W.; Hempel, H.; Spathe, S. Smart City Logistik Erfurt (SCL): ICT-Support for managing Fully Electric Vehicles in the Domain of Inner City Freight Traffic. In Proceedings of the 2015 International Conference on industrial Engineering and Operations Management (IEOM), Dubai, UAE, 3–5 March 2015. 【4】Ablola, M.; Plant, E.; Lee, C. The Future of Sustainable Urban Freight Distribution—A Delphi Study of the Drivers and Barriers of Electric Vehicles in London. In Proceedings of the 5th IET Hybrid and Electric Vehicles Conference (HEVC), London, UK, 5–6 November 2014. 【5】Sachs, C.; Burandt, S.; Mandelj, S.; Mutter, R. Assessing the market of light electric vehicles as a potential application for electric in-wheel drives. In Proceedings of the 2016 International Electric Drives Production Conference (EDPC), Nuremberg, Germany, 30 November–1 December 2016. 商用電気自動車の購入コストは従来のディーゼルトラックに比べ割高だが、運行費はトラックの方が高い。
バッテリー寿命と長期的コスト、走行可能距離については【6】、電気自動車を都市部の貨物輸送に利用する際の政策的サポートに関する評価については【7】をそれぞれ参照のこと。
【6】Feng, W.; Figliozzi, M. An economic and technological analysis of the key factors affecting the competitiveness of electric commercial vehicles: A case study from the USA market. Transp. Res. Part C 2013, 26, 135–145. 【7】Mirhedayatian, S.M.; Yan, S. A framework to evaluate policy options for supporting electric vehicles in urban freight transport. Transp. Res. Part D Transp. Environ. 2018, 58, 22–38. 電気自動車はV2G(Vehicle-to-Grid=車両から電力系統に電力を供給)技術を使ったスマートグリッドや最適化アルゴリズムにより、電力価格を抑制したり再生可能エネルギーの活用を増やすことに役立つ。
こうしたケースでは、既存の発電所の電力使用量を減らすことが外部不経済の抑制につながる。
向こう何年かのうちで最も注目すべき技術の一つに、自動運転車およびオンデマンド自動運転車がある。
人間が操縦することなく自動的に運行される車のことである。
自動化の程度には各種段階があり、セミオートからフルオートがテストフェーズにある。
多くの企業が貨物輸送の領域も含めてこの技術に投資を行っている。
軍事セクターから派生した自律・無人システムは無人航空機(UAV)、地上無人システム、海上無人システムの三つに分けられ、ドローンとも呼ばれる。
その中でも民生用としてここ数年盛んに活用されているのがUAVである。
独DHLの「パケットコプター」、米アマゾンの「プライムエア」、米グーグルの「ウィング」、仏ジオポストの「ジオドローン」など、名だたる物流企業が思い思いの名称で荷物の配送にドローンを使う実証実験を行っている。
都市部の小荷物配送というラストマイルロジスティクスに地上用ドローンロボットを使うプロジェクトも進行中である。
宅配デポやロッカーの活用 荷物が小型から中型程度の場合、ラストマイルデリバリーの効率を上げるイノベーティブな戦略の一つとして、近隣に宅配用デポやロッカーを設置するという手法がある。
宅配荷物の持戻り防止のため、荷物を一時保管するデポステーションを活用するというアプローチである。
このアイデアは輸送距離が減る一方で積載量は増える。
また、交通量の少ない夜間にデポへの配達を行うなど、運用方法によっては配送時間を短縮することも可能だ。
つまりこのアプローチは経済と環境のどちらにもメリットがあるというわけである。
【8】で紹介されているのは、顧客が取りに来るまで荷物を保管する「モジュール型弁当箱システム(modular bento-box system)」である。
設置には住宅地の一角、ショッピングモール、中心部の広場、等々が適する。
配送に要する移動距離が非常に短くなるため、ここでは電気自動車の活用が提唱されている。
【8】Dell’Amico, M.; Hadlidimitriou, S. Innovative logistics model and containers solution for efficient last mile delivery. Procedia Soc. Behav. Sci. 2012, 48, 1505–1514. これと似たものがいわゆる宅配便ロッカーである。
DHLやポーランドのインポストなど多くの物流企業がこうしたシステムを採用し、このところ急速に普及が進んでいる。
オーストリアポストでは、24時間いつでも荷物を預けたり発送したりできる「Post24」というロッカーを提供している。
アマゾンなどいくつかのネット通販企業は、近所のストックポイントというコンセプトを顧客自身による荷物の引き取りにも利用している。
荷物の受取と支払い、あるいはセルフサービスの電子ロッカーとしても利用できる。
前者の場合、ネットでの注文後、荷物のピックアップと支払いをその場で済ますことができる。
