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2020年1月号
特集

持続可能な加工食品物流を目指して

「もう辞めさせてください」  物流を巡る環境は激変した。
各種シンクタンクの分析によると、2020年代の後半には輸送需要に対して約25パーセントものドライバー不足が発生するという。
加工食品業界はドライバーから特に嫌われている。
小ロット納品や付帯作業、細かい日付管理や検品など、トラックを運転する以外の仕事が大量に発生するからだ。
 加工食品が嫌われる理由の一つ、トラックの長時間待機についてまずは報告したい。
当社の納品実態を調査したところ、最も待機時間が長かった納品先では次のようなことが起きていた。
 その納品先の庭先条件(到着時間指定)は7時から11時までの幅があり、納品数量は約750ケースだった。
トラックは約束の時間内の10時に到着したが、荷降ろしが始まったのは7時間後の17時10分。
荷降ろし自体は30分で終わったが、荷受け側の検品が終了して受領証をもらうためにさらに2時間半の待機が発生した。
結局、退場したのは20時10分。
合計の待機時間は実に9時間40分に及んだ。
 これが特殊な例かというとそうではない。
トラックドライバーにヒアリングしたところ、同じような状況が慢性的に発生しているという。
実際、各地で事例を確認すると待機5時間以上といったケースがズラリと並んだ。
長時間待機が複数の現場で恒常的に起きていた。
 こうした状況が何をもたらしているのか。
2018年の年末に当時の味の素物流(現在はF-LINE社)から連絡が入った。
委託先の運送事業者から「もう辞めさせてください」と申し出があったという。
加工食品の仕事は時間的にも、精神的、肉体的にも非常にきつく、従業員が参っている。
もう加工食品は運べない、と。
物流業を廃業するというのではなく、加工食品以外で仕事を探すという。
こうしたことが実際に起きている。
 物流環境の変化を受けて、行政の動きも本格化している。
17年7月からは荷主都合の30分以上の荷待ちが乗務記録の記載対象となった。
19年6月からドライバーが荷役作業や付帯業務を行った場合も対象となった。
「いつ、どこで、どれくらいの待ち時間があったのか」「いつ、どこで、どんな作業をさせたのか」全てが乗務記録に記載される。
長い荷待ちや長時間労働を強いている荷主名を実名で公表する「荷主勧告」の判断材料にそれを使うという。
 働き方改革法案によって24年4月にはトラックドライバーの時間外労働の上限規制960時間がスタートする。
既に倉庫荷役については19年4月から720時間の上限規制が始まっている。
ゴールデンウィーク、お盆、年末といった繁忙期を乗り越え、年度末まで720時間以内で乗り切れるかどうか、われわれにとっては差し迫った課題だ。
 19年7月には改正貨物自動車運送事業法の荷主関連部分に関する文書が荷主企業に配布された。
荷主の理解・協力を得てトラックドライバーの働き方改革・法令順守を進めるための改正で、①荷主の配慮義務の新設②荷主への勧告制度の拡充③違反行為の疑いのある荷主への国土交通大臣の働きかけ──の三つが骨子だ。
 先ほど、われわれの委託先の運送会社から撤退要請があったと言ったが、実はその後の19年の4月と5月にも、「新たな営業時間外の対応はできない」という案内が、複数の物流事業者から届いている。
集配先でトラックドライバーが行う付帯作業の料金化についても委託先から文書で示された。
物流事業者から荷主が直接要望を受けるようになっている。
 これからさらにドライバーが25%不足するということは、これまで100人で行っていた業務を、75人でやらざるを得なくなるということだ。
待ち時間や付帯作業の多い加工食品物流は物流事業者から敬遠されるので、恐らく60人くらいで回さないといけないだろう。
 人数が減るのなら通常であれば時間をかければいい。
しかし、時間外労働の上限規制も始まるので、それができない。
個人的には、これまで100人でやっていた物流を、今後は50人で回せる仕組みを作らないといけないと考えている。
そうしないと運ぶ人がいなくなる。
 これまでは荷主企業が物流会社をエリアごとに選んでいた。
しかし、これからはそれもできなくなる。
物流会社が荷主を選ぶ。
そこで、われわれとしても物流会社から選ばれる荷主になることを目指してきた。
しかし19年に入って、それだけでは足りないことが分かった。
もっと全体を考える必要がある。
食品物流を持続可能なものにするためには、食品物流を物流会社から選ばれる職種にしなければならない。
加工食品物流プラットフォーム  その具体的な取り組みが加工食品物流プラットフォームの構築だ。
