2020年1月号
特集
特集
トラック運送業の取引の適正化
24年にはトラックも時間外上限規制
トラックドライバー不足の影響が表面化している。
一部の物流事業者は日曜日の集荷・配達中止を決めた。
中国地方・九州地方では雑誌・書籍の販売日が以前よりも1日遅くなっている。
食料品の値上げは原料費、包材費、人件費と並んで物流費の上昇が理由として挙げられている。
いわゆる“引越難民”の問題もドライバー不足に起因している。
国土交通省でも4月に異動する職員に対して、4月の第2週目以降の引越を検討するよう周知したところだ。
一方で、働き方改革の波はトラックドライバーにも及ぶ。
2024年4月にはトラック運転手の時間外労働時間に上限が加えられる。
年間960時間までとなる。
この数値は一般企業の時間外労働の上限720時間よりもかなり多い。
それにもかかわらず、現状のままでは、5年後に迫る上限規制を守れない恐れがある。
現在の業務の枠組み自体が、ドライバーの長時間労働を前提としているからだ。
従って上限規制の実施によって、物流現場は相当な支障を来す可能性がある。
上限規制は24年に罰則を伴って適用される。
荷待ち時間が長い業種などは、この上限規制に引っかかる可能性がある。
トラック事業者は荷主からの仕事を断わらざるを得ない。
運転手不足の深刻化という厳しい条件の下、働き方改革の推進と物流の安定的な確保を両立する必要がある。
そのためにトラック運送事業者は既に相当な努力をしている。
しかし、抜本的な改善にはサプライチェーンの複数の関係者、つまり荷主と物流事業者が相互に連携し、環境整備を進める必要がある。
国土交通省はこれまで、契約の書面化や標準貨物自動車運送約款の改正など、トラック運送業における適正取引の推進に取り組んできた。
18年にトラック事業者を対象とするアンケートを行ったところ、契約の書面化、改正標準約款に基づく運賃設定などは8割がもう済ませたと回答していた。
一方、約款改正を踏まえて真荷主との間で実際に取引を見直し、適正な運賃料金を収受できているという回答はまだ半分くらいだった。
この状況を改善するためにも適正取引実現に向けた周知活動をさらに進める必要がある。
そこで以下にトラック運送業の取引適正化に関連した国のこれまでの取り組みを個別に紹介していきたい。
書面化推進ガイドライン 「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」は14年1月に策定し、17年8月に改定された。
運送契約に際して、荷主と事業者が書面によって共有すべき必要最低限の事項を明確化するとともに、記載の様式例を示すもので、実務に即して可能な限り円滑に書面化を行うための具体的な方法も提示している(図1)。
書面に記載する必要のある事項として「貨物の品名、重量、個数等」「運送日時・場所等」「運送の扱種別」「運賃、燃料サーチャージ、料金、有料道路利用料、立替金その他の費用」「荷送人および荷受人の連絡先等」といった項目に加え、「附帯業務の委託」などを設定している。
実務に即した円滑な書面化の方法としては次の事例を提示している。
①継続的な運送契約に伴う書面について 車種・台数のみが日によって変わる場合にはその都度、車種・台数のみをメール・ファックスなどで交付すれば他の項目の書面化は不要。
②変更時の簡便な対応について 当初の書面に記載されていた事項の一部を変更する場合には、全ての事項をあらためて書面化する必要はない。
③運賃、料金の記載について 反復継続しての契約関係にある委託者、受託者間においては、実額の表記に代えて、算定方法を示す書面を添付する簡便な方法を取ることも可能とする。
燃料サーチャージ制度 燃料サーチャージ制度は燃料価格の上昇と下落によるコストの増減分を別建て運賃として設定する仕組みだ。
現状の燃料価格が基準とする燃料価格より一定額以上、上昇した場合に上昇幅に応じて燃料サーチャージを設定、もしくは増額改定して適用する(図2)。
貸切運賃の場合の設定方法は次の通りとなる。
①基準となる燃料価格の設定 荷主企業と運賃契約を交わした時点の燃料価格や運賃届出時点の燃料価格を基準価格として設定。
②燃料サーチャージの改定および廃止の設定 燃料価格は短期間で変動するため、その都度改定するのではなく、ある一定の軽油価格帯を設定し、その軽油価格帯における算出上の燃料価格の上昇額を決めておく。
また改定および廃止する場合の条件を設定時に明確に荷主企業に示しておく必要がある。
③車両燃費の把握 燃料サーチャージ額を決めるため、自社の車両の燃費を把握する。