また後者の場合は、eメールかショートメッセージによって各個人の携帯電話へその都度送られるピックアップコードで解錠する。
ロッカーの空き状況、場所、ピックアップなどすべての情報は、ICTを通じて自動的かつリアルタイムにオンライン上に反映される。
販売チャネルとしてオンラインを活用するスペインの世界的アパレル企業ZARAなどでは商品を自宅に届けるのではなく、顧客がウェブサイトで選んだ商品を数日後に実店舗で受け取れるというサービスも提供している。
近隣のデポを活用したイノベーティブなアプローチが【9】に紹介されている。
これは荷物の配送にデポとICT、ラストマイルにクラウドワーカーを活用する手法である。
【9】Wang, Y.; Zhang, D.; Liu, Q.; Shen, F.; Hay Lee, L. Towards enhancing the last-mile delivery: An effective crowd-tasking model with scalable solutions. Transp. Res. Part E 2016, 93, 279–293. ワーカーには、普段の行動範囲やルートから逸脱する距離に対して所定の金額が支払われる。
物流企業側が払う報酬総額を最小化するため、デポの全荷物をそれぞれ最適な配送ルートで回れるワーカーに託すことが最終ゴールとなる。
他のシェアリングエコノミーの仕組みと同じく、このアプリケーションの主な目的はコラボレーティブなアプローチに基づいてリソースを最大限活用することにある。
協働ロジスティクス 都市部におけるコラボレーティブなロジスティクスという考え方は、ラストマイルに対する新たな処方箋であり、既存リソースを一括で管理してシェアすることを眼目にしている。
その際、関係者間で相乗効果を生むためにいちばん重要な要素がこのプロセスにおける調整と協働である。
エコフレンドリーかつ外部不経済の削減を目指すセクターにとり、こういったアプローチは必須のものである。
なぜならそのことが車の台数を減らし、さらには負荷の低い輸送手段の利用(EV、EL-V、FCEV等)とゼロエミッションへとつながっていくからである。
台数が減る上に街中を小さな車が走ることで、渋滞とインフラの損耗も緩和される。
これは航空会社同士のコードシェア便(共同運航便)と似ており、投資および管理コストの削減、リソースの効率的活用、都市部でのデリバリー品質の向上などの効果が見込まれる。
都市部における貨物輸送がもたらす悪影響とコストを減らす方策として、インタラクティブな貨物集積システムを提唱するのが【10】である。
ここでの問題は(1)配送の優先順位などユーザー間の利害調整、(2)配送ポイントのクラスタリング、(3)実際の配送ルート作成、という三つのフェーズに分けられる。
この提案の狙いは貨物の移動距離を減らすことで輸送費を削減するというところにある。
【10】Liakos, P.; Delis, A. An Interactive Freight-pooling service for efficient Last-mile Delivery. In Proceedings of the 2015 IEEE 16th International Conference on Mobile Data Management, Pittsburgh, PA, USA, 15–18 June 2015. ラストマイルへの対応策として、新たな組織モデルとICTツールを活用したアーバン・コンソリデーション・センター(UCC)の活用を検討する研究者たちもいる。
イノベーティブなマネジメント戦略でありビジネスモデルでもあるUCCというコンセプトは、都市部や市街地におけるロジスティクスに関する諸問題を解決するソリューションの一つとして提唱された。
このアイデアは早くも1970年代には登場している。
その内容は、都市中心部の交通渋滞・排気ガス・外部不経済などの削減を念頭に、都市部に近い場所に物資の集積所を設け、そこから各小売業者に配送するというものであった。
同様に都心部の渋滞緩和のため、配送車両の通行に時間枠を設けている都市もある。
【11】では、貨物需要を確定するための「利益最大化オークションメカニズム」を紹介している。
【11】Handoko, S.-D.; Nguyen, D.T.; Lau, H.C. An Auction Mechanism for the Last-mile Deliveries via Urban Consolidation Centre. In Proceedings of the 2014 IEEE International Conference on Automation Science and Engineering (CASE), Taipei, Taiwan, 18–22 August 2014. 中規模都市でのICTを活用したUCCをテーマとして取り挙げているのが【12】である。
全体の設計およびモニタリングを行う枠組みとして高度道路交通システム(ITS)を採用し、サステイナブルな都市部の貨物輸送に役立つ政策・車両・IT技術を、全てのステークホルダーへとつなぐという構想である。
【12】Zunder, T.; Aditjandra, P.; Schoemaker, J.; Laparidou, K.; Vaghi, C.; Osterle, I. Engaging City Stakeholders to Achieve Efficient and Environmentally Friendly Urban Freight Movements. In Towards Innovative Freight and Logistics; John Wiley & Sons, Inc.: Hoboken, NJ, USA, 2016. 【13】はコラボレーティブな都市部のロジスティクスの変種といえるもので、中・小型荷物の輸送に公共交通機関を利用する。
これにより都市部における渋滞をこれ以上悪化させずにガス排出をも削減することができる。
同論文では、コスト効率および時間・エネルギー消費を改善するモデルとして複数のエージェントを利用するシミュレーションを行い、実現可能性を検証している。
