2020年1月号
特集
特集
「効率から持続可能性にテーマは移った」
コスト削減を競う時代は終わった
──ホワイト物流のように物流をテーマにした「国民運動」というのは過去にも例があったのでしょうか。
「調べたわけではありませんが、なかったと思います。
ホワイト物流というプログラムは、物流に直接関わっている荷主と物流事業者だけでなく、最終消費者にも影響します。
国民の生活の質をこれからも維持していくには、物流サービスの変化やそれに伴う生活様式の変更を受け入れてもらわなければならない。
そのことを広く周知して、理解してもらうための国民運動だと、私は理解しています」 ──国交省は荷主や国民に直接訴えかける機会を得たことになります。
「これまでもわれわれは長年にわたり、荷主企業に対して物流の効率化や合理化についての協力をお願いしてきました。
しかし、総論として理解を得ることはできても、各論となるとなかなか話が進まなかった。
荷主にとって物流管理はこれまでコスト削減が命題でした。
実際にそれが企業競争力にもなった」 ──そのためコストが増える話には耳を貸してもらえなかった。
「しかし、そういう時代は終わったと、われわれは認識しています。
これからは物流に関わるあらゆる分野で人手が不足します。
とりわけドライバーは深刻で、民間企業の推計ですが2027年、28年頃には約25%のドライバー不足が生じます。
4人必要なのに、3人しかいないということですから、単純に時間当たりの輸送量を現在3分の4倍以上に高める必要がある。
そうした予見される変化や課題にいち早く対応して、業態転換なり、輸送生産性の向上を実現していくことが、これからは企業の競争力になる。
物流コストを下げることが競争力とされていたのが逆転します」 ──物流管理の命題がコスト削減から持続可能性に変わるということですね。
「そう大きく転換せざるを得ない。
実際そうした考えに立って動き出している荷主が既にたくさん出てきています。
旗を振る立場にいるわれわれがむしろ突き上げを受けているような状況です」 ──そうは言っても、荷主が運賃の値上げやサービス水準の低下を喜んで受け入れるわけではありません。
「しかし、人手不足の状況に対処するのが遅れたら、取扱量は減っていきます。
メーカーは生産高を下げざるを得なくなる。
小売業は店舗展開を縮小するしかない。
淘汰されてしまうところも出てくるのではないでしょうか。
もちろん、そこは個々の企業の経営判断ですが、われわれとしては日本経済全体がシュリンクしてしまうことは避けなければならない。
物流サービスを持続可能なかたちで提供できるようにすることが、われわれの役割です」 ──19年3月には全ての上場企業と各都道府県の主要企業約6300社の経営トップに、自動車局貨物課から直接、ホワイト物流推進運動への賛同を呼びかける文書を送付しました。
これも過去に例のないことだと聞いています。
従来であれば経産省経由で荷主にアプローチするところです。
「文書は国交省、経産省、農水省の連名でしたが、今回は自動車局が音頭を取りました。
異例といえば異例ですが、ホワイト物流は官邸が主導して各省庁の局長クラスが総出で進めている政策ですから、自然な流れではありました」 ──反応はどうですか。
「運動への賛同を表明した企業数としては、19年4月に受付を開始して同9月末時点で559社に上りました。
その後も企業数は増え続けています。
大変ありがたいことです。
しかし、提出企業の顔触れは業種や業態、地域によってかなりバラツキがあります。
食品業界をはじめ、われわれがこうした議論を進める前から既に問題が顕在化して対処せざるを得なくなっていた業界はさすがに危機感が強い。
一方、物流が経営問題としてはまだ認識されていない業界では、同業他社の動きを様子見している感じもある。
物流に対する危機感には温度差がある」 ──地域差というのは? 「例えば首都圏にある大規模物流センターは関東一円など広域をカバーしているため、トラックを遠くまで行かせている。
朝の始動時間も早い。
それだけ課題は大きいのだけれど、同業者間の競争が激しくて対策を打つのが難しい。
それに対して地方の特定の地域、例えば茨城県では食品や加工食品の地産地消が進んでいて、物流の多くが県内に閉じている。
またこれは危機感の表れだと思いますが、地元経済は結束が固く、協力も得やすい。