図1はその全体像を示している。
図の右側に「ハードのプラットフォーム」、左側に「ソフトのプラットフォーム」を描いている。
また図の中央より上部がメーカーの取り組み、下部は関係各所との連携による取り組みだ。
 概要を説明すると、ハードのプラットフォームは図のA「F-LINEプロジェクト」からB「F-LINE社の設立」へと進めてきた。
15年2月、カゴメ、日清オイリオ、日清フーズ、ハウス食品、ミツカン、そして味の素の6社で「持続可能な物流体制の構築」を目的にF-LINEプロジェクトを立ち上げた。
 主なテーマは「共同配送」「共同幹線輸送」「製配販課題」の三つ。
このうち共同配送はプロジェクト立ち上げからちょうど1年後の16年4月から北海道でスタートした。
共同幹線輸送も同時期に北海道向けで開始した。
19年2月からは九州での6社共同配送も始めている。
 共同配送と共同幹線輸送を効率的に推進するには、F-LINEプロジェクトで決定した全体戦略を具現化する全国規模の物流会社を持つ必要があった。
そこで、19年4月、三つの物流子会社、味の素物流、ハウス物流サービス、カゴメ物流サービスを統合した全国規模の新しい物流会社「F-LINE」を設立した。
F-LINE社にはプロジェクトメンバー企業である日清フーズと日清オイリオも出資している。
 これによって「共同配送」と「共同幹線輸送の実現」については推進体制が整った。
しかし、もうひとつの主要テーマ「製配販課題」は業界全体の問題であるため、さらに大きな枠組みの下で取りかかる必要がある。
 そのためにF-LINEプロジェクトに参画したメーカー6社に、キッコーマンとキユーピーが加わった8社で「SBM会議(食品物流未来推進会議)」を16年5月に立ち上げている。
そこでは手待ち時間の問題や付帯作業、納品方法の標準化などを討議している。
 ただし、SBM会議で討議した内容を実行しようとしても、メーカーだけでの推進は難しい。
そこで横断的な討議の場として、図のD「持続可能な加工食品物流検討会(加工食品検討会)」とE「加工食品における生産性向上及びトラックドライバーの労働時間改善に関する懇談会(加工食品懇談会)」を置いている。
 加工食品検討会はメーカー、卸、小売の製配販三層に加えて、国土交通省、経済産業省、農林水産省にも行司役として加わってもらい、18年5月に発足した。
同6月に国土交通省自動車局貨物課が中心となり立ち上げた加工食品懇談会からもお声掛けいただいたことから、検討会と懇談会を相互にリンクさせて取り組みを進めている。
F-LINE社の大型共配拠点が稼働  それぞれの取り組みの詳細を以下に説明していく。
まずはハードのプラットフォーム、F-LINEプロジェクトと物流会社F-LINEについて。
「競争は商品で、物流は共同で」がプロジェクトの基本理念だ。
食品業界全体の物流インフラを効率性や経済合理性だけでなく、社会的合理性からも、つまり両面で追求していくことを目指している。
 組織としては各社の物流管掌役員が必要に応じて運営部会で決定した内容を承認する「TOP会」を最上位に置き、その下に各社の物流担当部長が、「共同配送」「幹線輸送」「製配販」の各ワーキングチームで検討した戦略を審議・決定する「運営部会」を置いている。
運営部会は毎回2時間以上の会合を行っている。
先日78回目の会議を開いた。
 他のエリアに先立って始まった北海道の共配プロジェクトでは大きく三つを試みた。
「共同配送先への納品伝票統一化」「共配稼働マネジメント標準化」「納品課題得意先との改善活動」だ(図2)。
 エリア共配では配車台数18%減、積載率11%向上といった成果が上がった。
本州から北海道への共同幹線輸送では、JR貨物の5トン(12フィート)コンテナ輸送を船舶や大型トレーラー積載へと転換し、前後の積み付けと積み降ろしをパレット化することで荷役時間を半減することができた。
 ここまでならよくある話かもしれないが、ポイントはその先にある。
「共同配送先への納品伝票統一化」だ。
サイズや複写枚数が異なっていた各社の納品伝票を「F-LINE伝票」として共通化した。
これによって荷受け側の検品作業が効率化された。
現在さらなる標準化と伝票レス、データ化を検討している。
 「共配稼働マネジメント標準化」も実施した。
メーカーが物流会社に求める誤納品率や汚破損率といった一般的な管理KPIに加えて、物流会社がメーカーに求める「標準化KPI」を設けた。
メーカーの出荷指図時間の遅れや緊急配送依頼などを全て月次で集計している。
稼働当初は各社の元々のやり方の違いなどから非効率が発生していたケースもあったが、取り組みの進捗に伴い標準化が浸透している。
 「納品課題得意先との改善活動」は北海道共配プロジェクトにおけるホワイト物流関連の本丸だ。