【13】Chatterjee, R.; Freulich, C.; Edelkamp, S. Optimizing Last Mile Delivery using Public Transport with Multi-Agent based Control. In Proceedings of the 2016 IEEE 41st Conference on Local Computer Workshop, Dubai, United Arab Emirates, 7–10 November 2016. 都市部での荷物の配達、その中でも特に料理の出前の分野では、主に2種類のオンラインのプラットフォームが台頭してきている。
一つがおよそ15年ほど前に登場した「アグリゲーター(*編集部注 英語で何かを集める人や組織のこと)」によるものであり、もう一つは13年に現れた「ニューデリバリー」の担い手たちが運営するものである。
どちらの仕組みでも消費者は多種多様な飲食店から出前をとることができる。
アグリゲーターは単にカスタマーから注文をとって飲食店に流すだけで、デリバリーは飲食店が自ら行う。
一方、ニューデリバリーの方は、独自のロジスティクスネットワークを構築し、配送手段を持たない飲食店のデリバリーまで代行する。
この担い手には英デリバルーやジャスト・イート、タイのフードパンダ、米ウーバーイーツなどがあり、デリバリーにはバイクを使用する。
輸送管理と経路の最適化 「シティロジスティクス」は都市部のデリバリーの重要コンセプトである。
高度情報システムを活用した都市型ロジスティクス全体の最適化のことであり、担い手は民間企業である。
ここでいう最適化とは、あくまでも市場経済という枠組みの範囲内で、輸送全般を取り巻く環境、渋滞、安全、エネルギー効率などを改善しようとするものである。
シティロジスティクスというコンセプトに対する、ICTおよびITSのイノベーティブな技術を利用したアプリケーションが【14】に紹介されている。
都市型の輸送管理と共同配送がその主張の柱である。
【14】Taniguchi, E. Concepts of city logistics for sustainable and liveable cities. Procedia Soc. Behav. Sci. 2014, 151, 310–317. ICTとインダストリー4・0(膨大な数のセンサー、IoT、ビッグデータ)がインフラと車両のどちらにも活用されるようになり、モビリティへの新たなアプローチが可能になった。
センサーにかかるコストがここ数年で劇的に下がり、移動中・停止中を問わずさまざまな場面でモニタリングができるようになった。
こうした情報は全て環境的・経済的・社会的パフォーマンスの改善に役立つ。
燃料消費、タイヤの減り具合、ブレーキ等の部品、積荷の温度、振動、などがモニタリングされ、メンテナンスの最適化やサービスの向上に活用される。
【15】によれば、ビッグデータとその分析、意思決定支援システム、省エネ技術、インターモーダル輸送、土地活用、運賃の価格設定、ロードプライシング(道路課金)などはシティロジスティクスを最適化するイノベーションであり、技術であり、実践である。
【15】Taniguchi, E.; Thompson, R.G.; Yamada, T. New opportunities and challenges for city logistics. Transp. Res. Procedia 2016, 12, 5–13. リアルタイムデータ、ダイナミックな輸配送計画アルゴリズム、フリートマネジメントシステム、追跡用装置、認識技術とその装置などのアルゴリズムおよび最適化システムは、ラストマイルデリバリーの質向上に貢献する。
こうしたイノベーションは携帯電話端末のアプリケーションとして提供されることが多い。
配送計画問題あるいは運搬経路問題(Vehicle Routing Problems=VRPs)とは、どうすれば運搬経路を最適化できるのかという課題であり、数多の研究においてさまざまなアプローチが提唱されてきた。
【16】には都市部のデリバリーに自動運転の電気自動車を活用する戦略が紹介されている。
ここではいわゆる「巡回セールスマン問題」や、集配やライドシェア問題などをベースとしたモデルを構築している。
【16】Pal, A.; Kant, K. SmartPorter: A Combined Perishable Food and People Transport Architecture in Smart Urban Areas. In Proceedings of the 2016 IEEE International Conference on Smart Computing (SMARTCOMP), St. Louis, MO, USA, 18–20 May 2016. 公共政策とインフラのイノベーション 都市部の配送によって引き起こされる外部不経済の中でも特に交通渋滞、騒音公害、大気汚染の削減に関しては、適切な政策と規制が対策の要となる。
また、そこから最大限の効果を得るにはICTおよびITSが重要な役割を果たす。
センサーの普及やICT・ITS・インダストリー4・0の進化が、とりわけモビリティ面でのスマートシティ実現への足掛かりとなっている。
車とその流れの映像およびデータを集めることで、当局はリアルタイムで交通状況をコントロールできるようになる。
スマートシティに欠かせない交通管理システムへのイノベーティブなアプローチに関しては【17】を参照。
交通管理システムでは複数のセンサーからデータを集めて分析し、システム向上に寄与するデータを積み重ねてゆく。
【17】Djahel, S.; Doolan, R.; Muntean, G.M.; Murphy, J. A communications-Oriented Perspective on Traffic Management Systems for Smart Cities: Challenges and Innovative Approaches. IEEE Commun. Surv. Tutor. 2015, 17, 125–151. また、交通信号機の管理システムも注目すべき研究領域である。
付近一帯の各交差点に設置された複数の交通信号機を一括で制御することは、多種多様なパラメーターが介在するためにそれほど簡単ではない。
アプローチの一例として【18】を挙げておくが、このトピックに関しては今後の研究を待ちたい。
決められた時間帯に配送車両専用レーンとなるよう各交差点の信号機を制御することなども、未解決の課題となっている。