それだけ持続可能性が高いといえそうです」 タイムリミットは24年3月末 ──提出された自主行動宣言の中身を見ると、しっかり内容を書き込んでいる企業もあれば、簡単なスローガンだけというところも多い。
世間の目があるので賛同はしたものの、腰が引けている、具体的に何をすべきか、決めあぐねているとも感じます。
「やはり端的にはドライバー不足対策です。
そのために、一つは運転している以外の時間を減らすことです。
予約受付システムを導入して待ち時間を解消する。
バラ積みの貨物をパレット化して荷役の負担を軽減する。
あるいは事前に入出荷情報を提供したり、リードタイムを延長することで配車の最適化や夜間作業を解消する。
さらには物流量を維持しながら輸送頻度を減らす。
そのために波動をコントロールして平準化する、といった取り組みを推奨しています。
ただし、こうしたことを実現するには業務の見直しが必要になってきます。
メーカーであれば生産管理や梱包の方法、検品手続きやチェック項目を変えていかなければならない。
付随する事項は大変に多い。
しかし、そこまで全てやらないと改革は実現しない」 ──19年4月に施行した働き方改革法案で運送業に与えられた猶予期間が終わる2024年3月末が、そのタイムリミットということになりますね。
「運送業に猶予期間が与えられたのは、ドライバーの働き方を変えるには構造的な問題を解決する必要があるためです。
それまでの5年間で具体的に何をしていくか、関係省庁連絡会議で政府行動計画(自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画)も特別に作成されました」 ──それを受けて全日本トラック協会が策定したアクションプランは、上限規制となる年間960時間を超える残業が発生している運送事業者の割合を21年度に25%、22年度に20%、23年度に10%と段階的に減らして、24年4月までにゼロにする計画です。
「これまでトラック事業者は、ドライバーの荷役作業や長時間の荷待ちなどをサービスとして受け入れてきました。
しかし、そんなことをしていたらもはや事業が成り立たない。
既に荷主からの集荷依頼を断らざるを得ない状況も生まれている。
それはトラック事業者だけの問題ではなくて、荷主の問題でもあり、また最終消費者の問題でもあります。
そのことを理解してもらえるよう運動を進めていきます」
「調べたわけではありませんが、なかったと思います。
ホワイト物流というプログラムは、物流に直接関わっている荷主と物流事業者だけでなく、最終消費者にも影響します。
国民の生活の質をこれからも維持していくには、物流サービスの変化やそれに伴う生活様式の変更を受け入れてもらわなければならない。
そのことを広く周知して、理解してもらうための国民運動だと、私は理解しています」 ──国交省は荷主や国民に直接訴えかける機会を得たことになります。
「これまでもわれわれは長年にわたり、荷主企業に対して物流の効率化や合理化についての協力をお願いしてきました。
しかし、総論として理解を得ることはできても、各論となるとなかなか話が進まなかった。
荷主にとって物流管理はこれまでコスト削減が命題でした。
実際にそれが企業競争力にもなった」 ──そのためコストが増える話には耳を貸してもらえなかった。
「しかし、そういう時代は終わったと、われわれは認識しています。
これからは物流に関わるあらゆる分野で人手が不足します。
とりわけドライバーは深刻で、民間企業の推計ですが2027年、28年頃には約25%のドライバー不足が生じます。
4人必要なのに、3人しかいないということですから、単純に時間当たりの輸送量を現在3分の4倍以上に高める必要がある。
そうした予見される変化や課題にいち早く対応して、業態転換なり、輸送生産性の向上を実現していくことが、これからは企業の競争力になる。
物流コストを下げることが競争力とされていたのが逆転します」 ──物流管理の命題がコスト削減から持続可能性に変わるということですね。
「そう大きく転換せざるを得ない。
実際そうした考えに立って動き出している荷主が既にたくさん出てきています。
旗を振る立場にいるわれわれがむしろ突き上げを受けているような状況です」 ──そうは言っても、荷主が運賃の値上げやサービス水準の低下を喜んで受け入れるわけではありません。
「しかし、人手不足の状況に対処するのが遅れたら、取扱量は減っていきます。
メーカーは生産高を下げざるを得なくなる。