北海道の場合、長時間待機よりもむしろ付帯作業が大きな問題だった。
実態を調査したところ「検品後の格納作業がある」「配送先別の仕分けを求められる」「ラベル貼り付けを依頼される」などの付帯作業を、45カ所の納品先センターで強いられていた。
それをリスト化して、われわれ荷主が得意先と協議を行い、付帯作業の廃止について理解を求める活動を続けている。
 その際に「この作業は本来、納品する側の仕事ではないからやらない」といった言い方は絶対にしないようにしている。
押しつけになってしまえば何も改善されない。
その付帯作業が本当に必要なのかという観点から、納品先と一緒に改善策を探る。
そのため歩みは遅い。
それでも一歩ずつ確実に改善が進んでいる。
 九州エリアでは18年10月に共同配送用の物流センターが竣工した。
メーカー全6社の在庫を集約した初の拠点だ。
保管能力は120万ケース、延べ床面積は約1万2千坪。
19年1月から共同配送を一部開始して、5月には6社の在庫集約が完了して完全共同配送をスタートさせた(図3)。
 九州共配拠点の本格稼働に先立つ19年4月に、プラットフォームの運営を担う物流会社F-LINEが正式に発足している。
これによってF-LINEプロジェクトで掲げた課題を解決するための、しかけの一つが完成した。
しかし、本格的な成果を挙げるのはこれからだ。
課題は五つあると考えている。
 一つは共同配送の実施に伴うルールの徹底だ。
共同配送の鍵は標準化だ。
参加メーカーが出荷指示時間の遅れや締め後の出荷依頼をしないように、北海道で実施したマネジメントを九州にも適用した。
今のところ九州の共配は非常に良い成績を収めている。
これを全国に展開していきたい。
 二つ目は配送カレンダーの統一だ。
休日の設定はメーカーによって異なっている。
そのため現状では、共同配送といっても配送カレンダーや受注日はメーカー毎にバラバラだ。
これを統合する必要があるのだが、具体的にどうやって進めていくか、なかなか容易ではない。
 三つ目は外装不良の基準の標準化だ。
配送中に荷物の毀損が発生した場合の取り扱いが、現状では統一されていない。
そのため納品先によって返品の量に大きな違いがある。
これも早期の改善が必要な事項と考えている。
 四つ目がBCP対応。
災害発生時にどうやって運ぶかという問題については、18年に幹線輸送の複数化を採用したことで対応力が上がった。
続いて「どうやって止めるか」が新たな課題として持ち上がっている。
 これまでは「とにかく行く」という選択肢しかなかった。
鉄道、飛行機、バスまで止まっても、トラックは運行させた。
しかし、これからはトラックが運行できない事態を考慮した仕組みの構築が必要と考えている。
現在は、納品の前日までにメーカーの営業マンが得意先と配送の有無を相談する枠組みを検討している。
ソフトのプラットフォーム「SBM会議」  続いて、ソフトのプラットフォーム「SBM会議」について説明する。
主な取り組みは大きく三つ。
「①F-LINEプロジェクトの活動内容共有」「②メーカー取り組み課題の共有と連動」「③製配販課題(待機時間・付帯作業など)に関する討議」だ。
 「①F-LINEプロジェクトの活動内容共有」は、「製配販課題対応」がテーマだ。
サプライチェーンの全体最適を目指して、製配販の各層がWIN-WINとなる活動の推進がその柱となる。
行政当局や業界団体と連携を図りながら、ダブルスタンダード、トリプルスタンダードにならない、本当の意味での業界標準化を目指している。
 メーカーだけで進められる取り組みについては「②メーカー取り組み課題の共有と連動」として先行実施している。
その一つが「外装表示の標準化」だ。
これまで外装の物流情報の表示位置には明確な決まりがなく、メーカーや商品によってバラバラだった。
庫内スタッフに外国人労働者や高齢者が増えてくると作業に支障を来す恐れがある。
 そこで外箱の右上に物流情報を集約している味の素の外装表示ガイドラインを公開して、物流コードは黒字に白抜きで表示することを最低限のルールに定めた。
ただし、他のメーカーに表示方法の変更を強いてはいない。
各社が製品改定の際に切り替えてもらうよう提案することで、徐々にではあるが変更が進んでいる。
外装表示の標準化に対応した製品が出荷されてから3年ほどが経過して、物流現場の周知も進んでいる。
 賞味期限の表示を「年月日」から「年月」に変更するのもメーカーサイドの取り組みだ。
年月日表示は365通りの日付管理をしなければならないが、年月表示であれば12通りで済む。
管理の簡素化や作業性向上など大きな効果を発揮する。
既に味の素では予定商品の対応が完了しており、キユーピーも順次切り替えている。