【18】Ghazal, B.; ElKhatib, K.; Chahine, K.; Kherfan, M. Smart Traffic Light Control System. In Proceedings of the 3rd International Conference on Eletrical, Electronics, Computer Engineering and Their Applications (EECEA), Beirut, Lebanon, 21–23 April 2016. 時間帯に制限を設けることで外部不経済を減らすというソリューションは、数多くの都市で実施されている。
それと同等の効果がVRPに適切に取り組むことでも得られる。
【19】ではVRPに電気自動車を利用し、時間枠と充電スタンドにも配慮したソリューションを提案している。
【19】Schneider, M.; Stenger, A.; Goeke, D. The Electric Vehicle-Routing Problem with Time Windows and Recharging Stations. Transp. Sci. 2014, 48, 500–520. 【20】はこれに、バッテリー容量や価格の異なる種々の電気自動車の選択肢を加える。
さらに積荷をモジュラー化して配達先で充電を賄うアプローチが【21】であり、遺伝的アルゴリズムをベースにしている。
【20】Hiermann, G.; Puchinger, J.; Ropke, S.; Hartl, R.F. The Electric Fleet Size and Mix Vehicle Routing Problem with Time Windows and Recharging Stations. Eur. J. Oper. Res. 2016, 252, 995–1018. 【21】Rezgui, D.; Aggoune-Mtalaa, W.; Bouziri, H. Towards the electrification of urban freight delivery using modular vehicles. In Proceedings of the 2015 IEEE International Conference on Service Operations and Logistics (SOLI), Hammamet, Tunisia, 15–17 November 2015. また、都心部もしくは一定のゾーンの車の数を減らすことを目的として、数多くの自治体が都心部でのロードプライシングを導入している。
欧州で一般的な「従量制」を基にした課金方法は三つに分けられる。
すなわち(ⅰ)エリアプライシング(一定の区域内を走行する車両に課金)、(ⅱ)コードンプライシング(一定の区域内に侵入する時点で課金)、(ⅲ)走行距離プライシング(一定の区域内の走行距離に応じて課金)である。
なお都市部におけるこうした課金スキームには、夜間などオフピーク時の無料アクセスを付加することも可能である。
(翻訳構成 大矢英樹)
公害など)は、特に大きな問題である。
物流セクターが引き起こす環境問題への市民の関心の高さを背景にして、政策立案者たちはこれまで物流の外部不経済削減に向けた長期戦略に取り組んできた。
主として陸上運送に起因する外部不経済には大気汚染、気候変動、騒音公害、交通渋滞、交通事故、インフラの損耗などが挙げられる。
大気汚染は健康への悪影響(各種アレルギー、呼吸器系・循環器系の病気など)や、非可逆的かつ治癒不能なダメージを人に与える。
さらに大気汚染や粒子状物質は建物、とりわけ歴史的建造物の表面の汚れとなって付着したり装飾的な成分を破壊する。
また、気候変動は温室効果ガス排出の当然の帰結である。
これらはまさに現在進行中の現象であり、科学者たちはその影響を最低限に抑えるべく、イノベーションを模索している。
これは一地域だけでなく全世界が一丸となって取り組まなければならないグローバルな課題である。
仮に全ての都市が陸運によって生じる温室効果ガスを削減したとすれば、その外部不経済は目覚ましく減少する。
騒音公害は住宅地において特に深刻な問題である。
不安、身体的苦痛、睡眠障害、過度の緊張などを引き起こすことが、研究により明らかになっている。
都市部では交通渋滞が公共交通機関の遅れや効率の低下を招くだけでなく、運転時間・交通量・燃料消費量などが増加する原因となっている。
交通事故は人の命を奪い、健康を損ない、身体的・精神的苦痛と医療費負担を生じさせる。
大型車両の存在と交通量の増加はインフラの劣化を加速させる。
しかし、イノベーティブな技術と戦略、新たな組織モデルの導入などの対策を講じれば、こうした外部不経済のある程度の削減は可能である。
本稿では物流の外部不経済に関する近年の研究のうち、特にラストマイルロジスティクスという領域に焦点を絞ってレビューすることにする。
ラストマイルロジスティクス ラストマイルロジスティクスはサプライチェーン全体の中で最も非効率的な部分であり、実に全配送コストの28%を占めている。
都市部のロジスティクスと輸送システムの分野では近年、主にICTの進化によっていくつかのイノベーションがもたらされた。
ICT技術が活用されているのは次のような分野である。
(a)位置特定技術を利用した移動体追跡(GPSとモバイルネットワーク) (b)衛星その他の技術を利用した情報およびデータのユーザーからの収集、あるいはユーザーへの提供 (c)ユーザーフレンドリーなインターフェース技術を用いたモバイルアプリケーション (d)IoTやビッグデータツールによる情報の収集と分析 こうした技術をまとめて一つのデバイスに収めるのに、スマートフォンはまさにうってつけである。
運輸セクターにおけるイノベーションは、ロジスティクスプロバイダーとのコミュニケーションチャネルとして、このデバイスとアプリを中心に今後発展していくものと思われる。
以下に運輸セクターで活用されるイノベーションのさまざまな側面、あるいは既存のインフラおよび輸送システムの改善に向けた手法と戦略といった視点から見ていくことにしたい。
自動車のイノベーション 自動車市場には破壊的なイノベーションが次々と現れている。
それが前世紀の自動車産業に出現する原動力となったのは、新しいエンジン技術、自動運転車、画期的な配送手段などである。
電気自動車(EV)やハイブリッド車、燃料電池車(FCEV)は外部不経済の削減を可能にするイノベーションである。