④燃料サーチャージ額の算出 A.燃料価格上昇額を現在の軽油価格帯に対応させ、燃料価格上昇額を算出する。
B.距離制・時間制に対応した燃料サーチャージ額を算出。
その上で、次のような燃料サーチャージ額の算出式を設定する(距離制貸切運賃の場合)。
燃料サーチャージ額=走行距離(キロメートル)÷燃費(キロメートル/リットル)×算出上の燃料価格上昇額(円/リットル) 基準価格65円/リットル、燃料価格100円/リットルの際、燃費3キロメートル/リットルの車両で150キロメートルの輸送を行う場合の計算例は次の通り。
1750円=150キロメートル÷3キロメートル/リットル×35円/リットル 標準貨物自動車運送約款等の改正 17年11月にトラック運送における運賃・料金の収受ルールが変わった。
国土交通省が制定するトラック事業者と荷主の契約書のひな形である標準貨物自動車運送約款が改正されたためだ。
改正前は「運賃」の範囲が不明確で、運送、附帯業務、積込み・取卸し、荷待ち時間など全てを含んでいる場合があった。
改正によって運賃が運送の対価であることが明確化された。
運賃は運送の対価のみとし、附帯業務、積込み・取卸し、荷待ち時間などは運送以外の役務の対価である「料金」となった(図3)。
荷主都合による荷待ち時間の対価は「待機時間料」として新たに規定された。
また、附帯業務の内容には「棚入れ」「ラベル貼り」などが追加されている。
これにより、荷主は運送状に「運賃」と「料金」を区別して記載するとともに、運送以外の役務が生じる場合はトラック事業者にその対価となる料金を支払う必要がある。
またトラック事業者は新標準約款を営業所に掲示するとともに、運賃・料金表の変更届を行わなくてはならない。
新たな荷主勧告制度の運用 トラック事業者の法令違反行為に荷主の関与が判明した場合、荷主名が公表される「荷主勧告制度」が設けられている。
元々存在していた制度だが、荷主関与に関する判断基準が明確ではなかった。
そこで、荷主関与の判断基準を明確化した新たな荷主勧告制度の運用を17年7月から開始した。
現行の荷主勧告制度では、トラック事業者の法令違反行為があった場合、荷主に対して早期の改善協力要請が出される。
荷主の指示など具体的な関与が認められた場合、荷主勧告によって荷主名が公表される。
具体的な荷主関与の例は「荷待ち時間の恒常的な発生」「非合理な到着時刻の設定」「やむを得ない遅延に対するペナルティ」「重量違反等となるような依頼」など。
調査の結果、こちらの事例に該当する場合は荷主勧告が発動される(図4)。
ただし、制度としては存在しているが、実際にこの「荷主勧告」が発出されたことはまだない。
トラック運送事業者の法令違反行為があった後の荷主への協力要請の時点で改善が行われていたり、荷主の主体的な関与が認められないためだ。
貨物自動車運送事業法の改正 18年12月の臨時国会において「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(議員立法)が成立し、非常に短期間で貨物自動車運送事業法の改正が行われた。
ポイントは大きく「規制の適正化」「事業者が遵守すべき事項の明確化」「荷主対策の深度化」「標準的な運賃の告示制度の導入」の四つだ。
そのうち「荷主対策の深度化」では、「荷主の配慮義務の新設」「荷主勧告制度(既存)の強化」「国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定の新設」の三つが23年度末までの時限措置として設定されている。
荷主勧告の具体的な流れは次の通り。
「トラック運送事業者の違反原因となる恐れのある行為を荷主がしている疑いがある場合」には関係行政機関と国土交通省の間で当該荷主の情報を共有し、関係行政機関と協力して当該荷主に改善の働きかけを行う。
そして「荷主への疑いに相当な理由がある場合」は国土交通省と関係行政機関が協力して要請を行う。
要請をしてもなお改善されない場合には勧告をし、荷主名が公表される。
ただし、国土交通省としては最初から荷主勧告の発出ありきで考えてはいない。
きちんとしたプロセスを踏むことで改善に結びつけたい方針だ。
関係省庁との情報共有については19年7月から実施されており、情報も得ている。
現在は、どのように働き掛けを行うべきか情報を整理している段階だ。
「規制の適正化」と「事業者が遵守すべき事項の明確化」の目的は、問題あるトラック事業者の市場からの退出を促すことにある。
従って、法令を違反したトラック運送事業者に対する制限などはさらに厳しくなる。
「標準的な運賃の告示制度の導入」は現在、国土交通省で作業が進められている。
