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2020年1月号
特集

「ガイドライン事例集」を活用する

全国の約100事例を整理して収録  国土交通省と厚生労働省はホワイト物流推進運動に先立ち、2015年に「トラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会(協議会)」を各都道府県単位で設置している。
同協議会では荷主とトラック運送事業者の協力・連携によってトラックドライバーの長時間労働の改善を図る取り組みを「パイロット事業」として2年間にわたって47都道府県で実施した。
 その成果としてさまざまな業種・地域における100を超える取り組み事例が積み上がっている。
18年11月にはその成果に基づき「荷主と運送事業者の協力による取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」の事例集(ガイドライン事例集)にその内容がとりまとめられている。
国土交通省や全日本トラック協会のウェブサイトからダウンロードできる。
 ホワイト物流推進運動の趣旨に賛同した企業は、賛同表明を行った上で、自分たちがどのような取り組みを進めるのかを選び、「自主行動宣言」として任意で公表する。
各社が取り組み内容を検討する際の参考資料としてガイドラインや事例集を利用できる。
実際、19年3月にはホワイト物流推進運動の「推奨項目リスト」が発表されているが、ガイドラインや事例集に掲載された各種事例が原型となっている。
 推奨項目は大きく次の六つのグループに分類されている。
「A.運送内容の見直し」「B.運送契約の方法」「C.運送契約の相手方の選定」「D.安全の確保」「E.その他」「F.独自の取組」だ。
このうちA〜Eの推奨項目に該当する取り組み事例を、ガイドライン事例集および関連資料からピックアップして紹介する。
A.運送内容の見直し  ホワイト物流推進運動の推奨項目リスト「A.運送内容の見直し」には、17の「取組項目」が列記されている。
それぞれに該当する取り組み事例がガイドライン事例集に掲載されている。
①物流の改善提案と協力  発荷主、着荷主、運送事業者の幅広い関係者が一堂に会して意見交換を行った上で改善を行う。
荷主と事業者それぞれが持っている情報を共有することで、どのような問題が発生していて、そのために何を改善していけばよいのかを洗い出し、改善に結びつける。
 ガイドライン事例集82ページに掲載されている「金属機械工業品 積込み作業の効率化等による拘束時間の削減 島根県」では、荷主と物流事業者が意見交換を行ったところ、倉庫における保管スペースと荷役スペースの問題が浮き彫りになった。
 倉庫における保管スペースがかなり大きな場所を取っているため、十分な荷役スペースが確保できていなかった。
それが荷待ち発生の原因になっていた。
そこで保管スペースを約100坪削減して、これを荷揃えと荷捌きスペースに転用することで作業を効率化し、荷待ちと荷役時間の削減に結びつけた(図1)。
②予約受付システムの導入  ガイドライン事例集118ページ「軽工業品 一貫パレチゼーションと受付予約で着荷主滞在時間を短縮 山梨県」が該当する。
この荷主企業では従来、到着順での受付を実施していたため必要以上に早く到着する午前中配達のトラックが朝一番に集中するなどして滞在時間が長時間化していた。
 そこで、試験導入中の受付予約システムの運用を拡大し、1時間幅の予約受付を開始した。
その結果、ドライバーの拘束時間を平均5時間30分も削減することに成功した。
受付を予約することで運行計画の精度が高まり、帰り荷などの業務組み合わせの自由度も向上している。
③パレット等の活用  端的に言えば手荷役の廃止である。
バラ貨物をパレットに載せて、手荷役を機械荷役に切り換えることで荷役時間を短縮し、ドライバー負荷を軽減する。
 ガイドライン事例集2ページに「農・水産物 パレット利用による荷役時間の削減、運行計画の見直し等 北海道」が掲載されている。
手荷役の一部をパレット利用に転換したことで積み込み先への到着から出発までの時間が34分短縮された。
ドライバーの全体の拘束時間は手荷役時と比較して1時間12分も短縮された。
④発荷主からの入出荷情報等の事前提供  ガイドライン事例集122ページ「軽工業品 トラック便の手待ち時間と積込み時間の削減 長野県」。