こうした技術は環境や騒音公害に対してプラスのインパクトを持つ上に、すでに市場で普通に入手できるまでになっている。
電気自動車の最大の弱点はバッテリー容量(=走行可能距離の短さ)と充電時間の長さである。
研究者たちはバッテリー性能の向上を目指すと同時に、ラストマイルの配送経路最適化にも取り組んでいる。
燃料電池車は極めて信頼性の高いシステムであるにもかかわらず、世間では安全性に問題があると思われがちだ(水素の可燃性による)。
水素ステーションのネットワークというインフラもまだ発展途上にある。
しかしながら走行可能距離の長さ(600〜700㎞)と燃料補給時間の短さは強みである。
ハイブリッド車はこれらのイノベーションの中では実際に最も多く販売されている。
投資コストがそれほどかからないことと、走行可能距離の長さ(燃料+バッテリー)が特徴である。
欧州連合ではモペッド(いわゆる原動機付き自転車)および小型オートバイ、全地形対応車、三輪車、その他三輪または四輪の小型車両などをEL-V(Electric L-category Vehicle)として分類している。
こういったEL-Vも、都市部での移動や配送に適した手軽な輸送手段としてのイノベーションといえる。
小回りが利いて駐車スペースもそれほど必要としないため、都市部での小荷物配送に向く。
従来の輸送手段より小さくて軽いEL-Vは、駐車に時間と手間を取られないために配送時間が短くなり、さらには燃費や大気汚染、騒音公害なども抑制されるという非常に優れた輸送手段である。
自転車、三輪車、カーゴバイク(普通の自転車より多くの荷物が運べる自転車)というカテゴリーが登場してきたのは比較的最近のことである。
キャパシティ向上のため電力を利用するようになった新世代の自転車などは、従来の車両と比べても遜色ない存在に成長しつつある。
ラストマイル配送で生じる都市の外部不経済を減らすには、完全に電気で動く電動車両が大きな意味を持つ。
これによる外部不経済削減の評価については原注【1】を、性能評価とディーゼルトラックとの比較は【2】を参照されたい。
【1】Menga, P.; Buccianti, R.; Bedogni, M.; Moroni, S. Promotion of freight mobility in Milan: Environmental, energy and economical aspects. In Proceedings of the 2013 Electric Vehicle Symposium and Exhibition (EVS27), Barcellona, Spain, 17–20 November 2013. 【2】Lebeau, P.; Macharis, C.; Van Mierlo, J.; Maes, G. Implementing electric vehicles in urban distribution: A discrete event simulation. In Proceedings of the 2013 Electric Vehicle Symposium and Exhibition (EVS27), Barcellona, Spain, 17–20 November 2013. 電気自動車とICTを活用した都市部でのスマートロジスティクスは【3】、【4】、マーケットのEL-Vに対する高い評価に関しては【5】に論じられている。
【3】Schau, V.; Rossak, W.; Hempel, H.; Spathe, S. Smart City Logistik Erfurt (SCL): ICT-Support for managing Fully Electric Vehicles in the Domain of Inner City Freight Traffic. In Proceedings of the 2015 International Conference on industrial Engineering and Operations Management (IEOM), Dubai, UAE, 3–5 March 2015. 【4】Ablola, M.; Plant, E.; Lee, C. The Future of Sustainable Urban Freight Distribution—A Delphi Study of the Drivers and Barriers of Electric Vehicles in London. In Proceedings of the 5th IET Hybrid and Electric Vehicles Conference (HEVC), London, UK, 5–6 November 2014. 【5】Sachs, C.; Burandt, S.; Mandelj, S.; Mutter, R. Assessing the market of light electric vehicles as a potential application for electric in-wheel drives. In Proceedings of the 2016 International Electric Drives Production Conference (EDPC), Nuremberg, Germany, 30 November–1 December 2016. 商用電気自動車の購入コストは従来のディーゼルトラックに比べ割高だが、運行費はトラックの方が高い。
バッテリー寿命と長期的コスト、走行可能距離については【6】、電気自動車を都市部の貨物輸送に利用する際の政策的サポートに関する評価については【7】をそれぞれ参照のこと。
【6】Feng, W.; Figliozzi, M. An economic and technological analysis of the key factors affecting the competitiveness of electric commercial vehicles: A case study from the USA market. Transp. Res. Part C 2013, 26, 135–145. 【7】Mirhedayatian, S.M.; Yan, S. A framework to evaluate policy options for supporting electric vehicles in urban freight transport. Transp. Res. Part D Transp. Environ. 2018, 58, 22–38. 電気自動車はV2G(Vehicle-to-Grid=車両から電力系統に電力を供給)技術を使ったスマートグリッドや最適化アルゴリズムにより、電力価格を抑制したり再生可能エネルギーの活用を増やすことに役立つ。