納品先からの反応も良好で、加工食品各社の対応を熱望している(図4)。
リードタイム延長が広がる  SBM会議の「③製配販課題(待機時間・付帯作業など)に関する討議」では、それまで各社で認識がバラバラだった「荷待ち時間」と「納品時の付帯作業」の定義をまずは整理した。
 大分類として作業を「デポ作業」「運転」「納品先作業」の三つに分け、さらに「出発前作業」「荷揃え」「積み込み」「運転」「荷降ろし」「検品」「格納」といった中分類を設定して、出庫から納品先拠点退場までの業務を38項目に整理した。
その上で、どの作業が「標準作業」で、どれが「標準外作業」なのか、メーカー各社が現在進行形で整理・分類を進めている。
 また標準外作業は大きく、メーカーが営業政策として対応しているものと、納品先に起因するものに分けられる。
そのどちらに属するのか、判断が特に難しいのが、納品先のフォークリフトを借りての荷降ろし作業「荷降ろし時の一次移動」だ。
 いずれの場合も、われわれメーカーだけで検討していても問題は解決はしないため、製販配三層と行政で構成される「持続可能な加工食品物流検討会(加工食品検討会)」や加工食品業界団体と行政による「加工食品における生産性向上及びトラックドライバーの労働時間改善に関する懇談会(加工食品懇談会)」といった場で議題に挙げるように努めている。
 加工食品検討会は日本ロジスティクスシステム協会(JILS)、加工食品懇談会は国土交通省貨物課がそれぞれ事務局を務め、製配販の各層が参加している。
この二つの会議体で討議している物流課題には共通の事項が多い。
「日付管理の緩和による作業の簡素化」と「リードタイム延長による各種工程作業の緩和」もそうで、ソフトのプラットフォームにおける現時点の最大のテーマといっていい(図5)。
 日付管理の緩和では、製造日から賞味期間の3分の1以内に小売店舗に納品する、いわゆる「3分の1ルール」を「2分の1ルール」に移行するという案が検討されているが、一部を除いて採用は進んでいない。
しかし、賞味期限の延長と、先ほどの賞味期限の年月表示は広がってきた。
 納品リードタイムの変更についても動きがある。
加工食品懇談会の席で初めて正式なテーマとして持ち上がり、議論を進める中で「リードタイム延長は単なる時間の延長ではなく、物流全体の動きを大きく変えられるのではないか」という認識が広がった。
 味の素を含む加工食品メーカー各社は19年2月、同年のゴールデンウィークとお盆の納品リードタイム1日延長をお願いした。
さらに一部の加工食品メーカーと飲料メーカーは8月以降、恒久的な翌々日配送・前々日受注を実施している。
現状ではまだ十分な理解を得られているとはいえないが、関係各所を回って定着を目指している。
 リードタイム延長が実現すれば、加工食品物流における夜間作業の多くが消滅する。
翌日納品の場合、午前中に受けた注文を、日中に在庫に引き当て、荷揃えを行い、夕方に出庫する。
車両が納品先エリアの協力会社の拠点に到着するのがその日の夜。
翌朝、店舗に納品するには夜中に仕分けをせざるを得ない。
これが翌々日納品になれば、夜間の仕分け作業を翌日昼に移せる。
 夜間作業の解消は物流要員の安定確保につながり、持続可能な物流の構築へと結び付く。
この取り組みは加工食品業界のみならず物流業界からも注目されており、19年7月には全日本トラック協会が「リードタイム延長をホワイト物流推進運動の自主行動宣言に入れてほしい」との意見書を発信している。
物流の景色を変えよう  このように加工食品業界ではホワイト物流推進運動が始まる前から改革に取り組んできた。
その経験から分かったことがある。
共同化や標準化、あるいは商習慣やルールを変えるといった取り組みを、物流という枠の中だけで進めていても大きな効果は期待できない、そうしたやり方では問題は解決しないということだ。
 鍵は“連携”にある。
F-LINEプロジェクト、そしてSBM会議とは「水平連携」の強化に向けた取り組みであり、それを発展させることでサプライチェーン全体、つまり製配販三層の「垂直連携」が強化される。
そして、もうひとつ重要になるのが「斜め連携」だ。
行政当局のリーダーシップと支援、そして業界団体・経済団体の協力を得る。
業界内の水平連携や垂直連携ではもう足りないのだ(図6)。
 深刻な労働力不足、ECの普及による小口配送の急増、相次ぐ天災、次々と難問に直面して物流サイドは完全に疲弊している。
もはや東京オリンピックなどの変動要素を吸収する余力はない。
改革は待ったなしだ。
研究や議論はもう終わりにしよう。
物流の景色を変える革命を実行する時をわれわれは迎えている。

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