従来よりも出荷データを1日早く出してもらうよう発荷主に協力を仰いだことで、夜間のピッキング作業と朝からの積み込み作業が可能になった。
その結果、発荷主側での拘束時間が大幅に短縮。
荷待ち時間に関してはほぼゼロになるという大きな効果が出ている(図2)。
⑤幹線輸送部分と集荷配送部分の分離  1人のドライバーが集荷をし、幹線輸送で運転し、それから配達もするとなると、拘束時間が長くなる。
末端の集荷と配達の部分は別のドライバーが担当し、その間の長距離の幹線輸送もまた別のドライバーが担当する分担体制の構築によってトラックドライバーの拘束時間を削減する。
 ガイドライン事例集148ページ「軽工業品 集荷と幹線輸送のドライバー分離による拘束時間削減 佐賀県」の事例では、集荷、長距離輸送、配達の全てを1人のドライバーが担っていたものを、発地での集荷担当と長距離幹線輸送、配達担当に分ける形に改めた。
集荷とそれ以外を分離したことで大幅な拘束時間の削減を実現している。
⑥集荷先や配送先の集約  ガイドライン事例集20ページ「農・水産物 複数卸しから1カ所卸しへの配車計画による拘束時間の削減 愛媛県」は青果輸送において、集荷場と配送先を集約した例だ。
野菜などの青果物を選果場からトラックへと積み込んで東京などの市場に輸送する際、従来は輸送先である都内の市場をいくつも巡回して配達していた。
そこで、発側にて卸し先を集約するよう配車を見直した。
卸し先の集約によって2日目のドライバー拘束時間が平均2時間20分短縮できた(図3)。
⑦運転以外の作業部分の分離  「⑤幹線輸送部分と集荷配送部分の分離」と考え方は同じで、運転以外の作業部分を分離する。
1人のドライバーが運転に加えて、庫内作業の全てをやるのではなく、可能な範囲で作業を切り離す。
 ガイドライン事例集116ページ「軽工業品 荷主と連携した作業分担変更によるドライバー作業軽減の事例 石川県」では給食事業の配送業務を紹介している。
従来はドライバーが行っていた荷揃え作業を、事前に倉庫側でやってもらうよう改め、ドライバーは倉庫に行ったらすぐ積み込み作業に入れるようにした。
荷主の協力を得た改善によって、ドライバーの倉庫内移動はそれまでの5カ所から3カ所に。
その結果、拘束時間は13時間26分から12時間55分に減った。
⑧出荷に合わせた生産・荷造り等  出荷に合わせた生産・荷造りは、荷主の協力が非常に重要になる取り組みだ。
一般に生産工程では、出荷の順番やトラックへの積み付け順などが考慮されていないケースも多い。
そのため出荷のトラックが到着しているのに荷物がそろわない、生産した順に荷物を並べるので積み付け作業が錯綜するといったことが起きる。
 ガイドライン事例集80ページ「金属機械工業品 生産・出荷工程の見直しにより車両待機を抑制 京都府」の事例がそうだった。
運送事業者と荷主が協議し、トラックの積み付け順や出荷のタイミングから逆算して生産するように工程を見直した。
荷造りと出荷の工程日を分割したことで、出荷時間の遅れとそれに伴うトラック待機の抑制に成功した。
⑨荷主側の施設面の改善  ガイドライン事例集196ページ「雑工業品 出荷情報の確定時刻遵守による荷待ち時間の削減 東京都」では、工場内の積み降ろし場所3カ所のうち、1カ所を特定顧客専用の保管場所として運用していた。
一般品の積み降ろしにバースを利用できないことから、荷待ちや荷役スペース不足といった問題が発生していた。
 そこで荷主と運送会社の協議の末、特定顧客専用のバースを一般品にも開放した。
3カ所全てで一般品の積み降ろしができるように運用を変更したことで構内混雑の緩和に加え、工場周辺での待機車両数と待機時間の改善が期待できる取り組みである。
⑩リードタイムの延長  ガイドライン事例集28ページ「農・水産物 4日目販売の促進により余裕を持った運行を実現 宮崎県」では、農産物を輸送品目とした取り組みが紹介されている。
 産地から宮崎港までトラック輸送し、カーフェリーで神戸港まで運び、関西の卸売市場経由で東京の市場まで陸送している。
従来は出荷後3日目に東京の小売店で販売できるようにスケジュールを組んでいたが、非常にタイトな運行だった。
 そこで出荷後3日目と4日目とで農産物の品質にどれだけ違いがあるのかを検証した。
収穫当日は予冷庫にて保管することにより、4日目の販売でも品質的には問題ないとの確証を得て運行を見直した。
リードタイムに1日の余裕が生まれたことで、余裕を持っての集荷・積み込み作業が可能になった。