こうしたケースでは、既存の発電所の電力使用量を減らすことが外部不経済の抑制につながる。
向こう何年かのうちで最も注目すべき技術の一つに、自動運転車およびオンデマンド自動運転車がある。
人間が操縦することなく自動的に運行される車のことである。
自動化の程度には各種段階があり、セミオートからフルオートがテストフェーズにある。
多くの企業が貨物輸送の領域も含めてこの技術に投資を行っている。
軍事セクターから派生した自律・無人システムは無人航空機(UAV)、地上無人システム、海上無人システムの三つに分けられ、ドローンとも呼ばれる。
その中でも民生用としてここ数年盛んに活用されているのがUAVである。
独DHLの「パケットコプター」、米アマゾンの「プライムエア」、米グーグルの「ウィング」、仏ジオポストの「ジオドローン」など、名だたる物流企業が思い思いの名称で荷物の配送にドローンを使う実証実験を行っている。
都市部の小荷物配送というラストマイルロジスティクスに地上用ドローンロボットを使うプロジェクトも進行中である。
宅配デポやロッカーの活用 荷物が小型から中型程度の場合、ラストマイルデリバリーの効率を上げるイノベーティブな戦略の一つとして、近隣に宅配用デポやロッカーを設置するという手法がある。
宅配荷物の持戻り防止のため、荷物を一時保管するデポステーションを活用するというアプローチである。
このアイデアは輸送距離が減る一方で積載量は増える。
また、交通量の少ない夜間にデポへの配達を行うなど、運用方法によっては配送時間を短縮することも可能だ。
つまりこのアプローチは経済と環境のどちらにもメリットがあるというわけである。
【8】で紹介されているのは、顧客が取りに来るまで荷物を保管する「モジュール型弁当箱システム(modular bento-box system)」である。
設置には住宅地の一角、ショッピングモール、中心部の広場、等々が適する。
配送に要する移動距離が非常に短くなるため、ここでは電気自動車の活用が提唱されている。
【8】Dell’Amico, M.; Hadlidimitriou, S. Innovative logistics model and containers solution for efficient last mile delivery. Procedia Soc. Behav. Sci. 2012, 48, 1505–1514. これと似たものがいわゆる宅配便ロッカーである。
DHLやポーランドのインポストなど多くの物流企業がこうしたシステムを採用し、このところ急速に普及が進んでいる。
オーストリアポストでは、24時間いつでも荷物を預けたり発送したりできる「Post24」というロッカーを提供している。
アマゾンなどいくつかのネット通販企業は、近所のストックポイントというコンセプトを顧客自身による荷物の引き取りにも利用している。
荷物の受取と支払い、あるいはセルフサービスの電子ロッカーとしても利用できる。
前者の場合、ネットでの注文後、荷物のピックアップと支払いをその場で済ますことができる。
また後者の場合は、eメールかショートメッセージによって各個人の携帯電話へその都度送られるピックアップコードで解錠する。
ロッカーの空き状況、場所、ピックアップなどすべての情報は、ICTを通じて自動的かつリアルタイムにオンライン上に反映される。
販売チャネルとしてオンラインを活用するスペインの世界的アパレル企業ZARAなどでは商品を自宅に届けるのではなく、顧客がウェブサイトで選んだ商品を数日後に実店舗で受け取れるというサービスも提供している。
近隣のデポを活用したイノベーティブなアプローチが【9】に紹介されている。
これは荷物の配送にデポとICT、ラストマイルにクラウドワーカーを活用する手法である。
【9】Wang, Y.; Zhang, D.; Liu, Q.; Shen, F.; Hay Lee, L. Towards enhancing the last-mile delivery: An effective crowd-tasking model with scalable solutions. Transp. Res. Part E 2016, 93, 279–293. ワーカーには、普段の行動範囲やルートから逸脱する距離に対して所定の金額が支払われる。
物流企業側が払う報酬総額を最小化するため、デポの全荷物をそれぞれ最適な配送ルートで回れるワーカーに託すことが最終ゴールとなる。
他のシェアリングエコノミーの仕組みと同じく、このアプリケーションの主な目的はコラボレーティブなアプローチに基づいてリソースを最大限活用することにある。
協働ロジスティクス 都市部におけるコラボレーティブなロジスティクスという考え方は、ラストマイルに対する新たな処方箋であり、既存リソースを一括で管理してシェアすることを眼目にしている。
その際、関係者間で相乗効果を生むためにいちばん重要な要素がこのプロセスにおける調整と協働である。
エコフレンドリーかつ外部不経済の削減を目指すセクターにとり、こういったアプローチは必須のものである。
なぜならそのことが車の台数を減らし、さらには負荷の低い輸送手段の利用(EV、EL-V、FCEV等)とゼロエミッションへとつながっていくからである。
台数が減る上に街中を小さな車が走ることで、渋滞とインフラの損耗も緩和される。
これは航空会社同士のコードシェア便(共同運航便)と似ており、投資および管理コストの削減、リソースの効率的活用、都市部でのデリバリー品質の向上などの効果が見込まれる。
都市部における貨物輸送がもたらす悪影響とコストを減らす方策として、インタラクティブな貨物集積システムを提唱するのが【10】である。
ここでの問題は(1)配送の優先順位などユーザー間の利害調整、(2)配送ポイントのクラスタリング、(3)実際の配送ルート作成、という三つのフェーズに分けられる。
この提案の狙いは貨物の移動距離を減らすことで輸送費を削減するというところにある。