国土交通省が「参考」の形で標準的な運賃を示す。
荷主と事業者による運賃交渉時の参考にしてもらうことがその目的だ。
一部の物流事業者は日曜日の集荷・配達中止を決めた。
中国地方・九州地方では雑誌・書籍の販売日が以前よりも1日遅くなっている。
食料品の値上げは原料費、包材費、人件費と並んで物流費の上昇が理由として挙げられている。
いわゆる“引越難民”の問題もドライバー不足に起因している。
国土交通省でも4月に異動する職員に対して、4月の第2週目以降の引越を検討するよう周知したところだ。
一方で、働き方改革の波はトラックドライバーにも及ぶ。
2024年4月にはトラック運転手の時間外労働時間に上限が加えられる。
年間960時間までとなる。
この数値は一般企業の時間外労働の上限720時間よりもかなり多い。
それにもかかわらず、現状のままでは、5年後に迫る上限規制を守れない恐れがある。
現在の業務の枠組み自体が、ドライバーの長時間労働を前提としているからだ。
従って上限規制の実施によって、物流現場は相当な支障を来す可能性がある。
上限規制は24年に罰則を伴って適用される。
荷待ち時間が長い業種などは、この上限規制に引っかかる可能性がある。
トラック事業者は荷主からの仕事を断わらざるを得ない。
運転手不足の深刻化という厳しい条件の下、働き方改革の推進と物流の安定的な確保を両立する必要がある。
そのためにトラック運送事業者は既に相当な努力をしている。
しかし、抜本的な改善にはサプライチェーンの複数の関係者、つまり荷主と物流事業者が相互に連携し、環境整備を進める必要がある。
国土交通省はこれまで、契約の書面化や標準貨物自動車運送約款の改正など、トラック運送業における適正取引の推進に取り組んできた。
18年にトラック事業者を対象とするアンケートを行ったところ、契約の書面化、改正標準約款に基づく運賃設定などは8割がもう済ませたと回答していた。
一方、約款改正を踏まえて真荷主との間で実際に取引を見直し、適正な運賃料金を収受できているという回答はまだ半分くらいだった。
この状況を改善するためにも適正取引実現に向けた周知活動をさらに進める必要がある。
そこで以下にトラック運送業の取引適正化に関連した国のこれまでの取り組みを個別に紹介していきたい。
書面化推進ガイドライン 「トラック運送業における書面化推進ガイドライン」は14年1月に策定し、17年8月に改定された。
運送契約に際して、荷主と事業者が書面によって共有すべき必要最低限の事項を明確化するとともに、記載の様式例を示すもので、実務に即して可能な限り円滑に書面化を行うための具体的な方法も提示している(図1)。
書面に記載する必要のある事項として「貨物の品名、重量、個数等」「運送日時・場所等」「運送の扱種別」「運賃、燃料サーチャージ、料金、有料道路利用料、立替金その他の費用」「荷送人および荷受人の連絡先等」といった項目に加え、「附帯業務の委託」などを設定している。
実務に即した円滑な書面化の方法としては次の事例を提示している。
①継続的な運送契約に伴う書面について 車種・台数のみが日によって変わる場合にはその都度、車種・台数のみをメール・ファックスなどで交付すれば他の項目の書面化は不要。
②変更時の簡便な対応について 当初の書面に記載されていた事項の一部を変更する場合には、全ての事項をあらためて書面化する必要はない。
③運賃、料金の記載について 反復継続しての契約関係にある委託者、受託者間においては、実額の表記に代えて、算定方法を示す書面を添付する簡便な方法を取ることも可能とする。
燃料サーチャージ制度 燃料サーチャージ制度は燃料価格の上昇と下落によるコストの増減分を別建て運賃として設定する仕組みだ。
現状の燃料価格が基準とする燃料価格より一定額以上、上昇した場合に上昇幅に応じて燃料サーチャージを設定、もしくは増額改定して適用する(図2)。
貸切運賃の場合の設定方法は次の通りとなる。
①基準となる燃料価格の設定 荷主企業と運賃契約を交わした時点の燃料価格や運賃届出時点の燃料価格を基準価格として設定。
②燃料サーチャージの改定および廃止の設定 燃料価格は短期間で変動するため、その都度改定するのではなく、ある一定の軽油価格帯を設定し、その軽油価格帯における算出上の燃料価格の上昇額を決めておく。
また改定および廃止する場合の条件を設定時に明確に荷主企業に示しておく必要がある。
③車両燃費の把握 燃料サーチャージ額を決めるため、自社の車両の燃費を把握する。
④燃料サーチャージ額の算出 A.燃料価格上昇額を現在の軽油価格帯に対応させ、燃料価格上昇額を算出する。