 この事例では、4日目販売でも問題はないのに3日目販売というタイトなスケジュールで出荷、運送していたわけだが、長年の慣行を見直すのは実際には容易ではない。
荷主と物流事業者の双方が十分な意見交換がないと進まない。
とりわけリードタイムの延長は両者の密接な連携が不可欠な取り組みとなる(図4)。
⑪高速道路の利用  ガイドライン事例集72ページ「金属機械工業品 高速道路の有効利用による拘束時間の削減 大分県」にはフェリーと高速道路利用を組み合わせた事例が紹介されている。
 従来は別府港もしくは大分港でフェリー乗船した後、大阪南港または神戸港で下船。
その先のトラック輸送は一般道を走行していた。
それを高速道路利用に転換することで大幅に拘束時間を短縮し、改善基準告示を確実に順守できるようになった。
⑫混雑時を避けた配送  ガイドライン事例集4ページ「農・水産物 『朝積みの時間の前倒し』と『荷物の区分け・整理する』ことによる荷積み時間削減 青森県」では、1時間の作業の前倒しが、2時間以上のドライバー拘束時間短縮に結び付いた。
 従来は配送先ごとの仕分けが完了していない状態で朝8時から積み込みを開始していた。
車両が着地に到着するのは市場が最も混雑している時間帯だった。
混雑時の到着を避けるため、発地における荷役の開始を1時間早めるとともに、配送先ごとに積み荷を仕分けした。
その結果、市場の混雑ピーク前に到着することが可能となりドライバーの1日当たりの拘束時間を2・2時間削減できた(図5)。
⑬発注量の標準化  ガイドライン事例集146ページ「軽工業品 発注量平準化による取扱SKUの削減による附帯作業時間の短縮化 高知県」が参考になる。
従来は着荷主が安全在庫量を考慮した数量をシステムで自動発注していた。
それを「面単位」もしくは「パレット単位」で発注するようにシステムの設定を変更した。
端数の荷物がなくなったことで積み込み・荷卸し時間が大幅に短縮された。
⑭船舶や鉄道へのモーダルシフト  ガイドライン事例集36ページ「農・水産物 フェリーと高速道路利用におけるモーダルシフト効果の検証 大分県」は、大分から出発して大阪・滋賀の4カ所で荷物を卸す運送について、高速道路利用の長距離トラック輸送の場合と、別府港〜大阪南港間フェリー輸送の場合を比較し、モーダルシフトの効果を検証した事例だ。
高速道路の場合、ドライバーは納品時間の関係で必要なタイミングで休憩を取れないが、フェリーを利用することで運転手の適正な労働時間を遵守しつつ、荷主が求めるリードタイムが実現できることがわかった。
⑮納品日の集約  毎日発注を見直して発注日を集約した取り組みが、製・配・販連携協議会が発行した「加工食品/日用品の製・配・販事業者の連携による配送効率化に向けた取組実施の手引書」で紹介されていて、インターネットで資料をダウンロードできる。
 従来は月曜日から日曜日まで毎日発注をしていた。
最低発注ロットを引き上げ、発注1回当たりの数量を増やし、発注頻度を少なくすることで、輸送回数を減らすことに成功した。
⑯検品水準の適正化  ガイドライン事例集110ページ「軽工業品 ピッキング・検品体制の見直しによる積込時間の短縮 千葉県」は、メーカーと運送事業者の双方で重複していた一部の検品作業を効率化した事例だ。
従来はメーカー側で出荷検品した商品を、運送事業者側であらためてアイテム別にケース数を検品していた。
バラ貨物は内容物の数量を検品していた。
 重複をなくすため、平パレットに集約された商品は検品レスにした。
バラ品はメーカー側でピッキング、詰め合わせ、検品して段ボール箱を封かんし、運送事業者側ではケースの総個数をカウントするだけに改めた。
重複していた作業を集約することで、検品水準を維持しながら全体の拘束時間の短縮と作業効率向上を実現した。
⑰物流システムや機材の標準化  ガイドライン事例集198ページ「雑工業品 倉庫間の情報連携強化による出荷作業待ち時間削減 三重県」では、荷主側が手書きした出荷連絡票をファクスで運送事業者に送信していたのを取りやめ、システムで出荷情報データをリアルタイムに共有できるようにした。
さらに荷姿のパターン化によって簡易的な配車の割り付けができるようにした。
荷積みや配車割り付けの効率化が実現して、荷待ち時間の短縮につながった。
B.運送契約の方法  「B.運送契約の方法」は、基本的に運送事業者が荷主に対して適正取引への協力をお願いするかたちになる。
そのためのガイドラインや荷主に主旨を説明するツールとして利用できる各種のリーフレットが用意されている。