【10】Liakos, P.; Delis, A. An Interactive Freight-pooling service for efficient Last-mile Delivery. In Proceedings of the 2015 IEEE 16th International Conference on Mobile Data Management, Pittsburgh, PA, USA, 15–18 June 2015. ラストマイルへの対応策として、新たな組織モデルとICTツールを活用したアーバン・コンソリデーション・センター(UCC)の活用を検討する研究者たちもいる。
イノベーティブなマネジメント戦略でありビジネスモデルでもあるUCCというコンセプトは、都市部や市街地におけるロジスティクスに関する諸問題を解決するソリューションの一つとして提唱された。
このアイデアは早くも1970年代には登場している。
その内容は、都市中心部の交通渋滞・排気ガス・外部不経済などの削減を念頭に、都市部に近い場所に物資の集積所を設け、そこから各小売業者に配送するというものであった。
同様に都心部の渋滞緩和のため、配送車両の通行に時間枠を設けている都市もある。
【11】では、貨物需要を確定するための「利益最大化オークションメカニズム」を紹介している。
【11】Handoko, S.-D.; Nguyen, D.T.; Lau, H.C. An Auction Mechanism for the Last-mile Deliveries via Urban Consolidation Centre. In Proceedings of the 2014 IEEE International Conference on Automation Science and Engineering (CASE), Taipei, Taiwan, 18–22 August 2014. 中規模都市でのICTを活用したUCCをテーマとして取り挙げているのが【12】である。
全体の設計およびモニタリングを行う枠組みとして高度道路交通システム(ITS)を採用し、サステイナブルな都市部の貨物輸送に役立つ政策・車両・IT技術を、全てのステークホルダーへとつなぐという構想である。
【12】Zunder, T.; Aditjandra, P.; Schoemaker, J.; Laparidou, K.; Vaghi, C.; Osterle, I. Engaging City Stakeholders to Achieve Efficient and Environmentally Friendly Urban Freight Movements. In Towards Innovative Freight and Logistics; John Wiley & Sons, Inc.: Hoboken, NJ, USA, 2016. 【13】はコラボレーティブな都市部のロジスティクスの変種といえるもので、中・小型荷物の輸送に公共交通機関を利用する。
これにより都市部における渋滞をこれ以上悪化させずにガス排出をも削減することができる。
同論文では、コスト効率および時間・エネルギー消費を改善するモデルとして複数のエージェントを利用するシミュレーションを行い、実現可能性を検証している。
【13】Chatterjee, R.; Freulich, C.; Edelkamp, S. Optimizing Last Mile Delivery using Public Transport with Multi-Agent based Control. In Proceedings of the 2016 IEEE 41st Conference on Local Computer Workshop, Dubai, United Arab Emirates, 7–10 November 2016. 都市部での荷物の配達、その中でも特に料理の出前の分野では、主に2種類のオンラインのプラットフォームが台頭してきている。
一つがおよそ15年ほど前に登場した「アグリゲーター(*編集部注 英語で何かを集める人や組織のこと)」によるものであり、もう一つは13年に現れた「ニューデリバリー」の担い手たちが運営するものである。
どちらの仕組みでも消費者は多種多様な飲食店から出前をとることができる。
アグリゲーターは単にカスタマーから注文をとって飲食店に流すだけで、デリバリーは飲食店が自ら行う。
一方、ニューデリバリーの方は、独自のロジスティクスネットワークを構築し、配送手段を持たない飲食店のデリバリーまで代行する。
この担い手には英デリバルーやジャスト・イート、タイのフードパンダ、米ウーバーイーツなどがあり、デリバリーにはバイクを使用する。
輸送管理と経路の最適化 「シティロジスティクス」は都市部のデリバリーの重要コンセプトである。
高度情報システムを活用した都市型ロジスティクス全体の最適化のことであり、担い手は民間企業である。
ここでいう最適化とは、あくまでも市場経済という枠組みの範囲内で、輸送全般を取り巻く環境、渋滞、安全、エネルギー効率などを改善しようとするものである。
シティロジスティクスというコンセプトに対する、ICTおよびITSのイノベーティブな技術を利用したアプリケーションが【14】に紹介されている。
都市型の輸送管理と共同配送がその主張の柱である。
【14】Taniguchi, E. Concepts of city logistics for sustainable and liveable cities. Procedia Soc. Behav. Sci. 2014, 151, 310–317. ICTとインダストリー4・0(膨大な数のセンサー、IoT、ビッグデータ)がインフラと車両のどちらにも活用されるようになり、モビリティへの新たなアプローチが可能になった。
センサーにかかるコストがここ数年で劇的に下がり、移動中・停止中を問わずさまざまな場面でモニタリングができるようになった。
こうした情報は全て環境的・経済的・社会的パフォーマンスの改善に役立つ。
燃料消費、タイヤの減り具合、ブレーキ等の部品、積荷の温度、振動、などがモニタリングされ、メンテナンスの最適化やサービスの向上に活用される。
【15】によれば、ビッグデータとその分析、意思決定支援システム、省エネ技術、インターモーダル輸送、土地活用、運賃の価格設定、ロードプライシング(道路課金)などはシティロジスティクスを最適化するイノベーションであり、技術であり、実践である。