B.距離制・時間制に対応した燃料サーチャージ額を算出。
その上で、次のような燃料サーチャージ額の算出式を設定する(距離制貸切運賃の場合)。
燃料サーチャージ額=走行距離(キロメートル)÷燃費(キロメートル/リットル)×算出上の燃料価格上昇額(円/リットル) 基準価格65円/リットル、燃料価格100円/リットルの際、燃費3キロメートル/リットルの車両で150キロメートルの輸送を行う場合の計算例は次の通り。
1750円=150キロメートル÷3キロメートル/リットル×35円/リットル 標準貨物自動車運送約款等の改正 17年11月にトラック運送における運賃・料金の収受ルールが変わった。
国土交通省が制定するトラック事業者と荷主の契約書のひな形である標準貨物自動車運送約款が改正されたためだ。
改正前は「運賃」の範囲が不明確で、運送、附帯業務、積込み・取卸し、荷待ち時間など全てを含んでいる場合があった。
改正によって運賃が運送の対価であることが明確化された。
運賃は運送の対価のみとし、附帯業務、積込み・取卸し、荷待ち時間などは運送以外の役務の対価である「料金」となった(図3)。
荷主都合による荷待ち時間の対価は「待機時間料」として新たに規定された。
また、附帯業務の内容には「棚入れ」「ラベル貼り」などが追加されている。
これにより、荷主は運送状に「運賃」と「料金」を区別して記載するとともに、運送以外の役務が生じる場合はトラック事業者にその対価となる料金を支払う必要がある。
またトラック事業者は新標準約款を営業所に掲示するとともに、運賃・料金表の変更届を行わなくてはならない。
新たな荷主勧告制度の運用 トラック事業者の法令違反行為に荷主の関与が判明した場合、荷主名が公表される「荷主勧告制度」が設けられている。
元々存在していた制度だが、荷主関与に関する判断基準が明確ではなかった。
そこで、荷主関与の判断基準を明確化した新たな荷主勧告制度の運用を17年7月から開始した。
現行の荷主勧告制度では、トラック事業者の法令違反行為があった場合、荷主に対して早期の改善協力要請が出される。
荷主の指示など具体的な関与が認められた場合、荷主勧告によって荷主名が公表される。
具体的な荷主関与の例は「荷待ち時間の恒常的な発生」「非合理な到着時刻の設定」「やむを得ない遅延に対するペナルティ」「重量違反等となるような依頼」など。
調査の結果、こちらの事例に該当する場合は荷主勧告が発動される(図4)。
ただし、制度としては存在しているが、実際にこの「荷主勧告」が発出されたことはまだない。
トラック運送事業者の法令違反行為があった後の荷主への協力要請の時点で改善が行われていたり、荷主の主体的な関与が認められないためだ。
貨物自動車運送事業法の改正 18年12月の臨時国会において「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」(議員立法)が成立し、非常に短期間で貨物自動車運送事業法の改正が行われた。
ポイントは大きく「規制の適正化」「事業者が遵守すべき事項の明確化」「荷主対策の深度化」「標準的な運賃の告示制度の導入」の四つだ。
そのうち「荷主対策の深度化」では、「荷主の配慮義務の新設」「荷主勧告制度(既存)の強化」「国土交通大臣による荷主への働きかけ等の規定の新設」の三つが23年度末までの時限措置として設定されている。
荷主勧告の具体的な流れは次の通り。
「トラック運送事業者の違反原因となる恐れのある行為を荷主がしている疑いがある場合」には関係行政機関と国土交通省の間で当該荷主の情報を共有し、関係行政機関と協力して当該荷主に改善の働きかけを行う。
そして「荷主への疑いに相当な理由がある場合」は国土交通省と関係行政機関が協力して要請を行う。
要請をしてもなお改善されない場合には勧告をし、荷主名が公表される。
ただし、国土交通省としては最初から荷主勧告の発出ありきで考えてはいない。
きちんとしたプロセスを踏むことで改善に結びつけたい方針だ。
関係省庁との情報共有については19年7月から実施されており、情報も得ている。
現在は、どのように働き掛けを行うべきか情報を整理している段階だ。
「規制の適正化」と「事業者が遵守すべき事項の明確化」の目的は、問題あるトラック事業者の市場からの退出を促すことにある。
従って、法令を違反したトラック運送事業者に対する制限などはさらに厳しくなる。
「標準的な運賃の告示制度の導入」は現在、国土交通省で作業が進められている。
国土交通省が「参考」の形で標準的な運賃を示す。
荷主と事業者による運賃交渉時の参考にしてもらうことがその目的だ。