①運送契約の書面化の推進  国土交通省が「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」を発表している。
ポイントは次の4点。
(1)荷主は運送状をトラック事業者に提出、(2)トラック事業者は運送業務、附帯業務、運賃、料金についての重要事項を示す書面を運送行為前に荷主にメールやファクスで送付、(3)トラック事業者は適正取引のために荷主と密接に連絡を取り合い、十分な意思疎通を図る、(4)トラック事業者は荷主に交付した書面を1年間保存する。
 なぜそもそも書面化が必要なのか、書面化にはどんなメリットがあるのか、書面化しないことによる問題は何かなど、ガイドラインを活用した周知に取り組んでいる。
②運賃と料金の別建て契約  従来は運送事業者が「運賃」と荷役作業などの「料金」を分けて収受することがほとんどなかった。
いわば“どんぶり勘定”が業界の慣習だった。
17年11月4日に標準貨物自動車運送約款が改正されてルールが変わった。
運賃と料金の区分、附帯業務の内容が明確化されて、新たに「待機時間料」が規定された。
 荷主は運送状に運賃と料金を区別して記載しなくてはならず、運送以外の役務が生じる場合はトラック事業者にその対価となる料金を支払う必要がある。
トラック事業者は新標準約款を営業所に掲示し、運賃・料金表の変更届を行わなくてはならない。
これについてもリーフレットが用意されている。
③燃料サーチャージの導入  燃料サーチャージは燃料価格の上昇幅に応じて設定または増額改定する制度だ。
原油価格の上昇や円安の影響などにより、軽油価格は長期間にわたり高止まりしており、価格の上昇幅に応じて燃料サーチャージ額として荷主に負担するよう求めることになる。
④下請取引の適正化  トラック運送事業における取引の適正化については、元請け・下請け間の取引と、荷主と運送事業者間の取引のいずれについても法令違反となる恐れのある取引を例示したリーフレットによる周知など、取引の適正化を図る取り組みを進めている。
C.運送契約の相手方の選定  運送契約の相手方の選定については、法令順守と働き方改革がポイントとして挙げられている。
①法令順守状況の考慮  当然ながらコンプライアンス違反をしている事業者とは契約しない。
その際の参考情報として使えるのが国土交通省ウェブサイトで公開されている「行政処分情報(ネガティブ情報の公開)」だ。
トラック運送事業者の「質」を確認できる。
②働き方改革に取り組む物流事業者の積極的活用  トラック協会が事業者の安全品質を認定する制度「Gマーク(安全性優良事業所)」の取得状況が参考になる。
トラック協会のウェブサイトでどの事業者がGマークを取得しているかを閲覧できる。
Gマーク取得事業所のトラックは事故率が未認定トラックの半分以下だ。
適正運行に取り組んでいるため働き方改革も進んでいる傾向にある。
D.安全の確保 ①荷役作業時の安全対策  労災が発生するケースとしては、運送中の事故がニュースにもなりやすいので目立つのだが、実は労災事故は荷役作業中の発生が圧倒的に多い。
そのため、荷役作業中の安全対策が重要になる。
②異常気象時等の運行の中止・中断等  異常気象時等の運行の中止・中断等には運用の改善も含まれる。
例えば、雨天時に荷台のシート掛けを積み込みエリアで行っているため、出庫までの時間が伸びて荷待ち時間が発生していたとする。
これを改善するため、走行前日の夕方の積み込み時に雨天で、かつ翌朝の降雨予想がない場合は翌日積みに変更する、当日走行へ変更するといった改善を行う。
E.その他  以下の①宅配便、②引越は、主に一般消費者向けの内容だが、③物流を考慮した建築物の設計・運用は他の取り組みより大がかりなものになる。
①宅配便の再配達の削減への協力 ②引越時期の分散への協力 ③物流を考慮した建築物の設計・運用  建物によってはそもそもトラックが着けられない、あるいは地下に搬入口があるにも関わらずトラックが入れないケースがある。
そうした場合、ドライバーはトラックから荷物を降ろして台車で運び入れている。
これを施設構造の改良や館内配送の共同化などによって改善する。
 以上、荷主と物流事業者が個別にあるいは協力して取り組むための推奨項目の具体例を紹介した。
ホワイト物流推進運動に賛同して取り組みを進めたいという意欲はあっても具体的に何をやればいいのか分からないとの声はよく耳にする。
この事例紹介が一助になれば幸いだ。

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