【15】Taniguchi, E.; Thompson, R.G.; Yamada, T. New opportunities and challenges for city logistics. Transp. Res. Procedia 2016, 12, 5–13. リアルタイムデータ、ダイナミックな輸配送計画アルゴリズム、フリートマネジメントシステム、追跡用装置、認識技術とその装置などのアルゴリズムおよび最適化システムは、ラストマイルデリバリーの質向上に貢献する。
こうしたイノベーションは携帯電話端末のアプリケーションとして提供されることが多い。
配送計画問題あるいは運搬経路問題(Vehicle Routing Problems=VRPs)とは、どうすれば運搬経路を最適化できるのかという課題であり、数多の研究においてさまざまなアプローチが提唱されてきた。
【16】には都市部のデリバリーに自動運転の電気自動車を活用する戦略が紹介されている。
ここではいわゆる「巡回セールスマン問題」や、集配やライドシェア問題などをベースとしたモデルを構築している。
【16】Pal, A.; Kant, K. SmartPorter: A Combined Perishable Food and People Transport Architecture in Smart Urban Areas. In Proceedings of the 2016 IEEE International Conference on Smart Computing (SMARTCOMP), St. Louis, MO, USA, 18–20 May 2016. 公共政策とインフラのイノベーション 都市部の配送によって引き起こされる外部不経済の中でも特に交通渋滞、騒音公害、大気汚染の削減に関しては、適切な政策と規制が対策の要となる。
また、そこから最大限の効果を得るにはICTおよびITSが重要な役割を果たす。
センサーの普及やICT・ITS・インダストリー4・0の進化が、とりわけモビリティ面でのスマートシティ実現への足掛かりとなっている。
車とその流れの映像およびデータを集めることで、当局はリアルタイムで交通状況をコントロールできるようになる。
スマートシティに欠かせない交通管理システムへのイノベーティブなアプローチに関しては【17】を参照。
交通管理システムでは複数のセンサーからデータを集めて分析し、システム向上に寄与するデータを積み重ねてゆく。
【17】Djahel, S.; Doolan, R.; Muntean, G.M.; Murphy, J. A communications-Oriented Perspective on Traffic Management Systems for Smart Cities: Challenges and Innovative Approaches. IEEE Commun. Surv. Tutor. 2015, 17, 125–151. また、交通信号機の管理システムも注目すべき研究領域である。
付近一帯の各交差点に設置された複数の交通信号機を一括で制御することは、多種多様なパラメーターが介在するためにそれほど簡単ではない。
アプローチの一例として【18】を挙げておくが、このトピックに関しては今後の研究を待ちたい。
決められた時間帯に配送車両専用レーンとなるよう各交差点の信号機を制御することなども、未解決の課題となっている。
【18】Ghazal, B.; ElKhatib, K.; Chahine, K.; Kherfan, M. Smart Traffic Light Control System. In Proceedings of the 3rd International Conference on Eletrical, Electronics, Computer Engineering and Their Applications (EECEA), Beirut, Lebanon, 21–23 April 2016. 時間帯に制限を設けることで外部不経済を減らすというソリューションは、数多くの都市で実施されている。
それと同等の効果がVRPに適切に取り組むことでも得られる。
【19】ではVRPに電気自動車を利用し、時間枠と充電スタンドにも配慮したソリューションを提案している。
【19】Schneider, M.; Stenger, A.; Goeke, D. The Electric Vehicle-Routing Problem with Time Windows and Recharging Stations. Transp. Sci. 2014, 48, 500–520. 【20】はこれに、バッテリー容量や価格の異なる種々の電気自動車の選択肢を加える。
さらに積荷をモジュラー化して配達先で充電を賄うアプローチが【21】であり、遺伝的アルゴリズムをベースにしている。
【20】Hiermann, G.; Puchinger, J.; Ropke, S.; Hartl, R.F. The Electric Fleet Size and Mix Vehicle Routing Problem with Time Windows and Recharging Stations. Eur. J. Oper. Res. 2016, 252, 995–1018. 【21】Rezgui, D.; Aggoune-Mtalaa, W.; Bouziri, H. Towards the electrification of urban freight delivery using modular vehicles. In Proceedings of the 2015 IEEE International Conference on Service Operations and Logistics (SOLI), Hammamet, Tunisia, 15–17 November 2015. また、都心部もしくは一定のゾーンの車の数を減らすことを目的として、数多くの自治体が都心部でのロードプライシングを導入している。
欧州で一般的な「従量制」を基にした課金方法は三つに分けられる。
すなわち(ⅰ)エリアプライシング(一定の区域内を走行する車両に課金)、(ⅱ)コードンプライシング(一定の区域内に侵入する時点で課金)、(ⅲ)走行距離プライシング(一定の区域内の走行距離に応じて課金)である。
なお都市部におけるこうした課金スキームには、夜間などオフピーク時の無料アクセスを付加することも可能である。
(翻訳構成 大矢英樹)