小売業は店舗展開を縮小するしかない。
淘汰されてしまうところも出てくるのではないでしょうか。
もちろん、そこは個々の企業の経営判断ですが、われわれとしては日本経済全体がシュリンクしてしまうことは避けなければならない。
物流サービスを持続可能なかたちで提供できるようにすることが、われわれの役割です」 ──19年3月には全ての上場企業と各都道府県の主要企業約6300社の経営トップに、自動車局貨物課から直接、ホワイト物流推進運動への賛同を呼びかける文書を送付しました。
これも過去に例のないことだと聞いています。
従来であれば経産省経由で荷主にアプローチするところです。
「文書は国交省、経産省、農水省の連名でしたが、今回は自動車局が音頭を取りました。
異例といえば異例ですが、ホワイト物流は官邸が主導して各省庁の局長クラスが総出で進めている政策ですから、自然な流れではありました」 ──反応はどうですか。
「運動への賛同を表明した企業数としては、19年4月に受付を開始して同9月末時点で559社に上りました。
その後も企業数は増え続けています。
大変ありがたいことです。
しかし、提出企業の顔触れは業種や業態、地域によってかなりバラツキがあります。
食品業界をはじめ、われわれがこうした議論を進める前から既に問題が顕在化して対処せざるを得なくなっていた業界はさすがに危機感が強い。
一方、物流が経営問題としてはまだ認識されていない業界では、同業他社の動きを様子見している感じもある。
物流に対する危機感には温度差がある」 ──地域差というのは? 「例えば首都圏にある大規模物流センターは関東一円など広域をカバーしているため、トラックを遠くまで行かせている。
朝の始動時間も早い。
それだけ課題は大きいのだけれど、同業者間の競争が激しくて対策を打つのが難しい。
それに対して地方の特定の地域、例えば茨城県では食品や加工食品の地産地消が進んでいて、物流の多くが県内に閉じている。
またこれは危機感の表れだと思いますが、地元経済は結束が固く、協力も得やすい。
それだけ持続可能性が高いといえそうです」 タイムリミットは24年3月末 ──提出された自主行動宣言の中身を見ると、しっかり内容を書き込んでいる企業もあれば、簡単なスローガンだけというところも多い。
世間の目があるので賛同はしたものの、腰が引けている、具体的に何をすべきか、決めあぐねているとも感じます。
「やはり端的にはドライバー不足対策です。
そのために、一つは運転している以外の時間を減らすことです。
予約受付システムを導入して待ち時間を解消する。
バラ積みの貨物をパレット化して荷役の負担を軽減する。
あるいは事前に入出荷情報を提供したり、リードタイムを延長することで配車の最適化や夜間作業を解消する。
さらには物流量を維持しながら輸送頻度を減らす。
そのために波動をコントロールして平準化する、といった取り組みを推奨しています。
ただし、こうしたことを実現するには業務の見直しが必要になってきます。
メーカーであれば生産管理や梱包の方法、検品手続きやチェック項目を変えていかなければならない。
付随する事項は大変に多い。
しかし、そこまで全てやらないと改革は実現しない」 ──19年4月に施行した働き方改革法案で運送業に与えられた猶予期間が終わる2024年3月末が、そのタイムリミットということになりますね。
「運送業に猶予期間が与えられたのは、ドライバーの働き方を変えるには構造的な問題を解決する必要があるためです。
それまでの5年間で具体的に何をしていくか、関係省庁連絡会議で政府行動計画(自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画)も特別に作成されました」 ──それを受けて全日本トラック協会が策定したアクションプランは、上限規制となる年間960時間を超える残業が発生している運送事業者の割合を21年度に25%、22年度に20%、23年度に10%と段階的に減らして、24年4月までにゼロにする計画です。
「これまでトラック事業者は、ドライバーの荷役作業や長時間の荷待ちなどをサービスとして受け入れてきました。
しかし、そんなことをしていたらもはや事業が成り立たない。
既に荷主からの集荷依頼を断らざるを得ない状況も生まれている。
それはトラック事業者だけの問題ではなくて、荷主の問題でもあり、また最終消費者の問題でもあります。
そのことを理解してもらえるよう運動を進めていきます」
